日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
30 巻, 11 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 国崎 主税, 山岡 博之, 若杉 純一, 高橋 正純, 小泉 泰裕, 秋山 浩利, 三辺 大介, 國広 理, 穂坂 則臣, 嶋田 紘
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2127-2133
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌大動脈周囲リンパ節郭清78例に, CH40を投与し, リンパ流とリンパ節転移との関連を検討した.転移陽性リンパ節の黒染率は46.7%で陰性の55.4%に比較し有意に低率だった.リンパ流はA領域でNo.3→7, 8a→9→16, 4d→6→14v→16が多く, No.16a1の黒染率が最も高かったが, n1 (+) では通常のリンパ流がブロックされ, No.5, 6へ直接流入するリンパ流が増加した.また, M領域ではNo.3→7→9→16が多かったが, n1 (+) ではNo.5, 4sa, 2へ直接流入した.C領域ではNo.2→16, 4sa→10, 11→16が多く, No.16a2lateroの黒染率が高かった.No.8p, 12, 14vの黒染率は低く, n1 (+) ではNo.7へ直接流入した.跳躍転移例とn0症例のリンパ流は変化なく, 跳躍転移という概念は現行取扱い規約から生じる歪みと考えられた.リンパ節の群別化を解剖学的にではなく, 転移程度や郭清効果に準じ分類し, リンパ流を考慮した術式が治療成績向上に重要である.
  • 栗田 啓, 高嶋 成光, 久保 義郎, 佐伯 俊昭, 横山 伸二, 土井原 博義, 棚田 稔, 多幾山 渉, 万代 光一
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2134-2139
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1973年から1993年の21年間に切除した胃平滑筋肉腫は19例であり, これは同期間に経験した総胃悪性腫瘍2,733例の0.70%に相当した.これらに臨床病理学的に検討を加え, 主として適切な切除範囲の検討を行った.腫瘍最大径が9cm未満例ではリンパ節転移を認めず, 12例中1例のみ再発死亡した.一方, 9cm以上の7例中6例が再発死亡した.核分裂数が一強拡視野中に3個以上みられた症例では, 10例中8例が死亡ないし再発したのに比べ, 3個未満では再発ないし死亡例は認めなかった.肝転移再発に対し肝切除を施行した1例に5年以上生存を得た.腫瘍の大きさが9cm未満の症例に対しては局所切除が適応と考えられた.9cm以上の症例に対しては, 手術療法のみでは予後は極めて不良で, 何らかの補助療法を要すると考えられた.
  • 腹腔洗浄細胞診による検討
    辻 恭嗣, 国枝 克行, 須原 貴志, 加藤 元久, 杉山 保幸, 梅本 敬夫, 深田 代造, 宮 喜一, 佐治 重豊, 下川 邦泰
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2140-2145
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌開腹時に施行した洗浄細胞診218例を対象に, 腹膜転移に及ぼす転移陽性リンパ節の影響を検討した.1) 細胞診陽性率は肉眼的腹膜転移 (P) 陰性例で10.9%, 陽性例で71.0%で, 組織学的リンパ節転移 (n) 程度と共に有意に増加し, 壁深達度 (t) がt3, t4症例ではn程度が進むにつれ有意の高値を示した.2) t3, t4症例の70例とt2症例で細胞診陽性4例を合わせた74例での検討で, 細胞診陽性率は転移陽性リンパ節個数が8個以上群は未満群に比べ, 漿膜浸潤面積が20cm2以上群は未満群に比べ有意の高値を示した.また, 浸潤面積が21) cm2未満群37例での検討では, 細胞診陽性率は転移陽性リンパ節個数8個以上群が56.3%と未満群の23.8%に比べ有意に高率であった.以上の結果, 腹膜転移における漿膜浸潤面よりの癌細胞遊離以外に, 転移陽性リンパ節からの癌細胞遊離の可能性が示唆された.
  • 山本 篤志, 秋山 弘彦, 田辺 和照, 清水 克彦, 南 一仁, 佐伯 修二, 向田 秀則, 久松 和史, 亀田 彰, 岩森 茂
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2146-2153
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌症例165例について術中腹腔内洗浄細胞診の意義を検討した.腹腔洗浄細胞診陽性例 [以後cy (+)] は165例中41例に認め, 細胞診の陽性率は24.8%であった.切除例141例中, P0症例をP (-), P1~P3症例をP (+) とすると, 50%生存期間はP (+) cy (+) 例5.5か月, P (+) cy (-) 例22.0か月, P (-) cy (+) 例11.9か月, P (-) cy (-) 25.5か月であった.非切除例24例では3.7か月であった.P (-) cy (+) 例の3年生存率は9.1%で, 他の群との間で生存率に有意差を認めた (p<0.05).P (-) cy (+) 例11例中, 胃癌死症例は9例あり, うち5例は腹膜再発であった.肉眼的P因子は必ずしも組織学的に確認できておらず, 予後因子として不正確な場合もあると考えられた.P (-) cy (+) 例は非切除例やP (+) cy (+) 例よりは予後良好であったが, その多くが腹膜再発していることより, cy (+) は生命予後を予測する重要な因子になりえると考えられた.
  • 小棚木 均, 伊藤 正直, 菊池 俊樹, 吉岡 年明, 今 博, 柳田 龍一, 小山 研二
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2154-2158
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    総肝動脈幹リンパ節 ((8)) の郭清が胃癌の治療成績向上にどの程度関与しているかを明らかにするため, 進行胃癌症例712例から,(8) 転移の臨床的特徴を求めた後,(8) 転移例の治癒切除率や再発率をretrospectiveに検討した.そして, 標準手術 (D2) に含まれる (8) 郭清の意義を考察した.(8) 転移例は100例 (14.0%) であった.(8) 転移例では (3) 転移や (6) 転移などを高率に合併するが,(3) 転移例や (6) 転移例が (8) 転移を合併する頻度は少なく,(8) 転移と他のリンパ節転移の関連はなかった.対象の大部分においては転移のない (8) の郭清であった.(8) 転移例のうち治癒切除例は52例であり, そのうち無再発5年生存例は13例であった.この (8) 郭清によって転移巣が摘除されて生存した13例が対象に占める割合は1.8%, 根治度AとBに限っても2.5%ときわめて少なく,(8) 郭清を標準手術としていることへの再検討が必要と考えられた.
  • 中西 亮
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2159-2168
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝硬変合併食道胃静脈瘤症例222例の血行動態を腹部血管造影で見た左胃静脈血流方向をもとに4群 (遠位性血流群, 求肝性血流群, 両方向血流群, 血流不明群) に分類し, 食道静脈瘤発生・増大機序および経胸食道離断術の効果を検討した.遠肝性血流群は64%を占め, 遠肝性血流群, 両方向血流群では肝機能高度障害例, 左胃静脈高度拡張例, 食道静脈瘤高度例を多く認めた.肝機能悪化に従い左胃静脈血流は求肝性から両方向あるいは遠肝性血流に変化し, 食道静脈瘤も高度となっていくことが示唆された.遠肝性血流群では左胃動脈径が細く, 食道静脈瘤増大因子としては胃動脈血より胃静脈血の影響が大きいと考えられた.経胸食道離断術の食道静脈瘤に対する効果を見ると, 遠肝性血流群の8.9%に術後静脈瘤遺残を見たが, 他の血流群には遺残は見られなかった.術後の静脈瘤遺残再発予防には食道静脈瘤以外の側副血行路を温存することが有効と考えられた.
  • 山田 靖哉, 鄭 容錫, 高塚 聡, 有本 裕一, 澤田 鉄二, 仲田 文造, 西口 幸雄, 池原 照幸, 奥野 匡宥, 曽和 融生
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2169-2177
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    ヒト大腸癌細胞株LMを用い, ヌードマウスの脾注, 肝転移形成を3回および5回繰り返すことにより, 細胞株LM-H3およびLM-H5を樹立した.LM-H3およびLM-H5はLMに比べて有意な肝転移能の増強を認め, 電子顕微鏡による観察では, microvilliの増加を認めた.核DNA量および染色体数はLMに比べ, 肝高転移株において減少した.培養上澄中のSLA産生量は, LMに比べ, LM-H3, LM-H5で, 3倍および4.5倍の産生量を認め, Flow cytometryによる細胞表面のSLAの発現の検討でも, M.F.I.が, 102.3±43.5,126.1±28.4,144.8±23.4と有意な増加を認めた.また, 血管内皮細胞への接着性もLMに比べ, 肝高転移株において有意に増加した.以上の結果から, このように肝転移形成を繰り返すことにより, LM細胞の肝転移能は増強し, また肝高転移株は親株とは異なったさまざまな特性を有すると考えられた.
  • 岡部 聡, 新井 健広, 丸山 祥司, 李 宗成, 村瀬 尚哉, 椿 昌裕, 遠藤 光夫
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2178-2185
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸sm癌の粘膜下層での浸潤部における粘液成分 (MUC) の形成の意義について検討を行った.MUCと病理学的諸因子の相関性, AB-PASやHID-ABなどの粘液染色性, CEA・CA19-9・UEA-1染色性の変化についても検討した.その結果, MUCはリンパ管侵襲や間質内浸潤度などの病理学的予後規定因子と有意な関連性を示した.また, MUC内の粘液は, 大部分がシアロムチン優位であり, 最浸潤部の癌細胞とともに粘液成分内においてもCEAおよびUEA-1が高度に染色される病変が多かった.MUC陽性大腸sm癌は局所浸潤性が高く, 転移・再発率も高率であり, 大腸sm癌における粘液成分の形成は重要な予後規定因子の1つと考えられた.
  • 橋本 博史, 遠藤 公人, 三国 潤一, 角川 陽一郎, 神山 泰彦, 藤谷 恒明, 小野 日出麿, 菅原 暢, 大内 清昭
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2186-2190
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性.胃噴門部に6×4cm大の粘膜下腫瘍を認め噴門側胃切除術を施行した.病理組織学的には胃平滑筋腫と診断され, 腫瘍内には石灰化とともに, 黄色の色素沈着を認めた.色素はSchrorl反応, Hall法が陽性であり, ビリルビンと考えられた.腫瘍組織内にはBerlin blue染色陽性のヘモジデリンと多数のマクロファージの浸潤を認めた.腫瘍は胆道系とは交通なく, 胃粘膜に潰瘍も認めなかったことより, 腫瘍内出血巣において, マクロファージにより貧食されたヘモグロビンがビリルビンへ変換された可能性が示唆された.
  • 高橋 孝夫, 山村 義孝, 松尾 浩, 小寺 泰弘, 紀藤 毅, 豊田 英樹
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2191-2195
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性.食欲不振で近医受診.精査にてA領域小彎の早期胃癌と診断された.入院時血液凝固機能検査でプロトロンビン時間の延長など著しい凝固異常を認めたため, 凝固因子活性を測定した結果, 第X因子のみが34%と低下しており, 第X因子欠乏症と診断された.手術時, 術後の出血コントロールに使用する複合型凝固因子製剤PPSB ®-HTの至適投与量を求めるため, 術前に同剤の輸注試験を施行した.手術はPPSB ®.HTの投与下にD1+No.7リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を行った.術後3日間は同剤を投与し, 術中, 術後に異常出血を認めなかった.
    先天性第X因子欠乏症はまれな疾患で, その手術報告例は本邦で2例だけである.輸注試験を基に凝固因子製剤の投与量, 投与間隔を決定することにより, 術中, 術後の第X因子活性を維持し, 安全に手術が可能であると考えられた.
  • 丸山 道生, 工藤 敏文, 桑原 博, 高松 督, 菅野 範英, 江渕 正和
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2196-2200
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性. 壁外性発育をしめす胃原発性巨大腫瘍で, 血清HCG (17,000mIU/ml) およびAFP (489ng/ml) 上昇を示した. 腫瘍は膵, 肝に直接浸潤し, 肝転移も1個存在した. 胃全摘, 膵体尾部, 脾, 肝外側区域合併切除を施行し, Stage IVb (H1P0N0T4) であった. 根治度Bにもかかわらず, 術後45日で肝再発により死亡し, 著しく悪性度の高い腫瘍であった. 切除標本の組織学的所見で, 粘膜には低分化腺癌 (CEA陽性), 浸潤部ではchoriocarcinoma様の部分 (HCG陽性), およびyolk sac tumor様の部分 (AFP陽性) を認め, 胃癌のchoriocarcinoma, yolk sac tumorへの分化と考えられた. この腫瘍の組織発生は粘膜内の腺癌細胞のretrodifferentiationと考えられ, 同時に2つのextra-embryonic elementに分化を示したきわめてまれな症例である.
  • 国枝 克行, 佐治 重豊, 熊沢 伊和生, 杉山 保幸, 宮 喜一, 下川 邦泰
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2201-2205
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝転移巣に対して肝動脈注入免疫化学療法が奏効した極めてまれな胆管カルチノイドの1例を経験した. 症例: 42歳の女性. 主訴: 全身倦怠感, 黄疸. 現病歴: 1989年8月頃全身倦怠感を自覚し近医を受診したところ, 黄疸を指摘され精査治療目的で当科に入院した. 腹部CT, PTCD, ERCPにて肝転移を伴う胆管癌と診断の上, 手術を施行した. 開腹すると肝転移 (S4, S2, S7領域) とリンパ節転移 (No.12, 8) を伴う小指頭大の腫瘍が下部胆管に存在し, D1郭清を伴う胆管切除術と肝動注用ポート設置術を施行した. 摘出標本では12×10×6mm大の堅い腫瘤が認められ, 病理検索では腫瘍細胞が胞巣状, 索状に配列し, 胆管カルチノイドと診断された. 辺縁に低分化型腺癌組織が混在していた. 術後MMC, rIL-2, OK-432による動注免疫化学療法を8コース施行したところ, 肝転移巣は著明に縮小し, 血清CEA値も正常化した. その後の化学療法を拒否し来院せず術後3年5か月目に肝転移と腹膜転移にて死亡した.
  • 杉本 不二雄, 丸山 明則, 黒崎 功, 塚田 一博, 畠山 勝義
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2206-2209
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部原発のso-called carcinosarcomaの1例を経験した. 症例は64歳の男性, 閉塞性黄疸にて発症した. PTCDチューブからの胆管造影では, 十二指腸乳頭部の完全閉塞と総胆管内腔突出型の陰影欠損像を認め, 十二指腸乳頭部癌の術前診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後の病理組織学的検索では, so-called carcinosarcomaまたはspindle (squamous) cell carcinoma with adenocarcinomaと診断された. 治癒切除であったにもかかわらず, 術後第78病日に多発性肝転移のため死亡した. so-called carcinosarcomaの十二指腸乳頭部原発例は非常にまれであり報告した.
  • 神藤 英二, 望月 英隆, 寺畑 信太郎, 古谷 嘉隆, 内田 剛史, 酒井 優
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2210-2214
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    盲腸に発生した, 腺癌と扁平上皮癌の成分を含む内分泌細胞癌の症例を経験した. 肉眼的には典型的な2型腫瘍であったが, 組織学的検索から同一腫瘍内に内分泌細胞癌と腺癌の領域を認め, さらに内分泌細胞癌の内部には扁平上皮癌への分化を示す部分を多数認めた. 内分泌細胞癌の診断の過程で行った免疫染色では, neuron-specific enolaseに陽性を示したものの, クロモグラニンAには陰性であったため, 電子顕微鏡検査を追加, 内分泌顆粒を認めたことで, 最終的に内分泌細胞癌の診断を得た. 臨床的には悪性度が高く, 肝転移を認めたため肝切除を含む根治度Bの手術を施したが, 残肝再発を来し, 術後9か月目に死亡した. 今回の症例は, 組織学的多様性から, 腫瘍発生母地, およびその分化の過程が注目されるので報告した.
  • 岸仲 正則, 籾井 眞二, 大里 隆, 田畑 正久
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2215-2219
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性. 右下腹部の腫瘤に気付いていたが放置していたところ, 同部の疼痛が出現してきたため来院した. 症状からは急性虫垂炎と考えられたが, 血中CA19-9が高値で5cm径の腫瘤を触知したため腹部超音波検査, 注腸造影X線検査, 腹部CT検査を施行し, 結果典型的な粘液瘤腫の所見を得たため盲腸を含む虫垂切除術を施行した. 虫垂内には黄色の粘液が充満しておりCA19-9濃度は11,440U/mlであった. 粘膜上皮は大部分で脱落し, 残存粘膜は細胞の異型性が乏しくまた間質への浸潤傾向も見られず嚢胞腺腫と考えられた. CA19-9の免疫組織染色で上皮細胞の胞体内に陽性の顆粒を認め, CA19-9が術後速やかに正常値に戻ったことより虫垂の嚢胞腺腫がCA19-9を産生していたものと考えられた.
    腫瘤を伴う急性虫垂炎では悪性も含めた虫垂mucoceleを考慮する必要があるが, 腫瘍マーカーのみにより悪性との診断を下すには注意を要すると考えられた.
  • 水本 正剛, 桧谷 義美, 明石 英男, 黒川 英司, 山本 仁, 樽井 武彦, 岡野 錦弥
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2220-2224
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    われわれは上行結腸の重複腸管から発生した後腹膜の粘液癌の1治験例を経験した. 症例は59歳の女性で, 右腰背部腫脹, 疼痛, 発熱を主訴に来院した. 膿瘍を疑い, エコーガイド下にドレナージした. 持続的なドレナージにより炎症症状はおさまったが, 後腹膜に腫瘤像が残存し, 血中CEAが17ng/mlと高値であったため, 原発巣の検索を行った. 注腸造影で上行結腸からバリウムが憩室状に突出している像が得られた. 肺, 胆道, 膵臓, 大腸, 卵巣などに異常を認めなかった. 試験開腹術にて上行結腸内側よりの後腹膜に腫瘍壁が平滑筋からなり内部に粘液を蓄えた高分化腺癌を認め, 重複腸管から発生した粘液癌と診断した. 腫瘍を可及的, 完全に掻爬したが, 20か月後再発をきたしたため, あらためて右半結腸切除を伴う腰方形筋, 腸骨筋, 腸骨骨膜, 大腰筋, 右第4腰椎横突起を合併切除し, 腫瘍を完全に摘出した. 術後3年の現在, 再発の徴候なく健在である.
  • 金 柄老, 川崎 勝弘, 先田 功, 西 敏夫, 相澤 青志, 大植 雅之, 中野 芳明, 冨田 尚裕, 門田 卓士, 森 武貞
    1997 年 30 巻 11 号 p. 2225-2229
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸5多発癌と胃癌, 腎癌を重複した1例を経験したので報告する. 症例は57歳の女性. 36歳時に横行結腸癌にて横行結腸部分切除術, 50歳時にS状結腸癌, 横行結腸癌, 胃癌, 腎癌を同時性に発症しS状結腸切除, 横行結腸切除, 胃切除, 右腎摘出術を他院で施行された. 57歳時に下血にて当科初診, 直腸癌と診断し直腸切断術を施行. フォローアップ中の60歳時, 横行結腸癌を発見し横行結腸部分切除術を施行した. 1997年3月, 63歳現在再発, 転移の徴候なく健在である. 自験例の第7癌でDNA複製エラーが認められた. これは多重癌発生のリスクファクターであり, 今後も慎重なフォローアップが必要である.
feedback
Top