令和8年(2026年)日本森林学会誌論文賞
本論文は、北海道における天然林の択伐施業を再構築するために、地に足のついた問題設定と新規性の高い発想に基づいている。北海道で行われてきた天然林施業では、択伐実施後に林床のササの繁茂が問題となっており、ササを除去し樹木の更新を促すために「かき起こし」が実施されてきた。しかし、かき起こしは林地や残存木・更新稚樹に与える負荷が大きく、コストも要する。これを現実的なものとなるよう検討し、①択伐により伐採された樹木・樹群の下にだけ積雪期かき起こし処理を施し、他の場所は積雪の保護により林床の攪乱を与えないこと、②積雪期かき起こしが時間的にも費用的にも実用性を持つこと、③更新本数は無雪期施工と比べて遜色なく、更新樹種の多様性が高いことを明らかにしている。また、コスト計算を丁寧に行い、作業の合理性を数量的に示した点は、単なる技術報告にとどまらず、現場運営の意思決定に資する知見として高い社会的波及性を有している。
このような形でかき起こし作業を改善するという考えは、著者の他には誰も着想しなかったもので、高い独創性を有しこれまで研究例がない。新しいアイデアを実施し、その経済面・労力面における有効性を明瞭な証拠によって示しており、施業技術の実践的な改良の好例として、また現場の実情に即した優れた提案として、社会的貢献度も極めて高い。
さらに、大学研究林の技術開発課題として実施されたものであるが、その成果は、大学研究林が有する組織的・人的な厚みが社会的課題の解決に直結しうることを明確に示している。その意味でも、本論文は大学研究林の存在意義を社会に示す好例である。
令和7年(2025年)日本森林学会誌論文賞
集落人口分析のために、国勢調査の市区町村より小さな範域の集計の利用可能性は論じられてきたものの、具体的実証研究は多くない。本
論文は、これまで十分に分析されてこなかった集落単位の人口統計分析を、国勢調査の調査区別集計と自身のフィールド調査を組み合わせたことで、先行研究に比べてはるかに高い精度での分析を可能とし、一歩踏み込んだ新規性がある。これらの手法により、2020年の集落合併の要因を明らかにした点に高い独創性が認められる。また、本論文は統計資料の利用可能性を再認識させ、本論文で提案された方法は国内の同様の地域の分析にもあてはまる普遍性を有しており、当該分野の研究の進展を期待させる内容といえる。
令和7年(2025年)日本森林学会誌論文賞
従来、クロマツの開花ステージ判定は目視によって行われ、習熟や経験が必要であった。深層学習モデルとそれを組み込んだアプリを用いてそれを判定する本研究の試みは、新しい技術を応用するという点で、新規性・独創性がみられる。本技術は経験が少ない技術者・研究者でも簡単に人工授粉に適した開花ステージを判定できるため、社会的波及性は極めて高い。研究における当該技術の適用箇所が秀逸であり、深層学習を適用し成功した事例研究としての価値だけでなく、林木育種をはじめとする森林科学全体そして林業・林産業分野にも応用できる発展性を有している。
令和6年(2024年)日本森林学会誌論文賞
リモートセンシングにおける解析精度の判定方法の適否は重要な問題であり古くから議論が重ねられてきたものの、日本では精度の評価方法についての学術的な論文・総説がこれまでなかった。志水会員の論文は、精度評価に関する数多くの国際誌を参照して、その問題点と国際的に標準とされる精度評価方法について体系的にまとめ、森林リモートセンシング分野における学術的発展性への貢献が非常に大きい、完成度の高い総説である。
海外では違法伐採の監視、国内では伐採届等との突合といった目的でその技術の需要が高まりつつあることを踏まえ、評価に利用したRのモデルを公開することでリモートセンシングの解析において適切な精度評価方法の普及に貢献しうること、森林変化マップを作成する場面で本論を参考に適切な精度評価が実施されるようになることが期待されることなどの波及性が期待される。さらには、和文誌での発表により国内における技術水準の向上に寄与した点はおおいに評価される。