日本消化器外科学会雑誌
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23 巻, 11 号
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  • 大平 雅一, 曽和 融生, 浅井 毅, 李 在都, 吉川 和彦, 西脇 英樹, 長山 正義, 梅山 馨
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2507-2511
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1983年から1988年までの6年間に当科で内視鏡的拡張術を施行した食道吻合部狭窄31例を対象として, 10回以上の拡張術を必要としたり, 拡張術施行後早期に再狭窄をきたした難治群5例と数回の拡張術により狭窄症状の軽快した良好群26例について比較検討した.
    その結果, 術後合併症としては縫合不全の有無およびその程症, 内視鏡的には拡張術1~2週間後の吻合口短径・長径比の測定, X線学的には拡張術前の狭窄部の長さの測定が狭窄の予後判定に有用であると考えられた.また治療に難渋する症例では吻合部での癌の再発に留意し, また狭窄部の極めて長い症例では外科的治療を含めた他の治療法を考慮すべきであると考えられた.
  • 片村 宏
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2512-2522
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    選択的近位迷走神経切離術 (selective proximal vagotomy以下SPV) を雑種成犬に施行し, 術後1年まで神経組織の変化を観察した.
    1) 胃体部の単位面積当りの神経節細胞数はSPV後1週目には有意に減少し, 2か月以後には術前まで回復した.
    2) SPV後1週間以内には, 胃体部にみられる神経節細胞の多くは軸索傷害反応と類似した変化を示し, 可逆的変化と考えられた
    3) SPV後1週目から4週にかけて胃体部には幼若細胞や神経節の新生さらにAchE陽性線維の増生がみられ, 壁内神経の修復反応と思われた.
    4) SPV後2か月目から胃体部の神経節細胞および神経線維のAchE活性は亢進し, 6か月以降は漸次減少し, 1年後では形態的にもほぼ正常となった.前庭部の神経組織では神経節細胞の数の変化や細胞の形態・酵素活性に術後変化はなかった.
  • strain gage force transducerを用いて
    林 秀彦
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2523-2531
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃全摘術後の再建腸管運動の病態生理学的解明をするために, 胃全摘犬を作成し, strain gage forcetransducerで再建腸管運動を経時的に測定した.再建術式は空腸間置術とRoux-en Y吻合術の2法を行った.空腸間置術において手術2週間後では間置空腸に発生した空腹期収縮波群の肛門側腸管への伝播は認められなかった.しかし5週間後頃より, 伝播する収縮波群が出現するようになり9週間以降ではほとんどが伝播するようになった.Roux-en Y吻合術では5週間後頃より十二指腸と挙上空腸から同時に空腹期収縮波群が出現した.これらの結果から胃全摘空腸間置術後の再建腸管運動は9週間以降に生理的状態となることがわかった.それまでの食事に十分な注意が必要である.また, これらの変化には壁内自律神経叢の再構築が関与しているものと思われた.
  • 組織学的検討から
    中迫 利明, 羽生 富士夫, 今泉 俊秀, 中村 光司, 吉川 達也, 鈴木 衛, 松山 秀樹, 長谷川 正治, 吾妻 司, 今里 雅之, ...
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2532-2537
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸領域癌への全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 (以下本術式) の適応を組織学的因子から検討した.対象は膵頭部癌, 乳頭部癌, 中下部胆管癌, 胆嚢癌, 十二指腸癌245例で, 本術式の適応を左右すると考えられるNo.(3),(4),(5),(6),(7) リンパ節いずれかへの転移 (以下N-meta因子), 十二指腸第一部または胃への直接浸潤 (以下D-inf因子) の有無の2点を検討し, 以下の結論をえた.
    1.乳頭部癌はN-meta因子 (+) 症例は3.7%, D-inf因子 (+) 症例は0%であり, 本術式のよい適応と考えられた.
    2.中下部胆管癌, 胆嚢癌, 十二指腸癌ではD-inf因子 (-) 症例は全例N-meta因子 (-) 症例であり, D-inf因子の有無で本術式の適応を考慮してよいと考えられた.
    3.膵頭部癌ではD-inf因子 (-) でかつN-meta因子 (+) 症例は7.5%に認め, 根治性を追求する限り幽門側胃切除は必要と考えられた.
  • 大内 清昭, 松原 修二, 佐藤 隆次, 三国 潤一, 松野 正紀
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2538-2543
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝硬変患者の低栄養状態, および術後の肝障害の増悪を軽減する目的で, 術前後に高カロリー栄養補給を施行し, 経口摂取のみの群と比較検討した.栄養補給は術前は自由経口摂取下に600~1,000Calを10日間, 術後は800~1,800Calを2週間中心静脈より施行した.活性型甲状腺ホルモンであるT3値は入院時の0.9±0.1ng/mlから栄養補給後1.3±0.1ng/mlと増加, 不活性型甲状腺ホルモンであるreverse T3 (rT3) 値は342±22pg/mlから297±33pg/mlへと低下した.また, 術後も経口摂取群でみられた著明なT3の持続的低下とrT3の増加で表現されるcatabolismの亢進は栄養補給群で有意に抑制された.また, 術前栄養補給により肝蛋白合成能の指標であるprealbumin, レチノール結合蛋白も上昇し, 術後の低下も抑制された.術前後の高カロリー栄養管理は肝硬変手術例での低栄養状態および肝障害を改善し, 手術侵襲の軽減をはかることが可能であった.
  • 宇田川 郁夫, 宮崎 勝, 越川 尚男, 伊藤 博, 海保 隆, 松本 潤, 磯野 敏夫, 鈴木 裕之, 小山 隆史, 下田 司, 奥井 勝 ...
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2544-2550
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    部分肝阻血時の肝細胞障害の病態を明らかにする目的でラットに部分肝阻血を施行し, ライソゾーム酵素の変動の面より検討した.その結果, 阻血葉では阻血開始とともにライソゾーム酵素のfree活性およびfragility indexは漸増し, 阻血解除後より強い上昇を示した.カテプシンDでは, 阻血前のfree活性: 0.27±0.04 (units/mg protein), fragility index: 28.5±2.5 (%) に比べ, 阻血解除2時間後のfree活性: 0.52±0.05 (p<0.001), fragility index: 41.2±3.7 (p<0.01) と著増した.また血清中ライソゾーム酵素は阻血解除後より上昇し始め, カテプシンDでは阻血前2.20±0.28より阻血解除2時間後4.33±0.39と著明な上昇を認めた (p<0.01).以上の結果より, 部分肝阻血により阻血肝細胞内のライソゾーム膜が障害され, ライソゾーム酵素の血中への遊出が起こったと考えられ, ライソゾーム酵素が肝阻血時の肝細胞障害に強く関与することが示唆された.
  • 横山 康弘, 鮫島 夏樹, 池田 康一郎, 藤井 宏一, 平田 哲, 植田 守, 八柳 英治, 野坂 哲也, 久保 良彦
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2551-2556
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    連珠状 (F2), 結節状 (F3) の食道静脈瘤を有する門脈圧亢進症28例の内視鏡的硬化療法 (endoscopic injection sclerotherapy, 以下EIS) 前後にradioisotopic splenoportograpy (RI経脾門脈造影法, 以下本法) を施行し, 側副血行路と肝のradioisotopic image (以下RIイメージ) の変化を検討した.
    EIS後, 食道静脈瘤, 左胃静脈, 奇静脈の上大静脈入口部像などの上行性イメージが消失したものは6か月後の判定で全例食道静脈瘤の再発がなく, これらはEISを成功させるうえで良い指標になると思われた.しかし, 短胃静脈像は再発, 非再発を問わずEIS後も描出され指標にはならなかった.傍贋静脈, 脾腎静脈シャント, 脾から尾側へ向う側副血行路像などの下行性イメージと肝のイメージはEIS後非発例のみが増強し, これらもEISの効果を予測うるうえで参考になると思われた.本法は簡便であり, EISの評価法として有用な門脈造影法と考えられた.
  • 中本 実, 成瀬 勝, 柳沢 暁, 秋田 治之, 遠山 洋一, 稲垣 芳則, 高橋 恒史, 水崎 馨, 長 剛正, 青木 照明
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2557-2563
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去12年間に経験した108例の肝細胞性肝癌に対して53例の肝切除を行い, 肝切除後の再発形式がどのような因子によるものかを検討した.再発症例は23例, 60.5%と再発率は高率で, 再発形式には断端, 孤立性および多発性再発の3つに分類された.再発までの期間は孤立性および多発性再発はそれぞれ1,000±667,566±511日で差はなかったが, 再発確認後の生存期間はそれぞれ472±237,238±130日となり, 多発性再発群が短かった.再発危険因子としての被膜形成とその浸潤の有無, 脈管浸潤の有無, Stage分類, 腫瘍径, 肝硬変の程度, Edmondson分類, および術前集学的治療の有無により再発形式を予測できなかった.
    多発性再発を予測できると考えられた因子としてはHBs抗原の存在 (38.5%), AFP値の肝切除後の減少率の低値 (52.5%) および術前原発巣が複数の場合が考えられた.
  • 西田 修, 近藤 正男, 大森 一吉, 白戸 博志, 澤口 裕二, 近藤 征文, 佐野 文男, 内野 純一
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2564-2569
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移切除26例の残肝再発に関与する因子につき検討した.
    性別による差はみられなかったが, 年齢的には61歳以上の高齢者は60歳以下のものより残肝再発率が低かった.直腸癌の方が結腸癌より残肝再発率が高い傾向がみられたが, 肝転移巣の長径, 個数, 分化度では残肝再発率に差はみられなかった.同時性転移と異時性転移でも差はみられず, また, 一期的切除と二期的切除の間にも差はみられなかった.
    しかし, 術式において, 部分切除例の残肝再発率は4/7 (57.1%) であったのに対し, 広範囲切除例のそれは4/19 (21.1%) と低く, 術式の差が残肝再発率に関与することが示唆された
  • 桜庭 清, 添野 武彦, 伊藤 誠司, 鈴木 行三, 進藤 和夫, 水口 直樹, 武田 正人, 向島 偕
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2570-2574
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸をきたした10症例を対象とし, 閉塞性黄疸下における抗生剤の胆汁内移行について調べ, その規制因子を検討した.抗生剤としてcefpiramide (CPM) を使用した.胆道完全閉塞の場合, 閉塞解除なしには抗生剤の胆汁内移行は認められなかった.しかし, 胆道閉塞解除後は比較的速やかな胆汁内移行を認めた.
    抗生剤の胆汁内移行は胆汁流出状態に強く規制されていると考えられた.閉塞解除後, 胆汁内CPM最高濃度は血清総ビリルビン値と負の相関関係を示し (p<0.05), 黄疸が高度なほど抗生剤の胆汁内移行が悪いと考えられた.また胆汁内CPM最高濃度とindocyanine green (ICG) 消失率 (K値) とが相関傾向を示したことから, 抗生剤の胆汁内移行はグリソン鞘の線維化, 肝血流量に影響を受ける可能性が示唆された.
  • 元島 幸一, 東 尚, 徳永 茂樹, 藤岡 ひかる, 中郷 俊五, 寺田 正純, 塩竈 利昭, 古井 純一郎, 松尾 繁年, 小原 則博, ...
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2575-2579
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    18年間の教室の胆嚢腺腫7例とstage I胆嚢癌症例について, その超音波診断能とstage I胆嚢癌の臨床病理学的検討を行った.超音波検査でのstage I胆嚢癌と腺腫のecho patternはよく近以し, 鑑別困難であったが, 胆嚢腫瘍の存在診断率は高かった.stage I胆嚢癌19例について, その深達度を中心に最大腫瘍径, 占拠部位, 超音波検査で描出される形状, 組織型, 再発死の関係について検討した.丈の高い隆起型胆嚢癌症例の転帰をみると, 最大径が30mm以上の症例が5例含まれたが, 1例も再発死亡例はなかった.この結果より, 隆起型stage I胆嚢癌の予後は良好であるので胆嚢癌が強く疑われる症例では胆嚢摘出を施行し, 切除胆嚢の病理学的精査を行うのが臨床的な解決策と考えられた.非隆起性胆嚢癌の組織型は管状腺癌であり, 病変が小さく, 隆起型でないため術前診断が困難であった.これが予後不良に関与すると考えられた.
  • 剣持 雅一
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2580-2585
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    癌細胞の神経周囲浸潤は膵癌の予後規定因子として重要である.今回, 膵癌の神経親和性の有無を検討する目的で抗神経特異蛋白および抗神経接着分子 (NCAM) を用いて免疫組織学的検討を行った.(対象) 教室における過去5年間の膵癌切除例42例中19例を対象とした.stageはII: 1例, III: 5例, IV13例, で膵内神経浸潤はne0: 3例, ne15例, ne2: 4例, ne3: 7例, であった.S-100蛋白, synapto-physin, substance-P, enkephalin, NSE, NCAM, chromograninの7種の抗体を用い免疫染色を行い, 陽性を1点としスコアー化した.(成績) 膵癌進行度とneの間に相関は認められなかった.抗NSE, chromogranin抗体以外では癌細胞はさまざまな程度に染色された.各症例の染色スコアーと神経浸潤度との間に相関を認めた.以上, 神経浸潤の強い膵癌細胞では, 多数の神経特異抗原を発現し, 神経接着分子で神経を認識し特異的に神経浸潤を起こす可能性が示唆された.
  • 固有筋層をこえた大腸癌との比較を中心に
    桜井 洋一, 青木 明人, 岡芹 繁夫, 金井 歳雄, 島田 英雄, 砂長 貴子, 才川 義朗, 中山 隆市
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2586-2592
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌切除症例327例のうち, 壁深達度が固有筋層にとどまる大腸癌は, 53例で, 切除症例の16.2%を占めた.これらの症例を, 壁深達度が固有筋層をこえ, 明らかに他臓器に浸潤がない癌214例と比較し, 固有筋層にとどまる大腸癌の臨床病理学的特徴と遠隔成績を検討した.固有筋層にとどまる大腸癌の年齢は, 平均64.1歳と, やや高く, 直腸癌が全体の77.4%を占め, 中でも下部直腸癌が58.5%を占めた.治癒切除率は, 94.3%と高く, 腫瘍の大きさも平均4.2cmと有意に小さかった.遠隔転移を示した症例は認めなかった.リンパ節転移陽性例は24.5%で有意に少なかった.5年生存率, 10年生存率はそれぞれ83.9%, 74.0%で, 有意に良好であった.したがって, 壁深達度やリンパ節転移の診断が困難な現時点では, 十分なリンパ節郭清が必要であり, 術後はとくに遠隔転移に十分注意しfollow upすべきと考えられた.
  • 野登 隆, 池田 正見, 安田 聖栄, 田島 知郎, 三富 利夫, 佐々木 哲二, 母里 知之
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2593-2597
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌治癒手術18例を対象に術中照射を行った.18症例の内訳はマイルズ手術11例, 肛門括約筋温存手術5例, 骨盤内臓器全摘出2例である.また, リンパ節転移 (+) 7例,(-) 11例であり, ai (si) 症例は4例であった.他臓器浸潤症例には全例リンパ節転移は伴わなかった.照射線量は6~18MeVのエネルギーで30~40Gyとした.その結果, 当科で手術したstage II, III, IV直腸癌165例に較べて生存率の向上は見られていないが, 局所再発率の低下が得られた.また本法の安全性に関しては手術時間の有意の延長が見られる以外は出血量, 術後のリンパ球数, アルブミン等の変動も対照群と差が無かった.後期の合併症としては尿管狭窄を1例に認めたがnephrostomytubeより拡張術を施行できた.
  • 更科 広実, 井上 育夫, 斉藤 典男, 布村 正夫, 横山 正之, 中山 肇, 奥井 勝二, 轟 健, 折居 和雄, 岩崎 洋治
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2598-2603
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    化学療法を併用した直腸癌術前照射療法 (42.6Gy) が, 術後の局所再発防止にどのような効果を与えているかを知るため, 非照射群37例と照射群44例を臨床病理学的に検討した.局所再発 (術後観察期間平均3年10か月) は非照射群7例18.9%, 照射群2例4.5%であった.局所再発因子の組織学的検討では, 照射群は非照射群に比べ壁深達度a2症例の低値, ew (外科的剥離端までの距離) 2mm未満症例の低値, およびリンパ節転移n2以上の症例の低値がみられ, 両群間に有意差が認められた.さらに照射群のa2症例, ew 2mm未満症例からの局所再発は, 非照射群に比べ明らかに低下していた.これに対し照射群におけるn2以上の症例からは, 非照射群と同様に高い再発率が認められた.以上の結果, 術前照射療法による局所再発の低下は, 壁深達度やewに起因した再発の減少によるところが大きく, 一方リンパ節転移陽性の症例では照射群といえど厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 中本 光春, 裏川 公章, 植松 清
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2604-2609
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去5年間に経験した80歳以上の消化器疾患全身麻酔手術例58例を対象に, 術後合併症, 予後に影響を及ぼす因子など, 高齢者手術例の臨床的特徴につき検討した. 80歳以上は全体の5.7%を占めその割合は増加傾向にあった. 疾患内容は悪性疾患が69.0%と多く, また緊急手術率は15.5%で胆管炎や腹膜炎などの感染を合併しているものが大半を占めていた. 41.4%に術後合併症を認め, 出血, 敗血症, 縫合不全などの重篤な合併症を有した3例が直死した. 術前併存疾患の有無, 術前検査成績やへモグロビン値, 総蛋白量, 手術時間などは術後合併症発生率と明らかな関連はなかったが, 術中出血量と緊急手術の有無が術後合併症発生率あるいは予後に関連があった. それゆえ待期手術では高齢というだけで手術適応を縮小する必要はないと思われるが, 緊急手術においては救命を第一に考えた手術術式の選択と, 厳重な術後管理により, 術後合併症の発生を予防する努力が何よりも大切である.
  • 笠原 宏, 浜辺 豊, 加藤 道男, 大柳 治正, 斉藤 洋一, 杉原 俊一, 井上 和則, 藤盛 孝博
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2610-2613
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    近年, 診断技術の進歩とともに食道炎および食道潰瘍に遭遇し治療する機会が多くなってきた.しかし, 中部食道潰瘍の報告はまれである. われわれは, この原因不明の中部食道潰瘍の1例を経験したので報告する. 症例は56歳の男性で, 発熱と胸骨後部痛にて来院した.特別な化学物質や薬物の服用の既往はなかった. 食道造影X線検査および食道内視鏡にて, 切歯列より26cmからの中部食道に大きな全周性の潰瘍を認めたが, 内視鏡による鉗子生検では悪性所見を認めなかった. 制酸剤および中心静脈栄養などにて保存的治療を施行していたが, 突然大量吐血し, 緊急手術として胸部食道全摘術が行われた. 摘出標本では, 潰瘍は食道上部2/3に存在し凝血塊の付着を認めた. 口側および肛門側の潰瘍辺縁は明瞭であった. 食道下部および胃には, 潰瘍および腫瘤を認めなかった. 病理組織学的には活動性の慢性潰瘍の所見であった.
  • 山本 剛史, 中川 正久, 田村 勝洋, 中瀬 明, 藤井 一洋, 花宮 秀明, 丸橋 和弘, 都志見 久令男
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2614-2618
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは臨床的に特異な経過を示した2例の多発性胃悪性リンパ腫を経験したので報告した. 症例1は多発性の胃潰瘍, Reactive lymphoreticular hyperplasia (RLH) の診断で2年9か月にわたって追跡し切除した多発性表層拡大型悪性リンパ腫で, 生検においても胃RLHとの鑑別が困難であったことより, 臨床的に悪性リンパ腫が疑われる場合は積極的に切除すべきものと思われた. 症例2は胃前庭部悪性リンパ腫で胃亜全摘後, 4年を経過して残胃に再発した腫瘤形成型悪性リンパ腫で, 胃悪性リンパ腫術後の残胃再発例としては本邦5例めの報告例である. 再発形式に関して本例のごとく異時性多発性に発生する場合もあり, 長期の経過観察が必要であると思われた.
  • 関川 浩司, 土屋 敦雄, 渡辺 文明, 菊地 洋一, 石井 芳正, 安藤 善郎, 吉田 典行, 阿部 力哉
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2619-2623
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当科で経験した初発早期胃癌の臨床病理学的特徴を検討し, さらに再発により死亡した例についてその背景因子について検討した. なお, 胃癌の臨床病理学的特徴像については, 胃癌取扱い規約によった. 1) m癌51例およびsm癌62例の10生率はそれぞれ100%, 92.8%であった. 2) 再発死亡した症例は2例 (1.6%) であった. 症例1は71歳の女性, 術後5年5か月後に肝転移, 腹膜播種により死亡した.症例2は73歳の男性, 術後1年で肝転移, リンパ節転移を生じ死亡した. これらの2例について臨床病理学的諸因子, 核DNA量, 組織CEA染色性について検討したが, 脈管侵襲が早期胃癌の再発に最も関与する因子と考えられた.
  • 加藤 真史, 木下 一夫, 沢 敏治, 吉光 外宏, 米村 豊, 三輪 晃一, 宮崎 逸夫, 松井 裕
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2624-2628
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性. 人間ドックで胃癌の診断を受け, 手術目的で来院した. 胃X線・内視鏡検査で胃前庭部後壁のIIa+IIc型早期胃癌と診断した. 血清α-fetoprotein (AFP) が91.3ng/mlと高値を示した以外, 血液生化学検査および腹部エコー, computed tomographyでは異常所見はみられなかった. 第2群リンパ節郭清を伴う胃亜全摘術を施行したが, 肝前区域の表面に径2mmの白色腫瘤を認めたためこれを核出した. 胃癌の組織所見は髄様増殖を示すsmの低分化型腺癌でリンパ節転移はなかったが, 肝の小病巣には転移が認められた. 免疫組織学的検索により原発巣, 肝転移巣ともにAFPの局在が証明された. 術後経過は良好であったがmicrometastasisの可能性が高いとの判断のもとに, UFTの投与を開始しCisplatin, Mitomycin C, Etoposideの肝動注を2クール行った. この化学療法によって, 術後再上昇を示したAFPは下降し正常域となった.
  • 高見 博, 花谷 勇治, 堀江 文俊, 根本 明久, 城戸岡 謙一, 浅越 辰男, 四方 淳一
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2629-2633
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    著者らは脾動脈瘤と非機能性副腎皮質腫瘍が併存した1手術例を経験したので報告するとともに, 手術適応を中心に両疾患の診断と治療について検討した.症例は74歳, 女性で, 1986年3月IIc+III型早期胃癌と診断された.選択的腹腔動脈造影とCT検査にて脾門部に石灰化した脾動脈瘤と左腎上極に副腎腫瘍陰影を認めた.3月17日に胃全摘と脾動脈瘤切除, 脾摘, 左副腎摘出を行った.脾動脈瘤は径10mmで動脈硬化性であり, 副腎腫瘍は径16mmで非機能性副腎皮質腺腫であった.現在, 再発の徴候なく元気である.本症例の脾動脈瘤は石灰化があり, 径10mmの瘤であり, 破裂の可能性は少なく, また非機能性副腎腫瘍も径16mmで悪性の可能性砂ないとされているが, 胃癌の副腎転移も時にみられること, 再手術は容易でないことを考慮し手術を施行した.本症例での両疾患の併存は偶発的なものと考えられるが, これらの手術適応を検討する上では意義のある症例といえる.
  • 横田 昌明, 飯田 修平, 戸嶋 暢之, 宇山 一朗, 鳥浜 慶嗣
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2634-2638
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症に胆管壁内神経腫を合併した1例を経験した.症例は63歳の女性で右季助部痛と黄疸を主訴として入院し, 逆行性胆道造影で総胆管結石および3管合流部付近に8年前の胆摘術の影響と思われる軽度の狭窄を指摘された.手術を行ったところ遺残胆嚢管はなく, 総肝管右壁内に長径7mm, 1/3周におよぶ弾性硬の腫瘤を触知した.総胆管を切開し, 直径9mm大のビリルビン系結石を摘出した.腫瘤は粘膜側には露出していなかったので胆管癌ではないと診断し, 腫瘤を漿膜側より核出し, 総胆管内にTチューブを留置した.摘出した腫瘤は, 組織学的には神経腫であり, 8年前の胆摘術に起因するものと考えられた.狭窄部に対しては, 術後直径9mm, 長さ40mmのballoon dilation cath-eterを用いて60分間の拡張術を10日間隔で4回施行し, 経時的な改善をみた.術後12か月目の経静脈性胆道造影では同部の再狭窄を認めなかった.
  • 天野 穂高, 横山 健郎, 柏原 英彦, 蜂巣 忠, 大森 耕一郎, 一瀬 雅典
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2639-2643
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Transcatheter arterial embolization (TAE) にて経過観察中, 副腎転移をきたし, 転移巣を含む左副腎摘出術を施行したhepatocellular carcinoma (HCC) の1例を経験したので報告する.症例は65歳男性, 肝内転移を伴ったHCCの診断でTAE施行.経過観察中computed tomography (CT) により左副腎腫瘍を認めた.肝原発巣は, 3回のTAEにより著明な縮小を示したが, 孤立性の副腎腫瘍は次第に増大したため手術を施行した.副腎腫瘍は肝原発巣に類似した組織像でありHCCの副腎転移と診断した.初回治療より4年3か月経過した現在生存中であり, TAEと外科的治療による集学的治療が長期生存を可能にしたと考えられた.
  • 北原 信三, 上田 一夫, 小沢 哲郎, 継 行男, 工藤 玄恵, 田所 陽興, 高須 信美
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2644-2647
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝膿瘍併発胆嚢炎・胆石症で血清carbohydrate antigen 19-9 (CA19-9) の異常高値を示した1例を経験したので報告する.症例は53歳の男性で, 胆石・胆嚢炎の診断の下に入院したが, 胆嚢に接して肝膿瘍が認められた.術前, 血清CA19-9が868,094U/ml (希釈値) と異常高値を示し, 悪性疾患の関与も考えられたが, 手術時悪性を思わせる所見は認められず, 胆嚢摘出術と肝膿瘍のドレナージを行なった.経過は順調で術後22病日退院した.組織学的に摘出胆嚢には慢性炎症性変化が著明で部分的に潰瘍や肉芽腫の形成がみられたが, 悪性所見は認められず, CA19-9を用いた免疫組織化学的検索では粘膜上皮細胞や内腔の分泌物に強い陽性所見がみられた.血清CA19-9は術後経時的に低下, 術後6か月には正常化した.この症例では胆嚢良性閉塞機転と肝膿瘍が血清CAI9-9の異常高値をもたらしたと思われ, CA19-9高値のみでは悪性疾患の存在を意味しないことが示唆された.
  • 牛島 聡, 池谷 朋彦, 清崎 克美, 丸岡 秀範, 花立 史香, 若狭 林一郎, 村田 修一
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2648-2652
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    鈍的外傷による胆管損傷, 外傷後胆管狭窄はまれな疾患である.最近, われわれは腹部鈍的外傷による胆管損傷後に総胆管狭窄をきたした症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.
    症例は47歳の男性で交通事故で腹部を強打し腹痛を訴えて来院した.Computed tomography所見などから肝損傷として保存的に加療したが発熱, 腹痛著しくなり受傷後32日に初回手術を行った.腹腔内に約5,200mlの胆汁を認めるも胆管損傷部位の同定ができずドレーン留置のみ行った.受傷4か月後に黄疸出現し, 精査の結果下部胆管に完全閉塞を認めた.Percutaneous transhepatic biliary drainage施行後, バルーン拡張術を試みるも不成功.受傷後235日に2回目手術として胆嚢摘出術, 胆管十二指腸端側吻合術を行った.
    術後経過は順調であり, 術後11か月経た現在, 患者は健在である.
  • 中村 真之, 浜中 裕一郎, 本間 喜一, 矢野 一麿, 吉野 茂文, 山本 達人, 岡 正朗, 水田 英司, 村上 卓夫, 鈴木 敞
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2653-2657
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    石灰乳胆汁は比較的にまれな疾患であり, 本邦では約350例が報告されている.その中でも, 石灰乳胆汁と胆嚢癌を併存した症例は非常にまれである.われわれは, 石灰乳胆汁に併存した多発性胆嚢癌の1例を経験したので報告する.
    症例は61歳の女性.以前より胆嚢内結石と石灰乳胆汁を診断されており, 胆嚢摘出術を行った.術中胆嚢底部にわずかな隆起を認めた.術中迅速にて胆嚢癌の診断を得て, 肝床切除とR2のリンパ節郭清を追加した.術後の永久標本にて, 上記部位以外に別箇の胆嚢癌が頸体部にも存在していたが, ともにm癌であった.組織学的所見より上述の手術で十分と判断し追加手術は施行しなかった.術後15か月現在再発の兆候を認めていない.
  • 小林 建司, 平井 孝, 前野 宏, 小島 宏, 坂本 純一, 安井 健三, 山村 義孝, 加藤 知行, 安江 満悟, 紀藤 毅, 宮石 成 ...
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2658-2662
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は, 66歳の男性で腹痛と発熱を主訴に来院.諸検査の結果, 胆嚢総肝管瘻を合併した胆嚢癌の胆管浸潤, または胆管癌の胆嚢浸潤と診断し, 胆嚢, 胆管切除, 肝門部胆管十二指腸吻合を施行した.切除標本を検索すると, 胆嚢と総肝管は広く交通し, 瘻孔を形成しており, 腫瘍は胆嚢頚部に茎を持ち, 結節状に発育しこの瘻孔を通って総肝管内に突出していた.なお, 一部胆嚢体部で胆嚢粘膜からさらに肝床に直接浸潤していた.腫瘍と周囲組織との接合点は茎の部位と, 肝床への浸潤部のみであり, 他の胆嚢粘膜, 瘻孔壁, および総肝管粘膜との間には連続性はなかった.また胆嚢内および胆管内には同一の形状の混合石が存在していた.病理組織学的には, papillary adenocarcinomaで, リンパ節転移はなかった.以上より, この腫瘍は, 胆嚢癌で, 胆石症に続発して形成された胆嚢総肝管瘻を通じて胆管内に発育進展したものと考えられた.
  • 甲斐 信博, 池永 健, 浦 一秀, 田中 公朗, 松元 定次, 瀬川 徹, 元島 幸一, 角田 司, 土屋 凉一, 井沢 邦英
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2663-2667
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の女性の特発性門脈圧亢進症で, 脾腫, 食道胃静脈瘤, 汎血球減少症を伴っていた.術前に肝内門脈右枝に血栓を認めたが, 摘脾術施行後急速に増大し, 門脈本幹および上腸間膜静脈にまで及んだ.門脈血栓症によると思われる臨床症状として発熱, 腹痛を認めた.ウロキナーゼ1日24万単位の末梢からの投与による線溶療法が奏効し, 症状は改善した.超音波検査上, 血栓はiso~hyperechoicに描出されたが, 新鮮な血栓の場合, 超音波で描出できない可能性があると考えられた.一方, 超音波ドップラー法による門脈血流の評価では, 血栓の増大に伴い, 門脈本幹の最大流速の低下, 血流量の減少が認められたが, 線溶療法が奏効することにより, 血流状態の改善が確認された.
    本症例の門脈血栓の早期診断および経過観察には超音波検査法が非常に有用であった.
  • 八木 実, 高野 征雄, 工藤 進英, 中村 忠, 佐藤 攻, 多田 哲也, 味岡 洋一
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2668-2672
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    小腸の虚血性病変はまれである.今回, 急性膵炎と思われる症状で発症した狭窄型虚血性空腸炎症例を経験したので報告する.症例は69歳の男性で, 既往歴では脳梗塞, 高血圧, 心房細動があり, 上腹部痛, 嘔吐で発症した, 初診時高アミラーゼ血症を認め急性膵炎と診断され保存的治療で軽快した.症状軽快後8週間経過して胆汁性嘔吐を認め, 小腸造影にて上部空腸の管状性狭窄像を認めた.一方, 上腸間膜動脈造影も施行したが有意な狭窄像や閉塞像は認められなかった.保存的治療が無効だったため狭窄部空腸を切除した.術後の病理組織学検査で虚血性空腸炎と診断された.本症例より腸管の虚血性病変が従来の血管造影では造影されない腸管の微小循環レベルでの障害により発症することもあり, 高齢者で循環代謝障害を有する場合の腹痛を診察するにあたり腸管の虚血性病変も念頭に入れるべきだと考えられた.
  • 築野 和男, 渋沢 三喜, 小池 正, 佐藤 任宏, 佐藤 行彦
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2673-2677
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌などによる大腸の閉塞性病変の口側腸管に発生する非特異的潰瘍ないし壊死は閉塞性大腸炎, 壊死性腸炎として知られているが, その成因に関しては十分解明されていない.本症例はバリウムイレウス, イレウス管による減圧治療, といった特殊な状況であるが, 回腸にみられた多発性の潰瘍病変の発生には壊死性腸炎の発生に共通した要因の関与があったものと思われる.また小腸の壊死性腸炎の報告は少ない.バリウムイレウスにたいするイレウス管治療では回盲弁閉鎖不全のある症例にたいし有効で穿孔は予防できるが, バリウム除去に約3週間を要しこのような回腸潰瘍発生の危険があることが示された.
  • 塩田 吉宣, 吉岡 正智, 田中 洋介, 内田 英二, 樋口 勝美, 谷口 善郎, 増森 興治, 山口 裕通, 氏原 康之, 恩田 昌彦
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2678-2682
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は11歳, 男子で突然の腹痛で発症し, 急性腹症の診断にて当科へ紹介された.緊急手術にて, 広範に壊死に陥っている小腸が認められ, 検索の結果小腸間膜裂孔に腸管が複雑に入りこんだために生じた絞扼性イレウスと診断された.腸間膜裂孔は4.0×3.0cmの大きさで回腸末端より約50cmの部位に位置しており, この部位を含め1/2以上の小腸を切除し手術を終了した.約6か月を経過した現在short bowel syndromeなどとくに異常もなく健康な日常生活を送っている.
    腸間膜裂孔ヘルニアはまれな疾患であるが, いったん発症すると絞扼性イレウスの形をとることが多く, 進行は急速でしばしば腸切除が必要とされる.本症例に若干の文献的考察を加え報告する.
  • 青木 久恭, 三浦 誠司, 三重野 寛治, 里井 豊, 武田 義次, 網野 賢次郎, 根本 明久, 堀江 文俊, 四方 淳一
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2683-2686
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化管アミロイドーシスの報告は比較的多いが, 穿孔性腹膜炎をおこした例は少ない.症例は82歳女性で, 腹痛・下血を主訴として来院した.腹部X線撮影で遊離ガスを認め, 穿孔性腹膜炎の診断で開腹したところ回腸の一部に3か所穿孔を認めた.病理組織学的にはアミロイドーシス・AL型であり, 術後の全身的検索により続発性アミロイドーシスが疑われた.本症における腸管穿孔の機序として, 腸管壁の小血管にアミロイドが沈着して局所的に虚血性変化を起こし, また血管の脆弱性も高まっているため, 何らかの刺激により穿孔をきたすことが考えられた.ここに消化管アミロイドーシスの病態と穿孔の機序とを中心に文献的考察を加えて報告する.
  • 福長 徹, 榎本 和夫, 尾崎 正彦, 有我 隆光, 岡住 慎一, 磯野 可一, 植松 貞夫
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2687
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 久保 正二, 木下 博明, 広橋 一裕, 藤尾 長久, 岩佐 隆太郎, 李 光春, 中田 浩二, 田中 宏, 塚本 忠司
    1990 年 23 巻 11 号 p. 2688
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
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