日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
23 巻, 5 号
選択された号の論文の30件中1~30を表示しています
  • 日月 裕司, 渡辺 寛, 加藤 抱一
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1029-1035
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌切除手術297例を対象として, 術後の嚥下性肺炎と反回神経麻痺との関係, 嚥下性肺炎の予防について検討した.19例 (6%) に術後に肺炎を生じた.嚥下性肺炎15例の73%に反回神経麻痺を認めた.気管気管支内の喀痰の貯留が肺炎の原因と考え, 術後は全例に気管支ファイバースコープを用いて気管気管支内の吸引を行った.また, 13例に肺炎の予防のために気管内に細径チューブを穿刺挿入した.さらに, 反回神経麻痺を嚥下性肺炎の誘因と考え, 気管支ファイバースコープを用いた声帯内注入を16例に行い, 5例は術後7日以内に行った.嚥下性肺炎の発生および進行の予防に, 気管支ファイバースコープを用いた気管気管支内吸引, 気管内細径チューブの挿入, さらに反回神経麻痺を伴う場合には術後早期の声帯内注入が有効と考えられた.
  • 種村 廣巳, 佐治 重豊, 田中 千凱, 伊藤 隆夫, 大下 裕夫, 深田 代造, 古田 智彦, 東 修次, 宮 喜一, 国枝 克行, 鷹尾 ...
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1036-1043
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去12年間に経験した胃癌手術総数1,651例のうち同時性肝転移を有する127例につき肝合併切除の意義, 原発巣切除の適応限界, 術後補助化学療法の効果を検討した.その結果,(1) 肝合併切除13例はすべてH1で, 生存率 (1生76.9%, 2生53.8%, 3生28.9%) は, ほぼ同等の背景因子を有するH1胃切単独例に比べ有意 (p<0.05) に良好であった.また13例中3例は3年以上の長期生存例で, 最長生存例は4年7か月現在生存中である.(2) 肝転移例に対する原発単切除 (減量手術) の効果はH1P3あるいはH2-3P2以上の症例では期待困難と思われた.(3) 肝転移に対する全身化学療法あるいは動注化学療法は, 減量手術施行症例では有効であったが, 非切除例では有効でなかった.また全身化学療法施行例と動注化学療法施行例との間に生存率に差はみられなかった.
  • 山本 裕司, 天野 富薫, 今田 敏夫, 赤池 信, 田村 聡, 野口 芳一, 青山 法夫, 安部 雅夫, 円谷 彰, 利野 靖, 松本 昭 ...
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1044-1050
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去12年間に切除した肝転移胃癌症例13例と肝再発例8例の原発巣の核DNAヒストグラムから肝転移をきたす胃癌の特性を検討した.
    DNA ploidy patternは肝転移例は全例aneuploidで, 肝再発例は75%がaneuploidであった.Heterogeneity index score (HIS) は原発巣で, 78.62±36.21で正常粘膜の31.07±25.46と比較して高値 (p<0.01) であった.静脈侵襲陽性例のHISは90.31±34.62で, 陰性例の49.81±18.71と比較して高値であったが, 静脈侵襲陽性例で肝再発の見られなかった症例と比較して差は見られなかった.
    また, 肝転移例, 肝再発例では髄様型・中間型増殖を示す症例が多い傾向がみられた.以上から, HISの高い胃癌は静脈侵襲をきたしやすく, 肝転移のrisk factorとなりえるが, 転移形成には増殖様式も関与していることが示唆された.
  • 足立 英輔, 松股 孝, 吉野 一郎, 坂口 正昭, 兼松 隆之, 杉町 圭蔵
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1051-1055
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝切除施行17例を対象とし, 術中吸引血液中のヘマトクリット (Ht) 値から実出血量を算出し, さらに適正輸血量について検討した.17例中11例は原発性肝癌であった.肝硬変は11例に併存していた.平均術中推定出血量は1,480ml, 平均切除肝重量357g, 手術時間290分.吸引血液中のHt値は, 術前Ht値の平均60% (40-72%) であり, 推定出血量の6割が実出血量と考えられた.輸血は術中平均1.5単位, 術後平均0.5単位の濃厚赤血球を用い, 血漿成分輸血は行わなかった.無輸血肝切除は5例であった.術後経過は良好であり, 肝不全や播種性血管内凝固症候群などの合併症は認めなかった.現在のところ輸血後肝炎の発症も認めていない.
  • 花井 拓美, 由良 二郎, 田中 守嗣, 橋本 俊, 保里 恵一, 荻野 憲二, 水野 章
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1056-1061
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔内感染症の合併頻度が高い肝切除例について, 術後感染の予防目的でCefuzonam (CZON) を投与し, その体内動態について検討した.対象は肝硬変例5例, 非肝硬変例6例とした.CZON 1g静注後の1PODの血中, 1, 2, 3PODの尿中および腹水中CZON濃度を検討した.濃度測定はbioassay法によった.成績: 1PODの血中CZON濃度は肝硬変群, 非肝硬変群, それぞれ1時間で平均37.1, 30.2μg/mlのピーク値を示した.尿中濃度は肝硬変群の3PODを除き両群とも各病日, 2時間で平均最高濃度1,980から3,825μg/mlを示し排泄遅延を示した.腹水中濃度は肝硬変群IPOD2時間値においてのみ21.9μg/mlと最高値を示したが, その他の時間帯では大きい変動はみられなかった.両群1, 2, 3PODの8時間値は平均6.3から12.5μg/mlの高い値を示した.肝切除術後本剤1日3gの予防的投与は腹水中へ高濃度に移行し腹腔内感染予防として評価できるものと考えられる.
  • 渡辺 一男, 浅野 武秀, 竜 崇正, 坂本 薫, 藤田 昌宏, 本田 一郎, 渡辺 敏, 川上 義弘
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1062-1070
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌24症例に対して, N-cws/Lipiodol動注免疫療法を試み, その安全性と治療効果を検討した.
    1) 発熱を主とし, 嘔吐, 一過性の血圧低下などあるも, 動脈阻血が無いため胃, 十二指腸潰瘍, 胆嚢炎などの合併症はなく, 特に肝障害を全く残さなかった.
    2) AFPの低下, 画像上での腫瘍陰影の縮小をもたらし, また投与局所に, リンパ球浸潤, 肉芽腫形成などの反応を惹起し, 同時に主腫瘍や門脈腫瘍栓の壊死をきたすなど宿主介在性と考えられる効果を認めた.
    3) 末梢血中のリンパ球サブセットは, 動注加療によりTs低下, Th/Ts比の上昇など, 免疫賦活の側へ変動した.
    以上の結果より本治療方法は安全であり, 投与した局所に十分な効果が期待できるとともに, その作用機序には, 抗腫瘍性に働く免疫の賦活の関与が示唆された.
  • 瀬川 徹, 井沢 邦英, 松元 定次, 浦 一秀, 江藤 敏文, 元島 幸一, 角田 司, 土屋 凉一
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1071-1077
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1970年1月から1988年12月までに経験した原発性肝細胞癌切除例108例の遠隔成績を算出し宿主側, 癌腫側, 治療面からこれらの予後に影響を与える因子を検討した.108例の累積生存率は1生率67%, 3生率30%, 5生率28%であった.宿主側ではclinical stage IとIIの間に累積生存率に有意差を認めた.性別, HBs-Agでは生存率に差がなかった.癌腫側因子のうちstage分類ではIとII, IとIIIの間に有意差を認めたがstage IIとIIIでは差がなかった.腫瘍径では5cm以上で予後が不良であったが, 2cm以下と2~5cmとの間には有意差がなかった.肝内転移と門脈腫瘍栓の有無は予後に影響を与えた.AFP値と被膜浸潤の有無は累積生存率に差がなかった.治療面では術前TAEは予後に影響を与えず, 肝切除術式では肝葉切除例の累積生存率は低かった.肝切離面の癌浸潤の有無により累積生存率に差はなかった.3年以上無再発生存例, 5年以上の長期生存例を検討し, 長期生存の必要条件としてはclinical stage I, 腫瘍径5cm以下, im0-1, vp0-1があげられた.
  • 全国133施設のアンケート調査より
    田島 芳雄, 手塚 幹雄, 矢尾板 勤, 門脇 淳, 小暮 洋暉
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1078-1085
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    第17回日本胆道外科研究会において, 胃切除後の合併症の1つとして近年注目されている胃切除後胆石症を取り上げ, アンケート調査を行った.胃切除後胆石症の総症例数は3,179例で, このうち手術を受けた症例は2,479例であった.経過観察や保存的治療を受けている症例も多く, 無症状胆石が多いことが推測された.胃切除の対象となった原疾患別では胃癌が最も多く, また再建術式別ではBillroth-I法とBillroth-II法が多かった.胆石の種類 (肉眼的分類) では, ビリルビソカルシウム石, 黒色石などの色素胆石が多く, 総胆管あるいは肝内胆石の頻度が高かった.また, 胆汁からは高率に細菌が検出された.胃切除後胆石症の主な成因としては, 胆嚢収縮能の低下, 胆汁うっ滞, 迷走神経切離の順に, 関連ありとする意見が多かった.
  • 及川 郁雄, 平田 公一, 早坂 滉
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1086-1093
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵切除後残存膵組織の再生に対するcaerulein (CA), hydrocortisone (HC) およびFOY-305 (FOY) の単独あるいは併用効果についてラットを用いて検討した.Sham群および90%膵切除群を作製し, CA, HC, FOYの単独投与およびCAとHCあるいはHCとFOYを併用投与した群について, おのおの8匹のラットを用い, 体重, 膵重量, 組織アミラーゼ活性, 組織蛋白量, 組織DNA量を検討した.
    その結果, sham群ではCAによる影響が著明で, 各併用投与群では全ての検討因子について, 各薬物の単独投与に比較し, 相乗的効果を得た.膵切除群ではHCによる影響が著明で, sham群と同様に, 各併用投与群では各薬物の単独投与群に比較し, すべての検討因子で相乗的効果を得た.以上より, CA, HC, FOYを併用投与した場合, 少量投与でも膵切除後残存組織の再生に対し十分な効果があることがわかった.
  • gastrin迅速測定法
    服部 泰章, 今村 正之, 戸部 隆吉
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1094-1101
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Gastrinのradioimmunoassayにおいて抗gastrin抗体の反応条件を工夫することによってインキュベーション時間を大幅に短縮し1時間余りで結果を得ることができた.本法の測定感度は20pg/mlで, assay内変動係数は4.8±2.4%, assay間変動係数は3.8±1.0%と再現性は良好であった.また通常の測定法とはy=-26.97+1.052X, r=0.994ときわめて良好な相関を示した.Zollinger-Ellison症候群3例の手術中にsecretin静注試験をおこないこの迅速測定法によってその陰性化を判定した.その結果手術中にgastrinomaの完全摘出を確認することができ有用であった.今後の課題として低濃度域の感度の改善が必要と思われた.
  • 渡部 洋三, 津村 秀憲, 中川 敏行, 桜井 秀樹, 佐々木 浩, 飯塚 康彦, 森本 俊雄, 巾 尊宣, 能美 明夫, 小野 精一, 榊 ...
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1102-1108
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれは慢性膵炎2例, 膵・十二指腸腫瘍5例 (悪性腫瘍3例, 良性腫瘍2例) に対して選択的近位迷走神経切離術 (selective proximal vagotomy: SPV) 兼全胃温存膵十二指腸切除術を行った. 切除範囲は, 幽門輪より1cm近側から十二指腸の80~90%である. SPVは型のごとく行うが, これによって胃上部小轡側は血行が遮断されるので, 左胃動脈は温存し, 右胃大網動脈はその根部で切離した. 再建はChild変法を6例に, 今永変法を1例に施行した. 本術式は胃十二指腸球部温存膵十二指腸切除術と比べて, 悪性腫瘍に対する手術適応が広く, リンパ節郭清は第二群まで可能である. 胃管抜去の時期は平均4.6日で, 術後早期の胃内容排出障害は見られなかった. 食餌摂取量は多く, 体重の回復も良好であった. 術後の胃酸分泌能は, 基礎酸分泌量および最高酸分泌量ともに著明に減少し24時間胃内pH測定でpH3以上のholding timeは, 平均89%と術前よりも高値であった.
  • 琴浦 義尚, 石川 羊男, 芦田 寛, 橋本 直樹, 高橋 徳, 西岡 昭彦, 福田 正春, 高木 一光, 宇都宮 譲二
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1109-1115
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    27例の乳頭部癌症例を対象にstage分類, 予後因子と術前の主症状, 腫瘍の肉眼型, 直接胆道造影像, 低緊張性十二指腸造影像を, retrospectiveに対比し, 術前進展度判定の可能性を検討した.
    (1) 主症状の黄疸, 発熱, 疼痛のうち発熱, 疼痛に関しては差がみられなかったが, 一応ビリルビン値10mg/dlがstage I, IIとIII, IVを分ける境界値と思われた.
    (2) 肉眼型の検討では腫瘤型にstage I, IIを多く認めたが, 正確な進展度診断は不可能と思われた.
    (3) 胆管末端像, 低緊張性十二指腸造影それぞれの診断では限界があったが, 両者を組み合せた同時解析により, 27例中22例 (81%) にstage I, IIとIII, IV間での進展度判定, 分離が可能であり, 乳頭部癌の術式選択に有用と思われた.
  • 池永 誠, 大島 行彦, 清水 正夫, 後藤 紀夫, 渡辺 龍彦, 吉田 勝明, 宮内 邦浩, 中村 秀夫, 朝長 哲弥, 比企 能樹
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1116-1120
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸穿孔21例を対象とし, 穿孔部位, 原因, 臨床症状, 手術時期, 手術術式, 術後経過より検討した. これは虫垂炎を除く消化管穿孔例97例の21.6%, 大腸手術例173例の12.1%にあたった. 大腸穿孔の確定診断は, 遊離ガス像の出現率が33.3%と低い事もあり必ずしも容易ではないが, われわれは発症6時間以内に11例 (52.4%) と早期に手術を施行し全例救命しえた. 大腸癌穿孔は8例にみられ大腸癌手術の6.1%にあたり, 全例に治癒切除を施行した. 累積生存率はKaplan-Meier法にて2年生存率100%, 5年生存率75.0%であった. 同期間の全大腸癌例の5年生存率は65.1%, 治癒切除例の5年生存率は79.8%であり, 穿孔例, 非穿孔例の間に差異は認められなかった. 穿孔例といえども癌に対する積極的な治療を行うべきと考えられた.
  • 児玉 節, 沖田 光昭, 竹末 芳生, 藤本 三喜夫, 瀬分 均, 村上 義昭, 今村 裕司, 津村 裕昭, 宮本 勝也, 松浦 雄一郎, ...
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1121-1129
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    手術侵襲が非特異的生体防御能に及ぼす影響を検討するため, 胆石, 胃癌, 大腸癌の93例を対象に顆粒球機能, 急性相蛋白を手術侵襲を起点に経日的に測定した. どの疾患でも手術侵襲に対し, 術後早期には顆粒球機能は亢進し, その後正常化, 急性相蛋白は低下後, 増加という変動を示した. しかし疾患群間で変動幅に有意を認めた. 胆石では, 顆粒球機能の亢進および急性相蛋白の低下は軽度で術後3-5日で術前値に復帰した. 胃癌, 大腸癌では顆粒球機能の亢進は術前値比2-3倍, 急性相蛋白の低下も0.7-0.8と高度で, 術前値への復帰も胆石に比べ時間を要した. 手術侵襲が大きくなるほど, 顆粒球機能は亢進するのに反し, 顆粒球の障害性を抑制したり, オプソニン作用を有する急性相蛋白は低下した. それゆえ手術侵襲が大きくなるほど臓器障害が引き起されやすいことが示唆された.
  • 横田 昌明, 飯田 修平, 戸嶋 暢之, 宇山 一朗, 渡辺 真純, 五味 清英
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1130-1134
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    憩室を伴う成人の食道気管支瘻で, 成因, 発症においてきわめて示唆に富む1例を経験した. 症例は68歳男性, 中部食道右壁に2個の憩室を認める. 肛側憩室より毛髪様に伸びる狭小な瘻管が, 4年間のうちにより太く拡張し, 右B7区域枝との交通が確認される過程を偶然追跡した. 外科的に瘻管を切除し治癒せしめたが, Brunner, 唐沢の診断基準より先天性のものと考えた. さらに, 術中口側の憩室より肺実質に向かう索状物を認めたが, このような索状物が気道に開存して瘻管となった例, 2個の憩室から異時性に食道気管支瘻を認めた症例が報告されており, 先天性食道気管支瘻の潜在的な病態ではないかと考えた. 加齢に伴う組織の弾力性の消失に喫煙, 飲酒, 上気道感染など外的要因が加わり, 瘻管壁を押し拡げようと働く力が増大した結果, ある時期を境に発症, 増悪してくるものと思われる.
  • 中川 明彦, 平松 義文, 小島 善詞, 真田 俊明, 山中 英治, 川口 雄才, 日置 紘士郎, 山本 政勝, 赤枝 民世
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1135-1138
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内臓悪性腫瘍に随伴してみられる皮膚病変は, 皮膚悪性腫瘍症候群または腫瘍随伴性皮膚病変とよぼれている.このカテゴリーに属する皮膚病変は多彩な病変が知られているが, 内臓悪性腫瘍と同時か, あるいはそれに近い時期に発症し, 悪性腫瘍の経過と並行して変化するのを特徴とするが, その病因は必ずしも明瞭ではない.今回, われわれは上記特徴を有する多形慢性痒疹を合併した食道癌の1例を経験した.症例は69歳女性で, 食道癌の臨床症状が出現した時期に一致して, 皮疹の程度が増強し, 手術とともに皮疹が消退し, 食道病変と皮膚病変とが極めてよく相関を示した.
    本症例に見みられたparaneoplastic dermatosesとしての多形慢性痒疹の報告はわれわれが検索しえた範囲では第1例目のものである.
  • 山本 明, 藤村 昌樹, 平野 正満, 大嶋 眞一, 山本 育男, 松原 聡, 森 渥視, 田中 久富
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1139-1143
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今日までに数十例の報告を数えるにすぎないemphysematous gastritisの2例を経験した.
    症例1は自殺目的で60%硝酸を服用した.第17病日, 出血をともなう穿孔性腹膜炎により緊急手術が施行された.Retrospectiveには第6病日の腹部単純X線写真で気泡状, 線状の胃壁内ガス像が読影できた.症例2は乳頭部癌のため膵頭十二指腸切除術が施行された.18日目膵空腸吻合部近傍のドレーンからの出血と吐血を認めた.25日目の腹部CTで残胃, 残膵の陰影は消失し, 脾臓内にガス像力が見られ, 緊急開腹された.Retrospectiveには術後21日目の腹部単純X線写真で食物残渣様の胃壁内ガス像の存在を読影できた.
    胃壁内ガス像は循環障害や腐食剤による壊死部への感染に起因するといわれている.自験例では胃壁内ガス像が胃壊死や穿孔性腹膜炎の臨床症状発現より早期に認められた.本症の存在が念頭にあれば, 早期診断が得られ, 死亡や重篤化を避けえたと思われる.
  • 佐藤 太一郎, 七野 滋彦, 秋田 幸彦, 河村 健雄, 水野 伸一, 鵜飼 克行, 太田 淳, 森岡 淳
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1144-1148
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    転移性脊髄硬膜外腫瘍はまれである.とくに, 胃癌から脊髄硬膜外へ転移することは余り知られていない.われわれはそのような症例を経験したので, 報告し, 本邦における報告例を検討した.
    58歳, 男.1988年9月, 不定な腰痛, 右下肢痛, および軽度な排尿障害で発症した.この時の単純X線写真では強直性脊椎炎が認められた.脊髄造影では腰部におけるブロックは見られなかった.
    1989年1月, 腰痛は持続的になり, 下肢脱力が起こった.脊髄造影ではL3でブロックが認められた.転移性腫瘍が考えられたので, 検査の結果, 胃癌が発見された.しかし, 両下肢の麻痺が進行したので緊急椎弓切除を行った.術後5か月間, 生存した.
    わが国において胃癌からの転移性脊髄硬膜外腫瘍は4例が報告されている.術前に胃癌が診断された症例はなく, 原発の胃癌に対する根治術が行われた症例は無かった.
  • 橋本 俊, 由良 二郎, 清水 保延, 鈴木 達也, 石川 雅一, 水野 章
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1149-1153
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    血友病Aを有する15歳の男児に腹部鈍的外傷後に発症した十二指腸壁内血腫の1例を経験し, 増悪する腹部所見と進行する貧血および腹部CT所見より開腹術を施行した.病変部は十二指腸ほぼ全体に及ぶ巨大な血腫で後腹膜および腹腔内に穿破していた.穿孔の危険もあり病変部を切除し, かつ生理的な状態に再建するために幽門および十二指腸乳頭を温存した十二指腸亜全摘術を施行した.再建は空腸の断端を後結腸性に挙上し十二指腸球部と端々吻合し, この空腸に縦切開を加え温存した乳頭部を端側に吻合した.術後十二指腸空腸吻合部のビランからの出血をみたが造影所見からは幽門機能はよく保たれており, この術式は今後, 十二指腸の良性疾患に有用と考えられた.
  • 武田 智博, 田中 聰, 山本 眞也, 前場 隆志
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1154-1158
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸憩室の穿孔は井常にまれであり, 術前確定診断が困難な場合が多い.われわれは右上腹部痛を主訴とする77歳の女性に対し, 急性胆嚢炎の診断で緊急開腹術を施行し, 十二指腸下降脚内側壁の穿孔と, 膵頭部背側の後腹膜膿瘍ならびに周辺部の胆汁性蜂窩織炎を認め, 局所十二指腸壁の高度の炎症所見から, 穿孔部の縫合閉鎖は行わず, 膿瘍腔のドレナージに, Billroth II法による幽門側胃切除およびTチューブによる胆管ドレナージを併施し, intravenous hyperalimentation (IVH) による術後栄養管理を行って治癒せしめ得た.本症例では, 既往の上部消化管造影像の術後の検索で, 十二指腸憩室が認められ, その穿孔によるものであることが判明したが, 術前のcomputed tomography (CT) 像における膵頭部後方の低濃度域の見落としと, 腹部単純撮影における後腹膜ガス像の誤認の反省ととも, それらの診断上の重要性を強調した.
  • 川北 直人, 裏川 公章, 中本 光春, 山口 俊昌, 田中 宏明, 磯 篤典, 西尾 幸男, 植松 清, 岩越 一彦
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1159-1163
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当科にて経験した急性腸間膜動脈閉塞症7例を対象とし, 臨床的特徴, 予後に影響する因子などについて検討した.平均年齢は68.3歳, 全例に循環器系疾患などの併存を認めた.アシドーシスを5例 (71.2%), 白血球増多を4例 (57.1%) に認めた.全例に小腸広範囲切除を施行し, 4例 (57.1%) が直死した.直死例の平均年齢は75.8歳と高く, また発症より手術までの平均時間は78時間で, 生存例の16時間に比べて長い傾向を示した.白血球増多例の75.0%が直死したのに対して, 白血球正常例の直死は33.3%のみであった.直死4例のうち3例は, 術後再度の血行障害によると思われる縫合不全や消化管穿孔を契機として死亡した.本症の予後を向上させるためには, 術後の腸管壊死を避けるために種極的な腸切除が必要であるが, それ以前に血管造影などを駆使した早期診断が重要と思われた.
  • 落合 匠, 榊原 宣, 東 昇, 中川 浩之
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1164-1167
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆道には走行異常が多いことが知られている.その一つに肝管走行異常 (副肝管) がある.今回, 比較的まれな肝管走行異常の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.
    症例は38歳女性, 昭和64年1月2日右季肋部痛出現, 他院にて鎮痛剤を投与されるも1月6日再び同部位に疼痛出現し当科へ緊急入院となった.腹部超音波検査にて胆嚢内に多数のstrong ehhoが認められ胆石症と診断した.内視鏡的逆行性胆道・膵管造影検査にて胆嚢管が副肝管に開口する肝管走行異常が認められた.手術は, まず胆嚢底部より胆嚢を剥離し, 最後に胆嚢管を切離する方法を行った.術中胆道造影にて副肝管の損傷がないことを確認後, 総胆管切開切石ドレナージ術を加えた.
    経験した肝管走行異常は, 宮川の分類ではType IIに属する比較的まれなものであった.
  • 肝切除例2例の検討
    三好 康雄, 佐々木 洋, 今岡 真義, 柴田 高, 安田 直史, 和田 尚, 永野 浩昭, 石川 治, 古河 洋, 岩永 剛
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1168-1172
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 肝静脈内腫瘍栓を有する肝細胞癌2症例に対し, 術前に経動脈的lipiodol transcatheter arterial chemoembolization (LPD-TAE) を施行し, 切除標本にてその効果を組織学的に検討した.その結果, 症例1においてはLPD-TAEは著効を奏し, 腫瘍栓は完全壊死に陥っていたが, 症例2では大部分においてviable (腫瘍細胞が生存可能でかつ増殖しうると判断される状態) であった.両者の差は以下の点であった.1.組織像において症例1は比較的分化度が高く, 充実性に増殖していたのに対し, 症例2では異型度が強く, 豊富な血洞 (類洞様血液腔) を有していた.2.血管造影像では, 症例2においてのみthread and streaks signが認められた.以上より, 血管造影時, thread and streaks signが存在すれば, LPD-TAEの効果が低いこともありうるので, 治療効果を推測する際に考慮すべきであると考えられた.
  • 赤松 大樹, 中島 邦也, 松田 康雄, 藤川 正博, 位藤 俊一, 久米 庸一, 伊豆蔵 豊大
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1173-1177
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    特発性内胆汁瘻は全胆道系手術症例の1~5%を占めるまれな疾患である.今回術前に診断し得た総胆管十二指腸瘻の1例を経験したので報告した.患者は54歳の女性.上腹部痛と発熱を主訴として来院し, 上部消化管造影, 内視鏡的逆行性胆管造影 (以下ERCP) により診断した.総胆管と十二指腸球部の間に瘻孔を認め, 胆嚢摘出術, 瘻孔切離術およびT管ドレナージを行った.術後軽度の肝機能異常が出現したが徐々に軽快し術後2か月で退院した.
    次に1979~1988年の10年間に本邦で報告された総胆管十二指腸瘻95例に自験例1例をあわせ, その臨床像, 診断, 治療について若干の検討を加えた.臨床症状では腹痛, 発熱, 黄疸の順に多く, 本症に特異的な症状は認められなかった.診断法としてはERCPが有効であり, 同検査法の普及による本症特に傍乳頭部総胆管十二指腸瘻の診断率の向上が認められた.
  • 塩貝 陽而, 松田 孝一, 阿部 元, 小玉 正智
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1178-1181
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    インスリン非依存型糖尿病の既往歴を有する63歳男性の急性閉塞性化膿性胆管炎術後に非ケトン性高浸透圧性昏睡が発症した.いずれも重篤な疾患であるが治癒させえた.臨床経過は, 胆石による化膿性胆管炎術後4日目に顔面筋痙攣を初発症状として発症し, 翌日に四肢の痙攣と意識障害が生じ, 翌々日には昏睡となった.昏睡時の血糖値1,550mg/dL, 血清浸透圧406mOsm/L, ケトン体陰性などの所見より非ケトン性高浸透圧性昏睡と診断した.本症昏睡の誘因はインスリン非依存型糖尿病の基礎疾患, 重症感染症, 手術侵襲, 中心静脈栄養, 肝障害および高齢などである.本昏睡は元来, 内科領域の疾患であるが, 糖尿病患者の増加とtotal parenteral nutrition (TPN) の普及などに伴って外科患者における本昏睡の発症が増加しており, 外科医も本疾患に精通している必要がある.
  • 草野 敏臣, 古川 正人, 中田 俊則, 林 誰欽, 田代 和則, 渡部 誠一郎, 糸瀬 薫, 城野 英利, 江藤 敏文, 角田 司, 土屋 ...
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1182-1185
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    多中心性乳頭状胆管癌の切除例を経験したので胆管多発癌の外科的治療, 特に胆管切除範囲を中心に報告する.
    症例は67歳の男性で発熱を伴う上腹部痛にて発症した.経皮胆道ドレナージ後, 術前画像診断より肝門部を中心とした多発胆管癌と診断し, 肝拡大右葉切除兼尾状葉切除術 (胆嚢・総胆管切除), 左肝管空腸吻合術 (Roux-en-Y) を施行した.
    切除標本の肉眼所見は下部胆管より左肝管起始部, 右肝内胆管を中心として乳頭状腫瘤が散在し, 組織学的には乳頭腺癌であった.
    本症における癌遺残防止のため, 多発病巣の検索と切除範囲の決定において高周波数探触子による術中超音波検査が有用であった.
    また自験例では第2群リンパ節に転移を認め, 十分なリンパ節郭清の必要性が示唆された.
  • 岩瀬 弘敬, 呉山 泰進, 桐山 昌伸, 伊藤 由加志, 古田 吉行
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1186-1190
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵癌に破骨細胞類似の巨細胞 (osteoclast-likegiant cell) を伴った, きわめてまれな1例を経験した.
    症例は54歳の男性で心窩部痛と黄疸を主訴に来院し, 逆行性胆管膵管造影で肝内胆管および総胆管結石症と診断された.手術時, 総胆管内は凝血塊で充満し, 肝十二指腸間膜, 胆嚢頸部には腫瘍浸潤が認められ, 胆嚢摘出術と外胆道瘻造設術が行われた.腫瘍浸潤部の生検では破骨細胞類似の巨細胞を伴う腺癌が存在した.患者は術後1か月で肝不全により死亡し, 剖検で膵頭部に同様の巨細胞をもつ鶏卵大の腫瘍が認められた.
    本例のような膵癌は巨細胞を含む多形細胞癌とは別に取り扱われており, しばしば強い局所浸潤を示すと報告されている.しかし巨細胞自体の組織由来については意見が分かれ, 最近では破骨細胞類似にもかかわらず, 電顕や免疫組織化学で上皮性とする意見が多い.
  • 湯浅 典博, 二村 雄次, 早川 直和, 神谷 順一, 前田 正司, 岡本 勝司, 塩野谷 恵彦
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1191-1195
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術18か月後に膵頭部転移をきたした1例を報告した.症例は57歳男性.臨床的に膵の他に骨盤内に胡桃大の再発を認めたが, 肺, 肝, 骨には転移を認めなかった.膵頭部主膵管に狭窄があり, 内視鏡的膵管生検で直腸癌膵転移と術前診断でき, 膵頭十二指腸切除, 上腸間膜静脈合併切除を施行した.腫瘍は60×50mmの大きさで膵頭周囲リンパ節転移, 上腸間膜静脈腫瘍栓, 膵管内発育を伴っていた.骨盤内再発巣は高度の腹腔内癒着のため切除不能であり, 放射線療法, 抗癌剤動注化学療法を施行した.限局した転移巣であれば膵転移といえども切除の適応があると考えられた.
  • 山崎 真一, 森本 重利, 露口 勝, 田中 直臣, 惣中 康秀, 坂東 儀昭, 森住 啓
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1196-1199
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 女性.肛門からの腸管脱出を主訴として来院.肛門から約10cmの腸管の脱出を認め, その脱出腸管の先端部に4×4cmの硬い, 不整な腫瘤を認めた.肛門縁からの指診では, 示指は脱出腸管の肛門縁との間に全周性に挿入可能であり盲端は触れなかった.以上の所見から腫瘤を先進部としたS状結腸の脱出と診断, 低位前方切除術を施行した.腫瘤の組織学的診断は, LSG分類でdiffusemedium sized cell typeであった.
    大腸悪性リンパ腫が腸重積をしばしば合併することは知られているが, その先進部が肛門から脱出した症例はきわめてまれであり, 海外に1報告例をみるのみである.
  • 平野 鉄也, 真辺 忠夫, 戸部 隆吉
    1990 年 23 巻 5 号 p. 1200
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
feedback
Top