日本森林学会誌
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97 巻, 3 号
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論文
  • 田村 明, 織田 春紀, 山田 浩雄, 福田 陽子, 矢野 慶介, 生方 正俊, 後藤 晋
    2015 年 97 巻 3 号 p. 135-142
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    エゾマツのコンテナ苗は播種から山出しまで 4 年かかるため, 育苗期間の更なる短縮が望まれている。本研究では4 種類の環境条件, 3 種類のコンテナ, 7 種類の用土の組み合わせ, 計 84 処理区の中からコンテナ苗の育苗期間を短縮できる最適な条件を探った。その結果, ガラス温室内で高圧ナトリウムランプによる18 時間の長日処理を行い, 容量300 cc のマルチキャビティコンテナ (JFA300) にココピート 100% を用土に用いて育成することによって, 2 年でアカエゾマツにおいて暫定的に決められたコンテナ苗の 2 号苗の規格 (苗高 20 cm 以上, 地際直径 4 mm 以上) を 77% の個体が上回った。また, ガラス温室内での高圧ナトリウムランプによる長日処理は, 産地に関わらずコンテナ苗の成長を促進する効果があることが示された。これらの結果から, エゾマツのコンテナ苗の育苗期間をさらに短縮できる可能性が出てきた。
  • 知念 良之, 芝 正己
    2015 年 97 巻 3 号 p. 143-152
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    琉球王国時代から近年までの森林・林業や住宅に関連する政策・周辺状況の変容を分析し, 構造材の変化に関する要因を考察した。琉球王国は薩摩藩侵攻以後, 中国と日本の二重支配体制下に置かれ, 財政逼迫や森林資源枯渇に直面した。18 世紀中頃に蔡温による大改革が行われ, その影響は集落景観や住宅構造にも及んだ。すなわち, 集落の形状が碁盤型に変化し, 身分ごとの住宅も現れたことである。琉球処分後は, 旧慣温存政策で近代化が阻まれ, 森林管理体制が崩壊した。用材自給は困難となり, 本土の移入材に依存するようになった。戦後は, 沖縄の軍事的価値の高まりにより, 米国の統治が続いた。B 円体制下の輸入促進政策でスギ材が安価で入手可能となり, 木造建築が活発化した。ドル体制下では, ドル流出抑制目的で輸入代替や輸出振興が図られ, 合板・セメント生産に支援が行われた。結果, コンクリート造が安価で供給可能となり, 融資条件優遇等の要因も重なり, 以後,主流となった。近年の木造率増加は, プレカット工法の普及, 国産材利用振興政策に伴う本土業者の新たな市場としての沖縄県への参入等がその背景にあった。
総説
  • 升屋 勇人, 菊地 泰生, 佐橋 憲生
    2015 年 97 巻 3 号 p. 153-157
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    サクラてんぐ巣病菌 Taphrina wiesneri はソメイヨシノをはじめとするサクラ類に大きな被害を及ぼしている。本菌の全ゲノム解読と近縁な 3 種 (モモ縮葉病菌, スモモふくろみ病菌, ポプラ葉ぶくれ病菌) との比較ゲノム解析の結果, Taphrina 属菌のゲノムは 4 種の間で, ゲノムサイズ, 遺伝子数, 遺伝子の種類の点で類似していることがわかった。同時に, 4 種の菌はそれぞれの宿主に適応し寄生を成立させるような, 染色体重複による寄生性関連遺伝子数の増加や, 遺伝子水平転移による新たな遺伝子の獲得などが起こっており, これらの違いが各宿主への寄生成立や病徴の違いに関与していることが示唆された。さらに, オーキシン, サイトカイニン, アブシジン酸など, 多くの植物ホルモンの合成にかかわる遺伝子が同定できた。本病原菌が宿主植物体内でこれらの植物ホルモンを生産し宿主のホルモンバランスが乱れることが, 奇形誘導に深く関与していると考えられた。今後, 得られたゲノム情報を活用した病原菌の生理生態の解明とそれに基づく生態的防除法や, 病原菌の生存に関わる特定の遺伝子をターゲットにした農薬の開発が可能になってくると予想される。
特集「東京電力福島第一原子力発電所事故による森林の放射能汚染」
短報
  • 清野 嘉之, 赤間 亮夫
    2015 年 97 巻 3 号 p. 158-164
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    茨城県内の二つのフキ栽培地 (HO 区,TS 区) で 2013 年 3~10 月, 2014 年 3~7 月に月 1 回地上部を採取し, 2014 年 3 月にリターと表層土壌 (0~5 cm) を採取して放射性 Cs 濃度を調べた。葉の 137Cs 濃度はフキノトウが存在する 3 月に高く, 葉のバイオマスが多くなる 5 月には低下した。その後は, 葉の成長が衰える盛夏までに HO 区では増加し, TS 区では顕著な増加は起こらなかった。葉の 40K 濃度は両区であまり変わらず, 3~7 月に漸増した。両区の空間線量率や [リター+表層土壌] 中の放射性セシウム量に特段の違いはなかったが, HO 区には上木があり, リター量やリター中の 137Cs 量が TS 区の約 3 倍あった。葉の 137Cs 濃度の季節変化の違いに栽培地間の上木とリターの状態の違いが関係している可能性がある。
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