日本消化器外科学会雑誌
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30 巻, 3 号
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  • 遠藤 光夫
    1997 年 30 巻 3 号 p. 681-685
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1985年から1995年までの胸部食道癌切除例621例を検討し報告した. 外科治療を開胸, リンパ節系統的郭清, 食道亜全摘, 食道再建を行う標準手術と縮小手術とに分けている. 前者では上縦隔郭清とくに両側反回神経周囲のリンパ節郭清を重視, 郭清操作を新リンパ節規約のD3郭清に準じて行っている. 過去5年問の上縦隔郭清施行例での2領域, 3領域郭清群間には有意差をみず, 癌の占居部位と術前頸部US診断とを加味した術式の選択をしている. 後者にはEMR, 非開胸食道切除, 胸腔鏡下食道切除がある. 癌の根治性から, 1/3周までのm1, m2癌でリンパ節転移陰性例をEMRの適応に, 広範なもの, 多発病巣のあるm1, m2癌を非開胸食道切除の適応としている. 胸腔鏡下食道切除ではD2郭清ができるものの, 術前に巨大な, また多数のリンパ節転移のないA0症例を適応とする. 縮小手術の遠隔成績は良好であるが, さらに長期遠隔での検討課題をのこしている.
  • 水谷 郷一, 幕内 博康, 三富 利夫, 長村 義之
    1997 年 30 巻 3 号 p. 686-693
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道表在癌の血管新生の状態と臨床病理学的因子との関係を検討する目的で, 食道表在扁平上皮癌切除例37例に第VIII因子関連抗原染色を行った. 染色標本はコンピューター画像解析装置を用いて腫瘍内部 (以下, 腫瘍内) と腫瘍辺縁正常部 (以下, 腫瘍外) の微小血管をおのおの3視野ずつ計測し, 1視野あたりの平均血管数と平均血管面積 (%) を算出し, 各臨床病理学的因子別に比較検討した. 腫瘍内平均血管面積 (%) は, m1, m2が他のm3~sm3に比べて有意に低かった. 腫瘍外平均血管面積 (%) は, 深達度で差は認められなかった. m3, sm1ではリンパ節転移 (n) や脈管侵襲 (ly, v) を認めない症例は, 腫瘍外が腫瘍内に比べて有意に平均血管数が低かった (p<0.01). よって食道表在癌がm1, m2からm3に増殖する過程に腫瘍内血管新生の関与が示唆された. また内視鏡的粘膜切除術の適応を決める1つの指標に, 腫瘍内と腫瘍外の平均血管数の検討が有用である可能性が示唆された.
  • 竹村 雅至, 東野 正幸, 大杉 治司, 徳原 太豪, 高田 信康, 藤原 耕三, 加藤 裕, 井原 歳夫, 木下 博明
    1997 年 30 巻 3 号 p. 694-699
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道未分化癌は比較的まれな疾患であり, 早期にリンパ行性・血行1生転移をきたし, 予後不良な疾患である. 今回, 当科で経験した食道末分化癌6例を, 臨床病理学的および免疫組織化学的に扁平上皮癌128例と比較検討した. 6例の内訳は男性5例・女性1例で, 平均年齢64歳であった. 5例に3領域リンパ節郭清を含む食道癌根治術を施行したが, 1例は非治癒切除に終わった. 病理組織検査では, 4例が小細胞型, 2例が非小細胞型と診断された. 根治術施行5例全例にリンパ節転移を認めた. 摘出リンパ節の転移度は12%であり, これは扁平上皮癌症例の8%と比較し高率であった. 免疫組織化学染色では, NSEが6例中5例・EMAが5例中1例陽性であった. EMA陽性症例はNSE染色でも陽性であった. 一方, CEA・Keratin染色は全例陰性であった. 免疫組織化学染色の結果より未分化癌特に小細胞型構成細胞が多方向分化能を有している可能性があると思われた.
  • 多変量解析による検討
    岡島 一雄
    1997 年 30 巻 3 号 p. 700-711
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌患者の予後因子を, 国立がんセンターで切除した6,540例を対象に単変量解析 (累積生存率) と多変量解析 (Cox比例ハザードモデル) で検討した. 選択した23因子は性を除き5年生存率で有意差を示し, 重要な予後因子と考えられた. しかし, Spearman相関係数による独立性の検討, stepwise法による多変量解析の妥当性の検討により11因子が除外された. 残った年齢, 性, 深達度, リンパ節転移, 肝・腹膜転移, 最大腫瘍径, 占居部位, INF, リンパ管侵襲, 静脈侵襲, リンパ節郭清, 切除断端の12因子の多変量解析で, 最も重要な予後因子は深達度 (ハザード比: 4.62) で, 2位リンパ節転移 (3.63), 3位年齢 (2.07), 4位肝・腹膜転移 (1.91), 5位リンパ節郭清 (1.58) であった.30年間の予後因子の順位変動では, 1位深達度, 2位リンパ節転移は不動で, 肝・腹膜転移は3位から4位に順位が下がり, 年齢とリンパ節郭清は順位を上げていた.
  • 山内 希美, 広瀬 一, 千賀 省始, 林 勝知, 鬼束 惇義, 正村 静子
    1997 年 30 巻 3 号 p. 712-718
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    生理食塩水単純浸漬保存肝のviabilityの評価法として電気インピーダンス (EI) 測定の意義を検討した. Wistar系雄性ラットをI群: 4℃, II群: 15℃, III群: 25℃ 保存とし, 電顕的評価, 肝組織中高エネルギーリン酸化合物 (HPLC), EIを測定した. なおEIはLCRメータにより20Hz-1MHzまでの39周波数を使用した. ミトコンドリアスコアー (Mt.s) はI, II, III群でそれぞれ保存240分, 120分, 60分まで3未満であった. %ATPはI, II, III群でそれぞれ同保存期間に虚血前の18~21%に減少した. %tanδ は虚血後直ちに減少し, Mt. Sが3未満の時点で0.033~0.086%/minとなった. %ATPと%tanδ の間に有意な正の相関が認められた. %tanδ の変化はミトコンドリアの構造破壊およびATPの変化と関連性があることが示唆され, 電気インピーダンスは保存肝のviabilityを評価するのに有用である可能性が示唆された.
  • 竹内 丙午, 鈴木 正徳, 福原 賢治, 海野 倫明, 遠藤 公人, 成島 陽一, 力山 敏樹, 坂本 宣英, 篠田 雅央, 松野 正紀
    1997 年 30 巻 3 号 p. 719-723
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝嚢胞性疾患の自験49例を対象に, 画像診断能と嚢胞穿刺液および壁構成細胞の免疫組織化学的性状について検討した. 画像所見からは肝嚢胞例で嚢胞の一部が結節状を呈したり, 嚢胞腺癌においても平滑な嚢胞壁を有するものもあり, 鑑別には限界があった. また嚢胞内容液のCEA・CA19-9は良・悪性をとわず高値を呈し, 細胞診は偽陰性が多く, また腹膜播種などの危険性もあることから嚢胞穿刺液検査は診断の面において有用ではない. 免疫組織化学的検索からは肝嚢胞壁の上皮細胞はCA19-9, CEAともに陽性であり, 免疫電顕を用いた観察でもCEAは嚢胞壁上皮に極性を失って発現していた. CEAの発現は構成壁細胞のmalignant potentialを反映している可能性があり, 画像診断で良性肝嚢胞, 肝嚢胞腺腫と考えられる症例でも, 切除標本において免疫組織化学的検索を行うことは予後の指標になるものと考えられた.
  • 術前ステロイド剤投与の効果
    久津 裕, 久津 由紀子, 石山 秀一, 布施 明, 田中 丈二, 五十嵐 幸夫, 浦山 雅弘, 磯部 秀樹, 塚本 長
    1997 年 30 巻 3 号 p. 724-728
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝切除術を施行した非硬変肝切除16症例を対象に, 術前にmethylpredonisolone250mgを投与した群 (S群: n=7) と非投与群 (C群: n=9) とに分類し, 周術期の血清interleukin-6 (IL-6) 値, 血液生化学検査値, 呼吸循環諸量を測定し, 術前ステロイド投与の効果について検討した. 術前, 術中の両群の背景因子には差がみられなかった. IL-6値の変動をみると術直後から第5病日までS群ではC群に比べ抑制されていた. S群のIL6ピーク値はC群に比べ有意に抑制されていた. 術後合併症の発生はS群2例 (28.6%), C群6例 (66.7%) であった. S群ではRespiratory indexが低値を維持し, 術後トランスアミナーゼ, 総ビリルビンの上昇が抑えられる傾向がみられた. 以上より, ステロイド術前投与による肝切除術周術期における過剰生体反応制御の可能性が示唆された.
  • 竹並 和之, 高崎 健, 山本 雅一
    1997 年 30 巻 3 号 p. 729-734
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移巣の2次的な肝内進展について病理組織学的に検討した. VB-HE重染色を行い, 主病巣の最大割面上, 病巣周囲で, 1) 境界部での発育様式, 2) 門脈域への浸潤, 3) 肝静脈浸潤, 4) 衛星結節の4項目につき観察した. 膨張性発育は31例 (72%) で, うち14例に被膜形成を認めた. 浸潤性発育12例のうち6例に, 門脈域浸潤の先進部よりさらに肝実質へ浸潤する像を認めた. 門脈域への浸潤は38例 (88.4%) で, うち門脈侵襲31例, 胆管侵襲17例で, 肝静脈侵襲は10例であった. 衛星結節を28例 (65.1%) に認め, うち22例は門脈域内の癌結節で, 6例は肝実質内の癌結節であった. 衛星結節のうち24例 (85.7%) は主病巣から1.5cm未満内に存在し, 主病巣の径の増大とともにその出現頻度および主病巣からの距離が増加した. 門脈域への浸潤は2cm以下の症例でも7例全例にみられた. 転移性肝癌においても門脈域を介した2次的な肝内進展を示しており, これらの進展を考慮した術式の選択が望まれる.
  • 舛井 秀宣, 池 秀之, 渡会 伸治, 山口 茂樹, 藤井 正一, 金村 栄秀, 南湖 正男, 黒沢 治樹, 大木 繁男, 嶋田 紘
    1997 年 30 巻 3 号 p. 735-740
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移切除88例を対象として肝切除後の再発形式を検討し, その対策を考察した. 肝切除後3年再発率は74.9%で, そのうち部位別では残肝再発 (73.3%) が, 経路別では血行性転移 (86.7%) が最も多かった. 3年残肝再発率は65.2%で, 肝切離面から1cm以内の癌浸潤 (TW) の有無では残肝再発率に有意差がみられたが, 肝転移の程度, 肝転移個数, 転移巣最大径, 肝切除術式で差はみられなかった. 残肝再発形式をTWと再発部位から検討すると肝切離面癌遺残部再発3例, TW (+) で肝切離面の近傍再発8例, TW (-) で遠隔残肝再発9例, 両葉多再発17例, その他であった, 即ち, 前2者のように肝転移巣近傍の微小転移 (daughter metastasis) によるもの29.3%, 次2者のように原発巣からの潜在的肝転移 (occult metastasis) から発生したと思われるもの70.7%であった. 以上より肝切除後の残肝再発を減少させるためには, 十分なTWを確保した肝切除術と, 肝内微小転移巣, 潜在的肝転移巣を考慮にいれた肝動注療法が不可欠と思われた.
  • 伊藤 卓, 森田 隆幸, 中村 文彦, 今 充
    1997 年 30 巻 3 号 p. 741-747
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1975年から1991年までの16年間に経験した深達度mp大腸癌119例のうち局所再発3例, 同時性腹膜播種1例, 同時性大動脈周囲リンパ節転移例1例を除いた非転移群100例と遠隔転移群14例について遠隔転移をきたす臨床的, 病理組織学的種々の危険因子の検討を行った, 遠隔転移をきたす危険因子として, 1) 肛門管に腫瘍がかかる症例, 2) 中分化型腺癌, 3) 深達度が外縦筋, 4) Budding高度, 5) 中静脈の腫瘍塞栓, 6) リンパ節転移の6因子があげられた.あてはまる因子数別の5年生存率は0因子のものは100%, 1因子のものは97.6%, 2因子のもの は81.9%, 3因子以上をみたすものは53.1%であり, これら比較的早期の症例の予後の推測には多因子による検討が有用と考えられた. 今後はこれら遠隔転移を規定する因子をさらに明確にし, それらの悪性度を指標にした効率的な補助化学療法の検討が必要と考えられる.
  • 前後2年間の分析
    吉田 順一, 黒木 祥司, 松尾 憲一, 池田 真一, 田中 雅夫
    1997 年 30 巻 3 号 p. 748-753
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    本邦の大病院ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) が蔓延している. 当科では基本的な感染対策を行っているので, 94年1月から95年12月まで消化器外科の患者から得られた細菌1,408株を対象に解析した. その間術前1週間はヨード剤による含嗽と鼻前庭除菌を行い, 回診順序は術後観察室→ 一般病室→MRSAの隔離室の順とした. 統計学的にMRSA, カンジダ属, 緑膿菌および腸球菌の陽性者数を折れ線回帰分析した. その結果, 95年1月からカンジタ属は増加したが, MRSA, 縁膿菌, 腸球菌は減少した. MRSAの計55株は94年全株 (n=908) のうち6.1%, 95年 (n=500) では皆無だったが, カンジタ属は5.0% (45株) から5.8% (29株) へ増加した. 当科のMRSA検出ゼロ化には, 術前の上気道に対する処置などの基本的な感染症対策が功を奏していると思われる.
  • 神吉 和重, 吉住 豊, 森崎 善久, 杉浦 芳章, 玉井 誠一, 相田 真介, 島 伸吾, 田中 勧
    1997 年 30 巻 3 号 p. 754-758
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Lymphoid stromaを伴った食道非小細胞未分化癌の1例を経験したので本邦報告4例と集計し, 考察を加え報告する. 症例は75歳の女性. 主訴は嚥下困難. 生検で未分化癌と診断され, 術前化学療法 (CDDP80mg/m2全身投与) 施行後, 根治術を施行した. 摘出標本では, 腫瘍は大部分が正常食道上皮に覆われた上皮下腫瘤型を示し, 生検時と同様に病理組織像はT-cell主体のリンパ球の著明な浸潤を伴い比較的大型の腫瘍細胞が増殖していた. 扁平上皮や腺への分化をほとんど認めず, 非小細胞型未分化癌と診断した. 病理学的進行度はa1n4Pl0M0のStage IVであった. 術後1年10か月に頸部リンパ節再発を認め, リンパ節郭清を施行した. 食道未分化癌は一般的に予後不良であるが, 著明なリンパ球浸潤を伴ったものは, 予後良好と報告されている. 本症例も初回手術から3年5か月を経過し健在で, 予後は比較的良好と考えられた.
  • 本田 五郎, 山崎 信保, 嶌原 康行, 岡上 豊猛, 上原 徹也, 八木 草彦, 倉員 敏明, 梶原 伸介, 坂尾 寿彦, 木下 研一
    1997 年 30 巻 3 号 p. 759-763
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例はB型肝炎による肝硬変を持っ45歳の男性で, 表在性食道癌と肝右葉の大小多発性の肝細胞癌 (HCC) の重複癌の診断で当科へ入院した. 入院後, 肝動脈からのlipiodolizationと右肝動脈のTAEを行い, UFT ® の経口投与と2か月間で4回のCDDPの全身投与を行った. HCCは著明な縮小が見られ肝左葉にも病変を認めなかったが, 食道病変は消滅しなかったため食道癌には切除術が必要と判断し, 1期的に食道抜去術および肝右葉切除術を施行した. 食道は中分化型扁平上皮癌で深達度はm3であった. 肝はHCCであったがTAEが著効し分化度の判定は困難であった. 術後経過は順調であったが9か月目に残肝に3個のHCCの小結節再発を認めた. しかし術後22か月を経過した現在, 経皮的エタノール注入療法およびTAEを用いて良好なコントロールを得ている.
  • 辻本 広紀, 市倉 隆, 玉熊 正悦
    1997 年 30 巻 3 号 p. 764-768
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例: 59歳の男性. 父, 兄, 弟が胃癌で死亡, 姉が子宮癌で死亡と悪性腫瘍の家族内集積を認めた. 1994年1月に下咽頭癌に対し, 咽喉頭食道全摘, 頸部郭清, 非開胸食道抜去, 経後縦隔胃管挙上による咽頭胃吻合, 永久気管瘻造設術を施行. 術後1年目の内視鏡検査にて再建胃管内に長径約3cmの隆起性病変を認め, 生検にて高分化腺癌と診断され, 1995年5月手術施行. 病巣の主座が胃大網動静脈の対側であったこと, 腎機能障害がみられたことから, 胃管への血流を温存して胃管の分節切除を行い, 結腸により再建した. 胃管癌の病理診断は深達度sm, 組織型tub1, ly1, v0, ow (-), aw (-), 摘出された壁在リンパ節に転移は認めなかった. 胃管癌手術後1年経過した現在, 再発の兆候なく生存中である. 再建胃管癌に対する本術式は根治性からは不十分となろうが高齢者, 合併症を有する症例には有用であると思われた.
  • 石神 純也, 夏越 祥次, 徳重 正弘, 崎田 浩徳, 肝付 兼達, 愛甲 孝
    1997 年 30 巻 3 号 p. 769-773
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    まれな胃, 十二指腸乳頭, 直腸の三重複早期癌の1切除例を経験した. 症例は57歳の男性で, 集検で膵腫瘤を指摘され, 入院後の精査で膵頭部嚢胞と判明した. さらに術前の上部および下部消化管内視鏡検査により噴門部前壁に胃癌, 十二指腸乳頭部に粘膜下腫瘤様の腺癌, 上部直腸にO型 (Ila+IIc) の直腸癌が指摘された. 胃全摘, 膵頭十二指腸切除および低位前方切除を1期的に施行し, Child変法および結腸直腸の端端吻合により再建した. 病理組織学的にはいずれの癌も粘膜下層内にとどまっており, リンパ節転移や脈管侵襲は認められず, 胃・十二指腸乳頭部および直腸原発の3重複早期癌と診断された. 各病変のp53の発現性を検討した結果, 結腸癌病変にp53の発現が認められた. 今後, 遺伝子異常を含めた重複癌に対するスクリーニングの工夫が必要と考えられた.
  • 阪本 靖介, 猪飼 伊和夫, 田浦 康二朗, 池田 房夫, 森本 泰介, 山岡 義生
    1997 年 30 巻 3 号 p. 774-778
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性. 右季肋部痛, 黄疸を主訴として近医を受診した. 左肝内胆管拡張と総肝管の透亮像が認められたが, 明らかな肝内腫瘤陰影は認められず, 総胆管結石症の診断にて胆嚢摘出術, 総胆管切開術を施行された. 術中所見では総胆管内に凝血塊が認められたが結石はなく, 術中精査にて左肝内胆管起始部に隆起性病変が認められ, 生検にて病理組織学的に悪性と診断されたため当科を紹介された. 入院後, 再度精査を施行したが肝内には腫瘤は認められず, 肝門部胆管癌と診断し肝左葉切除術, 胆道再建術を施行した. 切除標本では肝門部左肝内胆管壁近傍の肝実質内に直径約1cmの腫瘍があり, 病理組織学的には肝細胞癌で, 微小胆管に腫瘍栓を認めた. 胆管腫瘍栓に起因する閉塞性黄疸を初発症状とした細小肝細胞癌の1例を経験したので報告した.
  • 矢野 諭, 熱田 友義, 渡辺 不二夫, 直江 和彦, 川村 健, 斎藤 丹羽子, 上野 洋男, 古内 恵二, 加藤 紘之
    1997 年 30 巻 3 号 p. 779-783
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性.下痢, 排便時出血を主訴に近医を受診. 直腸腫瘍と多発する直腸ポリープを指摘され当科を紹介された. 右手指, 右耳介後部の角化性丘疹, 右下腹部の血管腫, および右扁桃の乳頭腫を認めCowden病と診断された. また下部食道, 胃, 大腸に多発する過形成性ポリープ, 中部直腸に3型中分化腺癌, 肝外側区に血管性過誤腫を認めた. 遺伝子学的検索では, ras遺伝子とP53には変異は認められなかったが, PCR法で癌部と肝過誤腫の部位からヒトパピローマウイルスが検出された. 本症のような高い悪性腫瘍発生素因を有する遺伝性疾患においては遺伝子レベルでの研究の蓄積が発癌機序の解明の一助となり得ることが示唆された.
  • 村山 道典, 藤野 啓一, 小林 秀紀, 渡邊 千之, 石山 賢, 酒井 優, 和田 了, 桑原 紀之
    1997 年 30 巻 3 号 p. 784-788
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性で, 6年前に上行結腸癌の根治術を施行され, 外来経過観察中に右上腹部痛を訴えた. 画像検査で, 不整な隆起をともなう胆嚢の壁肥厚, 膵胆管合流異常が認められ, 胆石はなかった. また, 肝床部に腹部超音波検査でlow echo領域が認められ, 腹部computed tomographyでは濃染効果をともなう高吸収域が認められた. 術中, 腹膜播種・漿膜および漿膜下浸潤・肝床浸潤は認められず, 胆嚢摘出およびリンパ節郭清術を施行した. 組織学的には表層に高分化腺癌を伴った多結節の未分化癌であり, 免疫組織化学的検索を加えた結果内分泌細胞癌と考えられた. また, 漿膜浸潤を一部で認めたが肝床剥離面の癌浸潤は認められなかった. 画像診断で肝床部に認められた所見は, 胆嚢静脈の血流増加によるものと考えられた. 術後3か月で死亡し, 剖検時多数転移巣を確認した. 比較的まれと考えられる胆嚢内分泌細胞癌の1例を, 興味ある画像所見と合わせて報告した.
  • 西脇 巨記, 本多 弓余, 岸川 博隆, 田中 宏紀, 谷脇 聡, 成瀬 博昭, 伊藤 和子, 梶 政洋
    1997 年 30 巻 3 号 p. 789-793
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例1は75歳の男性で, 粘血下痢便を主訴として他院に入院, 潰瘍性大腸炎の診断にて諸検査施行し, 大腸に穿孔を認め緊急手術を施行した.摘出標本よりアメーバ虫体を認め当院転院となった.
    症例2は28歳の男性で, 粘血下痢便を主訴とし他院通院し潰瘍性大腸炎の診断にて投薬を受けていたが改善しなかったため, 当院を紹介され便培養にてアメーバを認め入院となった.入院後2日目に腹痛増強し, 腹部単純写真にてfree-airを認め緊急手術を施行した.
    アメーバ赤痢は男性間の同性愛行為により伝播し近年増加傾向にある疾患である.いったん穿孔すると非常に予後の悪い疾患となるため粘血下痢便を主訴として来院する患者に対しては本疾患を念頭にいれる必要があると考え報告した.
  • 倉永 憲二, 望月 英隆, 岩本 一亜, 玉熊 正悦, 長谷 和生, 渡邉 千之
    1997 年 30 巻 3 号 p. 794-798
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    径15mm以下の自験直腸カルチノイド24病変をretrospectlveに検討し, 治療方針を考察した.深達度別にみるとsm21病変中12病変に内視鏡的切除が初回治療として選択されたが, 7病変がce (+) で手術的切除が追加された.残り9病変には初回より手術的切除が行われ, 全例ce (-), および脈管侵襲 (-) であった.sm21病変に転移は認めなかったが, mp3病変中2例に転移が認められた.腫瘍径別にみると10mm以下は全例smであったが, 11mm以上では転移が25%にみられ, mpが37.5%を占めた.したがって径15mm以下の直腸カルチノイドの治療法として,(1) 10mm以下の病変については, 全例局所切除で十分あり,(2) 11mm以上に関しては, 術前深達度診断がMP'のものには最初から根治的切除を行うが, SM'のものについては局所切除を行い, 組織学的にmpへの浸潤が判明した場合にのみ根治手術を追加する必要があり,(3) 局所切除法としては経肛門的局所切除術が最も望ましいと考えられた.
  • 松岡 翼, 鄭 容錫, 八代 正和, 西村 重彦, 井上 透, 冨士原 知史, 澤田 鉄二, 前田 清, 仲田 文造, 曽和 融生
    1997 年 30 巻 3 号 p. 799
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
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  • 佐藤 好信, 塚田 一博, 畠山 勝義
    1997 年 30 巻 3 号 p. 800
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
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