日本消化器外科学会雑誌
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25 巻, 11 号
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  • 三吉 博, 四方 淳一, 戸倉 康之
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2671-2676
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道手術後頸部食道胃管吻合部およびその周囲の粘膜面組織血流量について主として良性吻合部狭窄発生との関係を中心にendoscopic laser-Doppler flowmetryを用いて臨床的検討を加えた, 対象は食道に異常を認めなかった健常者 (対照群) 24例と, 胸部食道癌で過去に食道切除後胃管にて再建術を受けた14例とした. 健常対照群では胃穹薩部, 腹部・胸部・頸部食道すべてにおいて26 (単位ml/min/100g, 以下同じ) 以上の良好な血流の存在が確認された. 一方, 食道手術後群では胃管先端 (旧胃穹窪部), 吻合部, 頸部食道の粘膜面組織血流量はすべて25以下の低値を示した. さらに食道術後群を吻合部狭窄の有無により2群にわけると吻合部の粘膜面組織血流量は吻合部狭窄 (-) 群で25, 吻合部狭窄 (+) 群で10と吻合部狭窄 (+) 群で有意に低値を示し, 頸部食道良性吻合部狭窄発生と粘膜面組織血流量の低値との相関性が示唆された.
  • 国崎 主税, 杉山 貢, 山本 俊郎, 片村 宏, 伊東 重義, 金 正文, 佐藤 芳樹
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2677-2681
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    急性胃粘膜病変の年代的推移を考察し, 発症の予防, 治療法を検討する目的で臨床的に統計評価した. 1979年8月から1991年12月までに横浜市立大学医学部第2外科, 同救命救急部において経験した急性胃粘膜病変72症例について年代別に前半6年と後半6年の2群に分け, その背景疾患, 治療, 予後について検討した. 前半の症例数は周術期38例, 非周術期18例の計56例であり, 後半の症例数は周術期7例, 非周術期9例の計16例と減少した. また, 死亡率は前半の43.1%から後半の14.3%と著しく減少した. 両期間において肝疾患, 呼吸器疾患, 脳血管障害などの合併症を有する症例において急性胃粘膜病変の発症が多く認められた. 周術期管理の向上に加え, H2-receptor antagonistを初めとする薬剤の普及に伴い急性胃粘膜病変の発生率が減少し, 手術症例, 死亡症例も減少した. 急性胃粘膜病変の発症予防, 治療にはH2-receptor antagonist, 防御因子増強剤の投与が有用と考えられた.
  • 添田 耕司, 落合 武徳, 永田 松夫, 鈴木 孝雄, 磯野 可一
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2682-2689
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌胃切除後の骨病変および骨代謝について検討した. 対象症例は臨床的に癌再発を認めない胃癌術後外来例12例であった. 平均年齢は64歳, 平均術後期間は33か月, 幽門側胃切除7例, 胃全摘5例であった. 骨関節症状は6例に認めたが, 術後発症は3例であった. 65歳以上群と術後30か月以上群で手指骨X線像に変化が多く認められたが, Microdensitometry (MD) 法では差がなかった. 65歳以上群7例では未満群5例に対しparathyroid hormone (PTH)-Intactおよび無機リン (IP) が高値を示し, glomerular filtration rate (GFR) および血清Caが低値を示していた. 胃全摘群では幽門側胃切除群にくらべPTH-MID, オステオカルシンおよびアルカリフォスファターゼ (AIP) が高値を示した. またオステオカルシンとPTH-MIDおよびAIPとの間に相関が認められた. 以上より, 65歳以上群ではGFRの低下とともにosteoporosisが進行し, 胃全摘群ではCa摂取量の低下によりオステオカルシンなどが高値を示し, 骨代謝回転が異常に亢進しているものと推察された.
  • in vivo, in vitroでの実験的検討
    田口 順, 門田 俊夫, 玉態 正悦
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2690-2698
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Endotoxinショック時の循環・臓器障害への活性酸素の関与と, これに対する抗酸化剤・蛋白分解酵素阻害剤の効果をラット実験モデルで検討した. Endotoxin 4mg/kgを静注して血圧・肝組織血流をモニターし, 好中球O2-産生能, 肝組織過酸化脂質を計測し, 肝臓からの化学発光の変化, 肝細胞mitochondriaの変化を観察した (n=16). その結果, 一過性の血圧・血流の低下と同時に, 好中球O2-産生能の上昇, 肝組織過酸化脂質の増加, 肝臓からの化学発光の増強を認めた, また, 肝細胞mitochondriaの崩壊が観察されendotoxinショック時の病態に活性酸素が関与していることが示唆された. さらにsuperoxide dismutase 1.5万単位+catalase 4mg, CoQ10 5ml/kg, Solcoseryl 4ml, nafamostatmesilate 10mg/kg, ulinastatin 10万単位/kg (各n=6) の前投与を開始して同様に実験を行い比較した結果, 各薬剤で抑制傾向が認められ抗酸化剤・蛋白分解酵素阻害剤の予防効果を認めた
  • 黒川 剛, 原田 明生, 錦見 満, 黒江 幸四郎, 岸本 若彦, 野浪 敏明, 中尾 昭公, 高木 弘
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2699-2703
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝虚血再灌流時における高エネルギーリン酸化合物の代謝動態と, これに対する薬剤の影響をラットを各群5匹ずつ用い実験的に検討した. この結果30分虚血群と15分虚血群の比較では, 30分再灌流後の肝ATPレベルはそれぞれ, 2.58±0.23, 1.93±0.20μmol/gと30分虚血群で低値であった. ヌクレオチドの終末代謝産物である肝組織中hypoxanthine, xanthineの増加は, 30分虚血後でも微量であった. したがってヌクレオチドの分解は軽微であり, 細胞保護作用を有する薬剤により, 再灌流後にエネルギーレベルの回復が望めるものと考えられた. Thromboxane A2合成酵素阻害 (CV4151) およびulinastatinは30分再灌流時における肝ATPレベルをそれぞれ2.81±0.13, 2.60±0.37μmol/gと改善した. この機序として, 前者は肝微小循環の改善, 後者はcytotoxic factorの消去作用が考えられた.
  • 柚木 正行
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2704-2709
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝網内系機能すなわちKupffer細胞機能の変化を中等量および大量肝切除Wistar系雄性ラットのコンピューター肝シンチグラフィーによる99mTc-millimicrosphered albuminの肝摂取率と分解率 (代謝率) 測定により観察した. 99mTc-millimicrosphered albuminの肝摂取率と分解率は同一肝シンチグラフィーの肝時間活性曲線の解析から得られ分解率はKupffer細胞の代謝率 (k) として評価した. ラット30%および70%肝切除の術前, 術後1, 3, 5, 7日目の99mTc-millimicrosphered albuminの肝摂取率および分解率を測定した. 30%肝切除では, 肝重量あたりの分解率は術後1日目に低下したが, 術後5日目には正常より高値を示しKupffer細胞の活性化が示唆されたが, 肝摂取率の変動は少なかった. 70%肝切除では, 摂取率と分解率は著しく低下し回復は術後5日目以降まで延長した. 肝分解率は肝切除前後の肝網内系機能の特異的かつ鋭敏な指標であると考えられた.
  • 渡辺 敬, 鬼束 惇義, 千賀 省始, 宮田 知幸, 飯田 辰美, 林 勝知, 広瀬 一
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2710-2716
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸 (以下OJ) 症例に対して肝切除術を施行する際肝門部血行遮断による出血の制御は有効な方法である. 肝は虚血に陥るがOJ肝に対する虚血の影響は明らかでない. そこでOJ肝虚血再灌流時の病態を解明する目的で以下の実験を行った. 総胆管を結紮し, 1, 2, 3, 4週間経過したラット (OJ群) をおのおのbile duct ligation (BDL), BDL-1W群, BDL2W群, BDL-3W群, BDL-4W群と4群に分け, 15分, 60分の虚血実験を行い同時間虚血とした正常肝の対照群と比較検討した, 15分虚血実験では, BDL-2W群, BDL3W群, BDL-4W群においてはadenosine5′-triphosphate (以下ATP) は虚血前すでに対照群より低下していたが, 再灌流後の回復率には差がなかった. また組織血流量の再灌流後の回復率にも差がなかった. しかし60分虚血実験ではBDL4W群においてATP, 組織血流量の回復率とも対照群に比べ有意に低値であった. すなわち, 胆管閉塞期間が長期になると, 60分間虚血に対する忍容性は対照群より劣るものと考えられた.
  • 角谷 直孝, 小西 孝司, 辻 政彦, 黒田 吉隆, 藪下 和久, 谷屋 隆雄, 福島 亘, 佐原 博之, 斉藤 文良, 三輪 淳夫
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2717-2723
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去16年間に経験した胆嚢癌84例を対象として, 癌壁深達度からみた胆嚢癌の進行度, 進展様式, 手術術式, 予後について検討した. 切除率は前期68.4%, 後期97.8%であった. 胆嚢癌取扱い規約によるm癌は胆摘のみでその予後は良好であった. ss癌, se, si癌ではそれぞれ, n (+) は71, 0%, 78.3%, hinf (+) は31.3%, 86.7%, binf (+) は41.4%, 89.5%であった. ss胆嚢癌の5例に5年生存を認め, 5年生存率16%, 治癒切除例に限ると31.3%の5年生存率をえたが, se, si癌では2年1か月の癌死例が最長生存であった. リンパ節転移からみた予後では, 5年生存例はss以下の症例でn0, ないしn1であった. 根治度からみた予後では, 5年生存例は相対治癒切除以上でss以下の症例であった. したがって, ss以上の進行胆嚢癌の治療成績を向上させるためには, リンパ節転移状況, 肝浸潤を考慮して肝切除, 胆管切除, 膵頭十二指腸切除を追加する必要があると思われた.
  • 藪下 和久, 小西 孝司, 辻 政彦, 斉藤 文良, 佐原 博之, 福島 亘, 角谷 直孝, 谷屋 隆雄, 黒田 吉隆, 三輪 淳夫
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2724-2731
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去16年間に経験した中下部胆管 (Bm, Bi) 癌手術症例49例につき, 臨床病理学的所見, 予後に関し検討した. 全症例における切除率は91.8%, 切除例の5年生存率は31.2%であり, 7例の5年生存例 (長期生存例) を得た. Stage分類では, Stage III, IV症例が過半数を占め, Stageの進行とともに生存率の低下を認めた. 肝転移例は8.2%, 腹膜播種例は4.1%, リンパ節転移 (n) 例は37.8%であり, リンパ節転移陽性例の生存率は陰性例に比べ有意に低かった. Bi癌, Bm癌とも高頻度に膵臓浸潤 (panc), 十二指腸浸潤 (d) を認めたが, 浸潤の有無において予後に差は認められなかった. 組織学的には, 高頻度にリンパ管浸潤 (ly), 神経周囲浸潤 (pn) を認めたが, 浸潤陰性例の予後は良好であった. 長期生存例からみた場合, 予後規定因子としてn, ly, pn因子が重要であり, panc, d因子は予後規定因子とはなりえず, 取扱い規約におけるStage分類を再考する必要性が示唆された.
  • 陳 大志, 恩田 昌彦, 森山 雄吉, 中島 米治郎
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2732-2742
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    虚血によるイヌ腸管壁在神経叢障害の発生および進展様式を免疫組織化学的手法で検索し, 壁在神経叢障害の程度にはS-100蛋白の染色性と組織学的所見をあわせ, スコアー化し検討した. 対照群では壁在神経叢はS-100抗体により濃染され, 組織学的変化はなかった. 虚血群では小腸分節の支配動, 静脈を遮断した後30分群では染色性の低下, 神経細胞と線維の変性などが見られ, 粘膜下と筋層神経叢の障害度スコアーはそれぞれ2.4, 0.6であった.虚血150分では染色性の消失, 神経線維の膨化および神経細胞の壊死などが著明になり, 障害度スコアーは9.4, 7.9に進行した. Silicon membraneoxygeneratorを用いた低酸素血灌流群においてもほぼ同様な障害が認められた.一方, マウスを用いたischemia-reperfusionの実験では, 虚血60分群の粘膜障害は血行再開後3日で回復したが, 壁在神経叢障害の回復には14日間を要した. 虚血90分群では血行再開14日目で粘膜障害を回復したにもかかわらず, 神経叢の障害に明らかな回復はなく, 虚血120分群では障害の進行が認められた.
  • 今村 幹雄, 山内 英生
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2743-2749
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    ビーグル成犬を用いて消化吸収障害モデルとして75%の (遠位側) 小腸大量切除を施行し, 6か月後まで栄養状態と血中ビタミンD分画の変動を観察し, 6か月後には腰椎を摘出し組織学的検討と骨形態計測を行った.また, 術後, ウルンデオキシコ-ル酸 (UDCA) と活性型ビタミンD3製剤 (1α (OH) D3) の併用投与や後者の単独投与を行い, その効果を検討した.
    遠位側小腸大量切除により体重減少, 水様便, 消化管通過時間の短縮など消化吸収障害が発生したが, UDCAと1a (OH) D3の併用投与は栄養状態を改善した.また, 25 (OH) Dや24・25 (OH) 2Dの減少などビタミンD代謝にも明らかな変化をもたらした.術後6か月では類骨の量と幅の減少, 骨形成率の低下などが生じ骨基質形成不全が示唆され, 長期経過後には骨量減少が生ずることが予想された.UDCAおよび1α (OH) D3の併用投与は骨基質形成障害を軽減した.
  • 山本 雅由, 杉田 昭, 山崎 安信, 原田 博文, 瀧本 篤, 荒井 勝彦, 竹内 信道, 石黒 直樹, 福島 恒男
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2750-2754
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    横浜市大第2外科で治療した若年者の潰瘍性大腸炎25例中, 成長障害の合併は5例であり, それらに対して手術の効果を検討した.全例, 全大腸炎型で男女比は4: 1であった.手術適応は重症発作が2例, 難治例が3例であり, 3例に回腸直腸吻合術, 2例に回腸肛門吻合術を行った.手術時の平均年齢は14歳 (13~15歳), 発症より手術までの病悩期間は平均3.8年 (4か月~10年2か月) で, prednisolone投与量は平均10,066mg (1, 560~23,375mg) と多量であった.成長障害は身長, 体重を指標に.手術前と手術後平均3.8年後 (2~6年) とを比較した.手術前の身長は全例-1SD以下であったが, 手術後は3例が-1SD以内に改善し, 改善度は平均+0.8SDであった.手術前の体重は4例で-1SD以下であったが.手術後は3例が一1SD以内に改善し, 改善度は平均+0.9SDであった.重症例やステロイドを長期投与された成長障害をもつ若年者は術後に改善がみられ, 手術治療が有効であった.
  • 中江 史朗, 裏川 公章, 植松 清
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2755-2759
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌でのc-erbB-2蛋白発現と臨床病理学的諸因子, DNA ploidy patternとの関係を検討した.大腸癌切除44例の凍結標本でモノクロナール抗体を用いてc-erbB-2蛋白を染色し, flow cytometerで核DNA量を解析した.蛋白陽性率は25/44 (56.8%) で, 組織型では高分化型19/21, 中分化型4/7, 低分化型1/2, 粘液癌1/1, 深達度別ではm0/1, sm 1/2, pm 1/2, ss (a1) 6/10, s (a2) 15/23, si (ai) 2/6であった.リンパ節転移ではn (-) 16/26, n (+) 9/18と差はなく, 脈管侵襲ではly (-) 2/8, ly (+) 23/36と侵襲例の染色率が高い傾向がみられ, stageではI 1/4, II 11/16, III 3/6, IV 1/8, V/9/10で, stage VではI~IVに比べ陽性率が有意に高かった. DNA ploidy pattern別では, diploidy 11/14, aneuploidy 14/28で差はなかった. stage Vで発現頻度が有意に高かったことから大腸癌におけるc-erbB-2蛋白の発現は遠隔転移と関連し, DNA ploidyとは独立した悪性度の指標となる可能性が推察された.
  • 今田 敏夫, 須田 嵩, 鬼頭 文彦, 岡田 賢三, 岡田 卓子, 福沢 邦康, 森脇 義弘, 秋山 浩利, 竹村 浩, 松本 昭彦
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2760-2764
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌31例 (62切片) を対象にして, 癌が浸潤していく過程において, 核DNA量, DNA index, S-phase fractionに, どのような変化が生じるか (癌のheterogeneity) を明らかにすることを目的とし, 本研究をおこなった.
    1個の癌巣内の表層, 深層組織間でDNA ploidy patternの異なる例は, 31例中3例 (9.7%) のみで, DNA indexは表層2.18, 深層2.11と差はなく, またS-phase fractionも, 各々, 30.4%, 28.6%と有意差を認めなかった.
    以上の結果から, 大腸癌において, 表層の癌が深部浸潤する場合は1つのクローンのみが浸潤すると考えられ, 表層と深層の癌細胞間のDNA heterogeneityは少ないと考えられた.
  • 長谷 和生, 望月 英隆, 小池 聖彦, 中村 栄秀, 上野 秀樹, 横山 幸生, 栗原 浩幸, 岩本 一亜, 吉村 一克, 山本 哲久, ...
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2765-2772
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直腸癌297例を対象に, 簇出-腫瘍先進部において低~ 未分化な癌細胞が周囲組織間隙に散布するように認められる組織学的所見-について検討した.簇出 (bd) をその程度によりbd0からbd3の4段階に分けると, 中等度以上のbd2, 3症例は116例, 39%に認められた.bd2, 3症例はbd0, 1症例に比し治癒切除率 (58%: 74%, p<0.005), 治癒切除例における再発率 (51%: 19%, p<0.005), 累積5年生存率 (46%: 79%, p<0.001), 累積10年生存率 (38%: 64%, p<0.05) など, いずれも不良であった.一方Dukes分類別にみると, bd2, 3症例はDukes'Aで8%, Bで18%, Cで57%に認められ, 病期の進行とともに頻度が増加した.Dukes'Bでbd2, 3症例の再発率・累積生存率曲線は, Dukes'Cでbd0, 1の症例と差を認めなかった.以上より簇出は癌の進行度, 予後を示す指標として有用なことが示され, bd2, 3症例はDukes分類にかかわらず予後不良群として厳重な術後追跡と集学的治療の必要性が示唆された.
  • 特にdouble stapling techniqueの有用性について
    田川 努, 太田 勇司, 仲野 祐輔, 永安 武, 足立 晃
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2773-2778
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1983年1月から1990年8月までの直腸前方切除術と, 肛門側切除端が直腸におよぶS状結腸切除術の再建時吻合法でdouble stapling technique (以下DSTと略す) 15例, 手縫い法10例を比較検討した.このうち低位前方切除術施行例における吻合後の肛門縁-吻合部間平均距離はDSTで5.9±2.5cm, 手縫い法で8.7±0.7cmで有意にDSTが低位であった (p<0.05).平均手術時間はDSTで212.5±52.5分, 手縫い法では296.0±42.5分で有意にDSTが短かった (p<0.05).全症例の手術合併症は, DSTは縫合不全, 吻合部出血が各1例で吻合部狭窄はなく, 手縫い法では腹壁膿瘍2例のほか, 軽度の吻合部狭窄が1例に見られた.吻合様式はlinear staplerをcircular staplerが適切な位置でカットする端端型IとIIが望ましく, staplerが接する端側型Iは避けるべきで, 端側型IIによる再建はハルトマン法術後の2期手術再建時に有用であった.DSTは高位前方切除術, 肛門側切除端が直腸におよぶS状結腸切除術にも応用でき, 低位前方切除術には特に有用と考えられた.
  • 中村 泰啓, 前田 迪郎, 貝原 信明
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2779-2783
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性. 胃検診にて胸部上部食道に隆起性病変を指摘され当科を紹介された. X線造影検査, 内視鏡検査, CTなどの所見から良性の食道粘膜下腫瘍が考えられ, 経頸部的に非開胸で腫瘤摘出を行った. 腫瘤は大きさ2.8×1.5×1.5cmで被膜を有さない弾性硬なものであった. 術後の病理学的検索にて, 悪性リンパ腫などとの鑑別を要したが, 粘膜関連リンパ組織 (mucosa-associated lymphoid tissue) の増殖により腫瘤を形成したと考えられる極めてまれな食道粘膜下腫瘍であった. 今後, 食道に限らず消化管の粘膜下腫瘍の鑑別診断に際して考慮すべきものであると考えられ, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 今野 修, 木暮 道彦, 遠藤 幸男, 小野 友久, 阿部 幹, 尾形 真光, 北条 洋, 井上 仁, 元木 良一
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2784-2788
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道と腎孟の同時性扁平上皮癌症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は78歳の男性で, 50歳時に急性腎炎の既往あり. 心窩部不快感を主訴とし近医受診, 食道癌の診断となり当科転院. 術前検査の腹部CTで左腎上極に腫瘤陰影を認め, 同時性重複癌か食道癌の孤立性腎転移の診断で手術 (非開胸食道抜去術, 経腹腔的根治的腎摘除術) を施行した. 摘出標本の食道は深達度smの中分化型扁平上皮癌で, 脈管侵襲はly, vともに陽性, 腎では実質内に増殖する高分化型扁平上皮癌を認めた. 食道癌の孤立性腎転移との鑑別が問題となったが, 腎腫瘍近傍の腎孟移行上皮に高度の異形性を認め, 腎孟原発扁平上皮癌と判断した. 術前の尿沈渣で扁平上皮を認めたことから, 扁平上皮化生をおこした移行上皮が癌化したものと推論された.
    腎孟扁平上皮癌は両側性のこともあり注意深い経過観察が必要であるが, 術後2年の現在も再発の徴候なく健在である.
  • 岡田 憲幸, 花木 宏治, 木本 秀治, 川口 義弥, 河本 和幸, 阿曽沼 克弘, 伊藤 雅, 吉田 泰夫, 記井 英治, 河野 幸裕, ...
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2789-2793
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    脳回様に肥厚した胃巨大皺壁症に多発潰瘍とmucosal bridgeを伴ったMenetrier病の1症例を報告した. 症例は74歳女性. 嘔吐, 低栄養をきたし来院. 胃透視で, 壁の硬化不整, 憩室様バリウム貯留を認め, 胃内視鏡検査にて多発潰瘍を伴う胃炎と診断されたが, scirrhous型胃癌を否定できず胃全摘術を施行した. 切除標本では胃大彎側ほぼ全体を占める巨大皺壁のあいだに浅在性潰瘍が多発しており, 多数のmucosal bridgeを形成していた. 組織学的にbridge表面の粘膜は胃底腺, 底部は瘢痕と幽門腺からなり, 肥厚性胃炎に生じた下掘れ潰瘍がmucosal bridgeの形成に関与していると考えられた.
  • 落合 正宏, 今津 浩喜, 船曵 孝彦, 丸上 善久, 山口 久, 亀井 克彦, 福井 博志, 長谷川 茂, 新井 一史, 谷口 正美, 浦 ...
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2794-2798
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌の卵巣転移は臨床上しばしぼ経験するが, 早期胃癌の卵巣転移報告例はいまだ少なく, 本邦では現在まで6例を数えるのみである. 今回われわれは卵巣転移を契機に発見された早期胃癌の1例を経験したので報告する.
    症例は33歳の女性で, 検診にて卵巣腫瘍を発見され, 両側卵巣摘除を行いKruckenberg腫瘍と診断した. 術後の検査で胃角上部後壁のIIc型早期胃癌を認め, 幽門側胃亜全摘, R2の手術を施行した. 病理所見は印環細胞癌, sm, ly2, v0, n2 (+) であった. 2度にわたる開腹所見にてP0, H0であり, 後腹膜リンパ節の腫大は触知しなかった. 術後1年の現在, 再発の徴候を認めていない.
    胃癌の卵巣への転移経路については古くから検討されてきたが, 対象のほとんどが進行癌で複数の転移巣を有することが多いため解析が困難なことが少なくなかった. 早期癌で1この点で有利であると考え, 集計報告6例を合わせ転移経路についての考察を加えた.
  • 佐藤 篤司, 鳥居 敬, 小林 学, 春日井 貴雄, 木村 昌弘, 堀田 哲夫
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2799-2803
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    同一胃に癌と平滑筋肉腫が独立して併存した1例を報告した. 症例は73歳の男性で, 歩行時浮遊感を主訴に来院した. 血液一般検査でHb 6.7g/dlと著明な貧血を認めた. 上部消化管造影X線検査・上部消化管内視鏡検査では, 胃底部後壁に粘膜下腫瘍, 体部前壁にBorrmann 2型様胃癌がそれぞれ独立して併存していた. 生検の結果は平滑筋腫瘍, adenocarcinomaだった. 諸検査後, 胃全摘術を施行した. 平滑筋腫瘍は胃の内腔へ10×6×5.5cm, 壁外へ11×9×7.5cmの内外型発育を示す巨大な平滑筋肉腫だった. その断面は白色分葉状で, 出血・壊死巣が散在していた. 癌はmoderately differentiated papillo-tubular adenocarcinomaで, 深達度は粘膜下層までにとどまり, リンパ節転移のない早期癌だった. 同一胃に癌と平滑筋肉腫が独立して併存することはまれであり, 本邦では自験例を含め28例の報告があるのみである. 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 島貫 公義, 宮田 道夫, 萬代 恵治, 山田 茂樹
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2804-2807
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝膿瘍腔の経皮経肝膿瘍ドレナージ (percutaneous transhepatic abscess drainage: 以下PTAD) 施行時に胃内腔との交通を認め, 同時に進行胃癌が発見された症例を報告する. 症例は60歳の男性, 発熱を主訴とし, 腹部超音波検査, computed tomography検査にて肝左葉に肝膿瘍を認めた. 肝膿瘍はPTADと抗生剤による腔内洗浄により退縮し, 炎症所見の消失を認めた. 膿瘍腔造影において胃内腔との交通を認め, 胃内視鏡および上部消化管造影検査を施行したところBorrmann分類不能な進行胃癌を認めた. 肝膿瘍の原因検索を行ったが, 肝癌, 肝転移, および胆道系の病変は認められず, 胃全摘術と肝外側区域切除を施行した. 病理所見では切除肝の被膜への胃癌浸潤を認めたが, 膿瘍形成部位での癌浸潤は確認されなかった. 胃癌の壁外性直接浸潤および穿通により, 肝被膜破綻をきたし, 消化液による肝臓実質の壊死および感染にて肝膿瘍を形成したものと思われた.
  • 小林 道也, 緒方 卓郎, 金子 昭, 浜田 伸一, 松浦 喜美夫, 荒木 京二郎
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2808-2812
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の十二指腸浸潤を内視鏡的に診断しえた1例を経験したので報告する. 症例は47歳の男性で, 全身倦怠感を主訴に近医受診. 上部消化管透視, CTにて十二指腸平滑筋肉腫とその多発性肝転移の疑いで当科紹介入院となる. 貧血と肝機能障害を認め, HBs Ag (+), α-fetoprotein高値で血管造影で肝細胞癌と診断された. 内視鏡で十二指腸球部前壁に茶褐色の不整な潰瘍を認め, 生検でEdmondson III型程度に相当する肝細胞癌の所見が得られた. 以上より肝細胞癌の十二指腸浸潤と診断し十二指腸球部の潰瘍からの出血のため開腹術が施行された. 肝左葉より肝外性に発育した腫瘍が十二指腸球部に直接浸潤していた. 術後38日目に肝不全で死亡した. 剖検所見では肝細胞癌が肝左葉を中心として発育し, 両葉に多数の肝内転移を認め連続性に十二指腸へ浸潤し瘻孔様になっていた. 十二指腸への転移, 浸潤例はまれで, 本邦での報告例はわずか11例のみである. 文献的考察を加えた.
  • 桜町 俊二, 木村 泰三, 吉田 雅行, 小林 利彦, 松田 寿夫, 後藤 秀樹, 高林 直記, 今泉 強, 原田 幸雄
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2813-2817
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    近年の消化性潰瘍に対する内科治療の進歩はめざましく, これに伴って外科治療は, その侵襲の大きさゆえに適応を縮小してきた. 今回われわれは, 十二指腸潰瘍の外科治療として行われている選択的近位迷走神経切離術を低侵襲に行うことを目的として, 本術式を腹腔鏡下に施行した. 症例は51歳男性で, 十二指腸潰瘍の再発例である. 5本のトラカールを挿入し, 腹部食道から前庭部のcrow's footの手前までにわたって胃壁に進入する迷走神経の枝を前後枝とも選択的に切離した. 術中術後に問題なく, 創痛は軽度で, 回復はすみやかであった. 術後1か月の胃液検査では, 基礎分泌, テトラガストリンによる刺激分泌の減酸率はそれぞれ70.9%, 42.7%であり, Hollander testは陰性であった. 本手術は操作が困難で熟練を要し, 時間がかかるという問題点がある. 手技および器具の改良により, 安全容易なものとすることが, 本手技の普及のために必要と考えられた.
  • 伊藤 研一, 久米田 茂喜, 岩浅 武彦, 堀 利雄, 牧内 正夫
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2818-2822
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    小網原発のリンパ管腫を経験したので報告する. 症例は37歳の女性, 腹部膨満感を主訴に来院. 腹部超音波検査, 腹部CT検査で肝左葉と連続した多房性腫瘤と考えられたため, 術前巨大肝嚢腫と診断し手術を施行した. しかし, 開腹すると肝とは完全に独立し, 胃小轡に付着した多房性腫瘤が認められ, 小網原発の嚢腫であった. 摘出標本は19.5×13.5×10.0cm, 重量940gの巨大な嚢腫であり, 病理組織学的にはリンパ管腫と診断された. 小網原発のリンパ管腫は比較的まれであり, 本邦では自験例も含め, 現在までに22例報告されているにすぎない. 腹部CTや超音波検査などの画像診断で嚢腫の所見が比較的はっきりしているにもかかわらず, 術前に確定診断に至った症例は報告例の中でも1例しかなく, 認識の不十分な疾患と考えられる. 文献的に本疾患の特徴を考察したので, 併せて報告した.
  • 古谷 四郎, 大守 規敬, 今井 茂郎, 辻 尚志, 川上 俊爾, 小野 監作, 大塚 康吉, 佐藤 泰雄
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2823-2827
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝後面下大静脈損傷の重症肝破裂の1例を肝右葉切除, 損傷部縫合により救命したので報告した. 患者は20歳の女性で, 交通事故で搬入され2時間後ショックとなり, 受傷6時間後に緊急手術を行った. 肝右葉に破裂あり, 用手圧迫を試み, 出血量が減少したので肝門部処理後肝右葉切除を行った. 右肝静脈の完全断裂と下大静脈1.5cmの損傷が2か所見られ, それぞれ連続縫合止血した. また空気塞栓の予防のために術野を炭酸ガスで充満させた.
    下大静脈損傷肝破裂は救命率も低いが, 用手による圧迫とPringle maneuver法の併用で一時的止血を行ってから, 循環動態の回復を待って肝切除を行い下大静脈損傷部の縫合を行う方法が大量出血を制御でき, 患者を救命できると思われる.
    また空気塞栓予防には術野を炭酸ガスで充満させるのが有効である.
  • 嶋村 剛, 中島 保明, 佐藤 直樹, 松岡 伸一, 三澤 一仁, 神山 俊哉, 長淵 英介, 今 裕史, 川村 秀樹, 津田 一郎, 宇根 ...
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2828-2832
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    門脈本幹に腫瘍塞栓を合併する肝細胞癌3例において, 腫瘍塞栓に対し放射線照射を施行し, 腫瘍塞栓の縮小後に肝切除を行った. 症例は39歳の女性, 57歳の男性, 38歳の男性で, 術前に腫瘍塞栓に対し30.0~34.5Gyの放射線照射を施行した. 全例で腫瘍塞栓の門脈1次分枝までの退縮を認め, おのおの右3区域切除, 拡大右葉切除, 右葉切除を定型的に行った. 病理組織学的変化では, 全例に腫瘍塞栓の変性, 壊死が高度に認められ, 術中操作による経門脈性播種の危険性を低下させると考えられた. 術前放射線照射を併用しなかったVp3切除症例の平均生存期間が診断より7.5か月, 術後無再発期間の平均が1.7か月であったのに対し, これら術前放射線照射を併用した肝切除症例では, おのおの13.3か月, 5.3か月と有意に延長しており, 術前放射線照射併用肝切除術の有効性が示唆された.
  • 田中 厚志, 伊関 丈治, 中島 信明, 鈴木 憲次, 渡辺 稔, 袴田 光治, 高木 正和, 中上 和彦, 遠山 和成
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2833-2837
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    体外照射ないし胆管腔内照射後にexpandable metallic stent (EMS) を用いて内胆汁瘻化しえた2症例を経験した.症例1は61歳の男性で, 胃癌術後に肝左葉から肝門部に至る広範囲な転移を生じ, 圧排性の完全胆道閉塞を認めた.Linacによる50Gyの体外照射を実施し閉塞部の再開通を確認後, 同部にEMSを留置し内胆汁瘻化を達成した.症例2は78歳男性で, 下部胆管癌による完全胆道閉塞を認めた.体外照射28Gyを実施し閉塞部の再開通を確認した後, 60Coのremote afterloading system (RALS) を用いた胆管腔内照射に変更し, 4回の照射終了後にEMSを留置し内胆汁瘻化を達成した.両症例とも外胆汁瘻チューブから解放された状態で退院することができた.
    手術非適応と判断された悪性胆道閉塞に対し, 放射線照射およびEMSの併用により内胆汁瘻化を図ることは, quality of lifeを高めるうえで有用と考えられた.
  • 内山 正一, 高橋 真佐司, 矢野 正雄, 庄司 佑
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2838-2842
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵のsolid and cystic tumor (SCT) の1例を経験したので報告する.症例は18歳の女性で主訴は心窩部痛と背部痛.胃内視鏡検査で胃の圧排像を指摘され入院となる.入院時臨床検査所見では異常を認めず.超音波検査, computed tomography, magnetic resonance imaging検査より膵体部に発生したSCTを強く疑い手術を施行した.開腹したところ, 膵体部によく被包化された9×7×7cmの腫瘤が存在し, 膵体尾部切除兼脾摘術を行った.肉眼的に厚い線維性被膜を有し内部に著明な出血壊死巣を認めた.病理組織学的には腫瘍細胞は充実性の増殖を示し, 一部に偽乳頭状の構造が見られ, xanthoma cellの集簇とCholesterol granulomaの出現を認めた.免疫組織学的にはalpha-1-antitrypsinが陽性で, 電顕上zymogen様顆粒が認められた.以上よりSCTと診断した.術後6か月の現在再発なく健在である.
  • 山崎 信保, 尾池 文隆, 真部 一彦, 長谷川 正樹, 高木 健太郎, 小山 高宣
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2843-2847
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸にて発症し, 門脈・右肝動脈の合併切除を必要とした漿液性膵嚢胞腺腫の1例を経験したので報告する.患者は59歳の女性で, 全身掻痒感と黄疸を主訴として来院, 上腹部に腫瘤を触知した.腹部超音波検査・computed tomographyにて直径6cmの腫瘍を膵頭部に認め, 経皮的胆嚢ドレナージよりの胆汁細胞診でClass Vが得られたため膵頭十二指腸切除術を施行した.しかし腫瘍の門脈への強固な癒着と, 上腸間膜動脈より起始した右肝動脈の巻き込みを認めたため, この両者の合併切除を余儀なくされた.右肝動脈の再建は失敗し, さらに左肝動脈も術中操作の影響で術後の血流が途絶したが, 肝不全症状は術後一過性であり患者は順調に回復した.切除標本より漿液性嚢胞腺腫であることが判明, 術前胆汁細胞診も胆道由来の再生上皮と訂正されたが, 良性腫瘍であるにもかかわらず, 門脈だけでなく膵内胆管・主膵管壁にも強い圧迫伸展を示す, 興味深い症例であった.
  • 又吉 一仁, 今野 修, 寺島 信也, 三浦 純一, 木暮 道彦, 児山 新, 土屋 貴男, 井上 仁, 元木 良一
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2848-2852
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    脾臓原発と考えられるまれなlow grade malignant histiocytomaの1例を経験したので報告する.症例は29歳男性, 主訴は腹部不快感であった.貧血, 血小板減少, 低蛋白血症, 低グロブリン血症, 巨大な脾臓腫瘍を認め, 術前脾臓原発悪性リンパ腫が疑われた.手術は脾臓摘出および癒着していた腹膜を部分切除した.病理組織学的に異型組織球増殖免疫組織学的染色より脾臓原発の悪性組織球腫と診断された.術直後より臨床症状は改善し, 1年経過するが再発の徴候は認められず元気に過ごしている.
  • 大嶺 靖, 佐久田 斉, 上江洲 徹, 下地 光好, 大田 治, 川畑 勉, 宮城 和史, 大田 守雄, 赤崎 満, 城間 寛, 喜名 盛夫 ...
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2853-2857
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群に併存した大腸原発悪性リンパ腫の1例を報告する.症例は, 57歳, 男性.骨髄異形成症候群の経過中, 癖痛を伴う右下腹部腫瘤 (10×10cm) が触知された.注腸造影検査, 大腸内視鏡検査, 腹部CT検査などを行い, 盲腸・上行結腸の悪性リンパ腫の診断のもとに手術を施行した.腫瘤は13.5×8.5×5.5cmの大きさで, 弾性硬であった, 病理診断は, 悪性リンパ腫でLymphoma Study Group (LSG) 分類のびまん性, 中細胞型であった.術後, 局所放射線療法を施行し, 経過良好である.骨髄異形成症候群に併存した悪性リンパ腫の報告例は少なく, きわめてまれな症例であると思われた.
  • 中越 享, 澤井 照光, 清水 輝久, 安武 亨, 宮下 光世, 草野 裕幸, 綾部 公懿, 富田 正雄, 福田 豊
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2858-2862
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    当教室では5例の大腸脂肪腫を経験し, そのうち2例, 40%と高率に大腸癌の併存を認めた.そのうちの1例は73歳の男性で, 右側結腸に3個の多発性早期癌と6個の多発性腺腫と2個の多発性脂肪腫および石灰乳胆汁を有するまれな症例であったので報告した.大腸癌を併存した大腸脂肪腫の自験例を含む本邦報告例21例の特徴は,(1) 一般大腸脂肪腫に比べ, 高齢で女性に多く, 形態的には差がないが, 径の小さいものが多く, より右側結腸に存在する頻度が高く, 腸重積を合併することが比較的少なく,(2) 併存する大腸癌は右側大腸に存在することが多く, 癌と脂肪腫が近接することが多く, 両者が同時に発見されることがほとんどである.以上より, 大腸癌の存在ゆえに脂肪腫が発見されやすくなったと考える方が妥当である.日常診療において, 大腸癌発見時には随半病変を見逃さないことも肝要であると思われる.
  • 三品 佳也, 大塚 光二郎, 蜂谷 仁, 川合 正行, 小山 芳雄, 鳥居 修平
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2863-2867
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    巨大な皮膚直接浸潤で発見されたびまん浸潤型横行結腸癌を経験した.
    症例は79歳の女性.左下腹部腫瘤にて来院, 入院後腫瘤の表面が潰瘍形成し, カリフラワー状に腫瘍が露出した.びまん性浸潤型横行結腸癌の皮膚浸潤.S状結腸浸潤と診断し, 結腸左半切除術, 腹壁合併切除術 (肉眼的相対治癒切除) を施行した.広範な腹壁欠損部は下腹壁動静脈と浅腹壁動静脈を血管皮膚茎とした拡大腹直筋皮弁により再建した.
    びまん浸潤型大腸癌は診断がついた時点で広範な進展をきたしている例が多く, 転移臓器の病変が初期症状を発現することがあるが, 皮膚直接浸潤で発見されたびまん浸潤型大腸癌の報告例は本例が本邦第1例目である.また病理学的にlymphangiosis typeに属し, 元来が分化型腺癌であったため, 比較的膨張性の発育を示し切除が可能であった.さらに広範な腹壁欠損に対し拡大腹直筋皮弁といった形成外科的手技がきわめて有用であった.
  • 竹内 信道, 福島 恒男, 杉田 昭, 嶋田 紘, 久保 章, 高橋 利通
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2868-2872
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    30歳の男性.19歳で全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断されたが症状は乏しかった.1990年8月に行った注腸検査では隆起性病変は認められなかったが, 1991年2月より便柱の細小化と裏急後重が生じ, 下血も認められ, 4月8日に潰瘍性大腸炎の再燃の疑いで緊急入院した.ステロイドの強力静注療法を行ったところ下血は改善したが, S状結腸に全周性の狭窄を認め, S状結腸癌の合併した潰瘍性大腸炎と診断して開腹術を5月11日に施行した.しかし高度の腹膜播種と周囲への直接浸潤により切除不能であった.化学療法と免疫療法を行ったが奏効せず, 術後47日目に呼吸不全で死亡した.発症後10年以上経過した全大腸炎型潰瘍性大腸炎患者に対して1年に1回のcancer surveillanceの施行が推奨されている.しかし本症例はこの方法で早期に癌が発見できたかは疑問であり, 予防的治療も含め症例に応じた対応が必要と思われた.
  • 稲葉 行男, 千葉 昌和, 渡部 修一, 工藤 邦夫, 林 健一, 大塚 聡, 長谷川 繁生
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2873-2877
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    今回われわれは直腸平滑筋腫の1例を経験したので報告する.
    症例は66歳の女性, 肛門部不快感, 下血を主訴に入院した.注腸造影, 直腸鏡, 骨盤computed tomography, magnetic resonance imagingなどの検査により直腸粘膜下腫瘍 (平滑筋腫疑い) と診断し手術を施行した.全身麻酔下に経仙骨的に腫瘍に達し, 腫瘍を摘出した.摘出標本は4.0×4.0×5.2cmの白色の充実性腫瘍で2.0×3.0×3.0cmのdaughter noduleと一塊になっていた.病理組織学的に平滑筋腫と診断された.
    直腸平滑筋腫はその良性悪性の鑑別が時に困難で, 悪性化例も報告されており, 慎重な術後経過観察を要するものと思われた.
  • 宮垣 拓也, 山口 俊晴, 小谷 達也, 山岡 延樹, 鶴海 博, 大辻 英吾, 北村 和也, 谷口 弘毅, 沢井 清司, 高橋 俊雄, 山 ...
    1992 年 25 巻 11 号 p. 2878
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
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