S状結腸や直腸癌の治療の際に, 外科的治療との併用療法として一部に使用されてきている術前照射が, 結腸縫合創治癒にどの程度の影響を及ぼすかについての研究は少ない.一方, 今後肛門温存術式の適応範囲の拡大が予想され, 従ってこのような術前照射の縫合創治癒へ及ぼす影響を充分に検討しておく必要があると考える.著者は犬結腸に1,000radの
60Co照射を行い一定期間後に結腸のGambee一層縫合をし, その部の肉眼所見・耐圧試験・hydroxyproline量・microangiographyおよび組織学的所見から術前照射の縫合創への影響を検討したところ, 照射の影響とみられる軽度の創治癒の障害が認められた.しかし, 縫合不全はほとんど発生せず, 今回の実験線量をEllisの式より概算すると推定ではあるが人結腸においても8-10回分割照射で, 総線量2,000rad-2,500rad程度の被曝量であれば, 吻合創治癒に重大な障害はないものと考える.
抄録全体を表示