日本消化器外科学会雑誌
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31 巻, 9 号
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  • 鈴木 博孝
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1971-1977
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当施設における1968-1993年の原発単発胃癌切除例6,088例を検討し, 胃癌外科治療の進歩とD4郭清の適応について報告した. 前期, 後期別治療成績の検討から後期治療成績が良好であることが確認され, 胃癌外科治療は進歩したと考えた. また, 胃癌外科治療成績向上の要因は早期胃癌の増加, 進行癌における根治度A, Bの増加, さらに, 進行癌におけるリンパ節郭清範囲の拡大と考えられた. D4郭清の適応はD4郭清例とD2郭清例の治療成績の比較より, 現時点ではmp-ssn2, sen1, sen2と考えられた. 今後はprospectiveな検討により拡大リンパ節郭清の適応を検討する必要があると思われた.
  • 明石 建, 浅沼 義博, 佐藤 勤, 南條 博, 小山 研二
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1978-1985
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    一過性部分肝血行遮断後の遮断葉, 非遮断葉における壊死と再生の機構を, ラット肝70%領域血行遮断モデルを用いて検討した.
    血行遮断葉では, 再灌流開始早期から中心静脈周囲に壊死を認め, 遮断時間が長いほど壊死領域は広範囲であった. しかし, 120分間の長期遮断であっても, 再灌流後14日目までに壊死領域は消失し正常組織に回復した. PCNA標識率を指標とする肝再生能は, 遮断葉, 非遮断葉ともに再灌流開始2日後にピークを示した. 生存率については, 90分までの遮断では全例生存したが, 120分遮断では生存率が89%に低下した. 血行遮断解除後残りの30%領域の永久血行遮断を行うと, 90分, 120分遮断群では生存率がそれぞれ80%, 33%に低下した.したがって, 90分以上の部分肝血行遮断をした場合, 非遮断葉が適正に機能することが, 個体の生存と遮断葉の障害からの回復に極めて重要と考えられた.
  • 黒川 幸典, 辻仲 利政, 川崎 富夫, 大岡 勝, 渋谷 卓, 有吉 秀男, 土岐 祐一郎, 塩崎 均, 門田 守人, 前田 宗宏
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1986-1990
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性.Imの3型食道癌で, 放射線・化学療法施行中に腫瘍出血による吐血を生じ, 出血性ショックを起こした.胸部CT検査にて大動脈壁に接する深い潰瘍形成を認めたため, 今後大動脈食道瘻を合併して急死する危険性が高いと判断した.そこで, 大動脈壁に瘻孔を生じてもステントの被膜により出血を防止出来るよう, 下行大動脈内に被覆ステントを留置した.留置後111日目に肺炎にて死亡したが, それまで一度も吐血などの症状は認めなかった.剖検にて, 大動脈壁に瘻孔は生じていなかったが, 大動脈内に留置したステントの被膜と大動脈壁との間にはフィブリン血栓によってわずかな間隙もなく両者が密着し, 固定されているのが確認された.下行大動脈内へのステント留置は大動脈食道瘻の合併予防として有用である可能性が示された.
  • 馬場 秀文, 田中 克典, 菅 重尚, 鈴木 文雄, 大高 均, 守谷 孝夫, 高尾 正彦, 伊藤 均
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1991-1995
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃静脈瘤を合併した特発性門脈圧亢進症の手術前後に肝血行動態を検討し, 術後肝内門脈血流の改善が示唆された症例を経験した.
    症例は41歳の女性で, 特発性門脈圧亢進症・胃静脈瘤に対してHassab手術を施行した. 術前の血管造影X線検査では脾腫, 脾静脈から門脈本幹の拡張, 肝内末梢門脈の造影不良ならびに側副血行路である臍静脈の開存・拡張がみられたが, 術後は門脈本幹・臍静脈の径は軽減し, 肝内末梢門脈枝の描出が良好となった. 99mTc in-vivo標識赤血球肝動脈門脈血流シンチでの肝右葉/門脈臍部血流比は術前門脈臍部優位であったが, 術後肝右葉優位に逆転した. 術前の123I-IMP経直腸門脈シンチではほとんどの123I-IMPは門脈から大循環へshuntされていたが, 術後はshunt量が低下し, 肝内に集積された.以上よりHassab手術後門脈大循環shunt量の低下および肝内門脈血流の改善が示唆された特発性門脈圧亢進症の1例を経験したので報告する.
  • 落合 秀人, 菱沼 正一, 那須 二郎, 安藤 二郎, 尾澤 巌, 松井 淳一, 稲田 高男, 清水 秀昭, 固武 健二郎, 尾形 佳郎
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1996-2000
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝外胆管内発育を伴った肝内胆管癌2例を経験したので報告する.
    症例1は46歳の女性で, 易疲労感, 食欲不振で発症した.画像上, 肝左葉内側区域に径6cmの結節を形成し, 同区域の肝内胆管から総胆管内に発育する腫瘍が認められたため, 拡大肝左葉切除および肝外胆管切除術を施行した.切除標本の病理所見では胆管細胞癌であり, 胆管内発育は総胆管下部に達していた.
    症例2は63歳の男性で, 肝左葉外側区域に肺内門脈枝および胆管への浸潤を伴う径7cmの腫瘍を認め, 肝左葉切除および尾状葉部分切除術を施行した.切除標本では胆管細胞癌であり, 肝外側区域における結節形成と, 総肝管に達する胆管内発育が認められた.
    同様な発育形態を示した肝内胆管癌の報告例は過去1例のみであり, 非常にまれである.
  • 加藤 泰規, 濱田 吉則, 毛利 隆, 日置 紘士郎
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2001-2005
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    外傷, 医療行為など外作用に伴なわず発症するbilomaはspontaneous bnomaと分類される.今回, 我々は胆嚢炎に合併したspontaneous biloma (本症) の1例を経験したので報告する. 症例は53歳の女性で, 発熱と心窩部痛を初発症状とし, 腹部CT, 腹部超音波にて胆嚢の腫大と肝左葉下面に15×7.5×5.0大の嚢胞性病変を認めた. 手術にて胆嚢炎と線維化したbilomaと診断した.Bilomaの内容は, ゲル状無構造で黄緑色調を呈しており, 組織学的にフィブリン塊であった. 本症は本邦で, 自験例を含め23例の報告がある.本症は胆嚢, 胆管結石による胆道内圧上昇によるものが多いが, 本症例は胆嚢頸部の炎症性閉塞による胆嚢内圧上昇を主因とし発症したと思われた.
  • 鈴木 修司, 羽生 富士夫, 田中 精一, 今里 雅之, 武雄 康悦, 寺本 穂波, 古賀 友之, 林 恒男, 高崎 健
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2006-2010
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵動静脈奇形は非常にまれな疾患で, 外科的切除にて根治できた1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する. 症例は49歳の男性, 心窩部痛, 背部痛を主訴に当院受診し, 疼痛の増悪を認めたため入院となった. 入院後超音波検査にて膵頭部に低エコー域を認め, ドップラーエコーにて同部に拍動性の速い血流を認めた. MRCPにて総胆管末端の狭窄を認めたため, ERCPを施行し, 胆道出血と総胆管末端の狭窄を確認した. またdynamic CTでは膵頭部に蛇行した血管の増生と同時相の門脈早期濃染を認めた. 腹部血管造影検査では動脈相早期より膵頭部に網状新生血管が描出され, 門脈の早期描出も認めたことから, 膵頭部動静脈奇形と診断し, 疼痛除去と胆管狭窄改善目的に全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理標本においても拡張した細動静脈を認めた.術後経過は良好であり, 疼痛も完全に除去することができた.
  • 杉原 誠一, 中辻 直之, 西和田 敬, 堀川 雅人, 松村 一隆
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2011-2015
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性, 49歳時に空腸悪性リンパ腫, 同時性多発性大腸癌のため空腸部分切除, 横行結腸と直腸を残すように結腸右半切除およびRa部を含む結腸左半切除を行った.さらに55歳時に直腸癌のため残存直腸切断術を施行した.64歳時に頻回の嘔吐が出現, 試験開腹にて十二指腸下行部の腫瘍と診断, 姑息的に総肝管-空腸, 胃-空腸吻合を行ったが1年8か月後に死亡した.剖検にて悪性リンパ腫や多発性大腸癌の再発はなかったが, 膵頭部に腫瘍があり, 組織学的に膵管より発生した粘液産生膵癌で十二指腸壁へ浸潤, さらに腹腔内へ穿破していた.
    最近, 重複癌・多発癌の報告が増えているがこのような報告はない.一方, 満足せるQOLをもって16年余りの長期生存がえられたのは, 腹膜播種やリンパ節, 肝転移などがなく, また残存横行結腸が大腸としての機能を十分に果たしたことなどが考えられる.
  • 河合 雅彦, 佐野 文, 山田 慎, 加藤 元久, 梅本 敬夫, 深田 代造, 佐治 重豊, 下川 邦泰
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2016-2019
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    脾動脈瘤破裂は今日でも時期を逸すると死に至る重篤な疾患である.今回, 我々はdouble rupturephenomenonを来したと考えられる1例を経験したので報告する.症例は38歳の男性で上腹部痛・嘔吐にて発症し, 急性胃腸炎として入院治療中CT検査にて網嚢内血腫と思われる高吸収域の腫瘤像を認め, 脾動脈瘤破裂が疑われた.手術待機中にdouble ruptureを来し緊急開腹し, 動脈瘤とともに脾臓を摘出し救命しえた.脾動脈瘤破裂は左上腹部痛で発症するが, 網嚢内の凝血塊により一時的止血効果を示した後, 腹腔内に破裂することがある.この場合はdouble rupture phenomenonと呼ばれるが, second mptureを起こす前に診断し手術することが肝要である.
  • 大江 信哉, 渡部 修一, 稲葉 行男, 野村 尚, 鈴木 明彦, 飯沼 俊信, 林 健一, 千葉 昌和
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2020-2023
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    まれな内膀胱上窩ヘルニアの1例を報告する.症例は腹部手術既往のない73歳の男性.過去3回イレウスで入院, 保存的治療で軽快している.今回, 頻回の嘔吐と下腹部痛を主訴に来院し, イレウスの診断で入院.小腸造影にて回腸末端付近の途絶がみられたため, 小腸腫瘍を先進部とする腸重積あるいは内ヘルニアによるイレウスを疑い手術を施行した.開腹所見で回腸の内膀胱上窩ヘルニアへの嵌頓によるイレウスと診断された.
    手術は回腸部分切除, ヘルニア嚢の飜転縫縮とヘルニア門の縫合閉鎖を施行した.
    正中臍靱帯と外側臍靱帯の間にヘルニア門を有する内膀胱上窩ヘルニアのうち, ヘルニア嚢が恥骨後方のRetzius腔に向かう内膀胱上窩ヘルニアは極めてまれである.
    術前に本症が確定診断に至った例はないが, 手術既往のない高齢者のイレウスの際は, 本症の存在も念頭におくべきであると思われた.
  • 財間 正純, 光吉 明, 藤村 直幸
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2024-2027
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    左主気管支の内腔まで浸潤の及んだ進行胸部食道癌に対し, 左主気管支の環状合併切除を伴う手術を施行した.症例はImの2型進行癌を持つ76歳の男性で, 術前気管支内視鏡で左主気管支内腔に腫瘍浸潤を認めた.手術は右開胸で行い胸部食道全摘および約3cmの左主気管支を環状に切除.分離肺換気および術野挿管にて酸素化後, high frequency jet ventilation (以下, HFJV) 加換気停止下に気道再建を行った.消化管は後縦隔経路で大網を付けた胃管を挙上し頸部で吻合し, 後縦隔内に大網を充填した.食道癌手術での気管支合併切除時における換気停止下の気管支再建および後縦隔経路の大網付き胃管挙上法は簡便かつ有効な方法と考えられる.
  • 水上 健治, 高 勉, 桧垣 一行, 堀井 勝彦, 谷村 慎哉, 松山 光春, 山崎 修, 藤本 泰久, 東野 正幸, 奥野 匡宥
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2028-2032
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌切除後, 肝尾状葉下大静脈部に再発した2例に尾状葉単独全切除を行い, 2年以上の無再発生存を得ている.手術は上腹部逆T字型切開による開腹のみのapproachで行い, 尾状葉下大静脈部右縁の同定は肝門approachによるグリソン一括処理法でグリソン後区域枝をclampして生じるdemarcation lineから同定した.短肝静脈を切離し肝を下大静脈から完全に剥離した後, 尾状葉右縁から肝切離を開始した.頭側は右肝静脈背側面, 中肝静脈背側面に沿って切離し, 尾側は肝門板から分枝する尾状葉グリソン枝をグリソン騰部背側端まで逐一切離し, 最後にArantius管を根部で切離した.いったん, 左側に術野を転じArantius管を中肝静脈流入部で切離した後, 中肝静脈背側縁に沿って肝切離を進め, 最後に両肝切離面を連続させて尾状葉単独全切除を完了した.最も切除困難といわれる尾状葉下大静脈部に再発した肝細胞癌といえども早期に発見すれば尾状葉単独全切除によって根治的切除も可能である.
  • 佐原 博之, 長谷川 泰介, 村山 茂美, 瀬島 照弘, 瀬戸 啓太郎, 秋山 高儀, 斎藤 人志, 高島 茂樹
    1998 年 31 巻 9 号 p. 2033-2037
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LC) は, 良性胆嚢疾患に対する胆嚢摘出術の標準術式となっているが, 合併症も少なからず報告されている.そこでLCにおける胆道系の解剖学的位置関係の把握と胆道系病変の術中精査を目的に, 腹腔鏡下超音波検査 (LUS) を行い, その有用性について検討した.対象はLC時にLUSを施行した69例である.水浸法での胆嚢管剥離前後および胆嚢管剥離後の水浸法とバルーン法によるLUSの胆道系の描出率を比較した.水浸法による三管合流部の描出は, 胆嚢管剥離前では47%で, 描出されても不明瞭な例が多くみられた.一方, 胆嚢管剥離後では描出は容易で1例を除く全例に明瞭な描出が可能であった.胆嚢管剥離後の水浸法とバルーン法の比較ではバルーン法の方が容易で良好な画像が得られ, ビデオカメラ画像との対比も容易であった.LCをより安全に施行するために, LUSによる三管合流部を中心とした胆道系の解剖学的位置関係の確認が有用であると思われた.
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