遺伝学雑誌
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19 巻, 2 号
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  • I. 種生態學的に見たる發芽性の分化に就いて
    永松 土巳
    1943 年 19 巻 2 号 p. 47-56
    発行日: 1943年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    (1) 數年又は10數年九州帝國大學農學部附屬農場に於て純系栽培した世界各地の水稻品種300種を小型水田式苗代に低温時期2囘即ち1月下旬温室, 3 月下旬網室, 高温時期2囘即ち5月下旬, 8月上旬網室に播種し自然状態に近い變温條件下で發芽性を研究した。
    (2) 低温下では同一品種内の發芽も不整で長期間に互るが品種間の變異も極めて擴大され原産地別の差異が明かに區別された。即ち日本内地, 朝鮮, 滿洲, 伊太利, 及び一部のロシヤ品種では極めて早い發芽性を示し, 臺灣, 印度, 比律賓, 南米及アフリカ原産のものは發芽が遲れ, 北米合衆國及び支那産は中間性を示した。尚ロシヤ産は極早より極晩に互る廣範圍の變異を示した。
    (3) 高温期に於ける發芽は著しく變異の幅を狹めたが尚原産地別に依る發芽性の遲速は確認された。
    (4) 同一地帶内での發芽性の早晩は尚温度に對する適應性の相違に依るか, 他の生理的, 解剖的原因に基くか研究さるべき問題である事を附言した。
    (5) 低温時期の發芽で或品種は斷續的の發芽性を示し, 數週間乃至2ケ月以上を隔てゝ發芽した。此の現象に對し低緯度産のものには低温發芽性獲得の移行型と見倣し, 高緯度産の斷續的發芽性に關しては野生性の發現に依るものと解釋した。
    (6) 斷續性を示した25品種の翌代32系統ではその3分の1は斷續性を示さず, 殘餘は前年同樣2乃至數囘に亙る斷續的發芽性を示した。而して前者は早期發芽性のもので後者は遲發芽性のものであつた。尚同一品種異系統間で稍早晩性の分化を示すものが認められた。
  • 建部 民雄
    1943 年 19 巻 2 号 p. 57-74
    発行日: 1943年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    ナスの果形の遺傳關係を知らんとして, 主として圓形×長形の交雜を行ひ, 果形の測定にあたつては果形指數として縦徑/横徑を算出した。今得たる成績の概要を記すと次ぎのやうである。
    1. 果形指數の平均價大なる品種は小なる品種に比し, 其の標準偏差も亦大である。換言すれば長形果品種は圓形果品種に比し果形の變異が大きい。
    2. 圓形×長形 F1 の果形は兩親の中間であるが, 稍ゝ圓形の親に近い。即ち圓形は長形に對して不完全優性と考へられる。
    3. F2 の分離は其のモードが唯一つで, 圓形の親の方に偏した即ち略ゝ正の不對稱曲線を示し, 其の變異係數は F1 よりも遙かに大である。
    4. F3 の分離は F2 に似てゐるが, 變異係數は F2 よりも小さくなる。
    5. 以上の成績より考察すれば, 少くとも3個以上の同義因子が果形に關與せるものと推察される。
    6. 永井及び喜田 (1926) の成績, 圓形×細長形及び長形×圓形の組合せにつき果形指數を算出し, F2 に於ける頻度多角形を描いてみると, 略ゝ前記の成績と一致する。
    7. 兩親間の果形の差大なる組合せに於ては, 何れも F1 及び F2 の果形指數の平均價は, 兩親のそれの算術平均よりも遙かに幾何平均に近い。
    8. かゝる關係は果實の發育過程が幾何級數的のものと考へるとよく理解される。又F2 分離に於ける正の不對稱曲線のあらはれる理由も同樣にして理解出來る。
    9. 開花當日の子房の形によつて圓形果と長形果とは既に識別が出來る。然しこれを果形の遺傳子分析に用ひ得るや否やは尚今後の研究に俟たねばならない。
    10. 發育中に於ける果形の變化は最初の2週間は長くなり, 次いで太さを増して開花後1箇月で略々品種固有の形に安定するものと考へられる。然し圓形果の發育中に於ける果形の變化は非常に少い, 之れに反して長形果に於ては變化が顯著である。
    11. 長形果は圓形果に比して果長は一層長く, 果徑は一層短い。從つて果形を決定する遺傳子には果長を支配する遺傳子と, 果徑を支配する遺傳子とが存在するものと推察される。
    12. 果形は果實の發育の出發點に於ける果長を支配する遺傳子, 及び果徑を支配する遺傳子の各支配價の量的關係の差によつて決定されるといふこと, 及び果實の發育過程は幾何級數的に進むものであるといふ二條件を假定すると, 各種の果形, その發育中の變化, 及び遺傳現象を可なりよく説明することが出來るやうに考へられる。
  • 諸星 靜次郎
    1943 年 19 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 1943年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
  • 駒井 卓, 高久 武
    1943 年 19 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 1943年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    1. 黒猩々繩のX染色體にある二つの獨立逆位 In(X)Sp と In(X)Sd とは共にヘテロの状で在る時は, 第三染色體の末端部及び基端部, 並に第五染色體の末端部の交叉を増加する。
    2. 同じ兩逆位は同じX染色體の末端部の交叉をも増加する。
    3. 此二つのうち, 端部逆位だけが單獨にヘテロの状で在る時でも, 第三染色體の末端部の交叉を増す。然しX染色體の末端部の交叉は増さない。
    4. 基部逆位だけが單獨にヘテロの状で在る時は, 第三染色體の末端部にも, 又X染色體の末端部にも, 見るべき影響が無い。
    5. 要するに, ヘテロの逆位が他の染色體, 若しくは同一染色體の他の部分の交叉を増加する程度は, それら逆位が自分の附近の交叉を妨げる程度に比例するものと思はれる。
    6. ヘテロの逆位が他の部分の交叉に與へる影響は温度やX線に依る刺戟の交叉に與へる影響と同性質のもので, 或部分で減少すれば他の部分で増加すると云ふ關係になつてをる樣である。そしてこれは同じ核内の別の染色體間, 又は同一染色體の別の部分間に, 交叉に關して♦競爭' 又は '補償' 的關係が在るためで, 結局一つの核の中で退られるキアスマに一定の限度が在る事に基づくと思はれる。
  • 林 文平
    1943 年 19 巻 2 号 p. 86-87
    発行日: 1943年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    A pedigree of a family in which Fistula auris congenita occurs is presented here (Fig. 2). The mode of inheritance seems to agree with the idea that the trait was produced under the influence of an irregular dominant.
  • 千野 光茂
    1943 年 19 巻 2 号 p. 88-97
    発行日: 1943年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
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