Acrylamideを成犬20頭に投与し, 食道アカラシア様犬を作成し, 食道運動と迷走神経の軸索変性を電気生理学的および電顕的に検討した.
Acrylamide投与7週後から, 失調, 後肢筋萎縮, 嘔吐, 下痢, 体重減少を認めた.下部食道最大横径値は対照群で16.8±1.85mm, 後期投与群で28.9±2.26mmと有意に (p<0.01) 拡張した.下部食道括約筋圧 (LESP) は投与群で29.6±4.4cmH
2Oと有意に (p<0.01) 亢進した.頸部迷走神経の電気刺激により, 投与群で%Fall値 ((静止内圧一電気刺激後最大弛緩圧) /静止内圧×100) は有意に低下した.心電図R-R間隔の変動係数は対象群で1.49±1.09%, 投与群で0.77+0.45%と有意に (p<0.05) 減少した.組織学的検索では, 投与群の食道の神経節細胞に変化はなかった.電子顕微鏡的検討では, 迷走神経の軸索変性がみられた.
このことから, 食道アカラシアの原因には迷走神経中の神経線維や軸索の変性による神経伝達輸送の障害も関与していることが示唆される.
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