日本消化器外科学会雑誌
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24 巻, 12 号
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  • 鍋谷 圭宏, 坂本 昭雄, 高石 聡, 櫻本 薫, 飯塚 浩, 見玉 多曜, 神津 照雄, 小野田 昌一, 磯野 可一, 碓井 貞仁
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2873-2880
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    進行食道癌92症例の術前合併療法施行時の栄養管理について, 術前栄養状態維持と術後肺合併症発生の面からretrospectiveに検討した.高カロリー投与により術前栄養指標はほぼ正常域内の値が維持され, rapid turnover serum proteinの上昇により栄養状態の改善が示唆された.体重と血清総蛋白値の推移からは35NPkcal/kg/day以上の維持投与カロリーが望ましいと思われ, 照射により一過性に低下した免疫学的指標も術直前までに回復傾向を示した.しかし, 血清アルブミン値の推移は, 栄養管理法, 投与カロリーの多寡に関わらず低下傾向で, 70歳以上の症例では70歳未満の症例に比べて低値での推移であった.また, 術直前の血清アルブミン値が3.5g/d1未満の場合に, 70歳以上の症例では70歳未満の症例に比べて高率に術後肺合併症を起こした.このことから, 高齢者の術前栄養管理では, 適切な投与カロリーの決定などさらに綿密に検討する必要があると考えられた.
  • 吉中 平次, 島津 久明, 森永 敏行, 白尾 一定, 夏越 祥次, 馬場 政道, 福元 俊孝
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2881-2887
    発行日: 1991年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    術前未治療で, 食道亜全摘と両側頸部を含む3領域リンパ節郭清を行った胸部食道癌104例について, 組織学的リンパ節転移の実態と体外超音波検査および超音波内視鏡検査での術前診断成績を検討した.73例 (70.2%) に転移を認め, 部位別の転移率は鎖骨上23.1%, 頸胸移行部31に7%, 上縦隔30.8%, 中縦隔22.1%, 下縦隔17.3%, 噴門周囲38に5%, 腹腔動脈近傍19.2%, 腹部大動脈周囲3.8%であった.鎖骨上と頸胸移行部および上縦隔の転移率は癌占居部位が上方になるほど有意に高率となり, 噴門周囲の転移率は上部 (Iu) 癌に比べ下部 (Ei) 癌で高率であった.術前診断において, sensitivityは鎖骨上75.0%, 頸胸移行部60.6%, 上縦隔76.9%, 中縦隔71.4%, 下縦隔0%, 噴門周囲67.5%, 腹腔動脈近傍65.0%, 大動脈周囲100%であり, specificityはいずれの部位でも80%以上であった.食道癌のリンパ節転移診断に超音波検査は有用であるが, 大きさ5mm未満, 転移面積1/3未満の転移リンパ節に対しては満足すべき成績が得られなかった.
  • 特にリンパ節転移個数との関連について
    夏越 祥次, 島津 久明, 馬場 政道, 吉中 平次, 島田 麻里緒, 原口 優清, 白尾 一定, 田辺 元, 福元 俊孝, 愛甲 孝
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2888-2893
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    両側頸部を含む3領域のリンパ節郭清を施行して根治切除となった胸部食道癌97例のうち43例 (44.3%) に再発がみられた. これらの症例を対象とし, 手術時のリンパ節転移個数と再発の関連について検討した.再発例のうち, 転移個数5個以下は25例, 6個以上は18例であった.再発時期は5個以下に比べ6個以上では早期であり, 1年以内に78%が再発していた.再発形式はリンパ行性再発21例, 血行性再発15例, 重複再発3例, その他4例であった.リンパ行性再発は, 上縦隔の再発が多く, 特にリンパ節転移 (-) 再発例の6例中4例は上縦隔再発であった.さらに6個以上 (9例) で上縦隔左側に再発がみられた7例の全例に, 手術時に同部位の転移を認めた.血行性再発の全例がリンパ節転移陽性で, 15例中12例 (80%)に2領域以上の転移を認めた. 再発例の予後は不良であったが, 特に重複再発例, 転移6個以上の血行性再発例は不良であった.リンパ行性再発例では4年以上の生存例を4例に認めた.
  • 北村 正次, 荒井 邦佳, 宮下 薫
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2894-2899
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    早期胃癌 (粘膜癌: 304例, 粘膜下層癌: 276例) を対象として再発形式および予後に影響を与える他病死・他癌死の実態について検討した.早期癌の死亡は71例にみられ, その内訳は胃癌の再発4例 (5.6%), 残胃の癌死3例 (4.2%), 非癌死41例 (57.7%), 他癌死23例 (32.4%) であった.再発はm癌1例, sm癌3例で, n (-) 1例, n2 (+) 2例, n3 (+) 1例とリンパ節転移例が多かった.再発形式はそれぞれ腹膜, ウイルヒョウリンパ節, 肝, 肺であった.他病死のなかでは心疾患11例 (28%), 脳血管障害7例 (18%), 呼吸器疾患7例 (18%), などが多くを占めた.他癌死のなかでも最も多かったのは大腸癌6例 (26%) および肺癌6例 (26%) で次に, 肝癌4例 (17%), 膵癌3例 (13%) であった.大腸癌では同時性が多いのに対して肺, 肝では異時性が多かった.以上の検討より, 早期癌の術後には定期的な残胃の内視鏡的検査, 他臓器癌を念頭に入れた検査および他病死の防止にも注意を要すると考えられた.
  • 田中 晃, 奥野 清隆, 中嶋 一三, 渡辺 勉, 藤井 良憲, 白山 泰明, 安富 正幸
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2900-2905
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌手術の開腹直後に腹腔洗浄細胞診を施行した682例を対象とし, 胃癌原発巣の病理組織所見と細胞診との関係について検討し, さらに腹腔洗浄細胞診の予後因子としての意義について考察した.682例の11.1%, 切除例の7.2%, 治癒切除例の2に7%に遊離癌細胞が陽性であった.細胞診陽性率はS2;14.8%, S3;28.8%, 壁深達度ではm・smに陽性例はなく, 漿膜面因子 (ps) 陰性;0.9%, 陽性;15.2%であり, 漿膜面浸潤と関係が深かった.肉眼型, 組織型, 浸潤増殖様式と細胞診の関係では, 3型・4型, 未分化型, 浸潤性増殖 (INFγ) に高率であり, さらにstage IVは22.5%と高率であった.肉眼的に治癒切除でも細胞診が陽性であれば, 10年生存例を除き3年以内に腹膜再発で死亡し2年累積生存率は24.2%であり, 肉眼的腹膜播種陽性例の2年生存率8.5%と有意差なく予後は不良であった.術中洗浄細胞診は正確な病期診断に有用であり, とくにS2, S3およびps (+) 例では有意義である.
  • 林 裕之, 大村 健二, 宗本 義則, 渡辺 俊一, 道伝 研司, 岩 喬
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2906-2911
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1975年から1984年までの期間に連続切除された胃癌127例を対象として, humanchorionic gonadotropin α subunit (HCG-α) の産生について検討した.HCG-αは正常胃粘膜および胃腺癌細胞の細胞質に認められ, 胃腺癌組織においては127例中10例 (7.9%) に陽性細胞が存在していた.胃癌取扱い規約による肉眼型, 組織型, stage分類による陽性率には統計学的有意差はなかった.また, 予後の点においても陽性例と陰性例との間に有意差を認めなかった.内分泌細胞の優れたマーカーとされるchromogranin A陽性癌細胞は127例中37例 (29.1%) にみられ, このうちの10例がHCG-α陽性であった.HCG-α陽性癌細胞はchromogranin Aに対しても陽性を呈することから, HCG-αは内分泌細胞型癌細胞の産生する正所性ペプタイドの一つであると考えられ, その生物学的意義, 宿主に与える影響の検索にはさらに症例を重ねた研究が必要であると思われた.
  • 沢辺 保範, 中西 正樹, 大澤 二郎, 野中 雅彦, 岡 浩, 田中 文恵, 村田 聡, 篠田 正昭
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2912-2918
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    漿膜浸潤陽性胃癌21例を対象として, 腹膜再発の予防と予後の改善を目的として, Cisplatinをもちいた術中の腹腔内温熱化学療法 (IPH) を考案し施行した.その結果, 最長1年7か月経過中であるが, IPH施行群には腹膜再発による死亡はなく, Kaplan-Meier法による予後検定でも, 切除胃癌症例で深達度ssγ, se, seiをあわせたhistorical control群に比較し9か月の時点で, IPH施行群19例が生存率88.0%に対しcontrol群82例は66.1%と5%以下の危険率で有意の予後の改善をしめした.また, 最も腹膜再発をきたしやすいBorrmann 4型胃癌では, 1年7か月の時点において, IPH施行群6例の生存率100%に対しcontrol群22例の生存率は24.9%で0.1%以下の危険率で有意に予後が改善した.このような結果から, 本法は漿膜浸潤陽性胃癌において, 腹膜再発予防にきわめて有効な方法であると考えられた.
  • 白石 祐之, 杉浦 芳章, 脇山 博之, 島 伸吾, 田中 勧
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2919-2925
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝切除後早期に胃出血を来たすことがあるが肝切除術が胃液分泌および消化管ホルモンの変動にどのような影響を及ぼすかを臨床例で検討した.51例の肝切除術を対象に胃液と血中消化管ホルモンを術前, 術後1, 3, 5病日に測定した.肝硬変群は胃液酸度術前58.0±5.0, 5POD 39.0±12.1mEq/l, 胃液PH術前6.8±0.5, 5POD 6.5±1.3と変動し低酸高アルカリを示した.ガストリンは肝硬変群では術前30.0±3.0, 5POD 31.7±15.6pg/mlと術前後とも低値を示したが肝硬変にH2プロッカーを使用した症例でガストリンが有意に高値を取った.セクレチンは全症例で術後の上昇が認められ肝硬変群で増加率が高かった.グルカゴンは肝硬変群で術前210.3±150.5, 5POD 400.0±293.0pmol/mlと術前後とも高値をとった.インスリンは区域切除群で術後第1病日でピークをとった.以上の結果より肝硬変群では胃の攻撃因子の増強はなく, 胃出血の予防には防御因子に注意を払うべきである.
  • 久永 倫聖, 中島 祥介, 金廣 裕道, 村尾 佳則, 福岡 敏幸, 瀧 順一郎, 青松 幸雄, 堀川 雅人, 木戸 潔, 吉村 淳, 上野 ...
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2926-2936
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝癌切除後の免疫能の推移について検討した.対象は肝癌切除症例25例とし, 肝硬変または活動性肝炎合併例 (A群, n=15), 非合併例 (B群, n=10) に分け, 術後4週目まで各種パラメーターを観察した.リンパ球数は3日目に, helper T/suppressor T比は7日目に最も低下した.Natural killer活性, lymphokine-activated killer活性はともに2週目に有意に低下し (p<0.05), 4週目には回復したが, A群ではその低下が顕著で回復も遷延した.Antibody dependent cell-mediated cytotoxicity活性は著変を認めなかった.IgG, IgA, IgMは3日目に減少し, 1週目に回復したが, A群が術前, 術後を通じ有意に高値であった (p<0.05).C3, C4はともに1週目で有意に高値となり (p<0.05), 2週目に回復した.以上より, 肝癌切除症例では術後2週目まで免疫能が低下し, 併存肝病変を有する場合, その低下が顕著で, 回復が遷延するものと考えられた.
  • 松本 宗明, 中島 祥介, 福岡 敏幸, 久永 倫聖, 青松 幸雄, 木戸 潔, 滝 順一郎, 吉村 淳, 堀川 雅人, 中野 博重
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2937-2943
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌肝切除49症例のうち絶対的非治癒切除6例と術死3例を除く40例について, 再発とその予後について検討を加えた.40例全体の無再発生存率は, 1年57%, 3年41%, 5年26%で, 観察期間中に25例 (62.5%) の再発を認めた.腫瘍因子の中では, 腫瘍径3cm以上, 門脈浸潤陽性例に高い再発率がみられた.切除肝切離面への癌浸潤の右無 (TW) には再発との関連はみられなかった.肝切除量についての検討では, 腫瘍径3cm以下であれば亜区域以下の縮小手術でも良好な予後を期待できるものと考えられた.再発25例のうち22例 (88%) が術後2年以内に再発し, 再発後の累積生存率は, 1年63%, 2年26%, 3年17%であった.肉眼型では多結節癒合型が, また組織学的には門脈浸潤陽性例では術後早期に再発し, 再発後の予後も不良であることから, 肝細胞癌治療成績の向上にはこれら症例への対策が重要であると考えられた.
  • 村上 義昭, 横山 隆, 児玉 節, 竹末 芳生, 沖田 光昭, 中光 篤志, 今村 祐司, 山東 敬弘, 津村 裕昭, 宮本 勝也, 松浦 ...
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2944-2950
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    最近5年間に当科で経験した胆嚢隆起性病変21例 (腺癌6例, 腺腫3例, コレステロールポリープ5例, 過形成性ポリープ4例, 炎症性ポリープ2例, 異所性胃粘膜1例) の臨床病理学的検討を施行した.術前診断では, 超音波検査にて腺癌と他疾患の鑑別は困難で, コレステロールポリープのみ質的診断が可能であった.腺癌症例は, 高齢者の最大径10mm以上の隆起性病変に多く, 有茎性の腺腫内腺癌と広基性の進行癌に大別され, 後者はその最大径がより小さい時期に進行癌となる傾向を認めた.なお, 腺癌症例は, 全例, 無再発生存中で, DNA ploidy patternがdiploidであり, 予後良好な一因と考えられた.以上より, 胆嚢隆起性病変においては, 有茎性の症例は最大径10mm以上を, 広基性の症例は最大径5mm以上を手術適応とし, 手術術式としては, 全層胆嚢摘出術の後, 主病変, リンパ節の術中迅速病理診断の結果により, リンパ節郭清, 胆管切除, 肝切除を施行するのが妥当と考える.
  • 小西 孝司, 辻 政彦, 藪下 和久, 松本 尚, 谷屋 隆雄, 広沢 久史, 福島 亘, 角谷 直孝, 黒田 吉隆, 佐原 博之
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2951-2955
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    従来より閉塞性黄疸患者の外科的治療に当たっては, まず術前PTCDを行って, 肝機能の改善を計ってから行うべきといわれている.そこでわれわれは, 閉塞性黄疸に対する術前PTCDの意義を探るべく検討した.163例の膵頭十二指腸切除例を術前総ビリルビン3.0mg/dl以上の黄疸群 (83例), 3.0mg/dl未満の非黄疸群 (80例) に分け, 黄疸群をさらにPTCDを行ったPTCD群 (65例) とPTCDを行わなかった非PTCD群 (18例) に分け, 3群間で治療成績を比較検討した.その結果, 黄疸群, 非黄疸群の間には手術時間, 術中出血, 術後入院日数, 術後合併症のいずれにおいても差はみられなかった.ただPTCD群は非PTCD群に比べ, 術前の入院日数が有意に長かった.以上より手術手技や術中, 術後の患者の管理が向上した今日では, 閉塞性黄疸患者には血清ビリルビン値のいかんにかかわらず, 術前PTCDを行うことなしに1期的に根治術を行うことは可能と考えられた.
  • 福島 浩平, 佐々木 巌, 舟山 裕士, 内藤 広郎, 高橋 道長, 神山 泰彦, 柴田 近, 土井 孝志, 瀬上 秀雄, 岩附 昭広, 大 ...
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2956-2962
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    手術目的で入院したCrohn病症例30例に対しテトラガストリン刺激による胃液検査を行い, 病変部位の長さや切除腸管の長さと胃酸分泌の関係を検討した.また, 術後に食事負荷試験を行い血漿ガストリン値, GIP値, total-GLI値を測定した.その結果, 術前のMAOで高酸を示し小腸病変の長さおよび切除腸管の長さとMAO, PAOの間に相関を認め, おのおの100cmを超える症例では高酸を示した.血漿ガストリン値, GIP値, total-GLI値のいずれも対照群と比較し低値をとる傾向が認められたが, とくに小腸を100cm以上切除された症例ではtotal-GLIの分泌量は対照群の2分の1であった.以上より, Crohn病の中でも小腸病変の高度な症例や小腸を大量に切除された症例では, 術前後の胃酸分泌亢進に十分注意する必要があると思われた.また, この機序としてエンテログルカゴン, GIPなどの胃酸分泌抑制物質の減少が関与する可能性が示唆された.
  • 原発巣の病理組織学的所見, c-erbB-2蛋白発現および腫瘍核DNA量からの検討
    大森 一吉, 内野 純一, 近藤 征文, 澤口 裕二, 白戸 博志, 益子 博幸, 中野 詩朗, 大沢 昌平, 近藤 正男, 西田 修, 佐 ...
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2963-2969
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝転移性陰性大腸癌45例と肝転移大腸癌45例について病理組織学的所見とともにc-erbB-2蛋白発現, DNA ploidyを検索し肝転移再発予知について検討した.肝転移陰性群に比べ有意差を認めた因子は, 同時性肝転移群で壁深達度, リンパ節転位 (n (+): 62.1%), 脈管侵襲 (ly (+): 65.5%, v (+): 41.4%), 組織学的進行度, DNA ploidy (aneuploidy: 89.7%), c-erbB2蛋白 (陽性: 20.7%) であった (p<0.05).異時性肝転移群では, 脈管侵襲 (ly (+): 75.0%v (+): 31.3%), c-erbB-2蛋白 (陽性: 43.8%) であった (p<0.01).従来の脈管侵襲因子に加えc-erbB-2蛋白発現が, 肝転移再発予知因子として有用であることが示された.また, 脈管侵襲因子とDNA ploidyとの間に相関はなく, 異時性肝転移でv (-) であった11例のうちaneuploidyが6例に認められ, ly, v, c-erbB-2蛋白とともにDNA ploidyの検索も肝転移再発予知能を上げる可能性が示唆された.
  • 土屋 邦之, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 川合 寛治, 荻野 敦弘, 梅田 朋子, 上田 泰章
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2970-2976
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    深達度が固有筋層以上の大腸癌213例を閉塞症状について3段階に分けて検討した.すなわち, Ileus0: 明確な閉塞症状がない症例, Ileus 1: 閉塞症状が認められる症例からイレウス前状態の症例, Ileus2: いわゆるイレウス症例の3段階に分けた.Ileus 1群は58例 (27.2%) でIlues 2群は29例 (13.6%) であった.3群間に年齢, 性差, 肉眼型, 腫瘍径, 組織型に有意差はなかった.Ilues 0群は病巣の狭窄度, 腫瘍の腸管環周に占める割合, 深達度, 肝転移度, 病期の進行度で他の2群に比べ有意に小さかった.Ileus 2群はIleus 1群に比べ狭窄度と腸管の環周に占める割合で有意に大きかった.以上より, 閉塞症状は主に狭窄度と環周に占める割合と壁深達度により決まると思われた。また, 治癒切除例での生存率が, Ileus 2群はIleus 0群と同様に良好であったことより, イレウス合併症例でも根治手術をめざした治療をする価値があると思われた.
  • 藤高 嗣生, 西村 保彦, 松山 敏哉, 土肥 雪彦
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2977-2981
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌症例中痔核を合併または過去に指摘された患者は肛門出血が生じた際に症状を癒核によると考えて癌の病悩期間が延長する可能性がある.今回肛門出血を主訴とする大腸癌症例で癒核の既往がある症例とない症例の病悩期間と予後を比較した.病悩期間は痔核の既往がある症例で平均7.9か月, ない症例では平均5.2か月と既往がある症例で長くなる傾向を認めた.病悩期間を3か月ごとに区切ると痔核の既往がない症例では3か未満が52.9%, ある症例で29.6%を占めた.Stage I, II症例では病悩期間が3か月未満で3年生存率が85.7%3か月以上で49.8%, Stage III, IV, V症例では3か月未満で75.9%3か月以上で32.4%であり有意差を認めた.病悩期間と生存率に関連性はないという意見もあるが, 今回の検討では肛門出血を主訴とする症例に関して病悩期間の短縮は予後を改善する可能性があり痔核患者の経験観察は慎重に行う必要がある.
  • 足立 俊之, 犬房 春彦, 森 亘平, 原 聡, 相良 憲幸, 松田 泰次, 安富 正幸
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2982-2989
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    新しい腺癌肝転移モデルを樹立した.1985年10月に当院で手術した直腸癌組織をヌ-ドマウスの背部に移植し, ヒト大腸癌細胞株KUM・RK-4Nを樹立し以後継代した-1990年2月にこの腫瘍より初代培養を行い培養細胞株を樹立した.この細胞をヌードマウスに尾静脈注入および前腸間膜静脈より注入したところ, 約2-3週間で肺および肝臓に明瞭な結節型の転移巣を生じた.ヒト癌でのヌ-ドマウスにおける転移はまれであり, この培養細胞の染色体分析およびアイソザイム分析ではマウス由来の癌と考えられ, また胸腺正常同系マウスへの移植は拒絶されたため, ヌードマウス由来腺癌と考えXK-4細胞と名ずけた.今回, このXK-4細胞の生物学的特性と肺および肝臓への転移能を検討した.
  • 緒方 裕, 磯本 浩晴, 白水 和雄, 荒木 靖三, 中川 喜一郎, 掛川 暉夫
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2990-2995
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直腸癌患者23例に対しOK-432の腫瘍近傍投与を行ない, peripheral blood lymphocytes (以下PBL), portal vein lymphocytes (以下PVL), tumor infiltrating lymphocytes (以下TIL) およびlymphnode lymphocytes (以下LNL) のnatural killer (以下NK) 活性の増強の有無を検討した-比較対照として無処置の25例を用いた.
    PBLおよびLNLでは, OK-432の局注によるNK活性の増強は認められなかった.TILでは, 17例中8例のほぼ半数に約20%以上の高い活性値が得られ, 対照例に比べ明らかに高値を示した, 局注例では, PVLのNK活性値はPBLに比べ有意に高値を示した.また, TILのNK活性高値例では低値例に比べてPVLのNK活性値が右意に高かった.
    以上, OK-432の腫瘍近傍投与によりTILおよびPVLのNK活性が増強され, 直腸癌に対する術前補助療法として本法の有用性とくに肝転移抑制効果が期待される.
  • 狩峰 信也, 上尾 裕昭, 麻生 宰, 有永 信哉, 安部 良二, 井上 裕, 渡辺 大介, 松岡 秀夫, 高椋 清, 永松 正哲, 秋吉 ...
    1991 年 24 巻 12 号 p. 2996-2999
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膠原病患者の腹部手術21例の臨床像と手術成績を左右した要因について検討を加えた.術前より臓器機能障害を有した症例が14例 (66.7%) と高率であり, 14例 (66.7%) にステロイド投与歴を認めた.予後良好群: 15例と在院死した予後不良群: 4例の2群に分けて予後を左右した要因を解析すると,(1) 緊急手術の場合 (p<0.05),(2) 腸管壊死, 急性膵炎など膠原病自体の進行に伴った病変に対する手術 (p<0.01) の予後が不良であり, 一方 (3) 膠原病の病態とは無関係に偶発した胃癌, 胆石症などの手術の予後は良好であることが示された (p<0.01).
    以上の結果より, 膠原病患者といえども, 積極的な外科的アプローチが可能なこと, および急性腹症に対しては早期の診断と手術適応の決定がとくに重要なことが示唆された.
  • 鈴木 孝雄, 柏原 英彦, 蜂巣 忠, 大森 耕一郎, 坂本 薫, 天野 穂高, 横山 健郎
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3000-3003
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性.腹部膨満を主訴として来院した.Computed tomography, 上部消化管透視などにて腹膜播種を伴った高度進行Borrmann 4型胃癌で切除不能と診断し, 化学療法を施行した.入院時の白血球数は2,400/mm3と低値であったが, 5-FU200mgの経口投与とシスプラチン100mgの腹腔内投与の合併療法, さらにシスプラチン100mg, エトポシド225mg, 5-FU2,250mg静脈内投与の合併療法を施行したところ腹水の消失と原発巣の改善を認め, 白血球の減少は軽度であった.以上から切除可能になったと判断し, 胃全摘術を施行した.切除標本の病理組織所見でもわれわれの術前化学療法の有効性が確認された.
  • 石川 巧, 木下 博明, 広橋 一裕, 久保 正二, 塚本 泰彦, 福嶋 康臣, 藤尾 長久, 李 光春, 中田 浩二, 塚本 忠司
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3004-3007
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.腹腔鏡検査時, 肝左葉表面より肝外に突出した腫瘤が認められた.しかし超音波検査, computed tomography検査, 血管造影によって腫瘤は同定されず, 腫瘍マーカーも正常であった.腹腔鏡所見によってのみ肝癌と診断され, 肝部分切除が施行された.切除標本において径1.1cmの主腫瘍とその近傍に2個の肝内転移が認められ, 組織学的に肝細胞癌と診断された.
    肝表面に存在した肝癌の早期発見と診断に腹腔鏡検査が有用であった症例を報告した.
  • 久保 章, 高橋 利通, 伊東 重義, 竹内 信道, 鈴木 良人
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3008-3011
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    本邦における腸チフスの発生は減少し年間100人程度になっているが, 現在でも長期保菌者がその感染源となることがある.今回われわれは, 胆道系長期保菌者を外科的治療で治癒せしめた症例を経験した.
    症例は70歳, 男性.糞便検査でチフス菌の排菌を指摘された.腹部超音波検査, computed tomography検査で胆石が認められ, 十二指腸液検査でチフス菌が検出された.腸チフス胆道系保菌者と診断し胆嚢摘除術, 経十二指腸乳頭括約筋形成術を施行した.術後, 胆汁, 糞便からの排菌は消失した.
    退院1年後の十二指腸液検査, 糞便検査でもチフス菌の排菌はなく治癒と判定した.
    胆道系長期保菌者では, 病巣の完全除去, 再発・遺残結石の防止が除菌の成否を決める.そのため, 症例により胆道ドレナージ手術も考慮する必要があると考えられた.
  • 戸田 宏一, 宗田 滋夫, 末岐 博文, 籾山 卓哉, 倉谷 徹, 山邊 和生
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3012-3016
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    本邦で3例目と考えられる症状を伴わないmicroglucagonomaの1例を経験した.患者は74歳の女性.胆碓およびBorrmann4型の進行胃癌の診断で当科入院.術前糖尿病以外にglucagonomaを考えさせる所見無く, また画像診断上膵に明らかな腫瘍は認められなかった.胃全摘, 脾膵尾部合併切除, 胆嚢摘出術施行した.膵に肉眼的に腫瘍は認められなかったが, 組織学的には悪性と考えられる径5mmの腫瘍細胞の増殖巣が多数認められ, 免疫組織化学的に胃癌に合併した悪性glucagonomaと診断された.術後6か月にて胃癌の腹膜播種にて死亡した.剖検にて径5mm以下のglucagonomaの小増生巣が膵にのみ多数認められた.Glucagonomaは本邦で本例を含め52例報告があるが径5mm以下ものにも悪性なものがあることを本例は初めて示し得た.今後このようなmicroglucagonomaにも治療の必要性が示唆された.
  • 加藤 俊二, 吉岡 正智, 田中 洋介, 橋本 正好, 樋口 勝美, 谷口 善郎, 長谷川 博一, 吉村 和泰, 恩田 昌彦
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3017-3021
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    われわれは, 基礎疾患に精神病を有する消化管異物の3例を経験した.
    症例1は, 45歳女性で分裂病にて他院入院中, 自殺目的で単3乾電池12本を飲み込み来院した.症例2は, 34歳女性で, てんかん, 精神薄弱にて他院入院中, やはり自殺目的でヘアピンと手芸針を飲み込み来院した.症例3は26歳男性で, てんかん, 精神薄弱を有し, 腹部膨満, 腹痛を主訴として来院, 入院7日目にイレウスの診断にて開腹術を行った.この症例は飲み込んだゴム手袋とビニール布による小腸の単純性イレウスであったが, 既往から異食症と診断された.3症例とも術後経過は順調で退院した.このような基礎疾患に精神病が認められる症例は臨床症状も不明瞭のことが多い, その手術適応の決定には慎重を要し, 術前検査とともにとくに家族や関係者からの十分な問診が必要と考えられた.
  • 西田 禎宏, 裏川 公章, 中本 光春, 川口 勝徳, 佐古 辰夫, 神垣 隆, 原之村 博, 中江 史朗, 西尾 幸男, 五百蔵 昭夫, ...
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3022-3026
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    本邦における虫垂子宮内膜症の報告は非常に少なく, また虫垂の特発性十二指腸瘻もまれである.今回われわれは十二指腸との内瘻を伴った虫垂子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は68歳.上行結腸癌にて当科入院となった. 画像診断より虫垂十二指腸瘻, 右卵巣嚢腫, 上行結腸癌の術前診断を得, 手術が施行された.虫垂は上行結腸の腸間膜側を上行し, 屈曲して十二指腸のthirdportion右下方で比較的強く線維性に癒着し, 内瘻を形成していた.手術は癒着を剥離し十二指腸の瘻孔部を直接縫合閉鎖した.病理組織学的には虫垂の漿膜下層に腺腔構造を認め, 内腔側に繊毛がみられたが, 間質成分や出血巣は認めなかった.本例は無症状に経過し, 閉経後に他疾患術後の病理学的検索にて偶然判明した, 右卵巣に同病変を伴う虫垂子宮内膜症であったが, 本症は骨盤内臓器にも併存することが多いため術前・術中の診断, 検索に留意し, 適切な手術が行われなければならないと思われた.
  • 藤野 幸夫, 村田 宣夫, 井上 勇
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3027-3031
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    内翻したメッケル憩室による腸重積症の1例について報告する.症例は51歳男性で, 腹痛, 腹部腫瘤, 下痢を主訴に来院した.腹部所見, 腹部超音波検査, computed tomography検査が, 腸重積症の診断に有用であった.腸重積との診断のもとで開腹すると, 内翻したメッケル憩室を先進部とした回腸-回腸-結腸型の腸重積であった.回腸部分切除, 端々吻合を行った.病理所見では, 異所性の膵組織が認められた.
    メッケル憩室による腸重積症は本邦において, 過去10年間で30例の報告があるが, 記載のあるものの中では, 1例を除いて23例は, メッケル憩室が内翻したものであった.
  • 斎藤 拓朗, 江尻 友三, 石井 俊一, 井上 仁, 元木 良一
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3032-3036
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸壁在神経叢の萎縮と神経節細胞数の分節的減少が原因と考えられる巨大結腸症を呈した慢性偽性腸閉塞症の1例を経験したので報告する.
    症例は57歳女性.幼少児からの排便異常はなし.腹部膨満と腹痛を主訴に来院し腸閉塞の診断で入院した.腹部は著明に膨隆し腹部単純X線像で上行結腸から横行結腸にかけて鏡面形成を伴う拡張を認め, 注腸造影では口側結腸の拡張を伴う下行結腸の攣縮性狭小化を認めた.保存的治療に反応しないため拡張した横行結腸に人工肛門を造設し, 2期的に人工肛門を含む横行結腸と狭小化した下行結腸を切除した.摘出標本に閉塞性病変はなく, 病理組織学的検索で攣縮性狭小化を示した下行結腸に著明な腸管壁在神経叢の萎縮および神経節細胞数の減少が認められた.術後経過は良好で, 術後10か月を経た現在も再発の兆候はない.
  • 大段 秀樹, 大城 久司, 山本 泰次, 田中 一誠, 稲垣 和郎, 住元 一夫, 前田 貴司, 檜井 孝夫
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3037-3041
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性で, 便潜血陽性を指摘され当科に受診した.幼児期より口唇に色素斑を認め, 25歳時に小腸ポリープによる腸重積のため小腸切除され, Peutz-Jeghers症候群 (以下, P-J症候群) と診断されていた.家族歴では, 母, 兄, 弟, 甥がP-J症候群と考えられた.大腸内視鏡検査を施行したところ, 大腸全体の多発性小ポリープ, 横行結腸と上行結腸に径4cmの有茎性ポリープ, S状結腸にBorrmann 2型様病変を認めた.手術はS状結腸切除術と可能なかぎりのポリペクトミーを行った.組織学的には, S状結腸腫瘍はmucinous carcinomaと診断された.切除ポリープは, すべてhamartomaであったが, 横行結腸, 上行結腸, 直腸のhamartomatous polypにadenomaの混在が認められた.
    P-J症候群におけるhamartomatous polypに, 異型性変化をとらえた報告例は少なく, その集計を加えて報告する.
  • 片井 均, 丸山 勝也, 大谷 吉秀, 窪地 淳, 吉野 肇一, 石引 久彌
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3042
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 富山 光広, 大野 耕一, 奥芝 知郎, 佐藤 正文, 中島 公博, 加藤 紘之, 田辺 達三
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3043
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 瀬尾 伸夫, 石山 秀一, 布施 明, 佐藤 淳, 塚本 長
    1991 年 24 巻 12 号 p. 3044
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
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