食道静脈瘤に対して教室で施行した直達手術129術中, 食道離断+血行郭清33例, 食道離断28例, 胃上部切除12例計73例の肝硬変症例をChild分類に従って, A群26例, B群31例, C群16例に分けその手術成績を基礎疾患の重症度に基いて客観的に検討し, 直達手術の治療的効果の再評価を試みた.手術死亡率は経胸的食道離断 (61例) 8.2%, 胃上部切除8.3%と術式間に差はなく, 緊急手術18.2%, 待期手術5.3%, 予防手術0%, A群3.8%, B群0%, C群31.3%, 遠隔時再出血率6% (食道離断+血行郭清0%, 食道離断8.7%, 胃上部切除18.2%) であった.5年生存率は全体で65.7%で各術式間に差はなかったが, A群79.2%, B群79.1%, C群14.1%と有意にC群で不良であった.このことから手術時の肝予備能がその予後を規定する最大の因子と考えられた.術後長期間のICG消失率の変動をみたが術前値から大きな変動を認めず, 直達手術は肝循環動態に影響を与えないことを裏付けた.以上の成績を各種シャント術式と比較検討したが, 直達手術の安全度, 食道静脈瘤に対する止血効果, 遠隔生存の上で, いささかも劣ることなく, 特に食道離断+血行郭清に高い評価を与えてよいと思われた.一方, 直達手術のデメリットとして, 縫合不全, 狭窄, 逆流性食道炎の他, 下痢, 腹痛, 腹満等の消化器症状を術後長期間認め, 今後さらに種々改良検討の必要性を認めた.
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