日本消化器外科学会雑誌
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27 巻, 1 号
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  • 茂木 瑞弘
    1994 年 27 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    熱傷負荷によるラット胃粘膜複合糖質の変化を検討した. Wistar系雄性ラット (n=100) の背部に熱傷を負荷し, Peanut agglutinin (以下, PNA) を用いて検討し迷切術+幽門形成術 (以下, 迷切術), H2受容体拮抗剤 (以下, H2RA), プロトンポンプ阻害剤 (以下, PPI) の影響についても併せて検討した.光顕的に熱傷負荷前には増殖細胞領域にPNA結合反応が認められ負荷後ではその上方, 下方へと反応が増大した.迷切術群, H2RA群も同様の傾向であった. しかしPPI群では経時的変化は同様であったがその反応は全体的に抑制された.電顕的検索でも熱傷負荷後壁細胞の分泌細管を中心に反応が増大したがPPI群では変化はなかった. PNAが粘液の複合糖質の変化を表現していることにより壁細胞自身が胃粘膜において粘膜防御機構に関与していることが考えられ, H2RA, 迷切術がこれらを増強し, 一方, PPIは複合糖質からみても壁細胞自体の働きを抑制すると考えられた.
  • 河村 正敏, 佐藤 徹, 津島 秀史, 横川 京児, 丸森 健司, 井関 雅一, 鈴木 毅, 小林 英昭, 小松 信男, 高村 光一, 新井 ...
    1994 年 27 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃膠様腺癌61例を非膠様腺癌748例と比較検討した. 膠様腺癌は, 腫瘍径が大きく, 占居部位では全領域, 肉眼型では3, 4型の浸潤型, 深達度は深いもの, リンパ節転移, 腹膜播種が多く, 治癒切除率は低かった (p<0.01, 0.05).stage別5年生存率をみるとstage III, IV症例では分化型癌に比べ有意に低かった (p<0.05).膠様腺癌を分化型25例, 低分化型36例に亜分類し検討した.低分化型は若年者, 女性に多く, M領域, 3, 4型の浸潤型が多く (p<0.01, 0.05), 有意差はないものの腹膜播種が多くみられた.AgNORs Labeling Indexを比較すると早期癌では各組織型で変わらなかったが, 進行癌では未分化型癌6.01±0.89, 分化型癌5.21±1.38, 膠様腺癌6.76±1.44と膠様腺癌で有意に高かった (p<0.01, p<0.05).胃膠様腺癌は, 細胞増殖能が高いため, 早期発見, 早期治療が望まれる.また, 亜分類によりその生物学的特徴を把握し, 術後follow upを行うべきである.
  • 内視鏡的切除の適応に関する検討
    八木 真悟, 川上 卓久, 田中 松平, 横山 浩一, 龍沢 泰彦, 伴登 宏行, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭
    1994 年 27 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    早期胃癌のリンパ節転移のrisk factorを検討することで, 内視鏡的切除の適応を求めた, 対象は1976年1月から1992年12月までに当科で手術経験した早期胃癌572例である. 52例 (9.1%) でリンパ節転移陽性であった. 統計学的に有意にリンパ節転移陽性のriskであったものは, 脈管侵襲, 深達度, 大きさ, 組織型であった.間質量, 肉眼型で傾向がみられた. 占居部位, INF, 潰瘍病変はrisk factorとはならなかった. Major factorとして (1) 脈管侵襲陽性, 特にリソパ管侵襲陽性,(2) 深達度sm,(3) 大きさ2cm以上,(4) 組織型でtub2, por, sigが考えられ, minorfactorとして (5) 間質量intermediate, scirrhous,(6) 肉眼型で隆起型と混合型が考えられた.したがって術前診断の容易性, 手技上の安全性, 治癒度からみて,(1) 大きさ2cm以下,(2) 組織型でpap, tub1が, 早期胃癌での内視鏡的切除の, 必要十分な条件と考える.
  • 曽根 純之, 小玉 雅志, 小山 裕文, 小山 研二
    1994 年 27 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌患者における所属リンパ節の抗腫瘍性免疫能を明らかにするため, 胃癌所属リンパ節のCD4/CD8比, CD4+CD45RA-細胞の陽性率, およびBright CD8+CD11b-細胞の陽性率をflow cytometly法にて測定し, 臨床病理学的因子との関連を検討した, その結果, 所属リンパ節の抗腫瘍性免疫能が保持されているのは, 深達度ではm症例, sm症例, pm症例, 腫瘍径が40mm以下, リンパ節転移陰性例, 脈管侵襲陰性例, stage I症例であった. これらの免疫能保持に関わる因子は, ほとんどが早期胃癌のもつ因子であり, 癌占居部位や腫瘍径, 肉眼型の検討から転移のないリンパ節の一部を温存することが免疫学的見地からも有意義であると考えられた. また, 原病死例と生存例との比較では, 死亡例の所属リンパ節の抗腫瘍性免疫能が低下していた.
  • 小村 伸朗, 柏木 秀幸, 福地 康紀, 木村 恵三, 古賀 紳一郎, 渡辺 正光, 石橋 由朗, 鈴木 裕, 高岡 徹, 守屋 佑介, 金 ...
    1994 年 27 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    十二指腸潰瘍16症例の胃内pH環境に及ぼす選択的近位迷走神経切離術 (SPV) および選択的迷走神経切離術+幽門洞切除術 (SV+A) の影響を胃内pHモニタリング法を用いて評価し, 潰瘍再発予防におけるpHの意i義を健常人と比較検討した.健常人12例の平均pHは1.86±0.46, 中央pHは1-46±0.30, pH>3 holding time (%) は12.0±7.53であった.SPV群 (8例) は術前, それぞれ1.75±0.47, 1146±0.31, 9.1±8.8であり, 術後は1.90±0.36, 1.44±0.28, 12.9±7.9へ変化したが有意ではなく, 健常人とも差を認めなかった.一方, SV+A群 (8例) では術前はSPV群と同様であったが, 術後は3.79±1.40, 3.54±1, 69, 61.4±33.7へとそれぞれ有意に上昇し, 著しく低酸環境となった.以上からSPVは胃内PH環境に及ぼす影響は少なく健常人と同様の胃内環境を保ちながら潰瘍の再発を予防する.SV+Aでは胃内pHの持続的上昇という非生理的なpH環境下で再発が予防されることが示された.
  • 黄疸肝, 硬変肝, 正常肝の比較
    初瀬 一夫, 青木 秀樹, 村山 道典, 庄野 聡, 井戸田 望, 玉熊 正悦
    1994 年 27 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    広範囲肝切除後のビリルピンの変動とその病態を検討するため, 2区域以上の肝切除を施行した硬変合併肝癌 (LC群) 7例, 閉塞性黄疸肝 (OJ群) 5例, 正常肝 (N群) 12例を対象とし, 術前, 術後1, 4, 7日目にビリルビン, エソドトキシン, アンモニア, 意識状態などを比較検討した. OJ群は術後4, 7日目にLC群, N群に比べ総ビリルビンが有意に高く, それも直接ビリルピンが優位であった. アンモニアは術前よりOJ群, LC群が高値で, 4, 7日目ではOJ群が最も高値を示した. 一方, エンドトキシンはLC群が術前, 1日目と高値で, OJ群はN群とほぼ同一の推移を示した. 肝性脳症はOJ群2例, LC群2例にみられ, 直接型優位で総ビリルビンが5mg/dl以上の症例であった. しかもOJ群では全例エンドトキシンが21pg/ml以上であるのに対し, LC群, N群では経過良好群にも高値を示すものがみられた. 以上からOJ群はN群, LC群に対する肝切除に比べエンドトキシンに感受性が高く, 術後黄疸の遷延, 肝性脳症を伴いやすいことが示唆された.
  • 尾高 真
    1994 年 27 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    好中球による組織障害の機序およびその対策を明らかにするためにモルモットを用いて, 経門脈的にgranulocyte-colony.stimulating-factor (以下, G-CSFと略記) を投与し好中球起因の肝細胞障害モデルを作製した.G.CSF経門脈的投与で血清GOT, GPTが上昇し, 組織学的には好中球浸潤がみられ, cyclophosphamide (CTX) 投与による好中球機能抑制状態ではGOT, GPTの上昇が軽減された.次に肝細胞保護作用を持つプロスタサイクリン (PGI2), トロンボキサン合成酵素阻害剤 (OKY046) を前投与すると肝細胞障害は著明に抑制された.本研究における肝細胞障害モデルでは活性化好中球が関与すると考えられ, 活性化好中球を介した組織障害に対してはPGI2, OKY046が有効であると考えられた.
  • 山本 雅一, 高崎 健, 大坪 毅人, 吉川 達也, 中村 光司, 羽生 富士夫
    1994 年 27 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆管細胞癌切除60例の肉眼形態を, 肝内主要胆管 (区域, 亜区域枝) との関係に着目して3型に分類し, 臨床病理像を検討した.肝内主要胆管と関連がなく肝実質内に腫瘤を形成する結節型 (nodulartype). 主要胆管を中心に門脈域長軸方向へ進展し, 胆管壁や肝実質内に浸潤する腫瘍を胆管周囲増殖型 (periductal type). 胆管内に乳頭状に発育する腫瘍を胆管内発育型 (intraductal type) とした.結節型 (28例) は無症状例 (46%) が多く, 慢性肝炎を36%に併発した.組織型は管状腺癌 (68%) が主で, 門脈腫瘍栓 (36%), 肝内転移 (43%) が特徴的であった. 胆管周囲増殖型 (24例) では, 黄疸 (63%) が主症状で, 肝内結石を21%に併存した.組織型は乳頭管状腺癌 (58%) が多く, リンパ節転移を50%に認めた.胆管内発育型 (8例) は腹痛 (63%) が主症状で, 組織型は乳頭腺癌 (100%) であった.リンパ節転移 (25%), 肝内転移 (13%) は他型と比較し少なかった. 本肉眼形態分類は臨床病理象と密接な関連がみられ, 病態把握に有用と考えられた.
  • とくに局所でのプラスミノーゲンアクチベーター活性の変動について
    小林 昌明, 松本 修, 亀山 仁一, 塚本 長
    1994 年 27 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術後の腹膜癒着と線溶系酵素活性の変動についてSD系雄性ラットを用い実験的に検討した. まず癒着作製手術を施行し, 血漿tissue plasminogen activator (t-PA) 活性, plasminogen activatorinhibitor-1 (PAI-1) 活性, 癒着局所でのt-PA活性をみるため腹腔洗浄液上澄みの中のt-PA活性の変動を調べた (各群n=10). 血漿t-PA活性は術前に比べとくに変化はみられなかった. 血漿PAI-1活性は術後早期に術前と比べ上昇傾向にあった.腹腔洗浄液上澄み中のt-PA活性は術前に比べ24時間をピークとして有意に上昇 (p<0.01) することが明らかとなった. 単開腹術を施行し, 漿膜損傷, 血液貯留の影響による腹腔洗浄液上澄み中のt-PA活性の変動を調べると (各群n=6), 術後早期で漿膜損傷群 (p<0.01) で, コントロール群に比べ低値を示した. 術中の臓器愛護は局所のt-PA活性からみても癒着防止に有効であると考えられた.
  • 児玉 節, 横山 隆, 竹末 芳生, 沖田 光昭, 中光 篤志, 檜山 英三, 今村 祐司, 村上 義昭, 山東 敬弘, 津村 裕昭, 平田 ...
    1994 年 27 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    抗菌剤腹腔内1回投与が全身投与よりも術後感染予防に有用であるかを検討した. 消化器手術32例を対象にセフェム剤 (3剤) を1g点滴静注 (DI), 腹腔内投与 (IP) し体内動態を測定した. IP群での腹水中濃度は投与後30分, 1時間で1, 000,300μg/mlとDI群より有意に高い値が得られた. しかし, 投与後4, 6時間ではDI群と有意差のない値 (4-2μg/ml) となり, DI群に比べ有意の有効濃度の持続時間の廷長は得られなかった. 一方, flomoxef sodium (FMOX) は大腸菌に対し400, 40μg/mlでおのおの2, 4時間野接触時間で良好な殺菌効果を認めたが, 4μg/ml, 6時間接触では殺菌効果は得られなかった.緑膿菌, メチシリン耐性ブドウ球菌ではFMOX 400μg/ml, 6時間接触時間でも殺菌作用は得られなかった.高濃度の持続時間で期待できないので抗菌剤腹腔内1回投与では, 上記細菌.対象とした術後感染予防において全身投与以上の有用性は得られないと考えられた.
  • 片岡 正文, 岡林 孝弘, 中島 明, 中谷 紳, 上平 裕樹, 武田 晃, 折田 薫三, 能見 貴人, 金澤 浩
    1994 年 27 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌, 胃癌, 肺癌の手術切除例において, p53蛋白の発現異常を免疫組織学的に検討し, さらにその結果が遺伝子変異をどの程度反映しているかを検討するために, reverse transcription-polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism (RT-PCR-SSCP) 法および直接シーケンスにて点突然変異の検出を行った.免疫組織染色は, マイクロウエーブ固定標本を使用し, 抗p53蛋白モノクローナル抗体 (PAb1801) を用いて行った.大腸癌13例中9例 (69.2%), 胃癌8例中5例 (62.5%), 肺癌5例中弓例 (80.0%) に陽性所見が認南られたが, 臨床病理所見との相関関係は認められなかった, RT-PCR-SSCP怯では大腸癌13例中日例に異常を認め, 両方法間の一致率は84.6%であり, 点突然変異が免疫組織所見によく反映された, p53蛋白の発現異常は60%以上の陽性率を示し, 幅広い腫瘍マーカーとしての可能性が示唆された.また, RT-PCR-SSCP法により点突然変異の検出が簡便に行えた.
  • NissenのDor変法によるfundoplicationを施行した4例
    伊与部 尊和, 川村 泰一, 嶋 裕一, 澤崎 邦廣, 巴陵 宣彦, 藤田 秀春
    1994 年 27 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    逆流性食道炎を伴う食道裂孔ヘルニアの4例に対してNissenのDor変法によるfundoplicationを施行した.年齢は56歳から76歳までで, 女性3例, 男性1例であった.主訴は3例に嘔吐と1例に胸やけを認め, 全例が術前には中等度以上の逆流性食道炎の所見を認めた.手術時間は最長で95分であり, 術中出血量も150m1以下であった.また全例に術後合併症を認めなかった.術後の内視鏡所見では逆流性食道炎は3例で治癒し1例で軽快の所見を認め, 嚥下困難などの愁訴は全例とも認めていない.本術式は手術侵襲が小さく, 安全に施行できる術式と考えられ, 難治性の逆流性食道炎を伴う食道裂孔ヘルニア症例には積極的に外科的治療を行うべきと考えられた.
  • 石神 純也, 夏越 祥次, 森永 敏行, 吉中 平次, 馬場 政道, 福元 俊孝, 愛甲 孝, 島津 久明
    1994 年 27 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    壁内転移とリンパ節転移を伴った食道多発粘膜癌の1例を経験したので報告する.症例は75歳の男性で, 嚥下困難を主訴として来院し, 内視鏡検査で中部食道の白苔と発赤を指摘され, 生検の結果, 扁平上皮癌と診断された.入院後の超音波内視鏡検査で固有筋層内への浸潤とリンパ節転移が疑われたため, 右開胸・開腹によって食道亜全摘とリンパ節郭清を施行した.切除標本の病理組織学的検索において内視鏡検査で認められた病変は深達度が粘膜内に留まる4個の多発病変であることが判明した.また超音波内視鏡で指摘された病変は粘膜下腫瘍の形態を呈しており, 連続切片を作成して検討した結果, 組織型は低分化扁平上皮癌で, 腫瘍を覆う粘膜の上皮から粘膜筋板まではすべての切片で保たれており, 最終的には食道mm癌からの壁内転移と診断された.食道mm癌の壁内転移はまれであるが, その可能性も十分念頭において術前診断に臨むべきことが示唆された.
  • 大橋 龍一郎, 多幾山 渉, 高嶋 成光, 万代 光一
    1994 年 27 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1期的に切除可能であった下咽頭癌, 喉頭癌, 食道表在癌, 早期胃癌の同時性4重複癌の1例を報告する.症例は血疾を主訴とする66歳の男性.喉頭鏡検査で, 咽頭, 喉頭にそれぞれ, 直径1cm大の裾色調の隆起性病変を, 上部消化管内視鏡検査で, 胸部下部食道に直径0.5cm大の0-IIa型食道癌, 胃体下部にIIa集族型胃癌を発見された.手術は下咽頭喉頭全摘, 食道抜去, 胃噴門側切除を行った.病理組織検査では下咽頭, 喉頭, 食道の病変はいずれも中分化型扁平上皮癌で, 食道癌は深達度smであったが, 喉頭癌は喉頭軟骨まで浸潤しており, 頸部に3個のリンパ節転移がみられた.全割標本の検索ではこれらの病変を含め, 合計10か所の多発癌病巣がみられた.胃病変は高分化型腺癌で深達度sm, リンパ節転移はみられなかった.本例は, 頭頸部癌と食道癌に共通した発癌因子の存在を示唆させる興味ある1例であった.
  • 林 和彦, 井手 博子, 江口 礼紀, 中村 努, 吉田 一成, 小林 中, 中村 英美, 田中 元文, 山下 由紀, 村田 洋子, 鈴木 ...
    1994 年 27 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は胸部食道癌・下咽頭癌・直腸癌の同時性3重複癌の67歳の男性である.術前検査では食道癌は左気管支・大動脈に浸潤する高度進行癌であり切除不能であった.これに比べ下咽頭癌.直腸癌の進行度は低く, 患者の予後規定因子になるであろう食道癌を主たる標的としたcisplatin (CDDP) +5-fluorouracil (5-FU) +vindesine (VDS) 療法を施行したところ, 画像上腫瘍は著明に縮小し外膜浸潤の程度も軽減された.化療の効果は下咽頭癌や直腸癌にもみられたが, 各臓器はともに解剖学的に重要な部位に存在するためおのおのに根治切除術を施行することは困難に思われた.各病変の進行度と患者のquality of lifeを考慮し, 治療として下咽頭癌には内視鏡的粘膜切除術, 直腸癌には経肛門的腫瘍切除術を同時に施行し, さらに2期的に食道切除再建術を行った後に下咽頭および頸部上縦隔に放射線治療を追加した.術後経過は良好で現在まで11か月間無再発生存中である.
  • 金平 永二, 森 明弘, 疋島 一徳, 中村 寿彦, 宮崎 誠示, 大村 健二, 渡辺 洋宇
    1994 年 27 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    われわれは本邦ではじめての腹腔鏡下Taylor法迷走神経切離術 (後幹切離+胃小彎前壁漿膜筋層切開) を施行したので報告する.
    患者は19歳の男性で, 14か月にわたりプロトンポンプ・インヒビターまたはH2ブロッカーを含む抗潰瘍薬による治療を継続したが, 十二指腸潰瘍の再発を繰り返したため, 迷走神経切離術の適応と考え手術を施行した.
    上腹部に挿入した5本のトラカールから腹腔内の操作を行った.まず食道裂孔部で迷走神経後幹を切離した.次に小彎線から1.5~2cm離れた胃前壁で, crow'sfootの口側枝からHis角の後壁に至る範囲の漿膜筋層を切開した.切開部は縫合, 閉鎖した.手術時間は3時間30分であった.
    術後胃排出能障害はみられず, 内視鏡検査では十二指腸潰瘍は瘢痕治癒していた.胃酸分泌検査ではBAOおよびMAOの減酸率はそれぞれ93.3%, 88.3%と良好であった.
  • 渡辺 俊一, 村上 望, 常塚 宣男, 加藤 明之, 平野 誠, 橘川 弘勝, 増田 信二
    1994 年 27 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性.平成3年3月から胃潰瘍で経過観察されていた.平成4年4月に行われた潰瘍部の生検にて胃悪性リンパ腫と診断された.当科にて胃亜全摘術を施行し, 摘出標本を病理組織学的および免疫組織化学的に検討した結果, MALTリンパ腫と診断された.
    Mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma (MALTリンパ腫) とは最近提唱された疾患概念であり, 消化管などの上皮組織と密な関連を示しリンパ組織を有する節外性臓器に発生する悪性リンパ腫で, リンパ節に発生する節性リンパ腫とは臨床的にも組織学的にも著しい差異を呈する.MALTリンパ腫はreactive lymphoreticular hyperplasia (RLH) などとの鑑別がたびたび困難であり, また疾患自体の概念が浸透していないために見逃される場合も多く, 今後再検討が必要である.
  • 片井 均, 洪 淳一, 和田 徳昭, 佐野 真, 前田 耕太郎, 山本 修美, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 寺畑 信太郎
    1994 年 27 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性で, 下血を主訴として来院した.胃内視鏡検査で多発性のタコイボ様病変を認め, 生検にて悪性リンパ腫と診断された9開腹時, 空腸にも同様な病変を認めたため, 胃全摘術および空腸部分切除術を施行した.切除標本の病理組織学検査では転移性胃・小腸癌と診断された.原発巣を検索したところ, 右乳房に腫瘤を認め, 組織診断が浸潤性乳管癌であったことより乳腺原発の同時性転移性胃・小腸癌と診断した.乳癌の胃・小腸転移が患者生存時に発見されることは少なく, なかでも初発乳癌において発見された本症例は極めてまれであると考えられた.
  • 江口 晋, 元島 幸一, 橋本 聡, 梶原 義史, 小原 則博, 角田 司, 兼松 隆之
    1994 年 27 巻 1 号 p. 112-116
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は84歳の女性.主訴は右季肋部痛.Computed tomographyにて膵頭部に腫瘤を認め, 血管造影にて同部に淡いtumor stainあり.十二指腸粘膜下腫瘍の診断で膵頭十二指腸切除術施行.摘出腫瘤は径8cm大, 十二指腸壁より壁外性に発育し, 内部に出血壊死を認めた.組織学的にはH.E.染色でリンパ球浸潤が多く, 紡錘型の腫瘍細胞が束状に配列し, 核のpalisadingを示すAntoniA型の組織型を部分的に認めた.銀染色では, 繊細な好銀線維が, 線維末端まで不規則に分枝していた.免疫染色ではS-100蛋白, desmin, neuron specific enolase, actinすべて陰性であった.Mitosisは少なく, 良性もしくは低悪性度の神経鞘腫と診断された.しかし, 35か月後, 肝転移再発により死亡した.
    十二指腸神経鞘腫の本邦報告は20例のみで, なかでも悪性は3例であった.本例は免疫染色を用いても, 平滑筋腫瘍との鑑別が困難で, H.E.および銀染色所見より神経鞘腫と診断し, 臨床経過より悪性と判断した.
  • 川平 洋一, 中尾 量保, 仲原 正明, 濱路 政靖, 荻野 信夫, 宮崎 知
    1994 年 27 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    慢性肝炎を合併した胃癌に対する胃切除術後に発生したまれな難治性肝リンパ腹水を手術により治癒せしめた.症例は58歳の女性.主訴は腹部膨満.1990年7月19日, 胃癌 (Stage I) の診断で幽門側胃切除, R2郭清術施行.生検肝の組織像は非活動型慢性肝炎であった.術後15日目軽快退院したが, 腹部膨満で術後30日目に再入院.入院時血清総蛋白質は4.6g/dl.腹水は淡黄色透明, 総蛋白質3.1g/dl, 細胞診Group2で, 摂食時にも乳濁認めず.利尿剤, 腹水穿刺, 腹水濃縮濾過再静注に抵抗し, 9月11日, 腹腔一静脈シャント術施行.一時的な改善を認めたがチューブが閉塞し, 1991年4月9日, 開腹術施行.肝門部よりリンパの漏出を認めるも漏出点は不明で, 肝門部焼灼, フィブリン糊充填術を施行した.術後2年3か月現在, 再発を認めない.漏出点の結紮が不可能な術後の難治性肝リンパ腹水に対して, 肝門部焼灼, フィブリン糊充填術は有用と考えられた.
  • 御江 慎一郎, 酒井 滋, 石川 泰郎, 加納 宣康, 山川 達郎
    1994 年 27 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆嚢の先天性位置異常のうち, 内臓逆位を伴わない左側胆嚢は非常にまれな奇形といわれている.最近我々は腹腔鏡下に摘出した胆嚢結石を伴う左側胆嚢の1例を経験した.
    術前, ultrasonography (以下, US), endoscopic retrogradecholangio-pancreatography (以下, ERCP) およびcomputedtomography (以下, CT) を施行したところ, USでは位置異常を指摘できなかったが, ERCPおよびCT検査の所見から, 胆嚢は肝左葉下面で肝鎌状間膜の左側に位置していると考えられた.腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行され, 術中所見で胆嚢は肝鎌状間膜の左側にあり, 胆嚢床が肝左葉下面に認められ本症と診断した.教室では, 1990年5月29日に本邦第1例目の腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行して以来, 約450例に同術式を施行してきたが, 左側胆嚢と診断されたのは本症例のみである.左側胆嚢は, 本邦では我々が検索した範囲では, 自験例を含め33例の報告があり, かつ腹腔鏡下に摘出したのは本例のみである.本症は手術中に発見されることがほとんどであるが, 術前診断には, CTあるいはUSが有用であると考えられた.
  • 金子 哲也, 中尾 昭公, 井上 総一郎, 原田 明生, 野浪 敏明, 高木 弘
    1994 年 27 巻 1 号 p. 125-129
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の女性の肝門部胆管癌である.経皮経肝胆道造影, 経皮経肝胆道鏡検査による胆道精査の結果, 病変は左肝管から総肝管に存在した.腹腔動脈造影にて異常を認めず, 経皮経肝門脈造影にて門脈左枝は閉塞し門脈本幹に軽度の壁不整を認めた.その後, 門脈血管内超音波検査を施行した.本法によると門脈本幹の壁は0.5mm~0.1mmの高エコー帯に保たれており浸潤陰性であったが門脈壁に接した腫瘍内に肝動脈右枝が埋没している所見を認めた.この所見は術中に確認され, 肝左葉切除, 尾状葉切除, 肝動脈右枝合併切除を施行し, 部分的門脈血動脈化の目的で固有肝動脈下腸間膜静脈吻合を施行した.術後, 胆管空腸吻合部縫合不全をきたしたが, 保存的療法にて治癒した.門脈血管内超音波検査は肝門部胆管癌における門脈壁の浸潤の有無や肝動脈右枝の浸潤の診断が正確にでき, 術式立案に有用であった.
  • 大坂 喜彦, 加藤 紘之, 中村 文隆, 大久保 哲之, 奥芝 俊一, 下沢 英二, 岡安 健至, 田辺 達三, 小柳 知彦, 野島 孝之, ...
    1994 年 27 巻 1 号 p. 130-134
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌は肺・肝・骨髄などに比較的高頻度に血行性転移をきたすが, 陣への転移は少ない.われわれは腎摘出後2年, 4年後にそれぞれ肺転移巣を摘出し, 6年後に再々度の肺転移および際転移を切除した1症例を経験した.腎細胞癌膵転移切除frlの報告は少なく, 自験例を含め22例にすぎない.これらの症例は何らかの臨床症状を契機に発見されたものが多く, 術後経過観察中の無症候性膵転移の発見切除例は自験例を含め3例のみである.進行期腫瘍術後の経過観察は局所のみならず全身臓器の精査が必要と思われた.腎細胞癌の転移巣に対しては化学療法あるいは放射線療法は効果が小さくその予後は一般に不良である.しかし自験例のように複数回の手術を受けながら比較的良好な予後が得られる症例もあることから, 他に有効な治療法のない現時点では腎細胞癌多発転移症例もまた外科治療の対象となりうると思われた.
  • 目黒 英二, 鈴木 克, 菊地 充, 亀井 真理, 及川 和彦, 富田 幸男, 葛西 敏史, 斎藤 和好
    1994 年 27 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    成人T細胞性白血病 (adult T-cell leukemia: 以下, ATLと略記) は通常全身リンパ節腫脹などの症状を示し, リンパ節以外への影響はまれである.我々はATLによる腫瘤が空腸に生じ腸重積を併発し, 外科的治療を要した症例を経験した.症例は家族歴・既往歴に危険因子のない48歳の男性, 急な心窩部痛を主訴に来院.腹部X線単純撮影にて鏡面形成を認め腸閉塞が疑われ, 腹部computedtomography (以下, CTと略記) では拡張した小腸とその内腔への隆起性病変を認めた.末梢血検査にて核に切れ込みを有する異型リンパ球の出現を認め, ATLの診断がついた.入院後イレウス管を挿入し腸管内減圧を試みたが, 一時期症状改善するも症状再発し, 22日目に手術を施行した.開腹所見では腸重積を2か所認め, 部分切除端々吻合および徒手整復にて修復した.末梢血および摘出標本組織におけるT細胞抗原と遺伝子プローブ検索により同型のATLの診断が得られ, 腸重積を引き起こした腫瘤が明かにATLによるものと確診した.
  • 癌関連遺伝子の発現と癌組織発生との関係
    三浦 康, 椎葉 健一, 松野 正紀, 増田 高行, 斉藤 昌宏
    1994 年 27 巻 1 号 p. 140-144
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は21歳の女性.虫垂切除術後9日目に麻痺性イレウスの診断で待期手術を施行, 横行結腸癌と左卵巣転移を認めて右半結腸切除術および左卵巣摘出術を施行した.また術後9か月目にS状結腸癌・直腸癌・多発ポリープが診断され, 大腸全摘術を施行した.これらの癌巣はmod, muc, wellなど異なった組織型を呈した.各癌組織についてK-ras gene codon 12の点突然変異および変異型p53遺伝子産物の免疫組織化学的発現とDNA塩基配列の異常を検索した.結果はmod (2型, ss) は変異型p53発現 (+), Kras変異 (+), muc (3型, ss) はp53 (-) K-ras (+), mod (type IIc, m) はp53 (-) K-ras (-) などであり, modのp53変異はcodon273でCGT→TGT (Arg→Cys) であった.以上より各癌組織の異なった病理像・癌関連遺伝子発現が確認され, 多彩な発癌様式の併存が推測された.
  • 黄 泰平, 中川 公彦, 小西 裕之, 高橋 由美子, 青野 豊一, 森友 猛
    1994 年 27 巻 1 号 p. 145-148
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症により人工肛門に静脈瘤が発生したという本邦の報告は, 検索の限り1991年の1例を認めるのみであった.最近, われわれは特発性門脈圧亢進症に人工肛門静脈瘤, 食道静脈瘤が合併した1症例を経験したので報告する.
    症例は40歳の男性で1988年10月, 直腸癌に対してマイルズ手術が施行されていた, 1989年12月頃より人工肛門よりの噴出性の出血を認めるようになった.1990年7月に人工肛門再造設術を行った.その後, 特発性門脈圧亢進症に合併した人工肛門静脈瘤, 食道静脈瘤と判明し, 1991年5月に食道離断, 脾静脈左腎静脈吻合を施行し良好な結果をえた.人工肛門静脈瘤の治療方針として, 肝機能不良例では硬化療法やmucocutaneous disconnectionなどの局所治療が第1選択だが, 肝機能良好な症例ではportasystemic shuntingがきわめて有効であると報告されている.
  • 加藤 紘之
    1994 年 27 巻 1 号 p. 149-152
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道・胃静脈瘤に対するシャント手術の改良が重ねられ, 今日ではDSRS with SPGDとして術式の確立をみた.この手術を施行した60例の5年および8年累積生存率はともに78%と良好で肝癌死, 他病死が死因の大多数を占めた.再出血は4例にみられたが, 硬化療法などで対処可能であった.術後のQOLをみると社会復帰率は83.3%であり, P.S, 0~1に属する例が97%であった.
    このような良好な予後の得られた要因としては術式の改良によって再出血率が低下し, 門脈肝血流量が長期的に維持されていることがあげられるとともに硬化療法を適時組み合わせた臨機応変の治療法の選択によるものと思われた.
    肝予備機能比較的良好例で活動的社会生活を望む症例にはシャント手術が強く勧められるし, 各種治療法の選択にあたっては第3者的コントローラーの必要性が痛感される.
  • 三條 健昌
    1994 年 27 巻 1 号 p. 153-158
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤の治療はBantiの脾摘術にはじまり, 多くの変遷を経て, 現在では内視鏡的硬化療法による治療が主流となっている.しかし, 硬化療法は長期予後の面で再発例が多く, いくつかの問題点が明らかにされるようになった.一方, 直達手術は長い歴史の中で血行動態的にも, 長期成績の点においても改善がなされてきた.技術と侵襲という面に関しては, 課題がいくつか残されているが, 1回の治療で再発が少なく長期予後が得られることは, 治療法としての存在意義は大きい.
    日本門脈圧亢進症研究会と内視鏡的硬化療法研究会との合同で施行されたアンケート調査によると, 直達手術と硬化療法の5年および10年累積生存率はおのおの, 49-77%と41.58% (p<0.01) および64-95%と55.57% (p<0.01) である.したがって, 硬化療法の難治例や, 肝機能良好例 (child分類AまたはB) には積極的に直達手術を適応することによりよい長期予後が得られると考えられる.
  • 内視鏡的硬化療法
    幕内 博康
    1994 年 27 巻 1 号 p. 159-162
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    内視鏡的硬化療法は1978年高瀬により本邦に導入されて以来急速に普及して, 食道胃静脈瘤の第1選択の治療法となるに至った.
    内視鏡的硬化療法の原理, 再発・再出血しない硬化療法の手技につき解説した.また, 巨木型静脈瘤や胃底部静脈瘤など血流量の多い静脈瘤に対しては, 濃度の高い無水エタノールやcyanoarylateを用いること.肝機能不良例には全身的影響の少ないesophageal varices ligation (EVL) やcyanoacrylateを用いること.肝癌合併例に対する硬化療法の適応や胃静脈瘤に対する硬化療法の注意点などにつき述べた.
  • 山田 龍作
    1994 年 27 巻 1 号 p. 163-166
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症に対する新しい治療法として, “経皮的肝内門脈静脈短絡術” (transjugular intrahepatic portosystemic shunt: TIPS) が出現した.著者らは1992年2月より, 23例の門脈圧亢進症患老にTIPSを試み20例に成功したので, これらの初期経験を基にして, 本法の臨床的有効性や問題点について述べる.23例はすべて肝硬変Child A 5例, B4例, C14例の23例で, この内20例がTIPSに成功した.初期成功率は86%である.TIPS後, 全例に門脈圧の減少, 内視鏡所見の改善をみた.また, 10例に術前から腹水の貯溜を認めたが, TIPS後8例に腹水の消失と減少をみた.一方, 合併症として, 軽症 (grade I) の肝性脳症を20例中5例に (この内, 3例は術前より脳症があった) 認めたが, いずれも一過性で内科的治療により改善した.また, TIPS不成功3例 (中止例) の中, 1例にARDSを1例に軽微な肺炎, 1例に肝不全死を認めた.これらの症例はいずれも極めて高度の肝硬変患者であった.TIPSは門脈圧亢進症に対する有効な治療法となると考えられた.
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