日本消化器外科学会雑誌
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23 巻, 9 号
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  • 水本 龍二
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2175-2184
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    私がChildのcriteriaを用いて硬変肝ではその切除限界に大きな制約があることを示して以来, 既に約20年を経ているが, 今回三重大学着任後約13年間に経験した肝臓外科症例469例の臨床成績に基づいて肝臓外科における手術危険度の判定法や手術適応の拡大について検討して報告した.1) 肝切除限界: 肝機能面からは教室の総合的risk4, 残存肝Rmax0.2~0.4が限界であった.この他, 活動性肝炎の所見やHBV感染, 凝固線溶系機能異常, 栄養状態, 肝循環動態や心肺腎機能の変化なども考慮する必要がある.2) risk不良例の対策と切除成績: (1) 高度凝固線溶系機能異常に対する部分的脾動脈塞栓術,(2) 術前術後の積極的栄養管理とBCAAの投与,(3) PGE1の投与による肝血流の維持などとともに術前術後に亘る慎重な集中管理を行うことによってcritical levelの症例であっても良好な長期予後を得ることができる.さらに手術適応の拡大に関する新しい試みについても紹介した.
  • 出口 浩之, 多淵 芳樹, 今西 築, 斎藤 洋一
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2185-2190
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    免疫組織化学的にcarcinoembryonic antigen (以下CEAと略) の局在を確認した胃癌切除39例を対象として, 腫瘍還流静脈血中CEA値 (dCEA) ならびに還流血と末梢血とのCEA較差 (d-pCEA較差) と術後患者の転帰との関連を検討した.dCEAの平均値と5ng/ml以上の陽性率は生存26例では17ng/ml・39%, 癌死13例では227ng/ml・77%であり, 死亡例は生存例に比べ陽性率は高い傾向にあり, 平均値は有意に高値を示した.死亡例のd-pCEA較差の平均値199ng/mlは生存例の15ng/mlよりも有意に高値であった.dCEA陽性20例の生存率曲線は陰性19例よりも有意に不良で, 3年生存率は前者45%・後老78%であった.また, d-pCEA較差5ng/ml以上を示す16例の生存率曲線はそれ未満の23例よりも有意に不良で, 3年生存率は前者50%・後者69%であった.これらの結果は, dCEA定量が胃癌患者の予後の推定に有用であり, dCEAおよびd-pCEA較差が5ng/ml以上の症例は予後不良例として臨床的に対処する必要があると考えられる.
  • 笹子 三津留, 木下 平, 丸山 圭一, 岡林 謙蔵, 田尻 久雄, 吉田 茂昭, 山口 肇, 斉藤 大三, 小黒 八七郎, 石川 勉, 松 ...
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2191-2195
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    リンバ節転移の無い早期胃癌を特定化し局所切除をすればリンパ節郭清をともなった手術と同等の治療成績を挙げることが期待される.1962年から1985年までに国立がんセンター病院で切除された単発早期胃癌1,440例のリンパ節転移についての検討より, リンパ節転移を否定しうる病変は, IIb, 2.0cm以下の潰瘍性変化の無いIIc, 2.0cm以下のIIa, 腺腫内癌であった.そこで安全誤差をいれて,(1) 1.5cm以下のIIa,(2) 1.5cm以下の胃炎類似型IIcまたはIIb,(3) 腺腫内癌の3つを局所治療の適応とした.切除標本の組織学的検索結果により完全切除は厳重な経過観察, 粘膜内断端陽性は外科的局所切除, 粘膜下層浸潤もしくは脈管浸潤例はR1以上の胃切除を行うという治療体系を作った.現在までの11例中8例は局所切除のみで, 3例では外科的切除が追加された.この治療体系は癌が根治する可能性を下げることなく局所切除を行える優れた治療体系である.
  • 木村 修, 倉吉 和夫, 森脇 誠司, 米川 正夫, 太田 道雄, 水沢 清昭, 牧野 正人, 西土井 英昭, 貝原 信明
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2196-2201
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    早期胃癌再発例13例, 非再発例41例を対象に原発巣の核DNA量を測定し, 深達度, 肉眼型, 組織型, リンパ節転移の有無別に比較検討を行った.
    再発例の癌腫では54%にhigh ploidyが認められ, 非再発例に比べて多い傾向にあった.また, 従来, 早期胃癌の中で再発が高率と考えられているsm癌, 隆起+陥凹型, 分化型腺癌, リンパ節転移陽性例においても, 再発例には非再発例に比べてhigh ploidyを示す癌腫が高率に認められた.
    このため, 早期胃癌の中でもhigh ploidyを示すものでは再発は念頭においた広範なリンパ節郭清と術後の化学療法が必要であり, また, 深達度mでlow ploidyを示す症例では, リンパ節転移や術後再発が少ないことから, 縮小手術も可能であると考えられた.
  • 手塚 秀夫, 鈴木 博孝, 喜多村 陽一, 笹川 剛, 竹内 成子, 平塚 卓, 田中 孝幸, 山本 清孝, 吉田 裕
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2202-2208
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    切除早期胃癌1662例の再発42例 (再発死亡率2.5%) を検討し, 以下の知見を得た.(1) 再発死亡率は粘膜下層癌 (以下sm癌) 3.9%が粘膜癌 (以下m癌) 1.3%より高かった.(2) 再発形式は血行性再発が43.8%, 特に肝転移が多く, 次にリンパ行性再発28.1%であった.(3) 再発時期は5年末満73, 9%で, 血行性再発の60.0%が3年未満であった.5年以上は26.1%で, 局所再発が特徴であった.(4) 再発例は脈管侵襲例 (41.7%), リンパ節転移陽性例 (38.9%) に多く, 非再発例に比べ有意に高かった.(5) sm層への浸潤様式はリンパ管侵襲型が多く (28.6%), 高分化型はリンパ管侵襲型に次ぎ静脈侵襲型で, 再発形式とsm層への浸潤様式には関係があった.(6) R2以上の郭清はR0-1に比べ再発率は3.3%が2.2%に減少するが, 血行性再発には関係がなかった.
  • 藤本 茂, セレスタ RD, 国分 和司, 小林 国力, 木内 宗三郎, 金野 千行, 高橋 誠, 太田 正保, 小池 正造, 奥井 勝二, ...
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2209-2214
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹膜播種および漿膜浸潤陽性進行胃癌31例にMMCを使用した腹腔内温熱灌流 (IPHP) を手術と併用して行い, 同一期間内にほぼ同じ背景因子を有し手術のみを行った胃癌30例 (対照群) の臨床成績と比較検討した.IPHP群31例の生存率は対照群に対してp=1.46×10-4において有意に優れており, その1生率81.9%, 2生率52.1%, 3生率26.1%に対して, 対照群のそれはそれぞれ40.3%, 11.8%, 0%であった.腹膜播種を有するIPHP施行21例と対照9例の生存率は, p=2.37×10-5においてIPHP群が優れている.漿膜浸潤陽性のIPHP施行胃癌10例と対照群21例の生存率は, 前者がp=0.0153において有意に上昇した.両群の治療成績を死因により検討すると, IPHP群中腹膜再発による死亡2例に対して, 対照群30例中19例が腹膜再発により死亡し, p=2.27×10-6をもって対照群の腹膜再発の頻度が高かった.以上よりIPHPは腹膜播種および漿膜浸潤を有する進行胃癌症例に対して有効な治療である.
  • 北村 正次, 荒井 邦佳, 宮下 薫, 神前 五郎, 井深 多鶴子
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2215-2220
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当院で経験した胃悪性リンパ腫27例を治癒切除群 (20例) と非治癒切除群 (7例) に分け, これらの外科的治療成績ならびに本症に対する治療方針について検討した.治癒切除例の5年生存率は78.4%と比較的良好であったが, 非治癒切除例では35.7%と不良であった.治癒切除群におけるリンパ節転移の有無と生存率との関係をみると他病死3例を除いたn (+) 10例の5年生存率は89.5%, n (-) 7例のそれは84.6%と大きな差を認めなかった.一方, S3症例5例のうち, 合併切除することにより2例が10年以上生存した.これらの成績は, 胃癌と同様に, 治癒切除となるような十分な郭清術式とS3症例には積極的な合併切除を行うことにより良好な成績を得ることが可能であることを示している.また術後には集学的治療の一つとして適切な化学療法を施行することが予後向上に重要な因子であると考えられた.
  • 吉川 時弘, 北村 正次, 荒井 邦佳
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2221-2226
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    早期癌と術前診断された進行胃癌症例 (類早進癌) 87例の臨床病理学的検討を行い, 類早進癌の存在により生ずる, 早期胃癌に対する縮小手術の適応の問題点を中心に再検討した.
    類早進癌の術前肉眼型は陥凹型, 組織型は低分化型癌の症例が多かった.類早進癌の半数は組織学的に初めて進行癌と診断されたが, これら症例では深達度がpm, ss, リンパ節転移はn (-) またはn1(+) にとどまる例が多く, その予後は早期胃癌に準じ良好であった.
    とくに分化型癌で術前m癌と診断された症例は, 進行癌であってもリンパ節転移が低率であった.したがって, 早期胃癌の縮小手術の適応を, 術前診断上, 分化型m癌と限定した場合, 類早進癌の存在により, 手術の根治性が損なわれる確率はきわめて低く, 適応症例に対する縮小手術の合理性を裏付ける結果が得られた.
  • 松本 尚, 米村 豊, 津川 浩一郎, 木村 寛伸, 大山 繁和, 鎌田 徹, 竹川 茂, 小坂 健夫, 山口 明夫, 三輪 晃一, 宮崎 ...
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2227-2231
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    進行胃癌57例の原発巣および転移巣のDNA index (DI) をflow cytometerを用いて決定し, 胃癌におけるDIの多様性 (heterogeneity) の有無に関して検討した.原発巣内の数か所を検索したところ, 36例 (63%) に原発腫瘍内のDIの多様性を認めた.また原発巣と肝転移巣のDIを比較すると, 原発巣内のstemlineのうちDIの大きなものが肝転移巣内に認められる傾向にあった (10例中7例).以上より, DNA ploidy patternを用いての予後の推測, 治療法の選択の際にはDIの多様性を十分に考慮する必要があると考えられた.さらに原発巣と転移巣のDIの検討は, 転移のメカニズム, 再発の予測の上で注目される.
  • 水田 哲明, 石原 敬夫, 斎藤 光, 苅込 和裕, 埜口 武夫, 園田 仁志
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2232-2237
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1981~1986年の胃癌胃切除症例110例を対象として, 胃切除後胆石症の頻度および臨床的意義について検討した.対照には同時期の大腸癌切除症例を用いた.(1) 胃切除後2年半~8年半の観察で, 胃切除後胆石症の頻度は31% (34/10) であった.ほとんどが胃切除後4年までに発見された.(2) 胆石は小さく, 多発性で, 音響陰影を認めないものが多かった.(3) 自然消失するものもみられた.(4) 術後胆石症の頻度を術式別にみると, 胃全摘51% (20/39), 胃亜全摘20% (14/71) で, 大腸癌切除後は9% (3/33) であった.胃全摘群と他の2群には有意差がみられたが, 胃亜全摘と大腸癌の間には有意差は認めなかった.(5) リンパ節郭清度の高い症例が胆石発生率が高かった.胆石症は胃全摘の無視しえない合併症の1つであり, 胃切除後胆石症の原因として最も重要なものは迷走神経切離と考えられた.
  • 上辻 章二, 山村 学, 奥田 益司, 山道 啓吾, 山田 修, 箕浦 俊之, 浜田 吉則, 山本 政勝
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2238-2243
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去5年間の当教室における胆石症症例428例中, 胆嚢管が膵上縁より十二指腸壁を貫通するまでの下部胆管と合流する胆嚢管低位合流症例24例を経験した.これらの胆嚢管低位合流症例には種々の病態がみられた.すなわち, Mirizzi syndrome6例, confluence stone2例, 胆嚢癌2例, 先天性胆嚢管拡張症1例であった.胆嚢管低位合流症は解剖学的に, 胆嚢管が長く, 胆汁のうっ滞による胆石形成にMirizzi syndrome, confluence stoneをきたし, また胆嚢癌の発生をきたすものと考えられた.さらに, 胆嚢管合流部と膵管開口部との距離が短かい点より, 胆嚢管内膵液逆流を起こしやすいことが推測され, 膵胆管合流異常症と類似の病態を呈し, 胆嚢管拡張症を合併するものと考えられる.
  • 高森 正人
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2244-2250
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    xanthme oxidaseを阻害しfree radicalsの産生を抑制するallopurinolの投与と灌流の, 小腸の阻血と血流再開後の粘膜障害に対する保護効果を, 主に, イヌの小腸絨毛のNa+-K+ATPase活性の変化から検討し, 次の結論を得た.灌流またはsuperoxide産生阻害剤を投与しなかった群と灌流またはsuperoxide産生阻害剤の投与の単独実施群では, control群より有意 (p<0.05) にNa+-K+ATPase活性は低下した.superoxide産生阻害剤を投与し, 同時に灌流を実施した群ではその低下が有意 (p<0.05) に抑制された.したがって, 小腸の阻血と血流再開後の粘膜障害としてNa+-K+ATPase活性が低下すること, また, その原因としてfreeradicalsが関与し, さらに, superoxide産生阻害剤としてのallopurinolの投与は阻血と血流再開後の小腸粘膜の保護に有効であることを明らかにした.
  • 小田 奈芳紀, 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 横山 正之, 井原 真都, 中山 肇, 白井 芳則, 大森 敏生, 滝口 伸浩, ...
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2251-2255
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移のhigh risk group (高危険度群) を判別するため, 大腸癌症例407例に認められた肝転移症例78例 (同時性51例, 異時性27例) についてその臨床病理学的特徴を検討した.肝転移群の原発巣平均最大径は53.9mmであり, その中でも同時性のものは56.1mmと大きく, 全大腸癌症例の49.3mmに比べて有意に大きかった.占居部位別にみた肝転移率は各部位間に差を認めなかったが, 肉眼型別比較では3型 (40.5%) が2型 (20.7%) に比べ有意に高率であった.病理組織学的検討によると, 組織型では中分化腺癌, 深達度ではs, a2以上, リンパ節転移程度ではn2以上, リンパ管侵襲程度ではly3以上, 静脈侵襲程度ではv2以上の症例に肝転移率が高率で, これらの所見を呈する症例が肝転移high risk groupと考えられた.大腸癌肝転移の予測には, これらの病理学的所見を含めた多因子による総合的判断が重要である.
  • 薄場 彰, 遠藤 豪一, 高原 光則, 又吉 一仁, 大石 明雄, 遠藤 幸男, 井上 仁, 元木 良一
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2256-2263
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    多臓器障害や汎発性血管内凝固症候群の発症と関係深いhypercoagulable stateの病態を検討する目的で, 汎発性腹膜炎や消化管大量出血など緊急手術21例を対象に術前・術後の血小板・凝固・線溶各系の動態を観察した.
    汎発性腹膜炎では術前よりトロンビン作用が亢進し, ショック合併例では術後血小板数が著減したが, 一般に血小板系や線溶系への影響は軽微で, 臓器障害の合併がなければ術後約1週間で回復した.フィブリノペプタイドA, フィブリノゲン, 抗トロンビンIIIの消長が指標となった.消化管大量出血ではショック合併例が多く, トロンビン作用のほかに血小板や線溶作用も著明に亢進し, 出血量と血小板数, プロトロンビン時間活性 (PT) とがそれぞれ負の相関を示した.また高率に臓器障害を合併し回復が遷延した.血小板数, PTの消長が重要で, PTの動向は他に先行した.
  • 田代 和則, 古川 正人, 中田 俊則, 草野 敏臣, 林 也欽, 渡部 誠一郎, 糸瀬 薫, 城野 英利
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2264-2268
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道憩室に生じた癌の報告はまれである.われわれは中部食道憩室にみられた早期食道癌の1例を経験したので報告する.本例は食道憩室内癌本邦報告例の16例目である.
    症例は68歳の男性で胸骨後部痛が持続するため当科に入院した.食道造影では気管分岐部より約4cm肛側のIm右側壁に1.5cm径の憩室があり, この憩室の後壁寄りに径約2cmの周堤様隆起を伴った陥凹を認めた.内視鏡検査にて門歯より約28cmの食道右側壁に憩室があり, 憩室内の口側後壁に不整形の陥凹病変を認め, 表在陥凹型食道癌と診断した.術前照射後, 食道亜全摘術施行.病理診断は低分化型扁平上皮癌で, sm, n (-), M0, Pl0, stage 0で早期癌であった.組織学的に, 憩室をとり囲むように癌が粘膜上皮下, 粘膜筋板, 粘膜下層に増殖し, 食道憩室内よりの発癌と考えられた.
  • 西田 豊, 寺田 信國, 石橋 治昭, 柴田 純祐, 小玉 正智
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2269-2273
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    63歳男性の限局性胃アミロイドーシス1例を経験した.患者は脳外科手術を目的として入院となり, 入院時の腹部単純撮影で左上腹部に石灰化陰影がみられた.胃透視, 内視鏡検査で胃穹隆部にBorrmann3型様の腫瘤を認めたが, 術前の生検では悪性所見は得られなかった.摘出標本の病理組織では粘膜固有層から筋層にかけてEosin好性の均一な物質が存在し, 特殊染色の結果Congored染色陽性, KMnO4処理後のCongored染色で染色性と偏光が保たれたためALアミロイドーシスと診断した.沈着アミロイドの一部にKossa染色陽性の石灰化巣およびわずかな化骨形成がみられた.肝, 直腸, 骨髄にはアミロイド物質や異常細胞を認めず, 尿中Bence-Jones蛋白は陰性で胃に限局したアミロイドーシスと判断した.限局性胃アミロイドーシスはわれわれが調べた限りでは国内外で20例しか報告をみないまれな疾患である.特に石灰化を来たした症例は他に報告をみない.
  • 金子 徹也, 角 賢一, 前田 迪郎, 貝原 信明, 古賀 成昌
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2274-2278
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    62歳の男性, 非切除進行胃癌患者 (Bormann 2 type, N4, S3, H3, P0, poorly differentiated adenocarcinoma) に対し術直後より, Preusserらの方法に準じたEAP療法 (etoposide, adriamycin, cis-platinum) を施行した.原発巣および転移巣の胃X線, 内視鏡およびCT検査にて著明な抗腫瘍効果がえられ, second look operationが可能になった.初回手術より4か月後に再開腹手術が施行され胃切除術, リンパ節郭清および再燃が予想される肝転移巣に対して肝動注用のtube埋め込みを施行した.切除胃および郭清リンパ節の病理組織学的検査ではほとんど癌細胞は証明しえなかった.このEAP療法は, 胃癌に対する術前の化学療法として切除率を改善させるだけではなく, 生存期間をも改善することが期待される.
  • 小熊 信, 大窪 豊, 松浦 真吾, 岩間 憲行
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2279-2283
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    嚢胞内のみに結石を伴ったcholedochoceleの1症例と本邦報告例48例の集計を報告した.症例は59歳の女性で心窩部痛を主訴として来院した.入院時の検査所見より胆管炎が疑われたため手術を施行したところ,術中造影でcholedochoceleであることが判明した.嚢胞は直径約1.5cmで内部には約8mm大のビリルビンカルシュウム石を認め,Scholzの分類ではTypeBに相当するものであった.しかし胆嚢,肝内胆管,総胆管内には結石はみられなかった.本邦報告例48例の集計では嚢腫内のみに結石がみられたのは自験例を含めて3例だけであり,きわめてまれな病態と考えられる.一方,病理組織学的検査では嚢腫壁は十二指腸粘膜からなり,軽度の炎症が認められた.自験例の治療では嚢腫壁切開が行われたが,choledochoceleは他の総胆管拡張症と違い,嚢腫壁の癌化率がきわめて低いことからその治療は嚢腫壁の切開で十分と考えられる.
  • 田中 信孝, 登 政和, 針原 康, 進藤 俊哉, 浅田 学, 鈴木 良夫, 斉木 茂樹
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2284-2288
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    71歳女性で, 膵尾に膵管と交通がなく乳頭状隆起を有する膵嚢胞を認め, その穿刺細胞診でClass 5を得, 更に超音波内視鏡により明瞭に嚢胞に接して頭側に存在する膵腫瘍を描出しえたことより, 膵嚢胞腺癌ないし嚢胞を合併せる膵尾部癌の診断のもと膵体尾部・脾合併切除施行した1例を報告した.病理学的検討により膵尾部腫瘍は乳頭管状腺癌からなる膵管癌であり, 嚢胞は貯留嚢胞で腫瘍が嚢胞壁の一部を構成していることが認められた.部分的ではあるが膵腫瘍自体が随伴せる貯留嚢胞壁を構成していることはまれであり, このような場合膵嚢胞腺癌との鑑別に注意を要するものと考えられた.
  • 住吉 孝雄, 坂田 雅宏, 大加戸 彰彦, 湧谷 純
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2289-2293
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    汎発性腹膜炎のためpreshock状態で来院した11歳の男児に虫垂穿孔性腹膜炎の診断のもとに開腹し, 虫垂穿孔と回盲部, ダグラス窩の膿瘍形成, さらに左上腹部に多量の黄色混濁した胆汁様液を貯留する腔の形成を認めた.虫垂切除術とドレーン挿入術を施行した.術後1日目, 左上腹部へ挿入したドレーンから多量の胆汁流出を認め, 術後3日目に空腸穿孔の診断のもとに再手術を行った.上部空腸側壁にφ2mmの打ち抜き型穿孔を2か所認め, 1か所は単純縫合, 1か所は楔状切除を行った.病理所見は空腸の非特異性潰瘍と穿孔であった.特殊な臨床経過, 術中所見, 病理所見などから, 虫垂穿孔性汎発性腹膜炎が空腸の非特異性潰瘍の形成穿孔に深く関与していたと思われた.過去20年の文献的検索では, 虫垂穿孔性汎発性腹膜炎に続発した多発空腸穿孔の症例報告はなく, 若干の考察を加えて報告した.
  • 今村 祐司, 横山 隆, 津村 裕昭, 村上 義昭, 瀬分 均, 桧山 英三, 藤本 三喜夫, 竹末 芳生, 児玉 節, 松浦 雄一郎
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2294-2298
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    最近われわれは血液悪性疾患に合併した腸管の出血性多発性潰瘍2例を経験し, 病理学的にも興味ある組織像を示したので報告する.症例1は悪性リンパ腫の白血病化に対し化学療法を施行した後に, 症例2は骨髄異形成症候群のステロイド療法中に発症した.いずれも持続する大量下血のため, 積極的な外科切除を行ったが, 2例とも再発, 増悪をきたし予後不良であった.病理組織学的検索にて症例1では小腸への悪性細胞浸潤に加えてcytomegalovirus感染が潰瘍病変部に強く認められた.症例2では非特異的潰瘍の像を呈しており, また手術侵襲に対する生体防御反応の1つである好中球機能の亢進は認められず, 術後重篤な感染症を合併した.本2例から本症の発生およびその進行には一般にいわれる悪性細胞の腸管への浸潤によるのみでなく, 原疾患の進行や化学療法, ステロイド剤投与などの医原性因子から生じる宿主の感染防御能の低下が大きな要因となるものと考えられた.
  • 西山 眞一, 大塚 正友, 松並 展輝, 中尾 照逸, 松岡 研
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2299-2303
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    産褥期にあるネフローゼ症候群患者に生じた上腸間膜静脈血栓症の1例を経験した.
    症例は24歳女性で, 7か月前にネフローゼ症候群と診断され, 今回は出産のため入院していた, 出産後18日目に急に上腹部痛を訴え, 次第に腹膜刺激症状の出現および血性腹水の証明により, 発症後6日目に開腹手術を行った.Treitz靱帯から約1m肛門側より約2m50cmにわたる空回腸に壊死腸管を認め, またその領域の腸間膜静脈枝は血栓で充満し血流は途絶していた.壊死腸管を含めた約3mの小腸切除術を行った.
    術前CT検査で壁肥厚著明な腸管を捉え, 診断上有力な手がかりになると考えられた.
    術前・術後の血液凝固検査では原因となる異常所見は指摘しえなかったが, 産褥期, ネフローゼ症候群というhypercoagulabilityが発症成因と考えられた.本疾患は術後再発率が高いことから, 予防的治療と注意深い観察が必要である.
  • 小寺 泰弘, 末永 裕之, 鈴木 祐一, 禰宜田 政隆, 谷口 健次, 稲垣 均, 竹下 洋基, 余語 弘
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2304-2307
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は37歳, 男性.下血を主訴として来院し, 上部消化管内視鏡検査, 直腸診などにて診断がつかぬまま出血性ショックにおちいった, 腹部血管造影にて, 空腸起始部に病変が疑われ, 緊急手術を施行, 視診にて空腸の腫瘤に由来する出血と診断し, 同部を切除した.術後経過は良好である.病理学的には虫体の一部と思われる角皮の周囲に好酸球が浸潤した膿瘍で, 肉芽組織に包囲されており, 緩和型の空腸アニサキス症と診断した.このような病変から大量出血をきたした例は文献上類を見ないので報告した, なお, 症例の抗アニサキス抗体価は高値を示した.
  • 三浦 誠司, 根本 明久, 青木 久恭, 里井 豊, 網野 賢次郎, 武田 義次, 三重野 寛治, 四方 淳一
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2308-2312
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 女性, 暗赤色の下血を主訴として入院した.過去に2回, 同様の下血の既往がある.大腸内視鏡検査で下行結腸の小びらんからの出血が直視下に観察され, S状結腸にも数個の憩室を認めたが出血はなかった.注腸では下行結腸に縦走瘢痕がみられた.生検結果はvascular leiomyomaであったため, 下腸間膜動脈撮影と腹部CT検査を行ったが腫瘍や血管性病変は見いだされなかった.下血を繰り返していること, および生検で平滑筋腫瘍が疑われたことから, 下行・S状結腸切除術を行った.切除標本の粘膜下には拡張しコイル様変形を示す血管が増生し, 同時に粘膜下層の膠原線維の増生を伴っていた.これらの変化は標本の全長にわたって見られた, 結腸のvascular ectasiaは通常は右側大腸の限局性病変であるが, 多発例や左側大腸の例も報告されている.Baumらは本症を加齢による病変で虚血が関与しているとの説をたてており, 本邦でも本症の増加が考えられる.
  • 加藤 真史, 木下 一夫, 沢 敏治, 吉光 外宏, 松井 裕
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2313
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 西森 武雄, 奥野 匡宥, 長山 正義, 池原 照幸, 川口 貢, 梅山 馨
    1990 年 23 巻 9 号 p. 2314
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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