総合病院精神医学
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22 巻, 3 号
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原著
  • ―国立国際医療研究センター病院における精神科リエゾンから―
    高橋 卓巳, 吉川 正孝, 筒井 卓実, 松永 力, 加藤 温, 今井 公文
    2010 年 22 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    国立国際医療研究センター病院において,2007年4月1日〜2009年3月31日の2年間にエイズ治療・研究開発センター(ACC;AIDS Clinical Center)から精神科へコンサルテーションがされたHIV感染症患者86例(入院31例,外来55例)について実態調査を行った。精神科初診時の診断は,適応障害が24例(27.9%)と最多であった。さらに,この24例のなかで「受診に至った直接のストレス因」として感染告知など“HIV感染症と関連の大きいもの”をあげたのは9例,仕事や家庭,恋愛など“HIV感染症と関連の少ないもの”をあげたのは15例と,6割以上がHIV感染症以外の要因をあげた。「告知から精神科を受診するまでの期間」が比較的長いことも,これを支持しているものと考えられた。HIV感染という疾患自体に抱く不安やストレス以外にも,このような外的要因が存在することを念頭に置き,それぞれの状況に合わせてケースワークをしていくことが重要であると考えられた。
  • 井原 裕, 尾形 広行, 犬塚 彩, 多田 則子, 永井 敏郎, 水野 基樹
    2010 年 22 巻 3 号 p. 210-220
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的:看護師の逆境を克服する心理的能力を計測するための「看護師レジリエンス」を開発し,その心理測定学的検討を行った。方法:32項目からなる「看護師レジリエンス尺度」を作成し,大学病院勤務の464名の看護師に施行。妥当性の検討のため,自尊感情尺度,ハーディネス・パーソナリティ尺度,バーンアウト尺度,ベック抑うつ自己評価尺度も同時に施行した。結果:429名の看護師が回答(回収率92.5%)。因子分析の結果として4因子が抽出された。各因子は「肯定的な看護への取り組み」,「対人スキル」,「プライベートでの支持の存在」,「新奇性対応力」と命名された。次にα係数による信頼性と相関係数による妥当性の検討を行った結果,信頼性(尺度全体で.84,各因子はそれぞれ.87,.77,.76,.63)と妥当性(自尊感情尺度およびハーディネス・パーソナリティ尺度と正の,バーンアウト尺度およびベック抑うつ自己評価尺度と負の相関),ともに十分な値が得られた。結論:「看護師レジリエンス尺度」は十分な信頼性と妥当性を有することが示された。
経験
  • 横田 雅実, 木村 真人, 池森 紀夫, 中尾 泰崇, 中山 菜央, 廣橋 愛
    2010 年 22 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    向精神薬の副作用である口渇は,治療コンプライアンスやQOLを低下させる障害である。そこで本研究では,口渇症状を訴える向精神薬服用者に対して,抗コリンエステラーゼ作用による唾液分泌促進効果が報告されているH2遮断薬nizatidineを投与し,その効果を検討した。当科外来受診中の向精神薬服用者のうち,口渇を訴えた22名(男性6名,女性16名,平均年齢53.1±14.8歳)を対象とし,nizatidine(アシノン)を通法に従い,8週間投与し,口渇自覚症状スケールを用いてその間の口渇症状の変化を観察した。その結果,nizatidine投与前と比較して,4週,8週で口渇症状は改善した。このことより,nizatidineは向精神薬服用者の口渇症状改善に有用と思われた。
資料
  • 天野 惠子
    2010 年 22 巻 3 号 p. 227-238
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    性差医療(Gender-specific medicine)とは,①男女比が圧倒的にどちらかに傾いている病態,②発症率はほぼ同じでも,男女間で臨床的に差をみるもの,③いまだ生理的,生物学的解明が男性または女性で遅れている病態,④社会的な男女の地位と健康の関連などに関する研究を進め,その結果を疾病の診断,治療法,予防措置へ反映することを目的とした改革的医療である。わが国では,性差医療の実践の場として「女性外来」が誕生した。EBMとNBMの両者を基盤とした総合外来である。女性外来では,年々精神症状を主訴とする患者が増え,平成22年度には,20歳代〜70歳代まで全年齢層で患者の2割を占めている。女性外来の現場でも女性医師のワークライフバランスが問題となっている。男女が職場だけでなく家庭での責任と役割を果たすことが出来る「働くルール」の確立が不可欠である。労働基準法では,産前産後の休業,妊婦の請求により時間外労働や休日・深夜勤務が制限されること,産後の育児時間の保障などが定められている。育児休業や介護休業制度も定められている。一般女性労働者と同様,女性医師がこれらの法的権利を行使できる諸条件の整備が必須である。
  • 人見 佳枝, 岡田 満
    2010 年 22 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2010/07/15
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    女性医師の復帰支援として様々な方策が試みられるようになった。その必要性についてはすでに人口に膾炙したものと思われる。これからは世代,gender stereotype(性についての固定観念),および性差など様々な視点から,この問題を考えていく必要がある。そのなかでわれわれは,自身のgender stereotypeについても今一度振り返って考えてみなければならない。また,女性医師が今後も増えることを考えれば,医学教育に医師として働き続ける重要性について考えさせる時間を取り入れる必要もあるのではと思われる。
    精神科は,女性医師が志向しやすい科の1つである。特に総合病院精神科は,柔軟かつplannableなプログラムのなかで,最新の精神医学について学ぶ機会を提供することができる。総合病院精神科を職場復帰希望者に対してだけでなく,精神科に興味のあるすべての医師に対してアクセスのよい場所にしておくことが,双方にとって価値のあることであると考えられる。
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