総合病院精神医学
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特集:ECTの適応についての展望とrTMSの現況
症例
  • 奥村 正紀, 鮫島 達夫, 竹田 美香, 橋本 知加子, 寺下 稔, 大石 光枝
    2016 年 28 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    電気けいれん療法(electroconvulsive therapy:ECT)はカタトニアに対する治療として有効性が確立されている。近年,自閉症スペクトラム障害(autistic spectrum disorder:ASD)がカタトニアを呈すると報告されており,他の治療で効果が得られず迅速な改善が求められる場合には,ECTを施行されることも少なくない。また再燃予防の維持療法としてmaintenance ECTが行われることもある。今回われわれは,幼少時に自閉症と診断され40歳代になって重度のカタトニアを呈し,ECTが症状の改善およびその再燃予防に効果的であった症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

総説
  • 谷口 豪, 鮫島 達夫
    2016 年 28 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    電気けいれん療法(ECT)は1938年に統合失調症の治療法として開発されたが,背景にはけいれんと精神病症状は生物学的に拮抗するという仮説があった。その後,ECTは統合失調症以外にもうつ病にも有効であることがわかり,近年ではパーキンソン病や視床痛などにも適応を拡大している一方で,てんかん患者の精神症状に対するECTに関しては報告が少なく不明な点が多い。そのため今回は海外文献を基に考察を行った。その結果,てんかん患者の精神症状へのECTの安全性に関しては大きな問題はないと考えられるが,有効性に関しては統一的な見解が出せる段階とは言い難いと考えられた。さらに近年では,てんかんと精神症状の関係は当初考えられていた「生物学的拮抗」な関係より複雑であると考えられている。このため今後は,日本のてんかんを専門とする精神科医とECTを専門とする精神科医が連携して知見を蓄積し,世界に向けて発信していく必要があると考える。

経験
  • 臼井 千恵, 八田 耕太郎, 土井 永史
    2016 年 28 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    電気けいれん療法(electroconvulsive therapy,以下ECT)が薬剤抵抗性のうつ病,統合失調症,緊張病症候群に有効であることはいうまでもない。それ以外に,精神疾患に限らず周辺領域においても,現時点の薬物療法が十分に期待できない病態は少なくない。したがって,患者の苦痛を軽減しようとさまざまな病態にさまざまな治療法が試みられてきた。精神病症状を伴うパーキンソン病もそのような病態である。われわれは,精神病症状を伴うパーキンソン病に対するECTの効果について,局所脳血流の変化を観察しながら検討しているので紹介する。ECT前後で,パーキンソン病の運動症状の重症度指標であるHoehn and Yahrおよび陽性症状評価尺度が有意に減少した。脳血流シンチグラフィーにおいて,ECT前後で中前頭回の有意な血流増加が認められた。つまりECTは,パーキンソン病の運動症状および精神病症状の両方の重症度を有意に改善させることが示された。

総説
  • 中村 元昭
    2016 年 28 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    これまでのうつ病rTMS(repetitive transcranial magnetic stimulation)の臨床試験からわかることは,有効性の効果サイズが中等度であり,電気けいれん療法には有効性で劣るものの,安全性や忍容性において勝っているという点であろう。また,再発予防効果や維持療法としての有効性も徐々に検証されつつある。ただ,薬物治療に反応不十分な患者集団において,rTMSに反応する割合は3 〜4割といわれており,決して満足できる割合ではない。うつ病rTMSの対象集団を見極めて,治療アルゴリズムに配置することが重要である。rTMSの治療効果発現メカニズムについては仮説の域を出ないが,神経伝達物質,神経可塑性,マクロ的神経回路のレベルで概説した。また,うつ病以外の精神疾患に対してもrTMSの可能性が検証されつつあるため,それを紹介した。最後にうつ病rTMSの国内導入の概況と課題を解説した。

総説
  • 野田 賀大
    2016 年 28 巻 2 号 p. 132-146
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    rTMSやMSTの現況について,主に海外のガイドラインを紹介しながらそれらの知見を概説した。薬物治療抵抗性うつ病(TRD)に対するrTMSは,急性期治療としてはECTには及ばないものの,再発予防目的の維持療法としてはECTと同等である可能性が示唆されている。MSTに関しては,急性期治療においてもECTと同等の治療効果が期待できる治療法であり,施術後の回復もECTと比べ非常に早いという特徴がある。さらにrTMSやMSTは,ECTが抱えているような社会的スティグマや認知機能障害などの副作用が非常に少なく,費用対効果もECTとほぼ同等であると考えられている。神経刺激治療は,薬物による副作用を軽減し,長期的には全体の医療費を抑制できる可能性も十分秘めている。今後は,rTMSをはじめとした神経刺激の治療メカニズムをさらに詳細に解明していくことで,治療パラメータやプロトコルの最適化を図り,将来的には患者個人の病態に合わせた個別化医療が実現する日がくるかもしれない。

一般投稿
原著
  • 臼田 謙太郎, 西 大輔, 佐野 養, 松岡 豊
    2016 年 28 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    産後うつ病の予測因子については,国によって異なった要因が報告されており,社会文化的な相違がその原因になっている可能性がある。日本においては,子どもを産まなければならないというプレッシャーを感じることが産後の抑うつ症状を予測する可能性があると先行研究から考えられたため,本研究ではその仮説を検討した。市中産院で妊娠12〜24週の妊婦を連続サンプリングでリクルートし,妊娠中と産後1カ月時点でエジンバラ産後抑うつ質問票(EPDS)を実施し,産後のEPDSが9点以上であることを従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。産後1カ月の調査には118名(66.7%)が参加し,解析の結果,出産に関するプレッシャーが産後の抑うつ症状を予測していた。総合病院の精神科において妊婦中に出産に関するプレッシャーの有無を尋ねることは,産後の精神的健康を予測するうえで有用な可能性が示唆された。

  • 井上 敦子, 大下 隆司, 小林 清香, 岡部 祥, 近本 裕子, 清水 悟, 西村 勝治, 服部 元史, 石郷岡 純
    2016 年 28 巻 2 号 p. 156-166
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    腎移植後の小児・思春期レシピエントの抑うつ症状を測定し,QOLとの関係を検討した。 郵送の自記式アンケート調査を行い,35人を分析対象とした(7〜15歳,小学生22名,中学生13名,移植後経過年数4.2±2.9年,生体移植74.3%)。抑うつをBirleson自己記入式抑うつ評価尺度 (DSRSC),QOLを日本語版KINDLによって測定した。全体の14.3%,小学生の13.6%,中学生の15.4%が高うつ群と判定された。小学生で学校生活のQOL下位領域が健常群標準値よりも低く,中学生で自尊感情のQOL下位領域が標準値より高かった。抑うつ得点が高い群は低い群よりも有意にQOL総得点が低かった。高い抑うつは将来的な大うつ病のリスク要因であり,移植後の予後やアドヒアランスに悪影響を及ぼす。小児・思春期患児の抑うつや関連するQOL領域に注目することが重要と考えられた。

  • 土田 和生, 小髙 辰也, 原田 智子, 岡部 健雄, 徳増 裕宣
    2016 年 28 巻 2 号 p. 167-173
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2019/03/19
    ジャーナル フリー

    リスペリドン(RIS)およびその活性代謝物の排泄は,腎臓病の患者で低下していることが報告されており,腎機能が低下した患者では,RIS投与中に鎮静状態が遷延する可能性がある。今回われわれは,2013年1月から2014年10月の間に,せん妄治療のためにRISを投与された入院患者において,鎮静遷延状態の出現と腎機能の関連について調査した。腎機能は,血清クレアチニン (Cr)値,推算糸球体濾過量(eGFR),推算クレアチニン・クリアランス(CCr)で評価した。対象者84名中,RIS投与中に鎮静遷延状態が出現しなかった患者は69名(82%)であった。Cr値が正常域であった患者では,68名中60名が鎮静遷延状態を認めなかった(感度87.0%,特異度46.7%)。 eGFR値≧60ml/min/1.73m2かつ推算CCr値≧50ml/minの患者では,53名中48名が鎮静遷延状態を認めなかった(感度69.6%,特異度66.7%)。eGFR値≧90ml/min/1.73m2かつ推算CCr値≧80ml/minの患者では,17名中鎮静遷延状態を認めた患者はいなかった(感度24.6%,特異度100%)。この研究結果から,Cr値,eGFR値および推算CCr値を参考にすることで,RIS投与中に鎮静状態が遷延するハイリスク患者を把握できる可能性が示唆されたと思われる。

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