日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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21 巻, 10 号
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  • 島田 悦司, 加藤 道男, 船坂 真里, 吉川 恵造, 中村 毅, 斎藤 洋一
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2355-2361
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    最近11年4ヵ月間に経験した胃原発悪性リンパ腫10例を対象とし, その臨床病理学的特徴や, 術後遠隔成績と外科治療上の問題点につき検討した.10例すべてnon-Hodgkinリンパ腫で9例がdiffusetypeであった.多発は1例であった.腫瘍径の大きい, リンパ節転移や深達度の高度な病期進行例が多かったが, 全例の5年生存率は51.4%であり, 進行例でも治癒切除例の遠隔成績は良好であった.したがって治癒切除を得る上でR2以上の積極的なリンパ節郭清とともに, 浸潤範囲の判定が困難なことから切除範囲の決定に当たっては腫瘍を取り残すことのない術式の選択が重要で, 原則的には胃全摘が望ましいと考えられた.
  • 小坂 健夫, 三輪 晃一, 米村 豊, 伊井 徹, 北川 裕久, 竹田 利称, 津川 浩一郎, 松本 尚, 浦出 雅昭, 杉山 和夫, 藤村 ...
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2362-2365
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胃癌852例中多発胃癌は49例 (5.8%) に認められた.多発胃癌は単発胃癌と比較すると高齢者, 男性に高率である特徴があった.個数は2個が86%とほとんどを占めた.癌巣の位置的関係は, 副癌巣が主癌巣より噴門側のものは27%, 平行のものは39%, 幽門側のものは35%であった.組織学的には分化型が多く, 分化型+分化型が60%を占め, 壁深達度は浅いものが多く, 早期癌+早期癌が53%を占めた.胃全割で組織学的に精査した68例では多発胃癌の頻度は5.9%から13.2%に上昇した.副癌巣のほとんどはF-lineより肛門側に存在しており幽門側胃切除術で残胃に癌を取り残さないためには, F-lineを含めて切除することが肝要である.
  • 藤本 茂, セレスタ RD, 国分 和司, 太田 正保, 小林 国力, 木内 宗三郎, 小池 正造, 奥井 勝二, 高橋 誠
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2366-2370
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    腹膜播種性転移および漿膜浸潤陽性進行胃癌10例に対して, 胃切除の直後に31℃ 前後の低体温下において腹腔内温熱灌流を施行した. P因子陽性6/10例であり, P因子の平均1.7である. 温熱灌流は閉腹により閉鎖回路で行い, MMC 10μg/mlを添加した3,000~5,000mlの灌流液の流入温47.4±0.5℃, 流出温45.3±0.5℃ であり, 灌流時間は114±12分である. Swan Ganz catheterを介しての肺動脈内温度は灌流終了時39.4±1.6℃ にまで上昇した. 癌性腹水を有する6例は全例術後に腹水を認めず, 交通事故死の1例を除外した5/9は14.0±4.7月の現在生存中であり, 4例は8.8±0.8月後に死亡した.副作用として術直後GOT, GPTの急上昇を認めた.
  • 佐藤 浩一, 渡部 洋三, 津村 秀憲, 近藤 慶一郎, 榊原 宣
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2371-2377
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    吻合部潰瘍27例をfunctioning parietal cell mass (FPCM) 残存16例, 胃切除断端幽門粘膜残存4例, 空置幽門粘膜5例, 不完全迷切2例に分けて検討した.基礎酸分泌量は空置幽門粘膜, 不完全迷切で2.8, 3.6mEq/hr, 最高酸分泌量はFPCM残存, 空置幽門粘膜, 不完全迷切で13.7, 12.1, 16.2mEq/hrと高値を示した.またbasal gastrinは空置幽門粘膜で161.4pg/ml, insulin刺激時の血清gastrin反応は空置幽門粘膜, 不完全迷切で0.80,0.63ng・min/mlと高値を示した.成因および胃内外分泌成績よりFPCM残存には迷切が, 幽門粘膜残存には残胃胃切または迷切が, 空置幽門粘膜にには空置幽門洞切除+迷切が, 不完全迷切には再迷切が適切であることがわかった.
  • 片井 均, 吉野 肇一, 大谷 吉秀, 壺内 泰二郎, 下山 豊, 菊山 成博, 高橋 孝行, 磯部 陽, 久保田 哲朗, 熊井 浩一郎, ...
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2378-2387
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    第15回迷切研究会の際の主題:“迷切に伴う合併症と後遺症”に関するアンケート調査の集計報告をもとに, 迷走神経切離術の合併症と後遺症を検討した.集計症例数は5,607例でそのうち, 緊急手術例は420例 (7.5%) であった.術式別ではSV43.3%, SPV41.7%, TV15.0%であった.合併症, 後遺症の発生率は19.8%であった.緊急手術例でのその発生率は38.1%で, 待期手術例での17.9%に比べ高率であった.各合併症ごとの検討では, 縫合不全, 肺合併症, 肝機能障害などが緊急手術で発生が高率であった.手術直接死亡, 下痢はTVにおいて高率であった.早期ダンピング症候群, 胃内容停滞, 貧血の発生はSPVで低率であったが, 嚥下困難の発生はSPVで高率であった.
  • 高橋 修, 宮崎 勝, 志村 賢範, 幸田 滋, 栗原 正利, 宇田川 郁夫, 越川 尚男, 伊藤 博, 神野 弥生, 寺本 修, 中島 透 ...
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2388-2393
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    肝切除後に施行される肝動脈塞栓術および制癌剤肝動脈注入療法の再生肝に及ぼす影響をラットを用い基礎的に検討した.(1) 肝切除後, アミノピリン呼気テストで見た肝のマイクロゾーム機能総量の回復には4週を要した.(2) 肝切除後の肝動脈塞栓および注入により血清トランスアミナーゼ値は切除4週目施行群は, 2週目施行群に比べ, 上昇程度が軽度で回復も速やかであった.またアミノピリン呼気テスト値の回復も4週目施行群が速やかであった.(3) 生存率においても4週目施行群に比べ, 2週目施行群は有意に低値を示した.以上より, 肝切除後の肝動脈塞栓および注入は肝の機能総量の回復する時期に施行すれば安全であると思われた.
  • 単発結石30症例の臨床的検討
    村田 郁夫, 森 洋幸, 田中 隆, 坂部 孝, 加藤 貴史, 小池 正, 石井 淳一, 峯尾 和宜, 渡辺 哲弥, 中村 哲夫
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2394-2398
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胆石に対する体外衝撃波破砕療法は1985年西ドイツ, ミュンヘン大学にて開始された.著者らも1987年6月より, Domier社製体外衝撃波胆石破砕装置を用いて治療を施行しているので単発コレステロール胆石保有30症例につき臨床的に検討した.1) 衝撃波による破砕治療中の合併症は全く経験せず安全に施行できた.2) 破砕後, 一過性の肉眼的血尿 (20.0%) と便潜血陽性 (26.3%) を認めた.破砕片の排泄によると思われる疝痛発作は9例 (30.0%) にみられた.3) 破砕後1ヵ月以内に10例 (33.3%) において胆石の消失が観察された.いずれも径30mm以下, CT値20HU以下の胆石であった.破砕療法はコレステロール胆石症治療に有効と思われた.
  • 安田 聖栄, 野登 隆, 池田 正見, 金 大栄, 久保田 光博, 田島 知郎, 三富 利夫, 沢村 貞昭, 小澤 敦, 柴田 幹夫
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2399-2405
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    大腸手術前の腸管処置にpolyethylene glycol電解質液による全腸管洗浄を行った.45症例に用いて臨床評価を行い, そのうち10例については処置前後の腸内細菌数の変化を調べた.結果は洗浄液の使用量が平均3,100mlで前処置に要した時間は平均5.1時間であった.服用に伴う症状は軽度で92%に良好な腸管処置が得られ, 本法は簡便で有用な腸管処置法であると考えられた.また腸管洗浄のみでは腸内細菌数は回収液1mlあたり4.0×108から9.0×106に減少したのみで処置後も腸内には多量の細菌が残存した.Kanamycin 2gとmetronidazole 1gの経口投与でも2.3×108から2.9×106と減少したのみであり, 適切な抗生剤の使用方法については今後も検討が必要と考えられた.
  • 森 亘平, 犬房 春彦, 相澤 真澄夫, 中野 敬次, 中村 洋介, 中村 哲彦, 浜田 宏, 相良 憲幸, 安富 正幸
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2406-2410
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    KM01はヒト結腸癌細胞に対するモノクローナル抗体KM01-antibodyにより認識される.われわれは消化器疾患を中心に279例のKM01をEIA法およびRPHA法により測定値するとともにCA19-9との関連性について検討した.KM01-EIAでは膵癌66.7%(4/6), 胃癌32.0 (16/50), 大腸癌32.0%(16/50) と消化器癌において高い陽性率を示したが乳癌8.7%(6/46), 肺癌8.3%(1/12) と低い陽性率を示した.また大腸癌, 胃癌では再発時にもおのおの50.0%(3/6), 90.0%(10/11) と高い陽性率を示した.KM01とCA19-9は免疫学的交差が認められておりKM01-EIAとCA19-9は統計学的にも相関係数0.96と高い相関性をしめし各臓器癌でもほぼ同じ陽性率を示した.
  • 佐々木 光一, 堀井 均, 佐藤 純瑞, 長谷 和生, 岸本 幸次, 大久保 幸俊, 渡辺 千之, 山田 省一, 石山 賢, 細井 睦美
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2411-2414
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 唐沢 学洋, 平田 公一, 後藤 幸夫, 岡崎 裕, 鈴木 一弘, 田中 実, 及川 郁雄, 白松 幸爾, 早坂 滉
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2415-2418
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 笹田 明徳, 神田 裕史, 福岡 弘晃, 土屋 和彦, 良原 久雄, 喜多 泰文, 岡田 昌義, 中村 和夫
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2419-2422
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 山脇 優, 高橋 一郎, 山崎 四郎, 羽柴 厚
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2423-2426
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 亮孝, 阿部 正, 岡田 恒良, 大浪 優二, 斎藤 和好, 近藤 宗廉, 桑田 雪雄, 菅井 有, 笹生 俊一, 高山 和夫
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2427-2430
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 増田 英樹, 西川 亨, 佐藤 博信, 高松 和郎, 田中 隆, 坂部 孝
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2431-2434
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 正寿, 花立 史香, 山村 浩然, 宗本 義則, 高畠 一郎, 村上 真也, 疋島 寛, 林 外史英, 山田 哲司, 北川 晋, 中 ...
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2435-2438
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 築野 和男, 渋沢 三喜, 小池 正, 石井 淳一, 杉山 喜彦, 佐藤 任宏, 佐藤 行彦
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2439-2442
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 沈 秀明, 鈴木 正康, 新実 紀二, 亀岡 伸樹, 平岩 克正, 山田 満昭
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2443-2446
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 瀬分 均, 村上 義昭, 藤本 三喜夫, 竹末 芳生, 児玉 節, 横山 隆
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2447-2450
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 田中 隆, 佐藤 博信, 村山 公
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2451-2454
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    食道アカラシアの診断についてはその取扱い規約の制定によるX線分類, 内圧分類, 内視鏡所見記載基準が一般的に使われているが内圧曲線, 内視鏡検査については食道機能検査としてはまだ問題が残されており, 21世紀の課題としてはより生理的な苦痛の無い, 治療方針の決定出来るような診断法の開発が望まれる.治療については現況では噴門形成術が主流であるが, 未来像としては内視鏡的粘膜下筋切開法の開発, 安全, 確実な噴門拡張器の開発が望まれるところである.
  • 青木 照明, 柏木 秀幸, 秋元 博
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2455-2458
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    全国アンケート調査76,631例と教室消化性潰瘍手術例732例における検討より, 現状における潰瘍外科の問題点を明確にし, 将来的展望についての考察を行った.H2-受容体拮抗剤の出現は, 消化性潰瘍手術症例を44.3%減少させたが, 合併症潰瘍, 緊急手術例の実数には変化がなく, 死亡率0.5%, 吻合部潰瘍発生率0.9%の増加を認めた, 特に十二指腸潰瘍に対して胃切除術の選択の増加と術式の画一化を生じ, 時代逆行の感がある.したがって, 停滞しつつある研究・実技訓練に対する効率的な改善と, 臨床上最も問題となる十二指腸潰瘍穿孔のような緊急手術例の病態の解明とともに, 生理機能温存的手術の適応に関する研究・普及が今後の展望として望まれる.
  • 21世紀をめざして
    今 充
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2459-2463
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    わが国の潰瘍性大腸炎は, 1973年厚生省特定疾患潰瘍性大腸炎調査研究班が発足して以来, 種々の点において大いに発展してきた.この班の成績と私達の教室の成績を基にし, 21世紀への問題点につき外科治療を主体に論ずる.外科治療は適応と時期を的確に捕える限り安全確実な方法となってきた.その術式として, 自然肛門温存術式がより多く採用され, また人工肛門造設は電子工学的手法や筋肉と神経移植による括約筋再建などによる機能的人工肛門を会陰部に造設することが期待される.本症の病因論不明の現在, 外科的治療の予測は困難であるが, 人類とある意味において共存している細菌の死滅せぬ限り, 患者のquality of lifeを考えた外科的治療が必須となろう.
  • 中山 和道
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2464-2468
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    当科の肝内結石治療の現況を述べ, その問題点についてふれ, 21世紀への治療の展望について述べた.現在の術前診断は正確でなく, 不必要な外科的治療が行われており, 術前診断を正確にするため, 経皮経肝的内視鏡下切石術はルーチン化する.術式では肝切除術は肝組織の荒廃を伴う限局性肝内結石病変に大いに行われ, 一方肝組織が正常例はできるだけ肝を温存する傾向になり, その一術式として肝内胆管形成術が行われ, 遺残結石予防のための附加手術はなくなると思われる.肝内左右型の進行したものでは肝移植の適応になるであろう.全般的には21世紀においては外科的治療は減少し内視鏡的治療が大幅に増えると推察される.
  • 船曵 孝彦, 杉上 勝美, 松原 俊樹, 亀井 克彦, 新井 一史, 長谷川 茂, 山口 久, 二渡 久智, 福井 博志, 藤田 真司, 天 ...
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2469-2472
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    発生学上の問題をはじめ非常に多くの問題が現時点で未解決である.膵炎は23%に合併する.膵石合併時の手術は膵石摘除が必要で, 胆管拡張部切除に膵管切開を加えるも可である.胆道癌も23%に合併する.発癌機序には胆道内容中に増加した二次胆汁酸 (DCA, LCA) が関与する可能性を示した.組織内CEAが癌浸潤部に強く染色された.癌予防の見地から, 胆道非拡張例にも積極的に胆摘・膵液胆汁分流手術が, 拡張症とくに嚢胞状拡張症では肝側, 十二指腸側ともに拡張部完全摘除が必要である.再建法は胆管十二指腸端側吻合が侵襲小さく, 生理的である.合流異常は形成異常である以上, より生理的状態に近づける手術的治療は21世紀にも基本的には必要であろう.
  • 佐藤 寿雄
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2473-2477
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎に対する外科治療は疼痛に対しては極めて有効であるが, 膵内・外分泌機能の改善に関しては期待できない.手術の適応のあるものでは, 膵管拡張のある症例に対しては膵管減圧手術を第1選択とすべきであり, 膵管拡張のない症例でも, 膵切除, 特に膵頭切除術はできるだけ避ける必要がある.今後は膵線維化の進展の防止と膵内分泌機能障害の対策が真剣に考慮されるべきである.何れにしても, 慢性膵炎の病態を十分に理解し, 手術後にも末永く生活指導を含めた患者の管理をつづけて行く必要がある.
  • 峠 哲哉, 柳川 悦朗, 山口 佳之, 黒井 克昌, 沢村 明広, 服部 孝雄
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2478-2481
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胃がん患者における脾の免疫抑制への関与と胃全摘例における脾摘の意義について検討した.脾細胞ではCD4+2H4+ (suppressor inducer T) 細胞の割合が高く, 脾静脈血リンパ球ではCD8+CD11+ (suppressor T) 細胞の割合が有意に高い事が認められた.胃がん全適例における術後7年目での累積生存率は, 特に進行がん症例では有意に脾摘群の予後が良好であった.脾摘群では, PPD皮内反応は術後の回復も早く, また血清抑制因子は明らかに低下した.胃がん患者脾はsuppressor T細胞誘導の場を担い, 免疫抑制に関与すると考えられ, さらに脾摘群で有意に予後が良好であることが認められた.
  • 川浦 幸光, 森 善裕, 中島 久幸, 品川 誠, 笠原 善郎, 田中 松平, 大村 健二, 岩 喬
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2482-2486
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    小腸大量切除を行った16例および成犬における実験的検討から術後の病態生理を検討し, 術後管理の重要性について述べた.次の結論をえた.1) 16例中残存小腸の最長は70cm, 最短5cmであったが, 下痢回数, 便中脂肪排出量には個人差があり, 残存小腸の長さ, 回盲弁の有無との関連はなかった.2) おのおの症例の経過にふさわしい術後の栄養対策が必要 (電解質補正, ビタミン剤, 脂肪乳剤等の投与) である.3) PGE2量が減少し, 胃の生体防御が低下しているので潰瘍の予防が必要である.4) 耐糖能異常を認めた例や, 膵組織中必須脂肪酸の低下などがみられ, 膵炎の発生予防にも注意すべきである.5) 逆蠕動腸管の挿入は非挿入例に比較して有意差は認めなかったが, 栄養吸収の改善に有効な例があった.
  • 回肛吻合術の評価
    宇都宮 譲二, 山村 武平, 藤本 佳久, 荘司 康嗣, 楠 正人, 相生 仁, 楠原 清史, 黒木 輝幸, 三木 義男, 太田 昌資
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2487-2491
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    1983年以来, 手術適応のある潰瘍性大腸炎 (UC) および大腸腺腫症 (AC) に対し原則的に回肛吻合術を行う方針をとった.術式はprone jack knife位における経肛門的な短い直腸粘膜の切除および直腸の遊離, J型回腸嚢と肛門の直接の吻合, 空置的回腸瘻の常用を原則とする方法であり, これまでにUC24例中22例 (91.6%), AC22例中17例 (77%) に本法を施行しえた.UC例では原則として全結腸切除・開放性直腸空置を先行する三期分割手術の方針をとった.その結果, 術後排便機能優・良率はUC13例中84.6%, AC13例中92.3%であった, 手術時間の短縮, 出血量の減少にも成功している.本法は症例を選べばUC, ACに対する大腸全摘術の再建法として実用的であると考えられる.
  • 真辺 忠夫, 平野 鉄也, 野中 敦, 浅野 昇, 山木 健一郎, 田村 耕一郎, 今西 勝大, 馬場 信雄, 戸部 隆吉, 内田 耕太郎
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2492-2495
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    膵全摘後には膵内外分泌機能欠落による血糖調節不全, 消化吸収障害に加え, 脂肪肝, 高アミノ酸血症がみとめられた.膵全摘後, 安定した血糖管理は消化吸収障害, すなわち下痢が改善されてはじめて可能となり, 術後約1年を要した.その結果, 就労までに長期間を要し, 術後1.5~3年の就労率は60~70%にとどまった.しかもいずれの就労者も転職を余儀なくされた.膵癌, 乳頭部癌症例における膵全摘例の予後は膵頭十二指腸切除例と有意差がないことを考えると, 膵全摘はごく限られた症例を除いて行うべきではないと考えられた.
  • 特に膵内外分泌機能の変化と胃合併切除後の病態
    川原田 嘉文, 中村 菊洋, 木田 英也, 喜多 豊志, 水本 龍二
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2496-2500
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    最近11年5ヵ月間に教室で経験したPD症例74例につき, 膵内外分泌機能の変化と胃合併切除後の病態, 特に消化性潰瘍や骨代謝障害の発生について検討した.
    (1) PD後の残存膵の内外分泌機能は術後早期に低下するものの, 術後6~12ヵ月に回復した.しかし, 膵線維化高度の症例では膵切除後3年を越えると機能低下が進行した.
    (2) 術後胃酸分泌は十分に低下しているものの吻合部潰瘍が2.8%にみられた.
    (3) PD後3年を越えると著明な骨障害が認められ, 膵内外分泌機能障害の強い程, 著しかった.
    (4) 脂肪肝の発生は術後1~3ヵ月の早期では, 明らかに膵全摘の方が多いが, 1年以後ではPD, 膵全摘ともに約30%とほぼ同じ発生頻度であり, 下痢, インスリン欠乏や栄養障害が関与している.
  • 山岡 義生, 牧 淳彦, 高安 隆, 嶌原 康行, 森 敬一郎, 小林 展章, 熊田 馨, 小澤 和恵
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2501-2503
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    最近3年間に行った284例の肝切除症例のうち, 他臓器合併切除, 脈管再建を行った45症例を検討した.手術死は4例と少ないが, これには, 術中血中ケトン体比を測定し手術侵襲程度を把握した上で合併切除を加えるか否かの客観的な判定による結果である.手術侵襲の程度を少なくする工夫として, 肝血流量の温存, 門脈系のうっ滞の回避が重要で, 出血量, 麻酔の影響も考慮すべきである.このような観点から, 肝門部処理の工夫, 門脈バイパスの有用性, Biopump (R) の効用について言及した.
  • 小川 法次, 宮田 正彦, 田中 康博, 坂本 嗣郎, 伊豆蔵 正明, 川島 康生
    1988 年 21 巻 10 号 p. 2517
    発行日: 1988年
    公開日: 2011/03/02
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