日本消化器外科学会雑誌
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31 巻, 10 号
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  • 肥田 圭介, 佐藤 信博, 池田 健一郎, 大塚 幸喜, 木村 祐輔, 青木 毅一, 細井 信之, 岩谷 岳, 石田 薫, 斎藤 和好
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2039-2045
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌術後には過大侵襲により凝固亢進状態が生じ術後合併症, 臓器障害の発生に関与することが知られている. 食道癌術後凝固線溶系に対するメチルプレドニゾロン (MP) 術前投与の効果を検討する目的で胸部食道癌20例を対象として, MP10mg/kg投与群10例 (MP群), 対照群10例 (C群) を無作為に割り付け検討を行った. 術後C群では血小板数の低下, APTTの延長, AT-III, Plgの低下と凝固亢進, 線溶抑制状態を認めたが, MP群ではAPTTの延長とAT-IIIおよびPlgの低下が有意に抑制されていた. IL-6, CRP, 尿中NAGはMP群で有意に低値で推移し, 人工呼吸期間, SIRS期間も短縮していた. 食道癌手術侵襲に対する術後凝固亢進状態はMP術前投与により制御可能であり, 凝固線溶系上からも術後臓器障害および手術侵襲の軽減に関与するものと考えられた.
  • 癌細胞増殖活性(PCNA), アポトーシス, p53変異, CD44, および腫瘍内血管数(CD34)の比較検討
    仁木 正己, 磯崎 博司, 藤井 敬三, 野村 栄治, 馬渕 秀明, 中村 素行, 西口 完二, 谷川 允彦
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2046-2054
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃腺扁平上皮癌 (以下, 本症) の特徴を検索する目的で, 本症を対象として一般型進行胃癌症例 (以下, 一般型) と比較検討した. まず両者を臨床的に比較し, PCNA, Apoptotic cell, p53, CD44, CD34の発現状態を免疫組織化学的に検討した. 臨床的に本症では肝転移率が高く, Stageの高い症例の多いことが特徴であり, その予後は一般型に比べて有意に不良であった. 本症のPCNA陽性細胞率は一般型に比べて有意に高値であり, Apoptotic Indexは一般型より有意に低率であった. p53, CD44発現陽性率は本症ではいずれも一般型に比べて有意に高率であり, 発現陽性例では両癌成分ともに同等に発現していた. さらに, 腫瘍内血管密度の検索では, 本症は一般型に比べて有意に高値であった. 今回の検討から, 本症は増殖活性が高く, p53などの遺伝子異常が蓄積され, アポトーシス活性が低く, 進展過程で豊富な新生血管が生じて癌細胞が転移しやすい状況を形成している可能性が示唆された.
  • 藤井 敬三, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 原 均, 野村 栄治, 左古 昌蔵, 泉 信行, 馬渕 秀明, 西口 完二
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2055-2062
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    早期胃癌のうち粘膜下層浸潤癌 (以下, sm癌) に対する縮小手術の可否を論ずるため, 粘膜下層浸潤程度 (sm1, sm2, sm3) 別に腫瘍径, 肉眼型, 組織型とリンパ節転移, リンパ管侵襲との相関を検索した. リンパ管侵襲を検索事項としたのは, これがリンパ節転移の初期像と考えられ, 微小転移の1形態と見なしうるからであり, これらリンパ管侵襲と関連する臨床病理学的諸因子の検討は縮小手術の適応決定に関わる重要な情報をもたらすと考えたからである. その結果, sm浸潤程度および組織型に関わらず10mm未満の症例, 20mm未満の隆起型, そして20mm未満のsm1, sm2の低分化型ではリンパ節転移を認めなかった. しかしリンパ管侵襲からの検討では10mm未満・sm1・分化型の症例のみリンパ管侵襲は認めず, これらの症例ではリンパ節郭清は省略可能である. しかし, 10mm未満のsm1の術前診断の正診率は極めて低率であり, 術前にSM癌と診断されたものにはリンパ節郭清は必要と考える.
  • とくに肝静脈酸素飽和度 (Shvo2) の検討
    高谷 俊一, 本間 猛美, 澤田 光広, 小野塚 直也, 原田 治, 大出 華子, 福田 晃也, 山田 芳嗣, 小林 慎, 鈴木 宗平
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2063-2070
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝移植早期の移植肝機能評価ならびに肝膵合併切除や拡大肝切除施行例の過度の肝脱転操作, 肝阻血法など手術操作に起因する肝虚血侵襲の指標として, 肝酸素消費量, 肝組織ATP値, 動脈血ケトン体比 (AKBR) ならびに肝静脈酸素飽和度 (Shvo2) について, 60分ならびに90分の肝温阻血モデルを用いて肝血行動態, 肝酸素需給動態とともに基礎的に検討した. 結果として, 肝酸素消費量, AKBR, 肝組織ATP値は, 肝温阻血障害の程度に応じて低下し, 肝阻血侵襲の指標となった. Shvo2は肝酸素供給量と肝酸素消費量に規定され, 肝阻血障害が高度の場合, 肝酸素消費量が低下するため, Shvo2に有意の低下を認めなかった. Shvo2の低下は肝血流低下の指標にはなるものの, 肝阻血侵襲の程度をあらわす指標とはならなかった.
  • 恩田 昌邦, 小沢 義行, 本庄 達哉, 奥田 整, 炭山 嘉伸
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2071-2079
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌200例を対象として, 病巣内NCC-ST-439 (以下, ST-439と略記) に対して血清学的および免疫組織化学的発現と免疫染色陽性面積比 (positive area) を臨床病理学的諸因子の面より検索しその相関性から臨床的有用性を検討した. 染色様式は, 腺腔内面や分泌物に染色される apical や intraluminal typeが81.6%に, 細胞質が染色される cytoplasmic type が18.4%に観察された. 大腸癌症例でのST-439の血清学的陽性率は33%で, 免疫組織化学的陽性率は76%であった. 組織型別では血清および組織化学的発現とpositive areaは分化型に有意に高率であった. 進行度別では高度になるほど, 深達度が進むにつれ, 腫瘍径が大きくなるほど, 脈管侵襲, リンパ節転移および肝転移陽性例は陰性例に比較し, ともに発現率は高率であり, positive areaも高かった. 以上よりST-439発現は, 臨床病理学的進行度と良く相関し, 免疫染色の定量化も臨床的有用性が十分期待できる.
  • 鈴木 哲太郎, 近藤 康史, 立石 晋, 田所 文彦, 西 八嗣, 八十川 要平, 本告 匡, 比企 能樹, 柿田 章
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2080-2084
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道憩室を伴った先天性食道気管支瘻の1例を経験した. 症例は53歳の男性で, 人間ドックで上部消化管造影を行ったところ, 食道憩室気管支瘻を認めた. これは, 胸部中部食道左側に憩室を認め, 憩室底より左肺下葉の気管支が造影されていた. 食道内視鏡では, 胸部食道に食道憩室があり底部に瘻孔開口部を認め, 気管支鏡では, 瘻管の開口部は確認できなかったが, 食道内チューブより色素を注入し左B6付近からの色素の流出を認めた
    手術は食道憩室と瘻管の切除を行った. 病理学的には, 瘻管の内腔の大部分は重層扁平上皮で被われ平滑筋を伴い, 辺縁の一部に多列線毛上皮が見られ, 両者には移行像も認められた.
    この疾患は本例を含め本邦では55例が報告されているが左気管支と交通する例は珍しく本例は8例めの報告である.
  • 平田 静弘, 川本 雅彦, 中島 洋, 山崎 徹, 永渕 一光, 岸川 英樹, 米増 博俊
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2085-2089
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    今回, 我々はリンパ節転移を伴った十二指腸stromal tumorを経験した. 症例は45歳の女性. 主訴は貧血と倦怠感上部消化管内視鏡検査より, 十二指腸球後部に粘膜下腫瘍を指摘され, 生検の結果, 平滑筋腫もしくは肉腫が疑われ, 十二指腸の局所切除とリンパ節のサンプリングを行った. 免疫染色にて, Vimentin, α-smooth muscle actin, S-100蛋白に陽性に染まり, 筋原性と神経原性の両方への分化を有するstromal tumorと診断された. 原発巣は悪性の低い組織像であったが, サンプリングしたリンパ節に転移を認めたため, 術後3週目に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し膵頭後部リンパ節に転移の残存を認めた. Stromal tumorはリンパ節転移がまれであり, 郭清を疑問視する意見もあるが, 症例によっては郭清が必要な場合があることを示唆する貴重な症例と考えられた.
  • 上田 順彦, 小西 一朗, 広野 禎介
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2090-2093
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝内結石症に合併した肝のinflammatory pseudotumor (IPT) の1例を報告した. 患者は74の女性. 主訴は発熱, 倦怠感. 入院時検査成績では, 高度な炎症反応と胆道系酵素の上昇を認めた. 腹部超音波検査では, 肝内外の胆管内に多数の結石像を認めた. 肝外側区域末梢部は, 内部に嚢胞部分を含む低エコー域により腫大していた. 入院時の造影CTの動脈優位相では, S3末梢部に内部が多房性嚢胞で周囲がリング状に造影される病変を多数認めた. 10日後の動脈CTでは同部の腫大は軽減し, 各病変は嚢胞部分の消失により大きさは縮小し, 円形の濃染となった. 肝内外型肝内結石症および肝膿瘍を疑い, 胆管切石および肝外側区域切除術を施行した. S3末梢部には黄白色の充実性腫瘤が多発していた. 組織学的にはリンパ球, 組織球を主とした炎症性腫瘤が孤立性あるいはグリソン鞘を中心として集簇しており, IPTと診断した.
  • 谷口 雅輝, 佐野 彰, 内田 学, 平林 邦昭, 硲野 孝治, 升木 行雄
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2094-2098
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝転移を伴った膵solid cystic tumor (以下, SCT) の1例を経験したので報告する.患者はsystemiclupus erythematosusで治療を受けていた13歳の女性で, 愁訴はなく, 検診の腹部超音波検査で膵体尾部および肝に腫瘤を認め, 精査入院となった.画像診断にて膵体尾部に嚢胞状成分と充実性成分を混じた大きさ8×6×5cmの腫瘤を, 肝S7とS4に径2cmと0.5cmの充実性腫瘤を認めた.臨床的に膵SCTおよびその肝転移と診断し, 膵体尾部脾合併切除および肝部分切除を施行した.病理組織検査にて膵SCTとその肝転移と確定診断した.腫瘍被膜浸潤や肝以外への転移は認められなかった.原発巣と転移巣はflow cytometryでともにdiploid patternであった.現在まで術後4年5か月経過しているが再発兆候は認めていない.本邦の肝転移を伴う膵SCT報告例を本例も含め21例集計し, 臨床病理学的に検討を加える.
  • 久保 真, 湯ノ谷 誠二, 向井 伸介, 鮫島 隆一郎, 小川 明臣, 宮崎 耕治
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2099-2103
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    真性腸石を合併した回腸重複症の1例を経験したので報告する. 症例は35歳の女性. 突発的な下腹部痛を主訴に来院し, 右卵巣奇形腫茎捻転の診断にて開腹術が施行された. 開腹所見では, 回腸末端より約5cmの回腸前壁に径約6×5cmの腫瘤を認め, 内部には硬い結石が3個存在していた. 腫瘤を含む回腸部分切除術を施行した. 肉眼および病理組織所見より回腸重複症と診断した. 消化管重複症は比較的まれな先天性疾患で, 多様な腹部症状・検査所見を呈するため術前診断は難しいとされてい. また, 腸石は分析の結果, シュウ酸カルシウムを主成分とした真性腸石であり, 本邦報告例では自験例を含めカルシウム塩腸石として10例目である. 本症例のごとく真性腸石を合併した消化管重複症はこれまでに報告がなく, 本邦報告第1例目である.
  • 工藤 俊, 亀山 仁一, 鈴木 晃, 坂井 庸祐, 長谷川 繁生, 鈴木 久美子
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2104-2107
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性で, 腹痛と嘔吐のため当院に入院となった. 入院直後は腹部に軽度の圧痛のみであったが, 2日後, 腹膜刺激症状を伴った強い圧痛を認めた. 腹部CT検査にて, 上腸間膜動脈を小腸が渦巻き状に巻き込むwhirl-like patternを認めたため, 小腸軸捻転による絞扼性腸閉塞と診断し, 緊急手術を施行した. 開腹所見では, トライツ靱帯より約30cmのところから回腸末端付近まで, 小腸が時計方向に900. 軸捻転し, 広範囲な小腸壊死を認めた. 捻転を解除後, 壊死した小腸を切除し, 端々吻合で再建した. 術後の経過は良好であった. 本症例は誘因となる解剖学的異常は何もなく, 最終的に原発性小腸軸捻転症と診断した. 原発性小腸軸捻転症の報告例は本邦ではまれであるが, 発症後, 小腸が急速に壊死に陥り致命的となることも多く, 厳重な注意が必要である. 腹部CT検査は非常に有用であり, 早期の診断には不可欠と思われた.
  • 金子 直之, 岡本 勝司, 向山 博夫, 妹尾 知巳
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2108-2112
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    本邦では外科的治療を要する重症腸チフスは非常にまれである. 今回, 我々は63歳の男性の1例を経験した. 症例は当初他院で原因不明の発熱として治療され, 大量下血によるショックを来し当院転院となった. 血管造影で回腸動脈から造影剤漏出を認め, 開腹術を施行した. 小腸の動脈性出血と後腹膜に被覆された穿孔を認め, 小腸および腸間膜に広範に触知する硬結を可及的に含む小腸切除を施行した. 血液培養でSalmonella typhiが同定され腸チフスと診断した. 腸チフスによる消化管出血に対する血管造影の有用性は海外では数例報告されているが, 本邦での報告例はない. また本病態に対しては従来保存的治療が推奨されてきたが, 近年は積極的な手術療法が報告されている. 術式は数種類推奨されているが, 病変部位を広範囲に切除することが肝要と思われる. 下部消化管出血や穿孔の治療にあたっては本症を念頭に置き, 術中診断のために本症の消化管所見を熟知しておく必要がある.
  • 三浦 連人, 石川 正志, 佐々木 賢二, 瀧 真二, 福田 洋, 三宅 秀則, 寺嶋 吉保, 和田 大助, 余喜多 史郎, 田代 征記
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2113-2117
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    33歳の女性の肝S3からS8におよぶ多発性転移 (H3) を有する直腸癌 (Rs, Ra) 症例に対し, 1期的にS3合併切除兼拡大肝右葉切除 (切除肝重量2,403g, 予想残存肝体積337ml) と低位前方切除術D2を施行. 術後, 肝不全や縫合不全を併発することなく軽快退院し, 術後2年6カ月を経過した現在, 肺転移を認めるが, 残肝再発を認めていない症例を経験した. H3を有する大腸癌症例であっても詳細な術前評価による理論的背景に基づいた肝, 大腸同時切除, 再建術は安全に施行でき, また, 1期的手術は2期的手術に比べ, 患者の負担が軽く, 担癌状態の期間を短縮させることができることから有用な手術手技であると考えられた.
  • 藤谷 恒明, 小松 智, 山並 秀章, 三国 潤一, 角川 陽一郎, 神山 泰彦, 小野 日出麿, 菅原 暢, 大内 清昭
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2118-2122
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    宮城県の胃癌治療を集団検診発見例 (集検例) を中心に検討した. また, 宮城県立がんセンター (センター) における胃癌治療の特徴を他の県内6基幹病院と比較した. 最後にセンターの胃癌治療成績の変遷を解析し以下の結果を得た. 宮城県の胃癌罹患数は増加, 死亡数は横這いであったが, 年齢調整罹患率, 死亡率はともに減少傾向にあり, この差異は人口の高齢化によりもたらされた. 調査した県内7基幹病院の中では, センターの集検例の占める割合が最も高く, さらにこれら7施設での集権例の割合も全国的にみても高かった. 1960年から1990年の期間で, 集検と治療法の進歩によって得られた致命率の低下が死亡率全体の低下に寄与した割合は, 男71%, 女37%であった. 集検例は早期の癌を有し, 手術成績も良好であった. センターの治療成績は1970年代にStage II, IIIで著しく改善しており, その一部に補助化学療法が寄与したものと考えられた.
  • 特に早期胃癌に対する合理的治療
    梨本 篤, 薮崎 裕, 牧野 春彦, 土屋 嘉昭, 筒井 光広, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2123-2127
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    新潟県は胃癌の多発県のひとつであり, 当院はその約1割を手術している.主に早期胃癌 (EGC) に対し, 外科的局所切除 (SLR) 112例, 腹腔鏡下楔状胃切除 (LAP) 5例, 幽門保存胃切除術 (PPG) 51例, 噴門側胃切除術 (PXG) 38例, 大網温存縮小胃切除術 (OPG) 377例を施行したので各種縮小術式につき臨床評価を加えた.【成績】(1) SLRには術後の愁訴は殆どなかった.再治療を要したのは6例 (再発2例, 多発4例) であるが, 姑息切除の1例を除き胃癌死はなく他病死を含む5生率は81.9%であった.(2) LAPには, 再発例はなく全例生存中である.(3) PPGは残胃炎, 食道炎が少なく, 体重の回復は良好であったが, 残胃への胆汁逆流は24%に認められた.再手術は2例に施行されたが, 全例外来通院中である.(4) PXGに胃癌死はないが, 5生率は84.2%である.(5) OPGは術後イレウスの発生が少なく, 現在まで原病死はない.【結語】EGCに対し, QOLの向上をはかり, 遠隔成績を損なうことなく合理的縮小手術が可能であった.
  • 大山 繁和, 太田 恵一朗, 石原 省, 太田 博俊, 松原 敏樹, 高橋 孝, 中島 聰總
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2128-2131
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    癌研における胃癌治療の歴史, 現在の治療内容などについて述べた. 癌研の胃癌診療の特徴は, 梶谷の肉眼分類, 限中浸を用いていること, および, ゆるやかな臓器別診療となっていることである. われわれは, 縮小拡大, さまざまに病期に応じた適切な外科治療を目指している. 縮小手術の典型が胃横断切除, 拡大手術のそれが左上腹部内臓全摘術であるが, 根治性を最も重視することがわれわれの基本的な治療方針である.
    胃癌外科治療には, 切除術式, 郭清範囲, 再建法, アプローチなど, いまだ, 多くの検討すべき課題がある. 癌専門病院としての社会的責任を認識し, 胃癌外科治療上の問題の解決に努力したい.
  • 笹子 三津留, 佐野 武, 片井 均, 日月 裕司, 渡辺 寛, 加藤 抱一, 丸山 圭一
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2132-2135
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道浸潤胃癌に対する標準術式は確立されていない. 1987年以前の当院治療例58例を解析し, 食道浸潤が1cm以上あると30%の症例で縦隔リンパ節転移があること, 縦隔転移陽性例では33%のn4例を含め78%がn2以上であることがわかった. これを元に, 1988-94年の期間は左開胸下の完全下縦隔郭清を伴うD2+16a21at郭清を原則とした. 37例がその治療をうけ, 術後在院死は1例で, 縦隔転移例5例は全員2年以内に死亡した. 同時期に, 自動吻合器により開腹創から十分な食道切除が行えるようになった. 左胸腹連続切開・下縦隔完全郭清と開腹+横隔膜縦切開による傍食道のみの郭清を比較するrandomized control trialを企画し, 1995年より多施設共同で実施している. 同試験では生存率以外に, 術後合併症, 術死, QOLも重要な評価項目としている. このように, evidence based surgeryを行っているのが, 当院胃癌治療の特徴といえよう
  • 山村 義孝, 小寺 泰弘, 清水 泰博, 鳥井 彰人, 平井 孝, 安井 健三, 森本 剛史, 加藤 知行, 紀藤 毅, 荒井 保明
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2136-2140
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    (1) 開設後30年間に早期癌とくにm癌が増加し非切除が減少した. 1965-1989年の4,839例を5年ごとの5期に分け年代別治療成績を比較した. 非切除 (676例) と根治度C (563例) では変化がなく, 根治度AとB (3,600例) で約20%の向上を認めた. 成績向上はt2, n (+)(395例) で著しく (約33%), 手術単独群の治療成績の向上によりIII期以降では化学療法の併用効果がみられなくなった.(2) 150例の腹腔洗浄細胞診をPCR法と従来法とで比較した. PCR法で41例が, 従来法で27例が陽性と判定され, 18例で判定が異なった. この18例のうち, 従来法で陽性でもPCR法が陰性であった2例には腹膜転移がなく, 従来法で陰性であってもPCR法が陽性であった16例中5例に腹膜転移を認め, 従来法よりもPCR法の方が腹膜転移とより高い相関を示した.(3) 肝転移例に対する抗癌剤 (5-FU, MMC, ADM) の肝動注の効果を40例で検討した. CR6例を含む奏効率72%を得, 50%生存期間は15か月であった.
  • 古河 洋, 平塚 正弘
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2141-2145
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    目的: スキルス胃癌に対して左上腹内臓全摘+Appleby手術 (LUAE+Apl) や抗癌剤腹腔内投与等の併用療法を行った. これらの試みの結果を従来の方法と比較する. 対象・方法: スキルス胃癌手術例を年代別にI期 (1973-1978年, 36例): 胃全摘・膵脾合併切除 (T+PS), II期 (1978-1983年, 44例) T+PS, +MMC+5-FU (MF), III期 (1983-1986年, 28例): LUAE+Apl, +MF, IV期 (1987-1991年, 26例): LUAE+MMCipに分けて比較した. 結果: I, II期間とIII, IV期間に生存率の差はなかった. I+II期vs III+IV期では旧stage IIIにおいてIII+IV期 (5生率42%, I+II期19%) が有意に良好であった. まとめ: スキルス胃癌の治療として, LUAEは旧stage IIIに有効であったが, 併用療法は有効でなく, stage IVでは有効なものはなかった.
  • 栗田 啓, 久保 義郎, 佐伯 俊昭, 横山 伸二, 棚田 稔, 多幾山 渉, 高嶋 成光
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2146-2151
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    松山市にある国立病院四国がんセンターにおける早期胃癌治療の現況について報告する. 陥凹主体のM癌では, 長径が10mm以下で潰瘍廏痕が無い分化型癌で内視鏡下粘膜切除 (以下EMR) を適応とし, それ以外のもの, 20mm以下の病巣に対して, 術中N (-), n (-) を条件に腹腔鏡下あるいは開腹下胃局所切除, それをこえるものに対してはpor以外でDO胃切除, porでD2胃切除を行っている. 隆起主体のM癌に対しては, 20mm以下でEMR, それをこえるものに対しては胃局所切除, 残胃の高度の変形をきたすようであればD0胃切除を行っている, 内視鏡部で施行したEMR 149例中5例に癌の遺残, 再発がみられた. 開腹下胃局所切除を17例に施行し, 術後に5例にsm層にわずかに癌浸潤が認められた. 腹腔鏡下胃局所切除を35例に施行, sm1が7例, sm2が3例, sm3が1例にみられた. 早期胃癌の術式の適応は流動的で議論の余地を残している.
  • 斉藤 貴生, 鴻江 俊治, 馬場 秀夫, 中島 秀彰, 武冨 紹信, 瀬尾 洋介, 友田 博次
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2152-2156
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    国立病院九州がんセンターにおける1972年から1991年までの初発胃癌切除例2,146例についての治療成績の推移を述べ, 最近における胃癌の治療戦略および研究, 胃悪性リンパ腫についても触れた. 上記20年間をI期 (1972-76), II期 (1977-81), III期 (1982-86) およびIV期 (1987-91) に分けると, 5年生存率は全期で59.6%, I期49.9%, II期55.2%, III期63.1%, IV期66.3%と順次向上を示した.
    同様の傾向は根治度A+BとCに分けてもみられた. Stage別5年生存率はStage Ia+Ib 89.1%, II 68.8%, IIIa+IIIb 36.1%, IVa+IVb 9.8%であった. このうちStage IとIVではI期からIV期に向い順次向上したが, Stage IIとIIIではI期からIII期まで順次向上したもののIV期で低下した. これには, 他癌死の増加が関与していた. 予防的D2郭清はn0早期癌の予後を向上させることが示唆され, 微小リンパ節転移の関与が考えられた.
  • 辻谷 俊一, 斉藤 博昭, 岡 伸一, 近藤 亮, 小西 伊智郎, 池口 正英, 前田 迪郎, 貝原 信明
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2157-2161
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌組織におけるリンパ管侵襲 (ly) と静脈侵襲 (v) の臨床的意義を調べ, それを規定する因子を検討した. 2,404例の胃癌で深達度, 腫瘍径, リンパ節転移などの癌の進展に伴ってly, vの陽性率が増加し, C領域胃癌で陽性例が多かった. 組織型はly (+) がporl, por2, mucに多く, v (+) がporlに多かった. またly, vはstage III胃癌の予後因子であった.腫瘍進展因子であるVEGFの癸現はly, Vの陽性率と相関し, 宿主の免疫応答を反映する樹状細胞の高度浸潤例は脈管侵襲と逆相僕し, また血清中可溶性IL-2受容体 (sIL-2R) 値の上昇は脈管侵襲と相関した. しかしVEGF, 新生血管, 樹状細胞ともstage III胃癌治癒切除例に限った検討ではly, vと有意の相関はなかった. したがって胃癌の脈管侵襲の予見には腫瘍の進行度, 組織型, 占居部位に加えVEGF発現, 樹状細胞数, sIL-2R値が有用と考えられた.
  • 土岐 祐一郎, 塩崎 均, 川西 賢秀, 五福 淳二, 矢野 雅彦, 辻仲 利政, 井上 雅智, 門田 守人
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2162-2166
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    癌細胞の細胞接着能をE-cadherin (ECD) で運動能をautocrine motility factor receptor (AMFR) にて評価し, 胃癌のリンパ管侵襲 (ly), リンパ節転移 (n) の術前予測が可能であるかどうかを検討した.ECD, AMFRの発現は切除標本および術前生検標本の免疫染色にて評価し, 同時に末梢血中のE-cadherin可溶性fragment (SECD) をELISAにて測定した.
    分化型の胃癌ではECDの発現はly, nの有無と負の相関を示したが, 低分化型では関連を認めなかった.AMFRの発現は深達度と相関を示すが, ly, nとは相関を認めなかった.また, ECDとAMFRの発現は負の相関を示し, 両者の共発現パターンで分けるとECD (-)/AMFR (+) の症例が最も悪性度が高いと考えられた.nとlyの有無が一致しない症例が21%に認められたが, ECD, AMFRの発現性では不一致症例を予測できなかった.しかし, SECDはnまたはlyが陽性の症例で高値を示しており, n, lyの術前予測の指標として今後臨床応用が期待された.
  • 高橋 豊, Zhang Bin, 磨伊 正義
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2167-2170
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌の脈管浸潤の意義の再評価並びにその術前予測の可能性を検討した.胃癌手術症例1,374例による検討では, ly因子とリンパ節転移と腹膜播種, v因子と肝転移との間に関係が認められた.次にly因子, v因子の術前予測を目的に, 術前生検組織93例を対象に転移の分子機構から予測される理論的に脈管浸潤に必要な因子である増殖因子としてepidermal growth factor receptor (EGFR), 血管新生因子としてbasic fibroblast growth factor (bFGF) とvascular endothelial growth factor (VEGF), 浸潤因子としてtype IV collagenase, 接着因子としてE-cadherinの転移関連遺伝子群のmRNAをIn situ hybridization (ISH) 法による発現程度から検討した.その結果, ly因子ではcollagenaseとE-cadherin (減弱), v因子はcollagenaseとVEGFが単変量解析により陽性群と陰性群で有意の差を認めた.以上から, 本法は胃癌の脈管浸潤の予測, ひいては転移, 再発の予測に有用であると考えられた.
  • 安武 亨, 寺田 隆介, 山口 榮一郎, 辻 孝, 七島 篤志, 澤井 照光, 山口 広之, 中越 享, 綾部 公懿, 田川 泰
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2171-2175
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌において術前にリンパ管侵襲の有無を推測できるか否かを臨床病理学的, 細胞・分子生物学的に検討した.臨床病理学的には1,129例, 細胞・分子生物学的には100例の胃癌を対象とした.腫瘍径はリンパ管侵襲陽性 (ly (+)) 例で平均71mm, 陰性 (ly (-)) 例で43mmとly (+) 例で有意に腫瘍径が長かった (p<0.001).また, 蛍光免疫細胞化学fluorescence in situ hybridization (FISH) 同時染色法を用いてproliferating cell nuclear antigen (PCNA) 染色性と17番染色体数を同時に検討した.PCNA陽性で17番染色体数的異常を認める細胞の比率はly (+) 例で平均15.3%, ly (-) 例で9.0%とly (+) 例で有意に高かった (p=0.0001).これらの方法は, 生検標本で十分に施行可能であった.以上より, 腫瘍径が長い症例, PCNA陽性かつ17番染色体数的異常陽性細胞を多く認める症例はly (+) の頻度が高く注意を要すると考えられた.
  • 馬場 秀夫, 大城 辰雄, 武冨 紹信, 中島 秀彰, 鴻江 俊治, 瀬尾 洋介
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2176-2180
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    切除胃癌2,146例を対象とし, 臨床病理学的諸因子, 再発, 予後と脈管侵襲の関連および脈管侵襲陽性例における術後補助化学療法による再発予防効果について検討した.脈管侵襲の有無は腫瘍径, INF, 深達度, リンパ節転移, 腹膜播種や肝転移と相関し, 術後遠隔成績の予測因子になりうると考えられた.静脈侵襲陽性例では非化療群に比較し, 化療群の再発率が有意に低かった.脈管侵襲の術前予測因子としては腫瘍径が大きく, 深達度が深く, C領域の症例であり, このような症例に対しては十分なリンパ節郭清を行い, 術後病理組織学的に脈管侵襲が認められた症例では, 補助化学療法が再発防止のため有用であると考えられた.
  • 橋本 幸彦, 犬房 春彦, 足立 俊之, 船井 貞往, 若野 司, 中嶋 章浩, 進藤 勝久, 安富 正幸
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2181
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
  • 松村 博臣, 大辻 英吾, 小林 真一郎, 岡本 和真, 北村 和也, 山口 俊晴
    1998 年 31 巻 10 号 p. 2182
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
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