日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
13 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 阿保 七三郎, 三浦 秀男, 工藤 保, 当眞 秀夫, 池田 利史, 中村 正明
    1980 年 13 巻 5 号 p. 377-381
    発行日: 1980年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    日本における食道癌と他臓器との重複癌症例に関する集計報告はこれ迄なされていなかったので, 第23回食道疾患研究会 (1977.10) のさい加入全国施設の御協力をえてその実態を調査した. 報告を載いた63施設の全食道癌患者数は11,732例でこの中食道の同時性重複癌は251例 (2.1%), 異時性重複癌は436例 (1.5%) を占め圧倒的に男性に多かった. 年齢は50~60歳代に多く食道との重複癌臓器としては胃が絶対的に多くこの中早期胃癌が約20%を占めていた, しかし遠隔成績では食道癌治療の困難性に加え, 他臓器癌が重複する関係上その予後は不良で, 特に同時性食道重複癌では1年以内に72%が死亡していた. 異時性重複癌では初癌が食道癌であったものが約25%にすぎず他臓器癌先行例が多かったため, 初癌からの予後は同時性重複癌に比べるとやや良好であったが, 食道癌治療時からの予後はやはり不良であった. なお多重複癌症例についても調査した.
  • 小玉 正智, 柴田 純祐, 久保 雄治, 寺田 信国, 松本 学, 山岸 久一, 田中 承男, 橋本 勇
    1980 年 13 巻 5 号 p. 382-388
    発行日: 1980年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    食道癌患者24症例の細胞性免疫能とその治療経過の変化について, ツベルクリン反応 (ツ反応), PHA皮内反応, およびPHAリンパ球幼若率を用いて測定した.
    食道癌患者の免疫能は, 進行度が進むにつれ, ツ反応による遅延型皮膚反応およびTリンパ球の機能をみるPHA幼若化率で低下を認めた.術前照射および手術の影響についてみると, 細胞性免疫能は, 照射または手術により著明な低下をきたし, 特に術前照射と手術併用群では高度の低下が長期継続し, 術前値に回復するにも長期間を要した.しかし, 免疫増強剤を使用することにより, 低下の期間が短縮し, 早期に回復する症例を認めた.免疫増強剤は, 照射または手術による免疫低下を回復さし, 有効な補助手段となりうると考えられた.
  • 杉浦 芳章
    1980 年 13 巻 5 号 p. 389-400
    発行日: 1980年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    肝管分岐部癌の根治手術においては, 癌浸潤の強い側の肝葉を切除し, 残存肝の複数の肝内胆管と腸を吻合する必要がある.この場合如何なる吻合方法がよいかを検討するため, 47頭の雑種成犬を用いて肝実質腸吻合および胆管腸吻合を別個に作製し, 経時的に形態学的に比較検討した.肝実質腸吻合では結合組織増生の盛んな「瘢痕期」が術後14日目から60日目までみられ, 胆管腸吻合では「瘢痕期」が14日目から30日目まで認められた.
  • 武藤 良弘, 脇 慎治, 林 輝義, 瀬川 徹, 小原 則博, 鮫島 恭彦, 内村 正幸, 岡本 一也
    1980 年 13 巻 5 号 p. 401-405
    発行日: 1980年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胆嚢全体にリンパ濾胞形成がみられたリンパ濾胞性胆嚢炎40例を臨床病理学的に検討した.本症は胆摘例の12.6%にみられ, 老人・高齢者で胆管結石やビ系石例に多かった.総胆管は拡張性で主としてE.coli, Klebsiellaや少数例にSalmonellaの永続性胆道感染が特徴的であって, 組織学的に胆嚢組織は良く温存され, リンパ濾胞は粘膜固有層内に, 孤立, 散在性に存在していた.本症は一般の慢性胆嚢炎に比較してリンパ濾胞形成が特異的で, さらに一般の慢性胆嚢炎の主因が結石にあるのに反し, 本症は永続性胆道感染による, 真の意味での感染性, 慢性胆嚢炎の形態と考えられた.
  • 庄司 宗弘
    1980 年 13 巻 5 号 p. 406-419
    発行日: 1980年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    S状結腸や直腸癌の治療の際に, 外科的治療との併用療法として一部に使用されてきている術前照射が, 結腸縫合創治癒にどの程度の影響を及ぼすかについての研究は少ない.一方, 今後肛門温存術式の適応範囲の拡大が予想され, 従ってこのような術前照射の縫合創治癒へ及ぼす影響を充分に検討しておく必要があると考える.著者は犬結腸に1,000radの60Co照射を行い一定期間後に結腸のGambee一層縫合をし, その部の肉眼所見・耐圧試験・hydroxyproline量・microangiographyおよび組織学的所見から術前照射の縫合創への影響を検討したところ, 照射の影響とみられる軽度の創治癒の障害が認められた.しかし, 縫合不全はほとんど発生せず, 今回の実験線量をEllisの式より概算すると推定ではあるが人結腸においても8-10回分割照射で, 総線量2,000rad-2,500rad程度の被曝量であれば, 吻合創治癒に重大な障害はないものと考える.
  • 藤本 茂, 赤尾 建夫, 橘川 征夫, 伊藤 文二, 高橋 誠, 南 智仁, 石神 博昭, 宮崎 勝, 伊藤 健次郎
    1980 年 13 巻 5 号 p. 420-425
    発行日: 1980年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    主腫瘤切除可能の同時性肝転移を伴う大腸癌31例の生存期間と肝転移の進行程度, 治療との関係を検討した.術後無治療の肝転移例の平均生存期間は6.9±4.0月であり, 生存期間はH因子の進行に伴い有意に短縮した.一方, 壁深達度と生存期間の間には明らかな相関を見出し得なかった.肝動脈内化学療法症例は19.0±11.8月の平均生存期間を示し, 術後経口補助化学療法を行った12症例中死亡した6症例は21.7±11.3月間生存し, 現在生存中の6症例は術後23.7±21.6月経過している.以上, 適応の選択により肝転移を有する症例においても延命が期待し得る.
    さらに, 術後肝動脈内と経口化学療法の適応に触れた.
  • 小西 孝司, 藤田 秀春, 上野 桂一, 清水 康一, 宮崎 逸夫
    1980 年 13 巻 5 号 p. 426-430
    発行日: 1980年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    近年の高カロリー輸液による栄養管理の進歩は, 従来, 生命の維持さえ不可能といわれていた超広範囲小腸切除術の術後管理を比較的容易ならしめた.しかし, かかる症例では, 絶対的な腸管吸収面積の不足のため, 脂質, 糖質, 蛋白質の三大栄養素のみでなく, 各種のtrace elementsの欠乏症に常に注意を払わなければならない.
    著者らは, 超広範囲小腸切除術後の回復・順応期に, 亜鉛欠乏による腸性肢端皮膚炎様症状を呈し, 亜鉛療法により劇的な改善をみたので報告した.
feedback
Top