日本消化器外科学会雑誌
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30 巻, 9 号
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  • 中山 和道
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1903-1911
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆石形成に関する実験的研究 (学位論文) が胆道外科に進むきっかけとなり, 膵頭十二指腸切除術が胆道癌専門の外科医に育ててくれた.
    経皮経肝胆道ドレナージは胆道癌の診断, 治療とその応用に必須の手技であると重要視し, 手技の安定に力を注ぎ, 術後合併症の防止と患者集めに大いに貢献した. 胆嚢癌では切除例142例, 切除率67.0%, 在院死亡率3.5%で5生率はm, pm95.5%, ss49.2%, se, si16.9%で全体としては43.3%であった.
    胆管癌では切除例171例, 切除率65.0%で, 治癒切除例の5生率は肝管・上部35.0%, 中下部35.5%で, 不満足な成績であった. 乳頭部癌では症状, 診断, 進展度診断, 予後を左右する因子について詳述した. 切除例は106例, 切除率85.5%, 在院死亡率は2.4%で, 5生率はリンパ節転移陽性例44.4%, 全体では56.6%であり, 35例の5生例, 14例の10生例を得ている.
  • 鷲澤 尚宏
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1912-1921
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    31例のstage I, II胃癌患者を対象に, 周術期における栄養状態の変動と宿主免疫能の変動の関連性をみる目的でalbumin (Alb) とtransferrin (Trf), prealbumin (PA), retinol結合蛋白 (RBP) の3種のrapid turnover protein (以下, RTP) を中心とした栄養学的指標とリンパ球サブセットなどの免疫学的指標について比較検討した. 術後2週目において3種のRTPはすべて, CDllb (+) CD8 dull (+) 細胞比, CD16 (+) CD57 (-) 細胞比と正の相関を示し, NK細胞および活性型NK細胞との相関がAlbよりも明らかであった. Alb, RTPの変動から検討すると, 術後3日目から7日目への変動率と術後2週目のCD4 (+) CD45RA (-) 細胞比, CDllb (+) CD8dull (+) 細胞比は正の相関傾向を示した. これらより, 周術期において, RTPの変動は宿主免疫能と関連する重要な栄養学的指標と考えられた.
  • 北薗 正樹, 島田 麻里緒, 夏越 祥次, 池田 直徳, 馬場 政道, 福元 俊孝, 愛甲 孝
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1922-1926
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道の癌肉腫は, いわゆる癌肉腫・偽肉腫・真性癌肉腫の3つに分けられている. 今回, 我々は食道一胃接合部より発生した, 食道のいわゆる癌肉腫を経験したので報告する. 腫瘍は食道一胃接合部に茎を有し, 胃内に垂れ下がる様に発育していた. また, 中央にて2つに分葉するという, 特異な発育形式をとっていた. いわゆる癌肉腫の病理学的鑑別点として, 肉腫様部分に上皮性の特徴が存在するか否かがポイントとなる. 当症例では, HE染色にて茎部の扁平上皮癌とそれに続く肉腫様細胞との間に移行像を認め, いわゆる癌肉腫と診断した. しかし, 免疫染色では肉腫様部分は上皮性成分由来のマーカーであるケラチン, EMAには陰性で, 非上皮性細胞成分由来のマーカーであるvimentinには陽性であった. この様にHE染色所見と免疫組織化学的所見との間に解離がみられることは諸家の文献にも見い出され, 今後の検討課題と思われた.
  • 丸山 道生, 工藤 敏文, 桑原 博, 高松 督, 菅野 範英, 江渕 正和
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1927-1931
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性. 著しい肝転移を伴う胃低分化腺癌充実型 (por1). 血清NSE (140ng/ml) 高値で, 切除標本でも腫瘍細胞の神経内分泌細胞への分化が認められた. 肝転移巣はCDDP/5FUの肝動注化学療法に対して著効を示し, 血清NSEはその臨床経過をよく反映していた. 血清NSE上昇を示す腫瘍は, 肺癌, 食道癌ばかりではなく胃においても化学療法に高感受性を示すと考えられ, por1胃癌の治療方針を考える上でも, 血清NSE測定, 腫瘍細胞の神経内分泌細胞分化を知ることは重要と考えられた.
  • 中里 雄一, 稲垣 芳則, 水沼 仁孝, 佐野 勝英, 横田 徳靖, 田中 和郎, 武内 孝介, 二川 康郎, 青木 照明
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1932-1936
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    下部胆管癌に対する膵頭十二指腸切除術後8年目に, 肝前性門脈圧亢進症から消化管出血を繰り返す症例に対し, 本邦初の経頸静脈的門脈形成術を施行し, 門脈圧改善を認めたので報告する. 症例は78歳の男性. 主訴は下血. 画像診断にて胆管癌再発所見はなく, 腹部血管造影検査で, 肝門部付近に門脈本幹の屈曲および捻れと, 求肝性側副路の発達が認められた. これに対し, transjugular intrahepatic portosystelnic shuntの手技を用いて, 肝静脈-門脈ルートから門脈本幹をバルーン拡張し, 同部に10mm wallstent®を留置した. 術後造影では, 側副路は造影されず, 門脈本幹を通じて肝内門脈のみが造影された. 超音波ドップラー検査では, Vmaxが術前の3.2m/secから1.7m/secに低下し, 門脈血流量は2.8l/secから6.9l/secに増最していた. 合併症なく術後第11病日に退院し, 以後1年8か月貧血および下血を認めていない.
  • 石原 明, 普光江 嘉広, 小泉 和雄, 村上 雅彦, 草野 満夫
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1937-1941
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性. 右季肋部痛, 嘔吐にて来院. 腹部超音波検査・CTで肝の内側区域に2cmの嚢胞と末梢外側区域胆管枝の拡張を認め, 精査入院となった. 入院時に黄疸はないが, 肝胆道系酵素の上昇がみられ, ERCでは左肝内胆管の圧排狭窄像かつ末梢側肝内胆管枝の拡張を認めた. 画像診断上は肝嚢胞による圧排を考えたが, 悪性疾患も否定できず手術となった. 開腹所見では肝門部に左肝内胆管を圧排する嚢胞性病変を認め, 摘出術となった. 摘出した腫瘤は病理学的には単純性肝嚢胞と診断された. 本症例の嚢胞は肝内の大型胆管に存在する胆管付属腺の拡張と考えられ, グリソン鞘内で発育を来したゆえに1.7cmの嚢胞でも胆管を圧排したと考えられた. 肝門部における単純性肝嚢胞では, 胆管付属腺の拡張によるものにも注目する必要があると考えられた.
  • 和久 利彦, 上塚 大一, 渡辺 直樹, 森 隆, 椎木 滋雄, 中井 肇, 折田 洋二郎, 原藤 和泉, 吉野 正
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1942-1946
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵外性に発育した悪性無症候性膵内分泌腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は75歳の男性. 全身倦怠感を訴え近医を受診したが, 症状が改善しないため, 精査目的にて当院紹介入院となった. 術前検査で胃壁外に発育した胃平滑筋肉腫が疑われた. 術中所見では, 一部分が膵尾部に浸潤した悪性リンパ腫が疑われたため腫瘤摘出術を施行した. 術後, 病理診断にて膵外性に発育した悪性膵内分泌腫瘍と判明した. 免疫組織化学染色ではPPのみが陽性だったことよりPPomaの可能性が示唆された. 術後1年8か月経過した現在, 大動脈周囲リンパ節の腫大を認めているが, 経過観察中である. PPomaとしての本邦・欧米報告例は, 自験例を含め55例に過ぎず, 膵外性に発育した無症候性膵内分泌腫瘍の本邦報告例はみられない. 膵外性発育した無症候性腫瘍の術前診断はきわめて困難であると考えられた.
  • 飯田 義人, 太田 秀二郎, 渡辺 心, 二川 俊二, 佐藤 一弘, 若林 香, 有山 嚢, 須田 耕一
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1947-1951
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵上皮内癌は膵管内に限局する癌で, 乳頭増殖がないか乏しい癌であるとされている. しかし, その報告は散見されるにすぎない. 我々は膵頭部の嚢胞性病変により発見された膵上皮内癌の1例を経験した. 症例は74歳の男性. 甲状腺全摘後, スクリーニング目的で行った腹部超音波検査で膵頭部に嚢胞性病変を指摘され, 精査のため入院となった. 精査の結果, 膵頭部の1次分枝膵管に狭窄が認められ, 頭部分枝膵管に発生した浸潤傾向のない膵癌と診断し, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織学的には, 分枝の狭窄部は上皮内癌と診断され, 嚢胞は膵液の流出障害による貯留性嚢胞と診断された. また癌遺伝子の検索ではp-53蛋白の発現の異常, Ki-ras遺伝子いずれも確認しえなかった. 画像診断で発見された軽微な異常を詳細に検索することにより, より微小な病変の診断も可能であると考えられた.
  • 大野 毅, 池田 陽一, 江崎 卓弘, 豊増 泰介, 大岩 寛治, 小柳 信洋, 皆川 清三
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1952-1956
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    脾臓に発生する腫瘍は良, 悪性を問わずきわめてまれであり, なかでも脾臓原発の血管肉腫の報告は数少ない. 今回, 我々は脾臓自然破裂による腹腔内出血にて発見された脾臓原発の血管肉腫の1例を経験した.
    症例は72歳の女性, 上腹部痛, 出血性ショックで搬入された. 腹部CTにて腹腔内に破裂している脾臓腫瘍を認めた. 直ちに摘脾術を施行, 摘出標本の免疫組織染色でFactor-VIIIが陽性であり, 脾臓原発血管肉腫の腹腔内自然破裂と診断された.
    脾臓自然破裂, 腹腔内出血例の予後は非常に悪く, この症例も肝転移, 骨転移をきたし術後11か月で腫瘍死した.
    本邦報告50例の中で脾自然破裂後摘脾例は9例でありこれらの検討とともに症例報告する.
  • 河合 正巳, 松崎 安孝, 弥政 晋輔, 日江井 賢, 松永 宏之, 山口 喜正
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1957-1961
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で下血で発症し, 血色素4.5g/dLと著明な貧血を認めた. 胃内視鏡および小腸造影検査により胃癌と小腸腫瘍の重複癌と診断し手術した. 空腸に15cm径の腫瘤を認め, 第1, 2空腸動脈を切離してこれを摘出し, さらに幽門側胃切除を施行した. また結腸肝轡曲に結腸粘液癌を認めたため, 右半結腸切除を追加した. 組織学的には小腸病変は印環細胞を伴わない粘液癌であったが結腸の粘液癌には印環細胞が多数認められた. 胃の病変は粘膜下層に病変の主座があり, 小腸病変に類似した粘液癌の中央に正常胃粘膜上皮の配列を認めた. 以上より本例を小腸・結腸の重複癌および小腸癌の胃転移と診断した. 術後は良好に経過し, 術後1年5か月を経た現在は外来通院中で再発の徴候を認めない. 小腸癌はまれで予後不良であり, 小腸癌を原発とする胃転移癌の本邦での報告は認められなかった.
  • 丹羽 篤朗, 三井 敬盛, 森山 悟, 石黒 秀行, 柳瀬 周枝, 大和 俊信, 柴田 和男, 佐々木 信義, 角岡 秀彦
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1962-1966
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    中結腸動脈瘤の破裂により腹腔内出血をきたした症例を報告する.症例は60歳の男性.既往に高血圧.突然の腹痛と背部痛で発症し, 疼痛が増強するため当院を受診した.腹部理学所見, 血液検査で腹膜炎を疑ったが, 超音波検査では大量の腹水を認め, 腹腔穿刺にて腹腔内出血と診断した.造影CTでは脾動脈瘤と胃裏面から腸間膜左側に広がる血腫を認めた.緊急手術を施行し, 中結腸動脈左枝の破裂による出血で破裂部を切除し止血した.病理組織検査では中膜壊死に伴う解離性動脈瘤と診断された.術後経過は順調で16病日に退院した.術後の血管造影で腹腔動脈起始部は閉塞し, 上腸間膜動脈根部, 下膵十二指腸動脈, 膵十二指腸動脈弓, 背側膵動脈, 脾動脈, 胃十二指腸動脈, 中結腸動脈根部に嚢状, 紡錘状の動脈瘤が多発したきわめてまれな症例であった.術後18か月が経過したが, これらの動脈瘤による症状はない.
  • 田中 淳一, 安藤 秀明, 伊藤 正直, 浅沼 義博, 小山 研二
    1997 年 30 巻 9 号 p. 1967-1971
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    癒着性腸閉塞症を除く腹腔内癒着38例の腹腔鏡下手術症例を開腹手術既往群と腹腔内炎症群に分け, 癒着の部位と程度, 剥離の有無, および合併症を検討した. 38例中24例 (64%) で腹腔鏡下手術遂行のために癒着剥離を必要とした. 上腹部手術既往例では中等度から高度の癒着のため癒着剥離を要したが, 下腹部手術既往例では癒着部位が手術に影響が少なく, ほとんどの症例で癒着剥離を必要としなかった. 腹腔内炎症例では中等度から高度の癒着のため癒着剥離を要した. 2例の胆嚢総胆管結石症で高度炎症のため, 開腹術に移行した (5.3%). 胃切除術Billroth-II法後の総胆管結石症の2例で, 癒着高度で十二指腸を損傷したが, 1例は術中に気付かず, 術後開腹して修復した. 他の1例は腹腔鏡下で修復した. 腸管と腹壁との癒着剥離は安全に施行できるが, 腸管相互の癒着剥離は腸管穿孔の危険性が高く, 現時点では腹腔下癒着剥離の適応とはならない.
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