日本消化器外科学会雑誌
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24 巻, 11 号
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  • 塩見 正哉, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 久世 真悟, 真弓 俊彦, 近藤 真治, 新美 教弘, 青野 景也, 新井 利幸 ...
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2689-2698
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当科で過去19年間に経験した胃平滑筋腫瘍37例についてとくに腫瘍悪性度について検討を加えた.対象の内訳は平滑筋腫14例, 平滑筋肉腫20例, 平滑筋芽細胞腫3例で, これらをA群 (平滑筋腫14例), B群 (平滑筋肉腫, 平滑筋芽細胞腫症例中無再発13例), C群 (平滑筋肉腫, 平滑筋芽細胞腫症例中非治癒切除または再発6例) に分けて, 腫瘍径, 核分裂像, 細胞密度, 核面積, 核形態, 腫瘍線維束形成について比較検討を行ったところ, 腫瘍径, 核分裂像, 核形態, 腫瘍線維束形成が腫瘍悪性度判定に重要な因子と考えられた.腫瘍径が5cm以下のものは予後良好であり, 10cmを越えるものは予後不良であり, 核分裂像では400倍視野10視野中の平均で3.0/HPFを越えるものの予後は不良であった.核形態, 腫瘍線維束形成は相関があり, 核形態がspindleshapeで線維束形成が明らかなものは予後良好であり, round shapeな核を持ち線維束形成の不明瞭なものは予後不良であった.
  • 山口 正秀, 沢井 清司, 岡野 晋治, 佃 信博, 清木 孝祐, 谷口 弘毅, 萩原 明於, 山根 哲郎, 山口 俊晴, 小島 治, 高橋 ...
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2699-2704
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1972年から1990年までの80歳以上の胃癌切除症例44例について検討した.
    (1) 組織学的進行度はstage 1が40.9%と比較的多かったが, stage4も25.0%に認めた.(2) 術前合併症は43.8%と高頻度に認め, 術後合併症も43.8%の高頻度に認めたが両者の間に相関は認められれなかった.(3) 術死は4.5%, 術死を除く42例の5年累積生存率は46.1%であった.(4) 漿膜浸潤陰性胃癌の5年累積生存率は60.6%で, 漿膜浸潤陽性胃癌の23.9%と比べて有意差を認めたが, リンパ節郭清R01とR2の間に, 生存率の差は認められなかった.(5) 漿膜浸潤陰性胃癌では遠隔時死亡の83% (10/12) が他病死していたのに対し, 漿膜浸潤陽性胃癌では88% (7/8) が癌再発による死亡であり有意差 (p<0.05) を認めた.したがって, 前者に対してはR1程度の安全な手術を行って注意深い術後の経過観察を行うことが重要であり, 後者には安全性を確保しつつ根治性の高い術式を選択すべ髪である
  • 前場 隆志, 田中 聰, 脇 正志, 平田 陽一, 近石 恵三, 大森 吾朗, 若林 久男, 岡田 節雄, 唐澤 幸彦
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2705-2711
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌切除後の早期残肝再発を防止する目的で, 肝切除とともに皮下埋没式肝動注カテ-テルを用いて, 2週間隔のmitolnycin C (MMC) と4か月間隔のMMC, doxorubicin (ADM), lipiodolによる術後1年間の肝動注化学療法を施行した.過去6年間の肝細胞癌切除例58例のうち, 手術直接死亡例と肝臓病死例を除いた46例を, 肝切除のみの群 (A群) 25例と術後肝動注化学療法併用群 (B群) 21例に分類し検討した.両群間の背景因子には追跡期間以外に差を認めなかった.B群は術後2年以内に7例が再発し, うち6例が残肝再発で再発状況にA群との差はみられなかった.累積無再発生存率はA群で1年76%, 2年76%, 3年58%, B群で1年83%, 2年52%, 3年52%と両群間に有意差はなく, また累積生存率においても同様の結果であった.肝切除後1年間の間欠的肝動注癌化学療法の併用によっても, 早期残肝再発を防止することはできなかった.
  • 植田 智樹, 宇佐美 真, 安田 一朗, 荻野 充利, 笠原 宏, 大柳 治正, 斎藤 洋一
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2712-2720
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌35例, それ以外の肝疾患27例, その他の疾患8例の70例を用いて, 血中PIVK-II, KMO1, AFP値を測定し, その診断能に関して臨床的検討を行った.肝細胞癌診断のsensitivityは, PIVKAII, KMO1, AFPのそれぞれが, 40.4%, 51.4%, 65.7%で, specificityは, 97.1%, 71.4%, 91.4%であった.各腫瘍マーカ-間には, いずれも有意な相関はなく, それぞれ独立したマーカーであると考えられた.そこで, 切除可能症例のスクリーニングを目的として, combination assayを検討すると, Sensitivityは, 40.0%から85.7%に, 切除例においても, 29.4%から82, 4%に改善し, PIVKA-II, KMO1, AFPのcombination assayはスクリ-ニングとして有効と考えられた.以上, 肝細胞癌診断における血中PIVKA-II, KMO1, AFPの測定は有用と考えられた.
  • 板本 敏行, 浅原 利正, 片山 幸治, 野村 真哉, 丸林 誠二, 八幡 浩, 福田 康彦, 松山 敏哉, 西亀 正之, 土肥 雪彦
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2721-2726
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌切除例106例を対象に, PIVKA-II測定の臨床的意義についてalphafetoprotein (AFP) と比較することにより検討した.術前にPIVKA-IIおよびAFPを測定した症例はそれぞれ106例, 29例で, 術前陽性率はPIVKA-II58.6%, AFP64.2%であった.PIVKAHIIは腫瘍径が5cmをこえると全例陽性であった.腫瘍径2cm以下の小肝細胞癌においては, PIVKA-IIは陽性率37H5%と低率であったが, 陽性の場合, 脈管侵襲または肝内転移を全例に認め, すでに進行癌と認識する必要があった.予後規定因子との関係では, AFP陽性例の49.2%が脈管侵襲陽性であったのに対して, PIVKA-IIは70.6%と有意に高率であった (p<0.01).被膜浸潤についても同様の傾向がみられた.このようにPIVKA-IIは腫瘍進行度, 特に脈管侵襲, 被膜浸潤の有無をよく反映していた.
  • 特に迷走神経と知覚神経の関与について
    高橋 徳, Chung Owyang
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2727-2731
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    モルモットの胆嚢内に挿入した圧トラソスデューサーによりcholecystokinin-octapeptide (CCK-8) の胆嚢収縮運動を検討した.CCK-8 (2.5~80ng/kg/min) の投与により用量依存性の胆嚢収縮運動が見られ, 低濃度のCCK-8 (2.5~5ng/kg/min) による収縮運動のみがatropine, hexamethonium, 全幹迷切で著明に抑制された.Atropineやhexamethoniumは全幹迷切後にみられたCCK-8 (5ng/kg/min) の収縮運動の抑制に対しては, もはや影響をおよぼさなかった.食後に上昇した血中CCK値は, CCK-8 (5ng/kg/min) の投与後にみられた血中CCK値とほぼ一致した.知覚神経毒 (capsaicin) で前処置したモルモットでもCCK-8 (5ng/kg/min) による収縮運動は著明に抑制された.これらの事実により生理量を上回る高濃度のCCK-8は直後に胆嚢平滑筋に作用するが, 生理的濃度のCCK-8は迷走神経 (知覚神経-コリン作動性神経節前繊維-節後繊維) を介し胆嚢収縮を促すと考えられる.
  • 滝口 伸浩, 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 中山 肇, 小田 奈芳紀, 白井 芳則, 大森 敏生, 奥井 勝二, 近藤 洋一郎
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2732-2738
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌術前照射療法 (42.6Gy) の治療効果判定における腫瘍マーカーの意義を知るため, 組織学的効果判定とCEAおよびCA19-9の組織染色性, 血清値の変動について非照射群32例, 照射群31例を対象に検討した.組織染色性はCEAでは照射群の1例を除き全例陽性で, 癌腺管に広範に染まり, diffuse cytoplasmic type (G3) が非照射群19例59.4%, 照射群23例74.2%であった.CA19-9では陽性例は非照射群16例50%, 照射群15例48.4%で, 染色範囲が2/3以上の症例は非照射群8例25%, 照射群6例19.4%であり, G3は非照射群2例6.2%, 照射群8例25.8%であった.照射前血清CEA陽性例での減少率は非肝転移例で, 非著効例46.5±14.1%, 著効例60.3±19.2%であった.肝転移例では主病巣の効果にかかわらず平均14.7%上昇し, 血清CA19-9値も上昇した.以上より, 照射による細胞傷害 (変性) にもかかわらず組織内抗原性は保たれ, 血中腫瘍マーカーの経時的測定による効果判定は客観的指標として有用であることが示唆された.
  • 小島 洋彦, 上田 雅和, 和田 喜美夫, 浅野 浩史, 大島 宏之, 利光 鏡太郎, 伊藤 勝基
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2739-2742
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    重複癌の頻度は一般には少なく, なかでも食道癌と腎癌の合併例はまれである.食道癌手術後, 1年5か月で腎癌を見つけ, 両者ともに根治手術を行いえた異時性重複癌の1例を経験した.患者は76歳男性で, 1988年7月11日, 胸部食道下部の食道癌根治手術を行った.術後は, 食道胃管吻合部の狭窄のためにバルーンによる拡張術を行った以外には, 特に異常なく経過した.経過観察中, 超音波検査で右腎癌を見つけ, 1989年12月14日, 右腎摘出術を行った.食道癌の病理はsquamous cell carcinomaで, 腎癌の病理はclear cell renal carcinomaであった.この症例はWarren & Gatesの診断基準に合い異時性重複癌である.患老は, 食道癌術後3年, 腎癌術後1年7か月の現在, 健在である.
  • 武田 晋平, 多幾山 渉, 高嶋 成光, 万代 光一
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2743-2747
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道胃接合部に生じる平滑筋肉腫はまれで, 報告例も多くない.今回われわれは食道胃接合部に生じた平滑筋肉腫の1切除例を経験した.症例は70歳の女性で, 嚥下困難を主訴とし, 食道胃透視, 内視鏡で, 下部食道から胃噴門部にかけ粘膜下腫瘍を認め, 噴門部では, 腫瘤は中央に深い潰瘍を形成し, bridging foldを伴っていた.computed tomography (CT) では下部食道から胃噴門部に連続する9×8×7cmの腫瘤影を認めた.平滑筋肉腫を最も疑い, 下部食道噴門切除を施行した.病理組織学的検査では, 平滑筋肉腫と診断された.リンパ節ではいわゆる1群リンパ節に転移を認めた.術後6か月目に肝転移を認め, 現在再入院中である.平滑筋肉腫は血行性転移, 腹膜播種が多く, リンパ節転移はまれとされ, 局所切除も検討されているが, 自験例のように大きな腫瘤を形成する症例に対しては進行胃癌に準じたリンパ節廓清, 化学療法が必要と思われる.
  • 岸 清志, 加藤 一吉, 水本 清, 河村 良寛
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2748-2752
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌根治術後6年目に発見された再建胃管癌の1例を経験した.症例は66歳, 男性.6年前に食道癌にて右開胸, 開腹, 胸部食道全摘術, 胸骨後経路による頸部食道胃管吻合術が施行された.今回, 嚥下障害を主訴に精査が行われ, 胃管下部に癌が発見された.手術は胸骨縦切開, 開腹による胃管全摘, 胸壁前にて右半結腸をもちいた再建術が行われたが, 心嚢, 縦隔胸膜に浸潤があり非治癒切除に終った.肉眼型はBorrmann4.組織学的には中分化型管状腺癌, 硬性型, 1群リンパ節転移陽性, stage IVであった.術後MTX, フトラフ-ルを用いた化学療法を施行, 9か月の現在健在である.自験1例を含め1990年までに報告された本邦における食道癌術後再建胃管癌47例を集計し, その臨床像について検討を行った.早期癌は12例と少なく, 予後は不良である.したがって, 術後の定期的な胃管造影, 内視鏡検査を積極的に行い, 胃管癌の早期発見に努める必要がある.
  • 稲田 高男, 尾形 佳郎, 尾澤 巌, 菱沼 正一, 清水 秀昭, 固武 健二郎, 池田 正
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2753-2757
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝外門脈腫瘍栓を有する胃癌の希少例を2例, 経験した.1例は66歳男性にて肝転移を有する噴門部癌で術中, 開腹所見において左胃静脈より門脈本幹におよぶ腫瘍栓を認め, 胃全摘, 門脈合併切除および肝部分切除を施行し, 門脈内腫瘍栓を切除しえた.また本症例は, 術前alpha-fetoprotein (AFP) 値が高値であり, 切除材料の免疫染色でAFP産生胃癌と確認された.2例目は, 50歳男性, 胃体中部より十二指腸におよぶ巨大な3型胃癌にて術前computed tomographyおよび血管造影において上腸間膜静脈より門脈本幹にかけて広範に腫瘍栓を認め, 胃全摘および門脈切開, 腫瘍栓摘除を行ったが, 腫瘍栓の完全摘除は不可能であった.
  • 浜田 弘巳, 安田 隆義, 勝木 良雄, 工藤 浩市, 山口 秀則, 辻 寧重, 西村 昭男
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2758-2762
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃カルチノイドの3例を経験したので報告する.年齢は52歳が1例, 55歳が2例で, 性別は全例男性である.主訴は心窩部痛あるいは心窩部不快感であった.術前診断可能例は1例のみであった.S状結腸同時性重複癌例が1例, 肝転移は初回手術時, 再発時に各1例認められた.手術は胃全摘を2例, 胃亜全摘術を1例に施行し, S状結腸癌併存例ではS状結腸切除術を, 同時性肝転移例では肝部分切除も施行した.組織学的に深達度は同時性肝転移例ではsm, ほかの2例はssβ, sであった.リンパ節転移, 銀親和性細胞の出現が各2例に認められた.転帰は, 1例が術後1年8か月時に肝再発し, 増大しつつあるが術後4年の現在, 担癌生存中で, 他の2例は術後10か月, 8か月の現在, 再発なく健在である.本症では高率にリンパ節および肝転移が認められるため, 手術は胃癌に準じた胃切除とリンパ節郭清が必要である.
  • 井上 晴之, 伊勢 秀雄, 高橋 良延, 北山 修, 阿部 裕, 臼井 律郎, 小針 正人, 森安 章人, 佐藤 正一, 鈴木 範美, 松野 ...
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2763-2767
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな先天奇形である肝右葉欠損症の1例を経験したので報告する.症例は60歳女性で, 右季肋部痛を主訴として来院した.軽度の黄疸を認めたためpercutaneous transhepatic cholangiographyを施行した所, 右肝管は造影されず, 左肝管は肝門部で狭窄し, その拡張した末梢側に数個の結石を認めた.computed tomographyでは肝右葉の欠損と左葉の代償性肥大, 胆嚢の位置異常を認めた.肝右葉欠損症に併存した肝内結石症の術前診断にて手術を施行したところ, 肝右葉は欠損し, 左肝管が肝門部付近で屈曲しその末梢側に多数の黒色石を認めた.手術は, 胆嚢摘出, 総胆管切開Tチューブドレナージ, 左肝管切石, 左肝管空腸側々吻合術を施行した.肝右葉欠損症の報告は1956年以降25例を数えるのみで, 本邦では自験例が第2例目の報告で, 肝内結石併存例は自験例が世界で初めてとなる.結石種類は黒色石であったが, これには先天的形態異常という背景因子の関与が考えられた.
  • 山口 晋, 菊池 賢治, 花井 彰, 赤石 治, 中野 末広, 月川 賢, 小森山 広幸, 得平 卓彦, 萩原 優
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2768-2772
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝外発育型肝癌は比較的まれな疾患であり, その発生機序についてはいまだ明らかでない.また診断, 治療についても通常の肝癌と趣を異にする.
    われわれは3例の肝外発育型肝癌を経験した.症例1は38歳女で有茎型で, 肝実質は正常であった.肝部分切除後4年9か月健存している.症例2は39歳女で有茎型で, 慢性肝炎を併存していた.肝部分切除後2年8か月健存している.症例3は61歳男で肝外突出型で肝内転移があり, 肝硬変を併存していた.肝外側区域切除後7か月で死亡した.
    診断には超音波検査, computed tomography検査, 腫瘍マーカーが参考になり, 血管造影による栄養血管の確認が最も良いと思われた.治療は有茎型は小範囲の肝切除で予後は良好である.一方, 肝外突出型は通常の肝癌と同様必ずしも予後は良好とはいえない.
  • 岡本 篤武, 鶴田 耕二, 小野寺 時夫
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2773-2777
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝2区域切除を施行した胆管内発育型肝癌の2例を報告した.1例は病理組織型は索状型, Edmondson分類III~IVで早期に残肝再発を認め, 術後3か月で死亡した.1例は充実型, Edmondson分類II~IIIで術後7年に出血性肺炎で急死した.後者は術後1年7か月時に左肺転移巣に対し肺部分切除を, さらに術後3年時には食道静脈瘤のため右開胸食道離断術を施行された.剖検時には肝癌の再発は認められなかった.2例の肝癌の生物学的悪性度をAFP倍加時間と腫瘍細胞の核DNAヒストグラムを指標として検討した.早期死亡例はAFP倍加時間が27日であったのに対し, 長期生存例は216日と長かった.核DNAヒストグラムは, 前者はaneuploidであり後者はtetraploidであった.これらの差異は腫瘍の悪性度の相違を意味するものと考えられた.
  • 浦 一秀, 玉城 哲, 塩竈 利昭, 松元 定次, 江藤 敏文, 瀬川 徹, 元島 幸一, 角田 司, 井沢 邦英, 土屋 凉一
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2778-2781
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性でアルコール性慢性膵炎の診断をうけ当科を紹介され入院した.画像診断上は著明に拡張した主膵管および, 多数の膵石が認められるも, 膵癌を示唆するような腫瘤像は得られず, 慢性膵炎の診断であった.しかし, 血中CA19-9, CA50, Dupan-2, Elastase-1などの腫瘍マーカーはすべて正常値をこえて上昇していた.しかもこの患者のLewis血液型はLe (a-, b-) であった.Dupan-2を除くほかの腫瘍マーカーは膵管空腸側側吻合術後に正常値に復した.悪性疾患では血液でLe (a-, b-) 型でも血中CA19-9が上昇する例はしばしば遭遇するが, 良性疾患での報告は少ない.興味ある本症例の報告を行うとともにCA19-9上昇の機序を併せて検討した.
  • 菱沼 正一, 尾形 佳郎, 松井 淳一, 尾澤 厳, 稲田 高男, 清水 秀昭, 固武 健二郎, 池田 正, 小山 靖夫
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2782-2786
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    機能温存を考慮した手術術式として, 腹腔動脈幹周囲に浸潤した膵体部癌に対し, 全胃を温存し以下に述べる血管処理を伴う膵体尾部切除術を2症例に施行した.腹腔動脈を大動脈起始部で切離, 総肝動脈, 左胃動脈はその末梢で切離, 下膵十二指腸動脈を温存することにより肝動脈.右胃および右胃大網動脈の血流を上腸間膜動脈経由で確保し, 全胃を温存しえた.2症例とも非治癒切除で, 術中術後照射を併用した.術後合併症は認めず.
    症例1は62歳男性.腹膜播種を来したが術後41か月現在生存中.症例2は60歳女性.腹腔動脈切除に加えて門脈合併切除を施行.術後4か月で事故死する.再発の有無は不明.
    腹腔動脈周囲への浸潤を伴う膵体部癌に対しては, 症例を選び, このような全胃温存術式を行い, 術後の栄養状態を少しでも改善して集学的治療を充実させることが, quality of lifeと予後の向上につながるものと考えている.
  • 福田 直人, 石山 純司, 天野 仁, 望月 康久, 本田 拓, 石川 泰郎, 小林 俊介, 山川 達郎
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2787-2790
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔内出血を契機として発見されたMeckel憩室原発平滑筋肉腫の1例を経験したので報告した. 症例は75歳, 男性. 突然の嘔吐, 便失禁にて発症. 腹腔内出血の術前診断にて緊急開腹術を行ったところ, 回盲弁より80cmの回腸に憩室を認め, その先端に6×6cm, 軟, 被膜を有する腫瘍が存在し, その一部が破裂し腹腔内に約1,000ml出血していた. 腫瘍を含めて回腸部分切除し手術終了. 病理検査では核の大小不同を示す異形性の強い紡錘形細胞が増生し, 平滑筋肉腫と診断された. 本例は本邦5例目のMeckel憩室原発平滑筋肉腫であり, しかも腹腔内出血を併存したという点で非常にまれな症例であると考えられた.
  • 榊原 維聡, 松本 賢治, 納賀 克彦, 横山 勲, 大上 正裕, 深川 裕明, 北川 裕章, 有沢 淑人
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2791-2795
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸間膜に発生する悪性腫瘍は比較的まれな疾患である. 今回, 空腸腸間膜脂肪肉腫の1例を経験したので報告する. 症例は49歳の男性で, 左側腹部痛を主訴として入院した. 既往歴として5年前, 他院整形外科にて左大腿部腫瘍摘出術を施行されており, 病理組織学的診断は脂肪肉腫, 粘液型であった. 入院後の腹部computed tomography (CT) 検査では, 横行結腸下方に軟部組織腫瘤を認め, 内部は不均一な濃淡像を呈し, 腸間膜腫瘍が疑われた. 開腹手術所見にて病変はTreitz靱帯より肛門側約40cmの空腸腸間膜内に認められ, 19×18×8cm大で限局被膜化されており, 完全摘出された. 病理組織学的には左大腿部腫瘍と同様で脂肪肉腫, 粘液型と診断された.
    腸間膜脂肪肉腫の報告はまれで, これまで欧米で11例, 本邦では8例のみと思われる. 他家の報告によれば, 脂肪肉腫の平均再発期間は約15か月であり, 本症例は臨床経過や検査所見より異時重複性と示唆された.
  • 大橋 一夫, 藤井 久男, 山本 克彦, 佐道 三郎, 仲川 昌之, 渡邉 巌, 安田 慎治, 中野 博重
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2796-2799
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸間膜嚢腫はまれで興味深い疾患の1つとされている. 本症には特徴的な症状がなく, 無症状のものから, 腸閉塞や腹膜炎などの合併症のために開腹されてはじめて発見されるものまでさまざまである. 今回われわれは, 術前に卵巣嚢腫と診断し, 開腹時に回腸腸間膜嚢腫と判明した症例を経験したので報告するとともに, 最近5年間の報告62例を集計し検討を加えた. 症例は15歳の女性で, 上腹部痛を主訴に来院. 超音波検査にて子宮の右側に接する直径5cm3個の嚢腫状病変が指摘され卵巣嚢腫と診断した. 開腹術にて回腸腸間膜に存在する嚢腫と判明し, 腸管を含め嚢腫摘出術を施行した. 術後経過は順調であり, 再発は認められていない. また集計の結果, 術前診断率は35%で, 以前の集計よりやや向上していた. 特に超音波およびcomputed tomography両検査が施行された症例では術前診断率は62%と高率であり, 両検査の併用が術前診断に有用であると考えられた.
  • 今井 直基, 田辺 博, 渡辺 進
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2800-2803
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    虫垂原発悪性リンパ腫の1例を経験したので, 本邦報告例の検討を加えて報告した.
    症例は42歳, 男性. 下腹部痛を主訴として近医を受診し, 急性虫垂炎と診断され当院を紹介された. 虫垂穿孔性腹膜炎の診断で虫垂切除術を施行したところ, 術後の病理学的検索でnon-Hodgkin'slymphoma, diffuse, large cell typeと診断された. 根治術を目的として第10病日にR3リンパ節郭清を伴う右半結腸切除術を施行したが, 切除標本のいずれにも悪性リンパ腫の所見を認めなかった.
    虫垂原発悪性リンパ腫はきわめてまれな疾患であり, 本邦報告例は21例にすぎない. 多くは急性虫垂炎の診断で手術がなされ, 術後の病理学的検索で確定診断されていた. 根治術がなされたものは7例 (33.3%) のみであった. リンパ節転移陽性の9例中3例, 陰性の8例中7例が生存中とされていた. 治療は癌腫と同様に根治的切除が第1であり, 症例により後療法が必要と考えられた.
  • 赤毛 義実, 水野 勇, 市野 達夫, 山本 哲也, 安井 保, 板橋 雄二, 真下 啓二, 石川 周, 品川 長夫, 由良 二郎
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2804-2808
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    アメーバ赤痢は本邦ではまれな疾患であるが, 炎症性大腸疾患の鑑別診断上重要な疾患の1つである. 一般には下痢を主症状とする慢性の経過をとることが多いが, まれには症状が急激に進行して穿孔などの重篤な合併症を併発して不幸な帰転をとることもある.
    今回, われわれは急性腹症を呈した激症型アメーバ性大腸炎の1例を経験したので報告する.症例は45歳男性で, 主訴は右下腹部痛と水様性下痢. 右下腹部の腹膜刺激症状と強い急性炎症所見があり, 注腸検査で盲腸に潰瘍を認めた. 確定診断には至らなかったが, 症状が進行しており穿孔の危険があるので, 急性腹症と判断し回盲部切除術を施行した. PAS染色で組織学的に栄養型赤痢アメーバを認め本症と確定診断した. 本症は抗アメーバ剤によく反応するが診断が遅れれば死亡率が高いので注意が必要である. 本症例を経験し, 炎症性大腸疾患の鑑別診断には本症を念頭におく必要があると痛感した.
  • 北原 健志, 尾上 謙三, 渡辺 慶太, 富永 修盛, 中口 和則, 中野 陽典
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2809-2813
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸ポリープの一部に未分化癌が発生し, すでに広範囲な肝転移を有していた1例を経験した.
    症例は60歳, 男性. 注腸造影X線検査, 大腸内視鏡検査でS状結腸に山田IV型のポリープを認めた. 内視鏡的ポリペクトミーを予定していたが, 肝転移を発見したため開腹手術に変更した. 切除したS状結腸ポリープは有茎性で大きさ10×8mm, 組織学的には大部分はvillo-tubular adenomaであったが, ごく一部に未分化癌が発生し, 粘膜下層に浸潤していた. またリンパ節転移と肝転移がみられた. 患者は術後5か月目に死亡した.
    大腸未分化癌はきわめてまれで, 本邦では5例目の報告である. 自験例のような腺腫内に発生した微小な未分化癌でも悪性度はきわめて高く予後不良である.
  • 米倉 竹夫, 中尾 量保, 藤田 修弘, 前田 克昭, 濱路 政靖, 仲原 正明, 岸本 康朗, 清水 重臣, 古谷 保博, 打越 史洋, ...
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2814-2818
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    19歳男性に多発性大腸癌と胃癌の重複癌を認め, 幽門側胃切除術および回盲部より15cm肛門側の上行結腸から上部直腸までの大腸摘出術を行った. 再建はBillroth I法および結腸直腸吻合術を行った. 病理所見では胃体下部小彎に深達度ssの潰瘍浸潤型印環細胞癌を認めた. また直腸にはsmの有茎型中分化腺癌, ssの浸潤潰瘍型中分化型腺癌およびsmの陥凹型粘液癌を, またS状結腸から下行結腸にかけてmとsmの有茎型高分化型腺癌, smの陥凹型中分化型腺癌, pmの腫瘤型粘液癌2個と4個の腺腫を, さらに横行結腸に腺腫内癌を認めた. 術後2年1か月現在再発なく健在である. 本邦における20歳未満の若年者大腸癌は145例報告されている. このうち多発癌症例は本症例以外に6例で, 内訳は家族性ポリポージス症1例, Turcot症候群2例, 非家族性ポリポージス症1例, S状結腸多発癌1例, 横行結腸多発癌1例であった. Turcot症候群を除いた他臓器重複癌合併は本症例のみであった.
  • 山中 洋一郎, 恩田 昌彦, 江上 格, 松倉 則夫, 岡崎 滋樹, 中尾 充, 相本 隆幸, 渡辺 仁, 内田 英二, 小林 匡, 吉田 ...
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2819-2823
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は17歳の男性. 主訴は腹部膨満感, 右下肢の疼痛としびれ感. Computed tomography, magnetic resonance imagingなどにより右後腹膜に巨大腫瘤を認め, 開腹生検にてmalignant hemangiopericytomaと診断した. Linac照射, Cisplatinにより腫瘍の著明な縮小がみられたため, いったん退院. 腫瘍はその後5か月間増大傾向なく, 再入院となった. 出血予防の目的で第III, IV, V腰動脈などを塞栓した後, 摘出を行った. 術後Vincristin, Farmombicin, Cisplatinを投与し, 退院となる. 初回化学療法より13か月現在, 外来において経過観察中であるが, 再発, 転移は認めていない.
    後腹膜の本悪性腫瘍はまれで, 本邦では自験例を含めて14例にすぎず, 2年以上の長期生存例はない. 今回, 集学的治療が有効であったmalignant hemangiopericytomaの1例を経験したので報告する.
  • 徳永 信弘, 篠原 央, 大西 英胤, 別所 隆, 栗原 博明, 森 光生, 郭 宗宏, 片田 夏也
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2824-2826
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    異時性に両側発生した閉鎖孔ヘルニアの1例を経験したので報告する. 症例は85歳の女性で右大腿内側部痛を主訴に整形外科を受診したが腹部単純X線写真で鏡面像が認められ入院となった. 保存的治療にて改善傾向なく右Howship-Romberg sign陽性のため右閉鎖孔ヘルニア嵌頓の術前診断にて開腹された. 同症例は術後21週目に嘔吐と上腹部痛が出現し腸閉塞の診断で再入院となった. 入院後今度は左大腿内側部痛を訴え再開腹が施行され左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断された.
    閉鎖孔ヘルニアの異時性両側性発生の報告例は本例を含め4例で, いずれも術後6か月以内に対側の閉鎖孔ヘルニアを発症したと報告されている. 閉鎖孔ヘルニアの開腹手術の際には対側の閉鎖管を検索すること, およびその対処が必要であると思われる.
  • Ursodeoxycholic acidの有用性
    今村 幹雄, 木村 光宏, 山内 英生
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2827-2831
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌に対し胃全摘を施行後, 絞扼性イレウスをおこし遠位側小腸大量切除を施行し, 術後重篤な栄養障害を生じた症例について蛋白代謝, 胆汁酸代謝, 消化管ホルモン分泌および治療の面から検討した.
    症例は59歳の男性で, 胃癌に対し胃全摘術を施行し栄養状態が低下した時期に絞扼性イレウスを生じ回盲弁を含め遠位側小腸を230cm切除した. 術後, 頻回の下痢便となり, 体重は著明に減少し, また, 牛乳不耐症, 鉄欠乏性貧血, 血中総胆汁酸濃度の低下などが発生した. これらに対し, 経腸栄養とともにウルソデオキシコール酸, 乳糖分解酵素などを投与することにより, 臓器蛋白は上昇に転じ, 排便回数は減少し, 体重減少も止った. また, 試験食摂取時の末梢血中総胆汁酸濃度は著明に上昇し, さらに食後のCCK分泌は維持された.
  • 水谷 崇, 恩田 昌彦, 徳永 昭, 奥田 武志, 牧野 浩司, 木山 輝郎, 西 恵吾, 安東 俊明, 足立 幹夫, 松倉 則夫, 古川 ...
    1991 年 24 巻 11 号 p. 2832-2836
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    真性赤血球増加症 (以下PV) は, 造血幹細胞の腫瘍性増殖により赤血球のみでなく白血球, 血小板も増加し, 血液粘度が増加した病態である. したがってPV患者では手術操作により容易にDICが引き起こされ, 術後に大出血や血栓症を合併し多臓器不全となりやすく, その成績は極めて不良である. われわれは同疾患を合併した胃癌手術症例2例 (66歳の女性, 56歳の男性), 急性胆嚢炎症例1例 (68歳の男性) を経験し, うち2例は多臓器不全となり救命できなかった. しかし胃癌の1例はインターフェロン投与後, 胃全摘術施行. 術後呼吸不全を併発したが, 速やかな人工呼吸器による呼吸管理により改善し救命できた. PV合併手術では, DICに起因する臓器不全へ容易に移行するため, 厳重な術前, 術中, 術後管理が求められる.
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