日本消化器外科学会雑誌
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26 巻, 10 号
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  • 大橋 薫, 丸山 俊朗, 大浦 慎祐, 渡邊 勇, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2387-2394
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対する直達手術の危険因子を明らかにするため, 肝硬変症432例を対象に手術術式, 手術時期, Child分類, ICG負荷試験, 一般肝機能, 耐糖能ならびに肝癌の有無などについて手術死亡例と耐術例を比較し, 以下のごとく結果をえた. 1) 予防, 待期, 緊急の各手術時期でChild C (n=97) はA (n=162), B (n=173) よりも手術死亡率が有意に高率であった (p<0.01). 2) ICG血衆停滞率 (ICC-R15)≧50%, ICG血衆消失曲線 (K-ICC) <0.04ならびに血清アルブミン値 (Alb) <3.5g/dl, 血清ヨリンエステラーゼ値 (Ch-E) <300IU/l, プロトロンビン時間 (PT) <40%, ヘパプラスチンテスト (HP) <40%, 血清総ヨレステロール値 (T, Cho) <100mg/dl, 血清総ビリルビン値 (T-Bil) ≧2.5mg/dlを示す症例は手術死亡率が有意に高率であった. (p<001). 3) 緊急手術では肝癌合併例 (n=6) は非合併例 (n=24) に比べ手術死亡率が有意に高率であった (p<0.01). 以上より, Child C, ICC-R15が50%以上あるいはK-ICGが0.04未満, Ch-E300IU/l 未満, PT 40%未満, HP 40%未満を示す肝機能不良all, 肝癌を合併した場合の緊急手術例は直達手術のハイリスク群と考えられた.
  • 今西 幸雄, 黒岡 一仁, 山田 博生, 藤井 良憲, 佐藤 卓, 奥野 清隆, 田中 晃, 進藤 勝久, 安富 正幸
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2395-2400
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Flow cytometry (FCM) と病理組織学的因子から胃癌遠隔転移様式の検討を行った。DNA aneuploidyの頻度は, 開腹時に遠隔転移が認められた腹膜播種陽性群P (+) で53.7%, 肝転移陽性群H (+) で80.6%, 腹膜播種+肝転移陽性群P (+) H (+) で74, 1%であった。これに対し術後5年以上無再発群P (-) H (-) では46.3%であり, H (+) とP (+) H (+) はP (-) H (-) に比べ有意にDNA aneuploidyが高率であった (p<0.01) 。また, DNA index (DI) からの検討ではP (+), P (-) H (-) は全例DI≦1.6であるのに対し, H (+), P (+) H (+) ではDI≧ 1.7が27.8%と33.3%に認められた.病理組織学的分化度では, P (+) の68.3%が未分化型であるのに対し, H (+) の778%は分化型であり, 両群間に有意差を認めた (p<0.001) 。 しかし, P (+) H (+) では病理組織学的分化度に差を認めなかった。
    以上のことから, 癌細胞核DNA ploidy pattern, DIと組織分化度は, 腹膜播種と肝転移の重要なrisk factorであることが示唆された.
  • 臨床的および実験的検討
    長田 真二, 佐治 重豊, 宇野 郷三, 加藤 元久, 杉山 保幸, 鷹尾 博司, 梅本 敬夫, 宮 喜一, 東 修次, 古田 智彦
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2401-2409
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    最近21か月間に経験した硬変併存肝癌22例を用い, 肝切除後早期予後評価法としての血中hurnan hepatocyte growth factor (hHGF) 値測定意義につき検討した.結果: (1) 術前hHGF値は肝機能検査値と高い相関を示し, 予後ともよく相関していた (p=0, 0001).(2) 術後hHGF値の推移は術中ケトン体比から算出した手術侵襲度に影響され, 予後不良群と良好群では異なった変動様式を示した.次に, 術後肝不全症例で高hHGF値が遷延する意味を推察する目的で, chemical hypoxiaおよび四塩化炭素による障害ラット培養肝細胞を作製し実験的に検討した.その結果, hHGF添加により正常肝細胞で観察された細胞内Ca2+上昇反応は障害肝細胞では消失するだけではなく, 培地中の肝逸脱酵素量もhHGF添加により増加する傾向を示した.したがって血中hHGF値の測定は, 術前肝機能検査や術後早期予後評価法として, また術後推移は肝不全予測の指標として極めて有用であると考えられた.
  • 岡本 友好, 柳沢 暁, 稲垣 芳則, 椎野 豊, 高橋 恒夫, 青木 照明, 岩淵 秀一, 池内 準次
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2410-2415
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Metallic stentを使用した非観血的胆道内慶術を14例の閉塞性黄疸症例 (際癌5例, 胆管癌5例, 胆管細胞癌1例, 良性狭窄2例, その他1例) に対して行い, その成績および従来の内慶, 外痩術と比較検討した.Metallic stent留置術の平均年齢は71歳, 男女比は10: 4であった.留置後の観察期間は1週から65週であった.留置後, 外痩チューブ抜去率は79%であった.再開塞率は29%であった.無黄痘経過率は生存例で75%, 死亡例で67%, 全体では71%であった.合併症は2例に認められたが重篤なものはなかった.本法を施行した悪性例12例と外慶チューブのみ留置29例, 開腹内痩術施行12例を比較すると平均生存期間, 無黄痘経過率はそれぞれ27週, 13週, 31週, 71%, 100%, 92%であった.以上, 本法は再閉塞などの問題はあるが手術に比べ非侵襲的で外痩チューブ留置に比べquality of lifeが向上し, 胆道内慶術として有用であると考えられた.
  • 福島 亘, 小西 孝司, 辻 政彦, 佐原 博之, 松本 尚, 角谷 直孝, 谷屋 隆雄, 藪下 和久, 黒田 吉隆, 三輪 淳夫
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2416-2422
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去12年間に当科にて膵頭十二指腸切除術を施行した196例中, 80歳以上の症例は17例 (8.7%) であった.この17例を対象に59歳以下および60歳以上79歳以下の群と術前併存疾患保有率, 術後合併症併発率などについて比較検討した.80歳以上の群では術前併存疾患保有率が76.5%と他の群に比較して有意に高く, とくに心肺腎疾患の合併が多く認められた.80歳以上の群では合併切除, 出血量, 手術時間ともに他の群に比べ少なかったにもかかわらず, 術後合併症併発率, 在院死亡率はそれぞれ58.8%, 35.3%と有意に高かった.しかし80歳以上の群を前期6年間と後期6年間で比較すると, 術後合併症併発率, 在院死亡率は前期でそれぞれ83.3%, 50.0%であったが, 後期では36.4%, 27.3%と改善が認められた.手術手技および術後管理に著しい向上をみる今日では, 手術侵襲を最小限にとどめることにより, 80歳以上の高齢者に対しても膵頭十二指腸切除術を行っていけるものと思われた.
  • 術中照射による影響も含めて
    金子 哲也, 中尾 昭公, 原田 明生, 野浪 敏明, 高木 弘
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2423-2428
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1981年7月より1992年9月までに施行された膵癌拡大手術106例中, 剖検および画像診断にて再発形式を確認できた44例と術死にて剖検が施行された4例を対象とし再発形式につき検討し以下の結論を得た.(1) 局所再発: 17例 (38.6%) に認められた.術中照射 (IORT) 施行例26例で局所再発率31%, IORT非施行例18例の局所再発率は50%でIORTは局所再発を制御する傾向が認められた.さらに十分な局所再発制御のためには今後, 照射野の拡大や術後外照射を要すると考えられた.(2) 遠隔転移: 肝転移が38例 (79.5%) と極めて高率に認められた.門脈系静脈壁への浸潤, 静脈浸潤との相関はなく, 組織型は乳頭腺癌で低かった.(3) 腹膜播種: 腹膜播種は13例 (29.5%) に認められた.膵前方被膜への浸潤の進行とともに腹膜播種率は高くなるが膵前方被膜浸潤陰性例でIORTが腹膜播種を制御する傾向がみられた.
  • 松本 純夫, 川辺 則彦, 森 健次, 鈴木 啓一郎, 宮田 誠一, 田坂 理, 大島 亮, 小林 健一, 松本 清, 吉田 善彦, 坂野 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2429-2432
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    前壁, 後壁補強による従来の鼠径ヘルニア手術は筋膜緊張による疼痛と再発が問題であった.癖痛の軽減と再発の減少を目指して成人の鼠径ヘルニア25例に対して腹腔鏡下のヘルニア修復術を試み, 同期間に主としてMcVay法にて修復した17例と比較検討した.腹腔内より腹膜を開き, ポリプロピレンメッシュを内, 外鼠径および大腿ヘルニア発生部位を覆うように腹横筋膜上に展開し, ステイプラーにてメッシュをCooper靱帯, 鼠径靱帯および腹横筋膜に固定した.両群とも最長13か月の追跡で再発を認めなかった.腹腔鏡下修復術では術後疼痛は少なく全例手術翌日から歩行可能で, 再発鼠径ヘルニア3例の感想では前回手術より疼痛が少なかった.腹腔鏡下手術の25例中20例 (80%) は9日以内に退院した.従来方法では10日以内に退院した症例はなかった.以上の結果から腹腔鏡下ヘルニア修復術は安全で侵襲の少ない手術であると考える.
  • 岩垣 博巳, 日伝 晶夫, 田中 紀章, 折田 薫三
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2433-2438
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Neopterin (以下NP) は今日細胞性免疫能の指標になるとされている.消化器担癌患者の非治癒切除・切除不能症例28症例66検体を対象とし, 血清中のNPを測定, performance status (PS) との関係について検討した.対象群は健常成人10症例10検体を用いた.PS3, 4の血清中のNP値は平均 (Mean±SD) 24.7±4.7pmol/ml, PS1, 2は8.9±1.0pmol/mlであった.対照群である健常成人は3.7±1.2pmol/mlで, PS3, 4のNP値はPS1, 2, 健常人に比し有意に (p<0.01) 高値であった.また同時測定したcarcinoembryonic antigen (CEA), carbohydrate antigen (CA19-9), C reactive protein (CRP), immunosuppressive acidic protein (IAP) との間で線回帰分析を行ったところ, CEAとの間では相関は認められなかったが, CRP, IAP, CAI9-9との間では有意な (p<0.05) 相関が認められた.今回の検討で血清NP値は担癌による重症度を反映する指標として有用であると思われた.
  • 福長 洋介, 東野 正幸, 大杉 治司, 前川 憲昭, 谷村 慎哉, 徳原 太豪, 紹野 進, 前田 史一, 徳山 彰俊, 木下 博明, 高 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2439-2443
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋肉腫は胃悪性腫瘍の1~2%とされる.そのうち壁外性に発育したものでは発見も遅れ巨大となるものが多い.また, 本症の良悪性の鑑別は病理診断においても非常に困難とされる.今回われわれは, 術後免疫組織検査でNSE陽性を呈し, 胃壁外性に発育した胃平滑筋肉腫を経験したので報告した.
    患者は44歳の女性で, 心窩部痛・背部痛を主訴に来院した.上部消化管造影検査, 胃内視鏡検査, 腹部超音波検査, 腹部CT検査および腹部血管造影検査で胃から壁外性に発育した粘膜下腫瘍の診断で手術が施行された.腫瘍の大きさが9×7cmで胃より壁外性に発育していた.病理組織診断で, 平滑筋肉腫と診断され, 免疫組織染色でNSEが陽性に染色された.
    一般に胃平滑筋腫の良悪性の鑑別は非常に困難とされているが, 今後このような間葉系組織抗原や中間系線維が胃平滑筋肉腫の悪性度の診断に有用となる可能性が示唆された.
  • 高林 直記, 木村 泰三, 吉田 雅行, 桜町 俊二, 原田 幸雄, 喜納 勇
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2444-2448
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は十二指腸のgangliocytic paragangliomaで, 膵頭部前面リンパ節に転移がみられた症例を経験した.症例は63歳の女性で主訴は上腹部痛であった.腹部超音波検査で総胆管拡張を認め, さらに内視鏡, 低緊張性十二指腸造影で十二指腸に腫瘍を発見した, この腫瘍は表面に多数の潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の所見を呈した.全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.腫瘍の組織像およびNSE, S-100 protein, somatostatinなどの免疫組織化学的検索によりgangliocytic paragangliomaと診断した.さらに膵周囲のリンパ節にも小さな転移巣を認めた.これまでにgangliocytic paragangliomaのリンパ節転移例は6例報告されているが, 再発の報告はなく予後は良好であった.本腫瘍に対しては拡大手術は必要でないと考えられた.
  • 森田 俊治, 後藤 満一, 永野 浩昭, 左近 賢人, 金井 俊雄, 梅下 浩司, 若狭 研一, 桜井 幹己, 中村 仁信, 黒田 知純, ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2449-2453
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移をきたした肝細胞癌の切除症例を2例経験したので報告する.症例1は72歳の男性で, 肝前区域の直径約3cmの肝細胞癌の診断にて, transarterial chemoembolizationを施行後開腹手術を施行した.開腹時に傍大動脈リンパ節の肝細胞癌の転移を1個認めたため, その摘出に加え肝右葉切除を施行した.消化管出血にて死亡したが術後4年間の長期生存をえた.症例2は55歳の男性で, 肝S6に直径約9cmの腫瘍と傍門脈領域の複数のリンパ節腫脹を認め, 開腹手術を施行した.術中迅速病理組織診にて肝細胞癌のリンパ節転移と診断され, 腫大したリンパ節の全摘出に加え肝S6亜区域切除術を施行したが, 術後3か月にて残肝再発を認め, 4か月目に癌死した.文献的考察の結果, 転移したリンパ節の個数が1個のみである場合はその切除により長期生存が可能となることが示唆された.
  • 瀧藤 克也, 谷村 弘, 永井 祐吾, 柏木 秀夫, 内山 和久, 中谷 佳弘
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2454-2458
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡の1方向からの平面画像ではCalot三角部での総胆管の同定が難しく, 胆管損傷を起こしかねない.そこで, 剣状突起下の10mmのトラカールと鎖骨中線上の5mmのトラカールの間に第5の5mmのトラカールを増設し, それを介し5mm径の第2の腹腔鏡を挿入して, double scope下に胆嚢摘出術を行った.
    Double scope法により,(1) 開腹術とほぼ同じ方向からCalot三角部が観察でき, 総胆管の走行の確認が容易となり,(2) 胆嚢管と胆嚢動脈が2方向から十分同定でき, クリッピング, 切離の際の余分な組織の混入が防止でき,(3) 胆嚢管のクリッピングの位置の決定に有用であった.さらに,(4) 第1の臍部よりの腹腔鏡では視野が接線方向となって見づらくなる肝下面の癒着部が第2の腹腔鏡により直視でき, 結腸や十二指腸を十分確認しつつ, 安全に癒着剥離が行えた.
  • 林 秀樹, 三好 弘文, 角田 洋三, 竹内 英世, 植松 武史, 丹羽 有一
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2459-2463
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    患者は62歳の男性で右季肋部痛を主訴に来院した.経皮経肝胆道造影検査にて胆嚢が造影されず, 3管合流部付近に不整形の腫瘤陰影を認めたため胆嚢管原発の腫瘍を強く疑い開腹, 胆嚢摘出術, 胆管合併切除術, リンパ節郭清を施行した.摘出標本の病理学的検索から胆嚢管に基部を有し, 一部胆管腔内に突出した分化型乳頭腺癌を認め原発性胆嚢管癌と診断された.Farrarの規準を満たすものではなかったが, リンパ節転移を認めず壁深達度pmの早期癌で, 術後5年10か月を経た現在, 再発の徴候なく健在である.自験例を含む本邦報告33例の検討を行った.
  • 桝谷 誠三, 石川 治, 今岡 真義, 大東 弘明, 亀山 雅男, 佐々木 洋, 甲 利幸, 古河 洋, 小山 博記, 岩永 剛
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2464-2468
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の女性.8歳時に先天性胆道拡張症を指摘され手術を勧められていた.平成2年9月, 右季肋部痛, 食欲不振を主訴として来院.逆行性膵管胆管造影検査で左肝内胆管から総胆管, および膵内胆管の拡張を認め, 肝左葉内に直径2.5cmの腫瘤陰影を認めた.さらに術中, 膵内胆管にIIa+IIc様の癌 (3.8×2.2cm) を認め, 肝左葉切除兼膵頭十二指腸切除, 総胆管嚢胞切除術を施行した.術後, 切除標本の検索で肝内腫瘤はいわゆるcarcinosarcoma (Stage II) であり肝臓に微小の浸潤を認めた (hinf1, ly0, V0).膵内胆管病変は中分化型腺癌 (Stage II) で深達度はss (panc1), ly1, v0, pn1であった.その後胆嚢頸部の粘膜にも深達度ssの高分化型腺癌 (Stage I) を認めた (ly0, v0).先天性胆道拡張症に併存した肝内胆管癌と膵内胆管癌の重複癌の報告例, さらに胆嚢癌を合併した胆道系3重複癌報告例も自験例が第1例目である.
  • 天野 穂高, 蜂巣 忠, 一瀬 雅典, 鈴木 孝雄, 大森 耕一郎, 柏原 英彦, 横山 健郎
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2469-2472
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で低血糖発作を主訴に来院した.臨床所見および内分泌学的検査でインスリノーマが疑われた.血管造影, dynamic computed tomographyで腫瘤は約1.0cmの濃染像として描出され, その局在部位は胃十二指腸動脈と上腸間膜静脈の間であった.術中超音波検査ではhypoechogenicな腫瘤像として描出され, 主膵管と接するように存在していた.以上の所見より手術は膵管損傷の危険性, 残膵機能の温存を考慮し, 膵分節切除術および尾側膵空腸Roux-Y吻合術 (Letton&Wilson法) を施行した.術後経過は良好であり, 腫瘍の局在によっては考慮すべき1術式と考えられた.
  • 大月 和宣, 山本 義一, 丸山 達興, 巴 雅弘, 関 幸雄
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2473-2477
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は32歳の女性, 1妊0産.妊娠35週に心窩部痛を主訴とし来院.血中アミラーゼ360IU/l, 尿中アミラーゼ4,800IU/l, トリグリセリド7,533mg/dlより妊娠, 高脂血症を合併した急性膵炎と診断.帝王切開および膵ドレナージ術を施行し, 経過良好にて退院した.
    妊娠に伴う急性膵炎の本邦報告例78例について検討した.分娩歴では経産婦に多く, 発症時期では妊娠後期に65.7%発症した.経過は帝王切開などによる妊娠中断例が多く, 児の死亡率は32.8%と予後不良であった.妊婦の死亡率は11.9%で, 予後不良例は高脂血症合併例に多くみられ, 妊娠に伴う膵炎で特に高脂血症合併例では保存的療法よりも帝王切開などによる観血的療法が予後は良好であった.
  • 吉田 禎宏, 中田 昭榿, 斎藤 恒雄, 今冨 亨亮, 中村 浩子
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2478-2482
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Windsock型十二指腸膜様狭窄 (以下本症) はまれな先天奇形で, 成人例は極めて少なく, 全周性管腔内十二指腸憩室と報告されている5例を含め11例の本邦報告例がみられるにすぎない.
    輪状膵, 腸回転異常を伴った本症の1成人例を経験した.患者は47歳の女性.数年来の心窩部痛, 上腹部膨満感を主訴に入院した.消化管X線検査にて, 十二指腸球後部狭窄, 下行脚に西洋梨状嚢状陰影と周囲透明帯, 胃潰瘍, 腸回転異常を認めた.内視鏡検査では, 十二指腸下行脚に全周性の膜様物を認め, 一部に肛側に通じる小孔を認めた.
    本症の診断のもと, 開腹手術を施行した.十二指腸ループは形成されておらず, 下行脚上部に輪状膵を認め, 十二指腸切開による検索で, 輪状膵部に狭窄, その肛側にwindsock型十二指腸膜様狭窄 (径6mmの偏心性小孔) を認めたが, 十二指腸乳頭は確認できなかった.広範囲胃切除術, Billroth II法による再建, 十二指腸十二指腸吻合を施行した.術後経過は良好であり, 術後23日目に退院した.
  • 元島 幸一, 兼松 隆之
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2483-2487
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌, 胆管癌, 膵癌を対象として, リンパ節転移と癌関連遺伝子発現のどちらがより有力な予後因子であるかを検討した.切除標本のパラフィン切片とc-myc, p53, K-ras, erbB-2, epidermal growth factor receptor (EGFR), EGF, TGFα 抗体を用い, 免疫組織学的に検討した.単変量解析はgeneralized Wilcoxon method, 多変量解析にはCox modelを用いた.単変量解析で有意な予後因子は, 胃癌120例では全因子, 進行胃癌80例ではリンパ節転移, K-ras, EGF, TGFα であった.進行胃癌の35例の再発死亡について多変量解析を行うと, リンパ節転移 (p=0.012) のみが有意で独立した予後因子であった.胆管癌60例の単変量解析では, リンパ節転移, erbB-2, EGFR, TGFα, 膵管癌57例ではリンパ節転移とEGFRが有意な予後因子であった.胆管癌, 膵管癌での2年以内の早期再発死亡についての多変量解析で, 胆管癌, 膵管癌のいずれでもEGFRが有意で独立した予後因子であった.
  • 久保 隆一, 喜多岡 雅典, 赤埴 吉高, 待寺 則和, 肥田 仁一, 田中 晃, 進藤 勝久, 安富 正幸
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2488-2493
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    基底膜の構成成分であるlaminin (LN) の免疫組織化学的染色を大腸癌・胃癌に行ったところLN活性が癌組織の基底膜部分に認められる症例に高率に肝転移, 肝転移再発がみられることが明らかになった.また同じ基底膜成分であるtype IV collagen (CIV) の染色部位はLNと一致し, LN陽性部位は基底膜であると考えられた.1987年よりLN染色による大腸癌の肝転移再発のprospective studyを行った結果, 高率に肝転移再発が予測できた.一方, LN陽性で基底膜を形成する癌がなぜ高率に肝転移するのかを解明するため培養細胞を用いた研究を行った.培養細胞でも基底膜を形成する癌としない癌があったが, いずれの細胞もLN, CIVを産生していた.
    以上より大腸癌・胃癌では基底膜を形成する癌としない癌があり, 基底膜形成癌 (basement membrane producing cancer;BMPC) が高率に肝転移することが明らかになった.
  • 上田 政和, 菊池 潔, 安藤 暢敏, 都築 俊治, 北島 政樹
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2494-2498
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    消化器癌における分子生物学的パラメーターの予後因子としての有用性を明らかにすることを目的として, 癌遺伝子増幅の有無と予後や再発など癌患者の臨床像との関連を解析した.その結果食道癌では, int-2およびc-erb B癌遺伝子増幅が, 胃癌ではint-2およびc-erb B-2癌遺伝子増幅が高率に認められたが, 大腸癌や肝細胞癌では, いずれの癌遺伝子も増幅頻度は10%以下であった.食道癌, 胃癌ではint-2増幅群で術後累積生存率が低下し, さらに食道癌では遠隔臓器転移が, 胃癌では腹膜転移と遠隔臓器転移が非増幅群に比較して有意に高率であった.c-erb B癌遺伝子増幅は食道癌で高率にみられたが, これらの症例ではいずれも手術時にリンパ節転移がみられ, しかも術後5年生存率は低下していた.以上, 分子生物学的手法により癌遺伝子増幅を検索することにより, 癌患者の治療上重要な情報を得ることが可能であり, 有用な腫瘍マーカーであることが明らかにされた.
  • 胃癌組織内のER, PgRの予後因子としての有用性ならびに予後向上対策
    小島 治, 吉岡 裕司, 湊 博史, 飯塚 亮二, 大辻 英吾, 下間 正隆, 北村 和也, 谷口 弘毅, 萩原 明於, 山根 哲郎, 山口 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2499-2502
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌組織内estrogen receptor (ER), progesteron receptor (PgR) の局在が新しい胃癌の予後因子になりうるかどうか検討し, さらにER, PgRの予後不良因子の生物学的意義ER, PgRを介した内分泌療法の効果について検討した.その結果,(1) 胃癌組織内のER, PgRの有無と予後がリンパ節転移有無や癌組織型よりよく相関した.(2) ER陽性胃癌のproliferating cell nuclear antigen (PCNA) 陽性率がER陰性胃癌に比べ高く, 癌細胞の増殖能がER陽性胃癌で高い傾向を示した.(3) 治癒切除スキルス胃癌40例の術後に, 封筒法で内分泌化学療法群と化学療法群にわけて, 5年累積生存率を検討したところ, 内分泌化学療法群の予後は化学療法群に比べ予後良好であった.以上, 胃癌組織内ER, PgRは胃癌の予後因子の1つになりうると考えられ, 予後不良の性ホルモンレセプター陽性胃癌の予後向上に内分泌療法の有用性が示唆された.
  • 田端 正己, 小倉 嘉文, 井戸 政佳, 高橋 幸二, 野口 孝, 川原田 嘉文, 水本 龍二
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2503-2507
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌切除72例の主病巣のホルマリン固定後パラフィン包埋切片を用いて, 癌細胞核DNA量をflow cytometryにて測定するとともに, 増殖細胞核抗原 (PCNA), c-erbB-2, c-myc, K-ras, p53, fibronectin (FN), laminin (LN), tenascin (TN) をそれぞれABC法にて免疫組織化学的に染色し, これら各種分子生物学的パラメーターの臨床的意義や予後因子としての有用性について検討した.AneuploidやK-ras陽性例は進行例に多く, 累積生存率もDiploidやK-ras陰性例に比し有意に不良であって, 特にK-rasは従来の組織学的因子では困難であった癌深達度ss以上の進行胆嚢癌の予後判定に有用であった.またAneuploidでかつPCNA陽性例, c-mycとp53の同時陽性例, あるいはTN陽性でかつFN陰性例は極めて生物学的悪性度が高く, いずれも切除後2年以内に死亡していた.さらにこれらの因子のうち, PCNA標識率や細胞外マトリックスは相対非治癒以上の切除後の再発時期や再発様式の判定にも有用であった.
  • 前原 喜彦, 大岩 久夫, 劉 啓, 大城 辰雄, 奥山 稔朗, 掛地 吉弘, 折田 博之, 大野 真司, 馬場 秀夫, 安達 洋祐, 杉町 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2508-2511
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌組織におけるc-erbB-2蛋白の発現およびp53異常蛋白の発現を調べ, 転移形式・予後との関係について検討した.
    c-erbB-2蛋白陽性症例は対象160例のうち17例 (11%) であった.c-erbB-2蛋白陽性例の5年生存率は29%であり, 陰性例の47%に比べ予後が有意に不良であった.p53異常蛋白の発現は原発巣96例のうち52例 (54%) に認めた.p53異常蛋白陽性群のリンパ節転移率は85%であり, 陰性群の64%に比べて有意に高かった.DNA ploidy patternとの関係では, p53陽性群のAneuploidの割合は69%であり陰性群の45%よりも有意に高かった.またKi-67陽性細胞率はp53陽性群の30.6%に比べ陰性群25.1%と陽性群の方が有意に高かった.p53陽性群の三年生存率は33.6%であり, 陰性群の57.6%に比べて低い傾向が見られた.
    胃癌におけるc-erbB-2蛋白の発現およびp53異常蛋白の発現は予後規定因子として有用であると考えられた.
  • 粘膜筋板描出によるアプローチ
    村田 洋子, 鈴木 茂, 杉山 茂樹, 林 和彦, 山本 清孝, 笹川 剛, 喜多村 陽一, 鈴木 衛, 井手 博子, 山田 明義, 鈴木 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2512-2516
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    高周波数超音波プローブを用い, 粘膜筋板の描出し, これによって, 消化管表在癌, m, sm癌の鑑別をおこなった.装置はリニア型細径プローブ (sp-101), 15, 20MHzを使用した.検討症例は組織と対比可能であった表在性癌70例 (粘膜切除は26例) である.食道癌の深達度正診率は, ep癌は100%, m癌は56%, sm癌は100%, 計82%であった.胃癌の深達度正診率はm癌は58%, sm癌は88%計70%であった.胃m癌の正診率が低いのは, 潰瘍, 瘢痕によって粘膜筋板が破壊されたものと, 癌腫による破壊との鑑別が困難なためであった.そこで瘢痕, 潰瘍の有無別にみると, 潰瘍, 瘢痕の合併のない深達度正診率は93%, 潰瘍, 瘢痕の合併では17%であった.大腸癌深達度正診率はm癌93%, sm癌100%計95%であった.そこで瘢痕組織による粘膜筋板の破壊が認められない場合は, 高周波プローブはm, sm癌の鑑別が正確に行え治療法選択に有用であった.
  • 外科手術と内視鏡手術の接点
    幕内 博康, 町村 貴郎, 水谷 郷一, 島田 英雄, 菅野 公司, 千野 修, 徳田 裕, 杉原 隆, 佐々木 哲二, 田島 知郎, 三富 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2517-2521
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    従来,食道癌即外科手術であったが,内視鏡手術の発展普及とともに外科手術と内視鏡手術の接点が問題となってきた.食道の早期表在癌の発見例が1986年頃から急増し,食道表在癌切除例の解析から,ep~mm2癌では脈管侵襲やリンパ節転移は認められず,mm3~sm1癌では脈管侵襲が33-3~44.4%,リンパ節転移が11.1%で,sm2~sm3癌では66.7~88.9%の脈管侵襲と25.0~44.4%のリンパ節転移を有することが判明した.予後もep~sm1までは5年生存率100%で,sm2では58.9%,sm3では54.2%であった.
    外科手術と内視鏡手術の接点はmm3~sm1にあり,原則的には頸胸腹部3領域リンパ節郭清を伴う外科手術を行うが,その約80%は内視鏡的粘膜切除による局所切除で根治が得られる.全身状態不良例や高齢者では,リンパ節転移が明らかでなければ,手術侵襲が大きく,術後のquality of lifeを損う外科手術を避けて内視鏡手術を選択すべきと考える.
  • 山本 修美, 寺畑 信太郎, 片井 均, 細田 洋一郎, 下地 恵吉, 吉野 肇一
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2522-2526
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    切除早期胃癌252例を対象にリンパ節転移率の検討を行った後, 内視鏡的粘膜切除 (EMR) を51例に施行し, 次の結果を得た.
    (1) Ul (-) のm癌ではリンパ節転移が認められず, EMRの積極的適応となる.(2) EMRの技術として, 反復把持法を用いると, 切除粘膜の長径は平均2.2cmで, 胃内のほとんど全部位でEMRが可能であった.(3) 合併症としては穿孔1例と出血2例を経験したので, 防止対策を検討した.(4) 完全切除33例の再発は0%であるのに対し, 分割切除例では, 4-18か月以内に50%が再発した. (5) EMR前後の比較で, EMRによるQOLの低下は認めなかった.
    EMRの安全適応限界は, EMR切除標本で, 深達度m, 病巣内にU1 (-), 断端 (-) であり, 患者のインフォームドコンセントを得て, 内視鏡的経過観察の条件が得られれば, 胃切除術に勝る根治療法とみなしうる.
  • 外科手術と内視鏡治療の接点
    梨本 篤, 佐々木 寿英
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2527-2531
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1,301例の単発性早期胃癌を対象に臨床病理学的諸項目を分析し, 外科手術と内視鏡治療との接点と思われる外科的局所切除の適応と実際について検討した.
    外科的局所切除の適応は, 安全域も含め, 局在 (C) の長径3cm以下の隆起型早期胃癌および, 肉眼型を問わず長径1cm以下の早期胃癌と考えられた.
    外科的局所切除を施行した24例のうち, 積極的に外科的局所切除を施行した12例では, 追跡期間が最長25か月と短いものの, 1例の再発もなく全例健在である.したがって, 適応を厳密にするならば, QOL項目を十分に満たしうる安全な手術手技と思われた.
    早期胃癌に対する外科治療の遠隔成績は良好であるが, 今後は高齢者社会の到来とともに高齢者早期胃癌症例の増加が予想される.早期胃癌に対する治療は根治性の追求のみならず, 患者の社会的環境, 家族構成をも考慮し, 縮小手術, 内視鏡治療も積極的に取り入れていく治療体系が望まれる.
  • 荒木 靖三, 岩永 宏樹, 大北 亮, 緒方 裕, 諸富 立寿, 白水 和雄, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2532-2536
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌の治療方針を明らかにするために, 早期大腸癌157例 (m癌81例, sm癌76例) を対象に, 術前深達度診断・治療法・リンパ節転移の面から外科の立場で検討した.超音波検査を施行した51例の術前深達度正診率は76.5%と最も高く, 術前に深達度診断を行う上で, 超音波検査が最も有用であった.また, 危険因子別にリンパ節転移率をみると, 深達度 (sm2以上): 18.0%, 腺腫成分併存無し;30.8%, リンパ管侵襲陽性: 39.1%, budding陽性;40.9%, 中・低分化型腺癌;55.6%とリンパ節転移を予測する上でこれらは重要な因子であることが示唆された.
  • 山根 哲郎, 稲掛 雅男, 大矢 和彦, 奥山 晃, 下間 正隆, 北村 和也, 谷口 弘毅, 萩原 明郎, 山口 俊晴, 沢井 清司, 小 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2537-2541
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌の治療としては内視鏡的ポリペクトミーの普及と進歩により外科手術の適応となるものは比較的少ない.しかし患者のquality of lifeや機能温存を考えて縮小手術の適応が問題となっている.1980年より1992年7月までの13年間の大腸癌手術症例は622例であった.そのうち早期大腸癌の手術症例は62例 (10%) で, m癌26例, sm癌36例であった.リンパ節転移はsm癌においてはn1 (+) を2例 (5.6%) に認めた.これらの早期大腸癌に対する外科的治療は以前は進行癌と同様に取り扱われ, わずかにリンパ節郭清や切除範囲を縮小するものであった.最近, 早期直腸癌に対しては経肛門的・経仙骨的切除を8例に行い, また早期結腸癌に対しては腹腔鏡下結腸切除を3例に行い良好な結果を得ている.本法は手術侵襲が少なく, リンパ節郭清もR1以上の根治手術が可能であり, 多くの利点を持った手術法であり, 今後広く普及する術式と考えられた.
  • 内視鏡的治療と縮小手術との接点
    高木 國夫, 岩切 啓二, 武長 誠三, 林 周一
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2542-2547
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    早期胃癌の治療は, 癌の進行度に応じた治療が検討されてきているが, endoscopic resection (ER) の適応外の2-3cmのIIa, IIcに対して, 内視鏡下の点墨生検法による癌の組織学的境界の決定ならびに病巣のERによる組織学的深達度診断の上に立脚した胃局所切除を提示し, ERの深達度がm, sm (+) の7例に局所切除を施行し, 病理学的にも安全であった.ERの深達度がsm (廾) の3例には, 胃切除を施行した.ERによる癌遺残例に対しても, 胃切除でなく, 積極的な胃局所切除を行うべきである.ERの組織学的深達度診断に立脚した早期胃癌の治療の適応は, 内視鏡的切除を行う内科側と縮小手術を行う外科側との接点を解決するものであろう.
  • 渡邊 昌彦, 大上 正裕, 寺本 龍生, 北島 政樹
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2548-2551
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸の早期癌に対し, 教室では低侵襲手術を積極的に導入している.内視鏡的切除不能の結腸m癌には, 腹腔内で操作を完結する腹腔鏡下局所切除 (3例), 腹腔鏡を併用し小切開で腹腔外で切除を行う腹腔鏡併用大腸切除 (7例) を施行した.一方, 内視鏡的切除不能直腸m癌には経肛門的局所切除を34例に行った.これらの方法は終痛が極めて軽微で第7病日までに退院可能であった.さらに, 全層で標本が得られるため十分な病理学的検索が可能である.
    根治的切除が施行されたsm癌 (100例) のうちリンパ節転移が認められたのは, 結腸1.7% (1/56), 直腸9.1% (4/44) であり転移陽性リンパ節はすべて壁在のn1群であった.したがって, 低分化型腺癌や脈管侵襲陽性のsm massiveはR1+αのリンパ節郭清を伴う切除とし, m癌のみならずsm癌も低侵襲手術の適応と考えられた.
  • 小野田 尚佳, 鄭 容錫, 中西 一夫, 前田 清, 繁澤 晃, 久保 俊彰, 曽和 融生
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2552
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 大谷 泰一, 跡見 裕, 黒田 慧, 新海 宏, 佐田 尚宏, 武藤 徹一郎, 赤尾 周一
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2553
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 八代 正和, 鄭 容錫, 久保 俊彰, 前田 清, 山田 靖哉, 小野田 尚佳, 有本 裕一, 新田 敦範, 澤田 隆吾, 加藤 保之, 曽 ...
    1993 年 26 巻 10 号 p. 2554
    発行日: 1993年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
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