日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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25 巻, 7 号
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  • 島 一郎, 山名 秀明, 藤田 博正, 掛川 暉夫, 笹栗 靖之, 入江 康司, 森松 稔
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1917-1923
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道粘膜下層癌 (以下sm癌) の悪性度を, sm層への浸潤度, 発育浸潤形式, matrix metalloproteinase-2 (MMP-2) の発現より検討した.対象症例は31例で, 1) 浸潤度 (sm1: 6例, sm2: 15例, sm3: 10例) では, sm3の80%が0に1型, sm1では癌肉腫を除き全例0-IIa型であった.また, sm3にn (+), ly・v, 再発が多かった.2) 発育形式 (下方発育型: 13例, 表層発育型: 8例, 混合型: 10例) では, 下方発育型に0-I型が, 表層発育型に0-IIa型が多かった.n (+) は下方発育型と混合型に, v (+) と再発は表層発育型に多かった.浸潤形式 (G1: 4例, G2: 12例, G3: 10例, G4C: 4例, G4D: 1例) では, G3以上に0-I型が多く, n (+) 頻度も高かった.3) MMP-2発現を9例 (29%) に認め, ly (+) と再発が多かった.以上より, 1) 0-I型は高度sm浸潤, 下方発育型, G3以上が多く, n (+), ly・vも高頻度で, 進行癌に準じた郭清が必要である.2) sm2以下でも表層発育型やMMP-2発現例は再発が多く, 強力な合併療法と厳重な経過観察が必要である.
  • 24時間pHモニタリング法による検討
    橋本 充右, 今村 正之, 嶋田 裕, 戸部 隆吉
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1924-1929
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌切除術前の胃と術後再建胃管の胃底部と前庭部の2点で24時間pHモニタリングを行った.全測定期間中pH頻度分布曲線を, 1型 (高酸型), 2型 (中間型), 3型 (低酸型), 4型 (前庭部高酸型) に分類し, 各型群間で胃内酸度を術前後で比較検討した.深夜, 食事中, 食後の各期間pH中央値は各群間で特徴を有し, この分類法が酸分泌の解析上有用と考えられた.深夜胃底部pHは1, 2型群で低値となり, 1, 2型群において, 深夜胃底部pH中央値の平均, 深夜胃底部pHが3以下となる時間の割合には術前後で有意差はなかった.術後長期経過例でも深夜胃底部は低pHを示す症例が多く, 再建胃管の夜間酸分泌が保たれており消化性潰瘍発生に注意すべきと考えられた.また, 術後1, 2型群深夜前庭部のpHが3以下となる時間の割合と空腹時血清gastrin値の間の有意な逆相関 (p<0.01) も証明された.
  • 篠田 雅幸, 高木 巌, 陶山 元一, 黒田 直樹, 國島 和夫, 唐澤 和夫, 青木 春夫
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1930-1936
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃壁内転移を伴った原発性食道癌10例について臨床病理学的検討を加えた.胃壁内転移例は検索症例212例の4.7%にみられた.原発巣の主占居部位は胸部上部食道 (Iu) 1例, 胸部中部食道 (Im) 6例, 胸部下部食道 (Ei) 3例であった.組織型は全例扁平上皮癌で, 高分化型が1例, 中分化型が6例, 低分化型が3例であった.組織学的深達度はa2, a3がそれぞれ5例ずつ, リンパ節転移はn (-) が1例, n3, 4 (+) が9例で, 壁内転移以外のいずれかの因子で全例進行度はIV度であった.予後に関して, 食道壁内転移症例26例の累積生存率が1年生存率で60.6%, 5年生存率で23.3%であったのに対し, 胃壁内転移症例では1年生存率が25.0%で2年以上生存した症例はなかった.進行度分類は文献的に報告者により一定していなかった.胃壁内転移を進行度分類に反映させる規約はないが, 治療成績の面からいえばa3に相当するIV度として分類するのが妥当と考えられた.
  • 船坂 真里, 中村 毅, 多淵 芳樹, 多田 康之, 森下 透, 河村 史朗, 加藤 道男, 斎藤 洋一
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1937-1941
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋原性腫瘍切除18例 (筋腫8例・肉腫10例) について, 臨床病理学的ならびにflow cytometry (FCM) によりDNAパターンを検討した.肉腫の腫瘍径10.3±2.2cmは筋腫の4.9±0.88cmより有意 (p<0.01) に大きく, 肉腫の原疾患による死亡症例では腫瘍径と生存期間との問に負の相関Y=23.3-0.35X (r=-0.907, p<0.01) が認められた, 肉腫の核分裂数 (核分裂数/400倍率の100視野) 49.3±23.3は筋腫の2.6±1.1よりも有意に (p<0.05) 多かった.肉腫6例と筋腫5例のパラフィン包埋切片を用いてのDNAの測定では, 筋腫全例と1例の肉腫はdiploidパターンを示し腫瘍死例はなかったが, 5例の肉腫はaneuploidパターン (平均DI=1.72) を示し, このうち再発ないし再燃で4例が死亡した.以上の成績より, 腫瘍径・核分裂数とFCMによるDNAパターン解析は筋原性腫瘍の良悪性の判定や治療方針の決定ならびに予後の予測に有用であると考えられる.
  • 西山 正彦, 吉田 和弘, 頼島 敬, 田中 卓, 峠 哲哉
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1942-1947
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    80歳以上の高齢者胃癌手術症例52例について合併症, とくに精神障害との関連を検討した.精神障害を含む術後合併症の発生率は術式と密接に関連しており, 幽門側胃亜全摘: 31% (11/35), 胃全摘: 67% (8/12), 下部食道胃噴門側亜全摘: 100% (3/3), 下部食道胃全摘および食道抜去胃全摘: 100% (1/1) となった.せん妄は術後最も発生頻度の高い合併症であった (14/52: 27%).その発症率と平均発現期間は, 幽門側胃亜全摘: 32% (8/25), 4.5日, 胃全摘: 43% (3/7), 7.0日, 下部食道胃噴門側亜全摘: 100% (3/3), 10.0日であった.また胃幽門側亜全摘術後には老年期痴呆の改善が認められたが, 胃全摘術後には西村式評価で39.9から33.0 (p<0.05, t検定) と日常生活動作の低下が認められた.器質的, 精神的障害両面への影響からみると, 幽門側亜全摘術では良好な経過が期待できるが, それ以上の侵襲を有する手術では周到な周術期管理が必要と考えられた.
  • 渡辺 明彦, 中谷 勝紀, 澤田 秀智, 山田 行重, 山田 義帰, 矢野 友昭, 中野 博重
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1948-1952
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    教室において開腹手術を行い, 術後経過を観察している胃癌患者におけるsialyl Tn antigen (STN) の臨床的有用性について検討した.術前の陽性率はSTNが14.9%, carcinoembryonic antigen (CEA) が15-4%, carbohydrateantigen19-9 (CA19-9) が15-4%, syalyl Lex-i (SLX) が6.4%, carbohydrate antigen72-4 (CA72-4) が14.0%であった.血清STN値はCA19-9値やCA72-4値との正の相関を認めたが, CEA値やSLX値とは相関を認めなかった.病期別の検討ではstage III, IVで陽性率が高く, 腹膜播種性転移や2群以上のリンパ節転移, se以上の深達度などの高度進行例の陽性率が高かった.術前のSTN値に比較し, 切除例では術後低下する傾向がみられたのに対し, 非切除例では逆に上昇した.術後経過観察中の患者のSTNの陽性率は, 非再発例: 4.9%, 再発例: 56.3%と再発例の陽性率は有意に高かった.以上より, STNは胃癌において術前の進行度診断や術後再発のモニタリングのマーカーとして有用であると考えられた.
  • 多発早期胃癌における微小癌を中心に
    荒井 邦佳, 北村 正次, 宮下 薫
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1953-1957
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    多発早期胃癌145例のうち微小癌 (最大径5mm以下の癌) を有する60例 (86病巣) を対象に臨床病理学的特徴を検討し, 早期胃癌に対する縮小手術 (limited operation;LOP) と内視鏡的粘膜切除術 (endoscopic mucosal resection;EMR) の問題点について考察した.多発早期胃癌と微小癌症例の頻度は, それぞれ早期胃癌の18.9%, 7.8%であり増加傾向にあった.微小癌の特徴はIIb (61.6%), tub1 (80.2%), 粘膜内癌 (m) が多く (98.8%), 占居部位ではM>A>C領域の順で, 主癌巣と同一か隣接した領域に多かった.主癌巣からの平均距離は, 長軸距離で4cm以内であった.主癌巣以外がすべて微小癌であった症例は35例にみられた.EMRの適応条件を満たす症例 (大きさ2cm未満, 深達度m) は9例存在し, これらを単発癌と誤認しEMRを行うと取り残しとなると考えられた.早期胃癌に対するLOPやEMRは, リンパ節転移の有無からだけではなく多発癌, 特に微小癌の存在を考慮し慎重に行う必要がある.
  • 落合 登志哉, 高安 賢一, 若尾 文彦, 森山 紀之, 村松 幸男, 山崎 晋, 幕内 雅敏
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1958-1964
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術前に腹部超音波, computed tomography (以下CT), 血管造影, 経動脈性門脈造影下CT (以下門脈CT) が施行された肝細胞癌症例85例を対象に, 門脈CTで描出されたnon tumorous perfusiondefect (以下NTPD, 腫瘍部と無関係のperfusion defect) について検討した.85例中16例 (18.8%), 27病巣のNTPDが認められた.形状は円形~ 類円形が多く, 肝のいずれの区域にも認められ, その大きさは径3cm以上と径2.0cm以下が多かった.NTPDの原因を検討した結果, 原因の明らかになったものが5例 (31.2%) でその内訳は, i) 血液が副門脈, 胆嚢静脈, 総胆管周囲静脈を介して直接肝内門脈に流入していたもの3例, ii) 門脈腫瘍塞栓が存在したもの1例, そして, iii) 前癌病巣であったもの1例であった.
    門脈CTでみられるperfusion defectが腫瘍によるものかどうかの判定を行う場合上述したNTPDの存在を念頭におく必要がある.
  • 高 済峯, 西和田 敬, 吉川 周作, 八木 正躬, 中島 祥介, 中野 博重
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1965-1968
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の肝内進展, 肝外進展の特徴を知るため, 20例の剖検例の臨床病理学的検討を行った.
    肝内進展では, 血管侵襲, 肝内転移とも単結節型では軽度であるのに対し, その他の肉眼型の腫瘍のほとんどは高度であった.肝外進展では, リンパ節転移はN0が8例, N3が12例であった.遠隔臓器転移は, 肺 (11例), 副腎 (6例) に多かった.遠隔臓器転移を認めなかった4症例はすべて単結節型であり, 高度の肝硬変にて死亡した.TNM分類は単結節型で1が1例, IIIが1例, IVAが2例であった以外, すべてIVBであった.
    肝外進展の剖検前診断は困難であり, 治療方針決定上の問題点と思われた.根治切除に際しては肝門部, 膵頭部を中心としたリンパ節郭清を行うべきであると思われた.肝外進展の少ない単結節型腫瘍で, 高度の肝硬変を伴うものは, 肝移植の適応となりうると思われた.
  • 高橋 誠, 岡田 吉弘, 田中 治実, 大野 一英, 遠藤 文夫, 升田 吉雄, 増田 益功, 加藤 厚, 小幡 五郎, 高井 満
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1969-1974
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    当科の過去10年間における胆嚢結石あるいは胆嚢ポリープでの胆嚢摘出術施行症例は602例であり, そのうち86例 (14.3%) は他臓器手術に付加しての胆嚢摘出術例 (付加胆摘例) である.この86例の付加胆摘例について臨床的検討を行った.
    付加胆摘例は年次的に増加傾向を示し, 最近3年間では全胆嚢摘出例の20%以上の高い比率を占めるとともに, 年代別では高齢者ほど高い頻度であった.他臓器疾患としては胃癌が33例と最多で次いで大腸癌9例であり, 肝細胞癌, 膵腫瘍, 食道静脈瘤, 球状赤血球症, の順であった.
    86例中80例が結石, 6例がポリープであり, 共に無症状例が多く, 術後合併症も胆嚢摘出に由来すると思われるものは胆汁漏出1例, 膿瘍1例のみであった.また, 付加胆摘によって他臓器手術の合併症が増えることもなく, 安全に行えると思われた.
  • 石田 秀世, 大野 直人, 豊田 悟, 尹 太明, 池内 健二, 大塚 正彦, 片山 隆市, 穴沢 貞夫, 桜井 健司
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1975-1983
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸早期癌の治療方針を明らかにする目的で233症例288病変 (m: 166症例220病変, sm: 67症例68病変) を対象として, その形態的および病理学的特徴について検討を行った.とくに発育形態について, その割面形態から粘膜内隆起性増殖を伴うcancer with polypoid growth type (PG癌) と伴わないcancer with non-polypoid growth type (NPG癌) とに分けた.
    NPG癌は89.7%が大きさ20mm以下で比較的小さいが, 組織学的に粘膜下層へのmassive invasionが55.2%, 脈管侵襲陽性が72.4%と高頻度にみられ, リンパ節転移率においても17.2%とPG癌の7.7%に比べ高く, リンパ節転移のhigh risk groupであることが示された.また肉眼形態では隆起の性状が結節型か不整型で陥凹を伴う特徴がみられた.これらの形態的特徴をもつNPG癌は内視鏡的に鑑別診断されれば, リンパ節郭清を含む腸切除をすべきと考える.
  • 宮原 栄治, 池尻 公二, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 矢加部 茂, 朔 元則
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1984-1988
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1979年1月から1989年12月までに経験した大腸低分化腺癌25例について臨床病理学的に検討した.低分化腺癌は大腸癌全体 (600例) の4.2%であり, 高分化腺癌と比較し右側結腸に発症する割合が多い傾向 (p<0.05) があったが, 右側および左側結腸癌症例において, 生存率に有意の差を認めなかった.5年生存率は, 低分化腺癌全体で18.6%で, 高・中分化腺癌と比較し, 有意に不良であった (p<0.01).低分化腺癌では, 大腸癌取扱い規約上, stage IV, V症例が17例と高度進行例が多く, このため予後不良であると考えた.しかし, stage II, IIIの比較的早期の症例で5年生存率を比較してみても, 低分化腺癌では22.6%であり, 高・中分化腺癌と比較し予後の違いは明白であった (p<0.01).つまり, 大腸の低分化型腺癌では単に手術時すでに高度に進行している症例が多いということのみならず, その生物学的悪性度が予後に大きく関与していると考えられた.
  • 安積 靖友, 山崎 巌, 古谷 義彦, 堀田 芳樹, 田頭 幸夫
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1989-1993
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌はほとんどが扁平上皮癌であるが, 今回われわれは中部食道に原発した早期腺表皮癌の1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する.症例は59歳の女性で, 嚥下障害を主訴として来院.食道透視でImに長径4.5cm, 鋸歯型の陰影欠損を認め, 内視鏡下生検で食道腺表皮癌と診断し, 30Gyの術前照射ののち胸部食道亜全摘術を施行した.切除標本では食道胃接合線より8cm口側に2.3×1.3cmのやや不整形の陥凹性病変を認めた.病理組織学的には腫瘍は潰瘍部分を中心に扁平上皮癌細胞の増生を認め, 一部に腺癌部分がみられ, 両構成成分の間の境界は明瞭であった.深達度は粘膜下層までで, 両者とも術前照射による変性を中程度伴っており, 放射線の効果判定はEf2であった.sm, n0, M0, Pl0, R-stage 0で, 原発性早期食道腺表皮癌と診断した.
  • 松森 正之, 大久保 琢郎, 向井 友一郎, 築部 卓郎, 渡部 宜久, 大森 敏弘, 家永 徹也, 佐藤 洋, 笹田 明徳, 中村 和夫
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1994-1998
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道平滑筋肉腫はまれな疾患で文献的にはこれまで95例が報告されているにすぎない.最近, われわれは2例の巨大な食道平滑筋肉腫の手術切除例を経験したので報告する.症例1は39歳の男性, 多発性の肝転移をともなった巨大な腫瘍であったが, 手術を2期に分けて切除しえた.まず1回目の手術で右開胸により腫瘍が浸潤した右肺下葉を切除し, 体位を変え左開胸開腹連続切開により1,500gの腫瘍を切除した.食道再建は胃管により胸骨後経路で行った.2回目の手術は40日後に非定型的肝右葉拡大切除術を施行し肝の内側区, 前下および後下区域の肝転移巣を切除しえた.術後経過は良好で20日後に退院したが, 第1回目手術から1年2か月後に多発性縦隔および肝転移で死亡した.症例2は46歳男性, 左開胸開腹連続切開により腫瘍が浸潤した左肺下葉と下部食道を切除した.腫瘍の重量は800gであった.再建は空腸を間置し術後経過良好であり, 現在術後3か月目になるが外来で経過観察中である.
  • 榎 忠彦, 守田 信義, 平岡 博, 相川 文仁, 小林 哲郎, 飯尾 里, 高橋 剛, 江里 健輔
    1992 年 25 巻 7 号 p. 1999-2003
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝機能障害の既往, 経口避妊薬や蛋白同化ホルモンの服用歴のない21歳女性に発生した, 肝左葉内側区域の巨大な腫瘍を切除した.術後の病理組織学的検討で, 非腫瘍部肝組織は正常で, 腫瘍細胞は異型性に乏しく, 正常肝細胞に類似しており, monotonousな増殖形態を示しており, グリソン鞘や胆管は見られず, 肝細胞腺腫と考えられた.肝細胞腺腫はEdmondson I型肝細胞癌との鑑別が問題となるが, 肝細胞癌への前段階的病変ではなく, 全く異なった疾患単位であると考えられる.しかし, 肝細胞腺腫が真の意味で良性腫瘍であるか否か, 症例数も少なく今後の検討を待つ必要があろう.
  • 篠崎 卓雄, 藤本 正博, 松川 俊一, 山口 聡, 橋本 聡, 林 徳真吉, 津田 暢夫
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2004-2008
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    49歳女性の胆嚢カルチノイド症例を報告する.腫瘍は8.3×6.3cm大の充実性の腫瘤を形成し, 病理組織学的に非定型的カルチノイド腫瘍と診断した.腫瘍細胞にはGrimelius染色陽性顆粒はみられなかったが, 免疫組織化学的にはneuron-specific enolaseが陽性で, 電顕標本で少数であるが神経内分泌顆粒が観察された.
    術中に肝多発転移が認められたため, 固有肝動脈に動注用カテーテルを挿入・留置した.術後に5-FU, Adriamycin, Mitomycin Cをレジメンとする間欠的動注療法を行ったところ, 転移巣の縮小効果が得られた.患者は担癌状態ではあるが, 術後2年5か月経過した現在, 生存中である.
  • 秋山 守文, 水島 康博, 唐沢 学洋, 伝野 隆一
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2009-2013
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    尾状葉原発胆管細胞癌の1切除例を経験した.症例は69歳女性.胆石症手術後Tチューブドレンからの造影で右肝管に陰影欠損を認めた.胆道鏡下生検にてpapillary adenocarcinoma, CTでは右尾状葉に腫瘍陰影を認め, 粘液産生型の尾状葉原発胆管細胞癌の診断で再手術を行った.腫瘍は右尾状葉に主座し, 右肝管側に粘液を産生しつつ発育し, 尾状葉側へはコロイドを内包する腫瘤として発育していた.全尾状葉を含む肝右葉切除, 胆管切除, 左肝管空腸吻合を行った.尾状葉原発の胆管細胞癌はまれといえるが文献上切除例は肝細胞癌に比べ予後は良好であり, 当症例も3年6か月の経過で再発徴候をみない.
  • 坂入 隆人, 敷島 裕之, 塚田 守雄, 松村 道夫, 加藤 紘之, 田辺 達三
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2014-2017
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵ランゲルハンス島過形成は低血糖症状を呈する極めてまれな疾患である.今回, われわれが経験した1例に文献的考察を加えて報告する.
    症例は31歳の男性で意識消失発作を繰り返し入院.高インスリン血症の診断にて画像検査を行ったが異常所見認めず, percutaneous transhepatic portal vein catheterization (PTC) によるサンプリングにより膵体尾部にIRI値の上昇を認めた.そのため, 画像上確認できないが膵体尾部にインスリノーマの存在を疑い膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的に膵ランゲルハンス島過形成と診断され, 術後2年経過するが低血糖発作の症状もなく病変が完全摘出されたものと思われる.膵の切離線の決定にあたり, 術前PTCによるサンプリング, 術中hyperglycemic reboundの確認が有用であった.
  • 斎藤 智裕, 横山 義信, 安斎 裕, 白崎 功, 三浦 二三夫, 斎藤 寿一
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2018-2022
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    成人型輪状膵による十二指腸狭窄に併存した管腔内型十二指腸憩室 (intraluminal duodenal diverticulum: 以下IDD) の1例を経験した.患者は38歳, 女性.全身倦怠感, 食欲不振, 嘔吐を主訴に入院.低緊張性十二指腸造影・内視鏡検査にて十二指腸下行脚上部に全周性の狭窄像, 下行脚中部に嚢状形成物を認めた.Computed tomographyでは, 十二指腸内腔を取り囲む膵頭部実質像を認め, 腹部血管造影では胃十二指腸動脈の右方偏位が認められた.手術所見からIDDと成人型輪状膵との併存を確認し, 憩室切除術およびconventional gastrectomyを施行し, Billroth-II法にて再建を行った. 憩室の病理学的所見では, 壁の内外ともに十二指腸粘膜で覆われていたが, 固有筋層は認められなかった.成人型輪状膵とIDDとの併存は, 本邦では文献上5例の報告をみるのみであり, なかでも完全型輪状膵による十二指腸狭窄との併存は本症例が2例目と思われ, きわめてまれであるので報告した.
  • 田村 卓巳, 近石 恵三, 若林 久男, 前場 隆志, 田中 聰
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2023-2026
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    粘液産生膵癌は予後の良い膵管癌として, 近年注目されてきた.われわれは術後5年生存中の粘液産生膵癌の1例を経験したので報告する.症例は59歳女性で, 主訴は全身倦怠感と口渇.特徴的な内視鏡十二指腸乳頭所見, endoscopic retrograde cholangiopancreatography (以下ERCP) 所見より “いわゆる粘液産生膵癌” と診断し, 膵全摘術を施行した.主膵管は全長にわたり拡張し, 膵頭部主膵管内に腫瘍組織の乳頭状増殖を認めた.組織学的には非浸潤性の乳頭状腺癌で, リンパ筋転移もなかった.現在, 本症例は再発の徴候なく, また日常生活上特に制限なく術後5年経過している.
    粘液産生膵癌は, その特徴的な進展様式のために切除範囲についてまだ議論が多いが, 長期生存が十分期待できる癌であるだけに, 膵全摘術を含めて根治性を考慮した手術術式を選択する必要がある.
  • 野村 務, 恩田 昌彦, 徳永 昭, 山下 精彦, 田中 宣威, 古川 清憲, 伊藤 誠二, 松倉 則夫, 横井 公良, 岡崎 滋樹, 木山 ...
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2027-2031
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Gardner症候群の患者に発生したdesmoid腫瘍に対して, 外科治療, 内分泌療法, 免疫療法, 放射線療法など集学的治療を行ったので報告する.患者は昭和35年生まれの男性.昭和49年, 14歳の時に, 大腸腺腫症, 下顎骨腫を指摘され, Gardner症候群と診断された.昭和59年11月, ポリープに癌化が認められ全結腸切除術施行.昭和61年5月, 腹部手術創直下のdesmoid腫瘍を摘出.昭和62年2月同腫腫瘍再発, 新たに後腹膜にもdesmoid腫瘍を認め, 同4月, 腹壁腫瘍の摘出および後腹膜腫瘍へ溶連菌製剤OK一432を局注した.術後, 抗estrogen剤のtoremifeneを投与, 画像診断にて後腹膜腫瘍の縮小を認めた.昭和63年6月, 腹壁腫瘍の再発および後腹膜腫瘍の増大を認め, 腹壁腫瘍は再摘出, 後腹膜腫瘍に対しては放射線照射を行った.
    治療に難渋したdesmoid腫瘍に対する集学的治療成績について報告し考察を加える
  • 岩垣 博巳, 日伝 晶夫, 木村 臣一, 野中 泰幸, 淵本 定儀, 折田 薫三
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2032-2035
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    家族性大腸ポリポーシスにて全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術, 回腸瘻造設術が施行された20歳, 男性を対象とし, 術後1, 3, 4, 10, 12か月の計5回糞便を採取し, 糞便試料について, 固形分, pH, 有機酸, 腸内細菌叢の測定を行った. 回腸瘻は初回術後8か月めに閉鎖した.糞便水分, pHは術後経過とともに低下, 回腸瘻閉鎖後は健常人近似の値となった. 術後1, 3, 4か月における糞便有機酸濃度は低く, bifidobacteriumは検出されなかったが, 回腸瘻閉鎖後, 糞便有機酸濃度は上昇し, 健常人特有のパターンに移行し, 術後10, 12か月におけるbifidobacteriumの占有率はそれぞれ, 23.9%, 49.3%と検出された. また, 術後1, 12か月の糞便の嫌気性菌/好気性菌検出比は, 3.0, 37.0であり, 術後経過とともに腸内細菌数の増加と, bi藪dobacteriumを始めとする嫌気性菌占有率の増加がみられ, 小腸の大腸機能代償を裏づけた.
  • 村上 義昭, 横山 隆, 児玉 節, 竹末 芳生, 沖田 光昭, 中光 篤志, 今村 祐司, 山東 敬弘, 宮本 勝也, 津村 裕昭, 平田 ...
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2036-2040
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    左側腹部痛を主訴として来院した, 23歳, 女性に発症した結腸カルチノイドの1例を報告した.患者は, 血液検査ではLDHの高値を呈し, 超音波検査, computed tomography検査にて左上腹部に10×5cm大の腫瘤を認め, 注腸造影X線検査にて, 脾攣曲部の結腸に閉塞を認めたため, 結腸壁由来の悪性腫瘍を疑い, 手術を施行した.腫瘤は左腎, 膵への浸潤を認めたため, 左半結腸切除, 膵尾部・脾・左腎合併切除を施行したが, 術後の病理学的診断は, リンパ節転移を伴う, 曽我分類による混合型のカルチノイドであった.また, 腫瘍細胞は, 銀親和性, 銀還元性ともに陰性であった.本症例は, 若年者の結腸に発生したきわめてまれなカルチノイドであったが, 後腸系のカルチノイドに多いとされる混合型 (曽我分類), 銀反応陰性型という組織学的特徴を有していた.なお, 本邦における45例の結腸カルチノイド症例についても統計的考察を行った.
  • 山下 好人, 大平 雅一, 川添 義行, 池原 照幸, 奥野 匡宥, 曽和 融生
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2041-2045
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腸重積を呈した大腸癌の2例を報告し, 文献的考察を加えた. 症例1は22歳, 女性. 主訴は腹痛, 下血. 腹部超音波および注腸検査にて右側横行結腸部に腸重積を認め, 非観血的に整復. 再度施行した注腸検査, 大腸内視鏡検査にて盲腸に腫瘤形成型の癌腫を認め, 根治手術を施行した. 症例2は75歳, 男性.主訴は下血. 注腸検査にて腫瘤形成型のS状結腸癌と診断.その後に腹痛が出現し, 大腸内視鏡検査にて癌による腸重積を認め, 整復せずに根治手術を施行した. 自験例を含めた1981~1990年までの本邦報告37例と同時期の当科での切除単発結腸癌症例259例を比較検討した. 腸重積を呈した結腸癌37例の検討では発生部位はS状結腸に51.4%と最も多く, 次いで盲腸癌が32.4%を占めた. また腫瘤径は腸重積の発生要因とはならず, 壁深達度では早期癌で比較的, 腸重積を起こしやすく, 肉眼型別では限局型腫瘤が腸重積を呈しやすかった.
  • 原 春久, 浅野 道雄, 浅井 秀司, 加藤 芳司, 古川 昭八郎, 安藤 久實
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2046-2049
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部悪性黒色腫の長期生存例を報告する.
    症例は59歳女性, 下血にて発症, 直腸肛門部に腫瘤を触知, 生検により悪性黒色腫と診断, 腹会陰式直腸切断術施行後10年を経て再発の徴候はみられない.
    腫瘍最大径は4cm, 壁深達度は固有筋層, リンパ節転移は認めず, 病理組織学的検査ではamelanotic melanomaであった.
    本邦報告例の5年以上生存例は自験例を含め9例であった.腹会陰式直腸切断術施行例の5年生存率は18.7%と低く, 局所切除術では5年生存例の報告はみられなかった.
    5年以上生存例と2年以内死亡例を比較検討した結果, 長期生存の条件は, 1: 腫瘍最大径が5cm未満であること, 2: 壁深達度がpm以内であること, 3: リンパ節転移の有無にかかわらず広範なリンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術が行われていることと考えられた.
  • 坂本 一博, 野崎 浩, 石井 康祐, 林田 康男, 榊原 宣
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2050-2054
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    直腸癌が若年者に発症することはまれであり, 20歳未満の直腸癌の本邦報告例は51例にすぎない. 最近, 癌多発家系に発症した19歳の直腸癌の1例を経験したので報告する.
    症例は19歳, 男性.主訴は下痢, 血便. 6か月前より下痢, 血便出現. 近医を受診, 直腸癌と診断され, 手術目的で当科入院. 家系調査で父系の3世代38人中11例に癌患者を認めた. 大腸癌は自験例を含め父親, 祖父, および父親の従弟1人の計4人であった. 注腸造影X線検査で, 大腸癌取扱い規約にいうRa~Rsに約12cmの全周性狭窄像を認め, 低位前方切除術を施行した. 切除標本は大きさ12×8cmのびまん浸潤型直腸癌で, 組織学的には粘液癌であった. 術後2年6か月後に下腹部に腫瘍を認め, 化学療法・放射線療法後に摘出術を施行した. 組織学的には粘液癌であったが, ほとんど壊死におちいっていた. 現在初回手術より約4年経過しているが, 再発なく経過している.
  • 加瀬 卓, 小平 進, 寺本 龍生, 久 晃生, 古川 和男, 山口 博, 捨田利 外茂夫, 長谷川 博俊, 郭 宗宏, 西堀 英樹, 北島 ...
    1992 年 25 巻 7 号 p. 2055-2059
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1970年1月から1991年9月までに当教室において経験した, 痔瘻に随伴した肛門管癌7例について検討した. 7例のうちわけは男性6例, 女性1例で, 年齢は43~77歳 (平均59.1歳) であった. 痔瘻または膿瘍発症から癌確診までの期間は4年~47年 (平均22.9年) であった. 主訴として粘液分泌, 肛門部痛, 腫瘤・硬結触知, 出血, 肛門狭窄, などが認められた. 7例全例に腹会陰式直腸切断術が施行され治癒切除4例, 非治癒切除3例であった. 組織型は粘液癌3例, 高・中分化腺癌3例, 扁平上皮癌1例であつた. 7例中4例は, 初回生検で確定診断可能であったが, 残りの3例は癌確診までに頻回の診断手技を要した. 長期にわたり痔瘻を有し, 粘液分泌, 腫瘤. 硬結触知などの症状を呈する症例については癌の合併を考慮し, 瘻管切除を含む頻回の生検を施行して確定診断を下すべきであると考えられた.
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