日本消化器外科学会雑誌
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30 巻, 5 号
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  • 清水 周次, 千々岩 一男, 山口 幸二, 水元 一博, 飛松 正則, 田中 雅夫
    1997 年 30 巻 5 号 p. 963-968
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移切除例47例にっき各種予後因子を統計学的に検討し, 手術適応および術式についての方針と術後肝動注の意義について考察した.無再発生存率に対しては肝切除断端の癌遺残の有無 (p<0.05) が, 累積生存率に対しては腫瘍最大径 (p<0.01) と肝切除術根治度 (p<0.05) が有意な予後因子であった.同時性, 術前血中CEA値, 肝転移の範囲, 転移個数, 肝切除術式, 輸血または術後肝動注は有意な予後規定因子ではなかった.しかし, 腫瘍最大径3cm以上の症例に対しては, 術後肝動注は無再発および累積生存率を有意に延長した (p<0.05).以上の結果より, 大腸癌肝転移に対する外科治療はその個数や範囲に関わらず, 術式に関係なく腫瘍組織を残さないように切除することが重要であり, 多発例においても積極的に切除する.さらに径3cm以上の肝転移切除後は肝動注を積極的に追加すべきと考えられた.
  • 木村 修, 山根 成之, 菅村 健二, 牧野 正人, 前田 迫郎, 貝原 信明
    1997 年 30 巻 5 号 p. 969-974
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌の進展とアポトーシスとの関連を検討するため, 大腸腺腫24病巣, 大腸癌69病巣, ならびに転移巣37病巣 (肝転移巣21, リンパ節転移巣16), 計130病巣におけるアポトーシスの発現をフローサイトメトリーを用いて測定した.アポトーシスはApoptotic Index (AI) を算出して検討し, AI値は正常粘膜27.0±16.8, 腺腫28.2±26.0, 大腸癌15.2±12.0と, 大腸癌では正常粘膜, 腺腫に比べてアポトーシスが有意に低下し, 進行度, 脈管侵襲が高度なものほど低値を示した.また, AI値が低値を示す症例は高値を示すものに比べて有意に予後不良であった.一方, 原発巣と転移巣との比較では, 転移巣のAI値は原発巣に比べてより低値を示す傾向にあり, 同一症例の比較においても同様の結果が得られた.
    これらのことから, アポトーシスは大腸癌の発育, 進展のみならず, その予後にも密接に関与するとともに, 大腸癌の悪性度を示す有用な指標の1つになりうると考えられた.
  • 斎藤 典男, 更科 廣實, 布村 正夫, 幸田 圭史, 滝口 伸浩, 早田 浩明, 尾崎 和義, 菅谷 芳樹, 中島 伸之
    1997 年 30 巻 5 号 p. 975-982
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後の機能障害の減少を目的とし, 146例にリンパ節郭清を伴う自律神経温存手術を施行した.術前照射併用群 (照射群) は54例, 手術単独神経温存群 (非照射群) が92例である.術前照射併用群を中心に, その長期予後と諸機能の温存状況について検討した.照射群の累積5年生存率は84.0%, 9年生存率は77.7%を示し, 長期予後は良好な傾向を認めた.神経温存との関連は不明であるが, 骨盤内局所再発率は照射群で5.6%と低値を示し, 局所再発の抑制傾向を認めた.排尿機能は両側または片側の骨盤神経叢温存群で全例に自己排尿が可能であり, S4の部分温存群でもほぼ自己排尿が可能であった (75%).男性性機能は両側下腹・骨盤神経叢温存群でErectionは88.9%, Ejaculationは55.6%の症例に可能であったが, 片側温存群ではEjaculation可能例は14.3%と不良であった.機能障害において照射群と非照射の間に差は認めず, Ejaculationの保持に問題が残った.
  • 上田 順彦, 広野 禎介
    1997 年 30 巻 5 号 p. 983-988
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    アンケート調査をもとに癌告知の現状と問題点を明らかにした.対象は過去2年10か月間に筆頭著者が主治医の消化器癌のうちアンケートが回収できた94例である.癌告知は家族の合意の上で行った.94例中癌告知は63例で, 根治度別の割合はA 88%, B 38%, C 47%であった.告知をうけた大部分の患者, 家族は告知をうけたことに満足していた.また根治度B, Cでは告知により補助療法や再手術が円滑に遂行できたが, 非告知例では困難な症例もあった.生存中の告知患者54例中癌告知希望は94%であったが, 予後まで希望した人は41%であった.また告知患者の6%は告知を希望せず, 非告知患者の39%は告知希望であった.以上より癌告知は患者の心理面, 治療面に有用であるが, 告知に際しては本人の告知の希望内容を事前に確認し, それに沿った情報を提供する必要がある.ただし, 予後の厳しい患者に希望通りの情報を提供するか否かは今後の課題である.
  • 宮田 博志, 岡川 和弘, 岸 健太郎, 西岡 清訓, 請井 敏定, 上村 佳央, 宮内 啓輔, 寺島 毅, 金子 正, 水谷 澄夫
    1997 年 30 巻 5 号 p. 989-993
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌術後に発生した膿胸は治療に難渋することが多く, さらに気管支瘻を併発した場合は特に治療困難となる.気管支瘻に対する治療としては有茎性大網充填術, 有茎性筋肉充填術の外科的治療が行われているが, 胃管再建の食道癌術後早期の気管支瘻ではこれらの外科的治療が困難である.今回, 気管支をバルーン閉塞させてフィブリングルーを注入する方法が有効であったので報告する.症例は61歳の女性で, 胸部食道癌に対して食道亜全摘・胃管利用胸骨後径路再建を施行した.腫瘍は気管分岐部-左主気管支に浸潤しており, 潰瘍底が一部残存した.これに起因すると考えられる右膿胸を発生し胸腔ドレナージ, 胸腔内洗浄を施行したが, air leakを多量に認め気管支瘻の併発を認めた.術後43日目に気管支鏡下にB6bをバルーン閉塞させフィブリングルー3mlを注入したところ, air leakは消失し気管支瘻は閉鎖された.
  • 松田 政徳, 相川 琢磨, 関川 敬義, 苅込 和裕, 飯塚 秀彦, 藤井 秀樹, 松本 由朗
    1997 年 30 巻 5 号 p. 994-998
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性.十数年前より, 食道裂孔ヘルニアの診断で経過観察中であった.上腹部膨満感のため近医を受診, 精査加療目的で当科に入院した.胸部単純X線写真で縦隔内に複数の消化管ガス像が認められた.上部消化管造影では混合型の食道裂孔ヘルニアを認め, 胃の大部分が縦隔内に脱出しておりupside down stomachを呈していた.また, 胃体中部小彎後壁側に不整な陰影欠損像を認めた.上部消化管内視鏡検査では胃は高度に変形し胃体中部から肛門側の観察は困難であった.体中部に隆起性病変を認め, 生検では印環細胞癌であった.胃全出術, 食道裂孔縫縮術を施行した.胃体中部に3型病変と幽門前庭部前壁側に中央に陥凹を有する隆起性病変が存在した.双方とも低分化腺癌で, 粘膜下で連続していた.upside down stomachに胃癌が併存し, 切除しえた本邦2例目の極めてまれな症例を報告した.
  • 谷脇 聡, 片岡 誠, 田中 宏紀, 船戸 善彦, 伊藤 由加志, 春木 伸裕, 小西 昭充
    1997 年 30 巻 5 号 p. 999-1003
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    平滑筋芽細胞腫は胃に発生する場合がほとんどで, 十二指腸原発例は少ない.今回, 我々は72歳の女性の十二指腸下行脚に発生した平滑筋芽細胞腫の1例を経験した.十二指腸原発平滑筋芽細胞腫の本邦報告例は過去に22例しかなく, このうち悪性症例は4例で, 1例のみ腫瘍死が確認されている.本症例は, 膵頭十二指腸切除術を施行し, 手術所見や組織学的検索で浸潤傾向やリンパ節転移など悪性所見を認めなかったが, 術後約4年で, 肝転移, 腹水貯留をきたし死亡した.また, 本腫瘍は通常, 類上皮性平滑筋腫瘍と同義語として取り扱われている.しかし, HE染色を中心とした通常観察では, 神経原性腫瘍との鑑別が困難な症例もあり, 本症例でも, 免疫染色によりこの鑑別が可能であった.本腫瘍の組織学的診断に際しては, 通常観察で典型例と判断されても, 免疫染色や電顕を使用した多角的検索により, 平滑筋由来であることを確認する必要があると考えられた.
  • 小林 経宏, 中島 祥介, 金廣 裕道, 青松 幸雄, 吉村 淳, 上野 正義, 高 済峯, 金 達也, 大橋 一夫, 中野 博重
    1997 年 30 巻 5 号 p. 1004-1008
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で, 高血圧にて近医通院加療中AFP高値を指摘され, 精査にて胃幽門前庭部IIc型異癌と肝左葉肝細胞癌の重複癌との診断に至った.開腹したところ, 肝左葉は萎縮していたが肝内には腫瘍は認めず, 直径5cmにも腫大した肝円索を腫瘤状に触知した.このため手術は肝円索腫瘍を含め肝左葉切除術および幽門側胃切除術を施行した.摘出標本を検索したところ肝円索腫瘍は肝とは連続性がなく, 肝円索に迷入した肝組織が癌化した異所性肝細胞癌であると診断した.異所性肝組織は胆嚢, 肝の支持靱帯, 後腹膜, 膵, 脾, 大網, 胸腔内などに存在し, これらも主肝と同様に硬変化, 癌化することがあるとされている.異所性肝細胞癌は非常にまれではあるが, 本邦でこれまでに4例の報告があり, 文献的考察を加えた.
  • 出口 浩之, 服部 道男, 五島 正裕, 山下 修一
    1997 年 30 巻 5 号 p. 1009-1012
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は34歳の女性で, 急激に発症した激しい上腹部痛と頻回の嘔吐のため, 救急車で搬送され, 腸閉塞症の診断で入院した.腹部X線写真では上腹部に腸管の液面形成像とCT scanでは肝左葉外側区の腹側に拡張した小腸陰影を認めた.これらの結果, 絞扼性イレウスの診断のもとに, 緊急開腹術を施行した.
    手術診断は肝鎌状間膜裂隙の異常裂孔に小腸が陥入した内ヘルニア嵌頓であった.手術はこの異常裂孔を開大して陥入腸管を整復し, 血行障害に陥っていた小腸切除・吻合ならびにこの裂孔を修復した.術後経過は良好で, 第20病日に軽快退院した.
    本症例のような肝鎌状間膜裂隙による内ヘルニア嵌頓症例は検索しえた1937年以降の全世界の文献上わずか8例の報告にとどまり, 本邦では第4例目であると思われ, 文献的考察を加えて報告した.
  • 金 祐鎬, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 堀 明洋, 北川 雄一, 山口 竜三, 松永 和哉
    1997 年 30 巻 5 号 p. 1013-1017
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性.肝門部胆管閉塞にて経皮経肝胆道ドレナージを後区域枝, 前区域枝, 外側区域枝に行った.US・CTにて肝門部に腫瘤像を認めるとともに通常の門脈臍部は存在せず, 前区域門脈枝と内側区域枝によって右側門脈臍部 (right umbilical portion: RUP) を形成していることが判明した.経動脈性門脈造影でも直線的に左方へ伸びる外側区域門脈枝とRUPが確認できた.内側区域の動脈支配は前区域枝から分岐する枝 (RUPから左方へ伸びる) と中肝動脈があり, これに呼応するように内側区域胆管枝も2系統存在していた.自験例に対しRUPを温存した肝左葉切除・尾状葉切除・胆管空腸吻合術を施行した.RUPを伴った肝門部胆管細胞癌における胆管の合流形態と肝内脈管の分岐形態を中心に報告する.
  • 安村 幹央, 平井 孝, 加藤 知行, 鳥井 彰人, 小寺 泰弘, 清水 泰博, 安井 健三, 森本 剛史, 山村 義孝, 紀藤 毅
    1997 年 30 巻 5 号 p. 1018-1022
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌根治術後1年7か月を経て腹壁創瘢痕に再発し, 再発腫瘤切除6年後の今なお無再発生存中の1例を経験したので報告する.症例は60歳の女性.S状結腸癌は2型, 6×4cm, SEP0H0M (-) D3, se, ly0, v0, n (-) であった.1年7か月後腹壁正中創臍部に再発した.他に転移は認めず, 腫瘍から約2cm離して, 腫瘍に癒着した小腸約10cmとともに腹壁を切除した.腹壁欠損部はマーレックスメッシュを用い補強した.腫瘍は原発結腸癌と同様の中分化腺癌であり, 転移再発と診断された.腹壁創瘢痕への転移再発形式は術中操作による腫瘍細胞の創へのimplantationと思われた.
  • 味村 俊樹, 山口 浩和, 清水 伸幸, 金田 篤志, 安田 秀光, 酒井 滋, 倉本 秋, 上西 紀夫, 山川 満, 大原 毅
    1997 年 30 巻 5 号 p. 1023-1027
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症 (以下, PE) は, まれではあるが致死率が高いため, 欧米では重大な術後合併症と認識され, 予防法としてヘパリン投与や波動型末梢循環促進装置 (intermittent sequential pneumatic compression: 以下, ISPC) が採用されている. ISPCとは術中に下肢を機械的にマッサージし, 深部静脈血栓症 (以下, DVT) およびPEを防止する装置である.今回我々はPEの予防法としてISPCを使用したので, その使用経験を報告する.1995年10月-1996年9月の1年間で, 当教室における全身麻酔下待期的開腹手術182例のうち, 肥満や長時間の手術などのDVTやPEに対するhigh risk群56例にISPCを使用した.使用群56例と非使用群126例の間で, DVTおよびPEの発生率を比較検討したところ, ISPC非使用群でDVTが1例, PEが2例発生したのに対して, ISPC使用群ではDVTが1例発生した.ISPCによる副作用は認めなかった.有意差はないが, ISPCは安全で簡便にPEを予防しうる装置と考える.
  • 篠原 一彦, 橋本 大定, 星野 高伸, 長谷川 俊二, 梶原 周二, 高橋 寿久
    1997 年 30 巻 5 号 p. 1065
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 川原田 嘉文, 斎藤 博昭, 大原 毅
    1997 年 30 巻 5 号 p. 1066-1069
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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