1. 著者は前報告の出版後引續き日本産竹類の核學的研究を繼續して, 今同八屬, 十三種の染色體數を決定することを得た。其の根端細胞に於ける結果を記せば, 次の如くである。
(A) ほうらいちく屬
1.
Bambusa floribunda ZOLLINGER
et STEUDEL (ほうわうちく) ...... 72
2.
B. multiplex RAUSHEL (ほうらいちく) ...... 72
(B) かんちく屬
3.
Chimonombusa angulata (MUNRO) NAKAI (しほうちく) ...... 48
4.
C. marmorea MAKINO (かんちく) ...... 48
(C) まだけ屬
5.
Phyllostachys aurea A
et C RIVIERÈ (ほていちく) ...... 48
6.
P. Makinoi HAYATA (桂竹) ...... 48
7.
P. nigra MUNRO, var.
Henonis STAPF (はちく) ...... 48
(D) めだけ屬
8.
Pleioblastus gramineus NAKAI (たいみんちく) ...... 48
9.
P. Hindsii NAKAI (かんざんちく) ...... 48
(E) やだけ屬
10.
Pseudosasa japonica (SIEB.
et ZUCC) MAKINO (やだけ) ...... 48
(F) あづまさゝ屬
11.
Sasaella iwatekensis MAKINO
et UCHIDA (やぶざゝ) ...... 48
(G) みやこざゝ屬
12.
Sasa paniculata MAKINO
et SHIBATA var.
nebulosa CAMUS (しやこたんちく) ... 48
(H) なりひらだけ屬
13.
Semiarundinaria yashadake MAKINO (やしやだけ) ...... 48
2. 著者の前報告(1933)及び山浦氏(1933)の報告竝に本研究の結果を通じて之を觀るときは, 日本産竹類の大多數は生殖細胞に於て24, 體細胞に於て48の染色體數を有し, 極僅少の種類のみが體細胞に於て, 54, 72の數を示すことが判る。而して之等の48, 54, 72, 等の數は何れも6の倍數である。故に日本産竹類の基本染色體數は6であらうと考へられる。尚此の基本染色體數竝に倍數性(Polyploidy)の問題については次の報告に於て論ずることゝする。
3. 著者の研究結果によれば, まだけの花粉及胚嚢の形成は, 染色體に就いても其の成熟分裂後の發達についても何等の異状をも認められぬにも不拘, 殆んど完全に結實するものなく, 種子にて繁殖せずして,通常無性的に地下莖を以てのみ繁殖してゐるのは, 此の植物が自家不稔性であるのによるものではないかと考へられる。
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