II. スイバ及びタカネスイバには色々の核型があるが, 此兩種の中で最も多い核型は, スイバは10i+2v, タカネスイバは10i+2Tである。交雜には此兩核型を有するものを選んだ。此兩種間の交雜に於ては約90%の結實歩合を得た。大體夫々兩親を自家授粉したものと變りがない。タカネスイバは夏期低地に於ては枯死を免れないが, スイバとの F
1 は死ぬ事がない。F
1 同志の交雜に於ては約50%の結實歩合を示した。F
1雜種の根端細胞染色體には夫々豫期の如く, 二つのヘテロモルフィックの染色體が觀察された (圖の1, 2)。成熟分裂は大體兩親のそれと變りがない。第二分裂後期に於て屡々後れる二價染色體を見るが(圖の6,7), これは兩親共に見られる現象で染色體の行動には不規則と認められるやうなものはなかつた。
二つのヘテロモルフィックの染色體を有し, 且F
1の稔性が約50%であるのを見ると, 恐らく是等の染色體の間に部分的交換が起つたものと考へられる。然るに第一分裂中期に於て4個の染色體よりなる染色體環を見る事が出來なかつたのは, 部分的交換が甚だ小さく前期に四放射状に排列した染色體が中期に於ては二對の獨立した對となるからであらう(木原1932參照)。
III. 此個體が3
x中間性個體を自花授粉せしめたものの中より出來た事は既に報告して置いた(山本1933)。此個體の發育は非常に惡く, 第一年目には花を着けなかつたが, 第二年目に至つて始めて開花し, 豫期の如く中間性を示した。此個體の背丈は3
x中間性のものに比して小さいが(圖の10)花は遙かに大きい (圖の11, 12)。成熟分裂は實に不規則で, 殆ど觀察に堪へない程である。普通染色體は1價より8價までの染色體を作り, 性染色體は6價迄の染色體を作る。其割合は1,2表及び圖の26に示してある。此個體は2年間を通じて觀察したが, 自花授粉せしめたものは勿論, 自然に放置して置いたものからも一粒の種子も得る事が出來なかつた。一般にアウトポリプロイドの植物がアロボリプロイドの植物に比して少ないのは, 何かその生成を阻害する原因があるのではなからうか(Wettstein 1928參照)。又斯樣に同一ゲノムが餘りに重複する事も發育を阻害し, 子孫を殘さない有力な原因となるのであらう。
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