日本消化器外科学会雑誌
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32 巻, 1 号
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  • 坂東 悦郎, 竹下 八洲男, 吉本 勝博, 湊屋 剛, 吉光 裕, 礒部 芳彰
    1999 年 32 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌手術施行237例を対象に, 血清CEAとCA19-9を術前術後に経時的に測定することの意義を検討した. 術前の血清CEAおよびCA19-9の陽性率は15.6%, 15.6%であった. またStage Iでの陽性率は4.2%, 2.5%であった.根治手術症例で, 術前術後ともCEA, CA19-9陰性症例の予後は, 術後陽性転化群に対してそれぞれ有意に良好であった (p<0.001, p<0.001). また術前陽性群において, 術後陰性転化群の予後は, 陽性継続群に対して有意に良好であった (p=0.006, p=0.019). 根治術後再発例 (n=48) で, CEA, CA19-9のcombination assayはsensitivity73.0%, specificity90.1%, accuracy86.0%であった. またLogistic重回帰分析の結果, 術後CEA, CA19-9の陽性は, 深達度 (p=0.023) とともに, 再発に対して他の臨床病理学的因子に影響されない独立した因子であった (p<0.001). 以上より術前血清CEA, CA19-9の測定は早期診断には有用でないが, 術後の経時的測定は再発診断として有用と考えられた.
  • 村上 雅彦, 佐藤 信博
    1999 年 32 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝膵同時切除術13例において輸液量として術中15ml/kg/hr, 0病日は5ml/kg/hrを目標とした管理を行い術中肝静脈血酸素飽和度 (ShvO2) と循環動態を検討した. 術後全身循環は酸素運搬能600ml/min/m2以上, 酸素消費量135ml/min/m2以上で推移しShvO2の低下も認めなかった. 動脈血中ケトン対比は術中0.53±0.16であったが, 1病日以後は1.0以上で推移した. 術中ShvO260%以下低下時間は術後総ビリルビンとIL-6最高値との間におのおのr=0.938, r=0.740の有意な相関を認め, ShvO2モニタリングは肝虚血侵襲の把握に有用と考えられた. 本研究対象症例に肺合併症は認めず, 肝不全は1例7.7%で手術死亡は認めなかった. HPDにおける積極的な輸液投与とinotropic agentの併用, ShvO2モニタリングの有用性を示す結果と考えられた.
  • 山口 英見
    1999 年 32 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    bacterial translocationの抑制と一酸化窒素の関与について実験的に検討した. ラットに空腸回腸バイパスモデルを作製し, 経腸投与により5%ブドウ糖+L-グルタミン投与群 (G群), 5%ブドウ糖+ポリデキストロース投与群 (P群), 5%ブドウ糖単独投与群 (C群) を作製し, 1週間無拘束自由飼育後に検討した.その結果, C群では小腸粘膜の荒廃と腹腔内リンパ節への大腸菌の移行を認め, 肝小葉には著明な脂肪変性がみられた. G, P群ではこれらの変化は軽度であった. また, C群では小腸組織でのiNOS mRNA誘導と門脈血中NO2-/NO3-濃度の増加を認めたが, G, P群では抑制された. ラット空腸回腸バイパスモデルによるbacterial translocationにおいて, 小腸組織から一酸化窒素が誘導されることを明らかにし, グルタミンおよびポリデキストロースによるbacterial translocationの抑制と小腸組織での一酸化窒素産生抑制効果を証明した.
  • 仲 昌彦, 中村 貴久, 大森 一吉, 南田 猛, 品田 佳秀, 渡辺 佳明
    1999 年 32 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝原発扁平上皮癌の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する. 症例は73歳の男性.糖尿病・高血圧で当院通院中, 上腹部痛にて胃内視鏡検査施行し胃粘膜下腫瘍を認め精査目的に入院した. 理学所見, 血液検査では特記すべき異常は認められなかった. 胃内視鏡検査時の生検結果はグループIであった. CTでは肝外側区と胃小弯前壁間に直径7cmの不整形の腫瘤を認め, また, 下大静脈欠損も認めた. 血管造影検査では左胃動脈・短胃動脈・後胃動脈より腫瘍血管が認められた. 以上より胃粘膜下腫瘍+肝浸潤の診断で胃全摘+肝外側区部分切除術を行った. 病理組織学的には肝扁平上皮癌であった. 今回, 肝原発を積極的に示唆する扁平上皮化生は見られなかったが, 術後, 転移性肝癌の可能性も考慮し全身検索を行い, 他に原発巣となりうる病変が認められなかったことより, 肝原発扁平上皮癌と診断した.
  • 伊藤 卓資, 金丸 太一, 森田 康, 山本 正博, 黒田 嘉和, 林 祥剛, 伊東 宏
    1999 年 32 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性で, 社内検診にて肝腫瘤を指摘され, 当院へ紹介入院となった. 腹部CTにて右前下区域に直径1.2cmの腫瘤を認め, 血管造影所見で, 腫瘤の辺縁に一致してリング状の淡い濃染像を認めた. 肝細胞癌 (HCC) の診断にて, 肝部分切除術を施行した. 切除標本で, 腫瘤は直径1.2×1.0cm, 周囲との境界明瞭で線維性被膜を有し, その内部には黄褐色の壊死様物質が認められた. 組織学的所見では, 腫瘤は細胞成分は全くなく, 好酸性の壊死物質が索状に配列しており, 被膜内にも同様の壊死物質が認められ, HCCの完全自然壊死症例と考えられた. 非腫瘤部は肝硬変であった. 術後経過良好で第22病日退院した. 3年経過後, 多発性のHCC再発をきたした. 本邦におけるHCCの完全な自然壊死報告例は4例と非常に少なく, 貴重な症例と考え報告した.
  • 朝戸 裕, 牛島 康栄, 原 彰男, 隈元 雄介, 石塚 裕人, 下山 豊, 古田 一徳, 栗原 直人, 坂田 道生, 石原 雅巳
    1999 年 32 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性. 頭痛, 嘔気, 嘔吐, 歩行時のふらつきを訴えて来院した. 既往歴としては5年前に子宮頸癌で根治手術を施行し, 組織型は扁平上皮癌であった.
    脳造影CT検査で右前頭葉に単発性の造影される腫瘤を認め脳腫瘍と診断し, 腫瘤全摘出術を行った. 組織学的には高-中分化乳頭状腺癌であった.
    2年1か月後に, 左前頭葉に再度単発性の腫瘤が認められ腫瘤全摘出術が行われた. 組織学的に高分化乳頭状腺癌と診断された.
    さらに1年9か月後には腋窩リンパ節に乳頭状腺癌の転移を認めた. 腹部CT検査で膵周囲から大動脈周囲にリンパ節の腫脹と思われる所見を認めた. やがて黄疸も出現し, 初回脳手術より4年4か月後に死亡し, 剖検を行った. Vater乳頭部を中心に腫瘍があり, 組織学的に高分化腺癌, Vater乳頭部癌, 原発巣と診断された.
    Vater乳頭部癌の脳転移はまれであり文献的考察を加え報告する
  • 飯野 聡, 高尾 尊身, 新地 洋之, 久保 昌亮, 愛甲 孝, 小倉 芳人, 満田 和信, 萩原 一行
    1999 年 32 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性. 主訴は低血糖による意識消失発作, 同時に膵嚢胞性疾患を指摘され入院となった. 低血糖発作はACTH単独欠損症部分欠損型, 膵嚢胞性疾患は膵頭部膵管内乳頭腺癌と診断された. ACTH単独欠損症と診断された後, 術前は20mg/dayのヒドロコルチゾン経口投与を, 術後は300mg/dayの経静脈的投与より開始し, 術前量まで漸減した. また漸減時コントロールの指標として血糖値, 血中Na値の推移に注目したところ有効であった. 必要十分量のステロイド投与を行うことにより, 合併症なく膵頭十二指腸切除術を行うことが可能であった. ACTH単独欠損症患者に対する外科手術の報告はわずか4例が散見されるにすぎず周術期管理は確立されていない. 今回, 我々は本症に対する周術期管理を中心に報告する.
  • 芝原 一繁, 岩瀬 孝明, 藤森 英希
    1999 年 32 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれは慢性膵炎に続発したと考えられた脾膿瘍, 脾梗塞のまれな1例を経験したので報告する.
    症例は78歳の男性. 1994年7月7日, 突発性の39度の発熱と突然の左上腹部痛が出現した. 精査の結果, 脾膿瘍の穿孔による左横隔膜下膿瘍および腹膜炎が疑われ, 脾臓摘出術および腹腔内ドレナージを施行した. 摘出標本の病理組織学的検索では, 膵臓は慢性膵炎の像を呈し, 脾臓内には広範な梗塞巣と膿瘍を認めた. 脾動脈には炎症性細胞浸潤を認め, 内腔は血栓により閉塞しており, 梗塞の原因となったと考えられた. また膵尾部の炎症性細胞の浸潤が脾下極の膿瘍に連続していることから, 膿瘍形成の直接の原因となったと考えられた. いずれの病態も慢性膵炎が原因でそれに続発したものと考えられた.
  • 高 賢樹, 藤岡 進, 加藤 健司, 待木 雄一, 相川 潔, 橋本 瑞生, 横山 幸治, 石川 玲, 菅原 元, 吉田 カツ江
    1999 年 32 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    脾臓に原発する悪性リンパ腫が小腸に転移し, 開腹手術および化学療法により軽快した症例を経験したので報告する. 症例は61歳の女性. 体重減少, 食欲不振で近医を受診し, 左上腹部の腫瘤を指摘された. 腹部エコーにて脾臓に腫瘤が認められたため精査目的で当科に入院. 腹部CTにて脾臓全体に低吸収域の腫瘤が存在し, LDHの著明な上昇, ガリウムシンチにて脾臓への集積がみられたことより脾臓原発の悪性リンパ腫と診断し, 開腹術を施行した. 開腹所見では, 脾臓の腫瘤とともに空腸に4か所の転移を認めた. 脾臓摘出術, 膵尾部切除術, 空腸部分切除術を施行した. 術後CHOP (cyclophosphamide, adriamycin, vincristine, prednisolone) 療法で治療を行い, 経過は順調である. 術後1年8か月の現在まで再発の徴候はない.
  • 福島 恒男, 鬼頭 文彦, 小尾 芳郎, 松尾 恵五, 菊池 光伸, 小金井 一隆, 篠崎 大, 木村 英明, 藤井 正一
    1999 年 32 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Crohn病腸手術156例中3例 (1.9%) においては術後早期に再発, 遺残病変がないにもかかわらず, 吻合部を中心に縫合不全による瘻孔を繰り返した. 症例は男性2例, 女性1例, Crohn病の平均発症年齢19歳で, 術後に瘻孔を平均4.7回 (4, 5, 5回) 合併し, それぞれ3回の再手術を要したが, 1例は治癒し, 1例は未治癒, 1例は死亡した.
    3例とも術前の経過, 全身状態, 検査結果に特記すべきことはなく, 腸の創傷治癒機転の障害が認められた. このような例はまれではあるが, 原因はCrohn病そのものにあるのか, 他に原因があるか不明である. この原因が解明されれば, 手術はより安全になると期待される.
  • 三上 幸夫, 今村 幹雄, 山内 英生
    1999 年 32 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は28歳の男性で, 12歳時に腹痛, 発熱, 下痢で発症した小腸大腸型クローン病である. 過去2回の腸切除の既往がある. 高度の直腸狭窄を伴った肛門周囲膿瘍および複雑性痔瘻が生じ, seton法によるドレナージ術を4回施行したが著明な改善は得られなかった. 注腸造影検査で直腸狭窄, 回腸直腸吻合部狭窄, 回腸回腸瘻, 坐骨直腸窩痔瘻, 高位筋間複雑性痔瘻などが見られ, 中心静脈栄養下にPSL静注, 5-ASA, AzathioprineおよびMetronidazoleの内服, ED療法, PSL肝油注腸による強力な保存的治療を施行した. しかし, 腸病変, 肛門部痛および血液検査成績は改善せず, 内科的治療の限界と判断して, 3回目の手術を施行した. 腹腔内の癒着剥離後に直腸切断, 前回の吻合部を含め回腸末端部切除, 回腸内瘻解除, 回腸瘻造設術を施行した. 術後は3年ぶりに経口摂取可能となりQOLは著しく向上し, 患者も手術に満足している.
  • 尾形 敏郎, 横田 徹, 六本木 隆, 菅野 圭一, 藤井 孝尚, 大和田 進, 森下 靖雄
    1999 年 32 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は腹痛, 血便, 肛門より脱出する腫瘤を主訴とした75歳の女性で, 腫瘤先端の生検の結果は腺癌であった.また骨盤computed tomography (CT) でS状結腸下部から直腸にかけて3層の同心円状に腫大した腸管を認めた. 以上よりS状結腸癌を先進部として肛門より脱出した腸重積と診断してHartmann手術を施行し, 良好な結果を得た. 成人のS状結腸の腸重積はまれであり, 先進部が肛門より脱出したものの報告はさらに少ない. 自験例ではCTで特徴的な所見が得られ, 術前に確定診断が可能であった.
  • 永川 宅和
    1999 年 32 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1981年に本邦における胆道癌取扱い規約が発刊されて15年以上を経過し, その間2回の小改訂が行われてきた. さらに, この度の改訂は, 胆道癌登録事業による症例の集積と, 胃癌, 膵癌の取扱い規約の改訂にともなって, 大幅なものとなった. こうして, 第4版が昨年10月に発刊された.
    今回の主な改正点は (1) 胆管癌の分類のうち肝門部胆管癌の設定, (2) 漿膜浸潤におけるSxの設定, (3) リンパ節 (群) 分類の変更, (4) 腫瘍の肉眼的形態分類の名称の変更, (5) 胆管周囲進展度 (T, t) の設定と手術的, 総合的進行度分類の設定, (6) 切除縁における肉眼的, 組織学的癌浸潤表現の変更, (7) 切除術の根治度の評価の設定, (8) 病理組織学的分類の変更と壁深達度におけるafの廃止などである.
    本稿では, 胆管癌についてその主な改訂点をとりあげ, いまだ残されている問題点についても解説を加えた.
  • 池田 靖洋
    1999 年 32 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆管癌に対する切除以外の治療法として, ステンティングを中心に述べた. ステンティングの手技は胆道へのアプローチ法により, 経皮経肝的胆管内瘻術と内視鏡的胆管ドレナージ術に分類される. どちらの手技を選択するかは, おのおのの特徴を熟知した上で, 病態に応じて決定すべきである. ステントにはプラスティック製のtube stent (TS) と金属製のexpandable metallic stent (EMS) の2種類がある. 両者を比較するとTSはcloggingが生じやすく, 開存期間は短いが, 安価で交換が容易である. 一方, EMSは開存率がTSに比べて良好であり, 複数本を留置できることや胆管分枝などを閉塞しない利点を有している. しかし, 高価で, 抜去が困難であり, 内腔への腫瘍増殖は再閉塞の主因となっている. ステントを長期間開存させるために, 各種の併用療法が行われ, とくに放射線+温熱療法併用群で治療効果が認められた. 今後, 局所制御に有効な併用療法を行えば, 予後の向上が期待できる.
  • 松野 正紀
    1999 年 32 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    中・下部胆管癌切除99例を中心に下部胆管癌に対する標準的膵頭十二指腸切除術 (PD), 中部胆管癌に対するD2郭清を伴う胆管切除術の根治性について検討した. 中・下部胆管癌耐術症例の5年累積生存率は37.4%であり, 手術的根治度 (Cur) Aが得られれば予後は良好で5年生存率は51.6%を得た. 胆道癌取扱い規約第4版であらたに規定された組織学的胆管周囲深達度 (t) 別の10年生存率は, t1, t2, t3, t4症例でそれぞれ49.1, 19.7, 0, 0%であった. 中部胆管癌では根治度Aを満たせば胆管切除術でも良好な予後が得られた. 下部胆管癌では組織学的癌深達度をm, fm, panc1a, 組織学的十二指腸浸潤du0, du1, pv0の組織学的胆管周囲進展度t1で, さらにリンパ節転移n0を満たす総合的進行度stage I症例では遠隔成績は良好であった. また胃周囲リンパ節転移率は1.3%であり, panc0, 1症例では全胃温存膵頭十二指腸切除術の導入が可能と考えられた. 進行症例を含めたoverallの5年生存率は中部胆管癌39.9%下部胆管癌36.9%と満足すべきものではなく, 中・下部を問わず, 一律に重点的D3郭清を伴う膵頭十二指腸切除術と体系的な集学的治療法の施行が重要と結論した.
  • 名古屋方式の実験的・臨床的背景
    二村 雄次
    1999 年 32 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    上部・肝門部胆管癌の外科治療は特に我が国で最近急速な発展を示しているが, ここでは著者の教室の基礎的・臨床的研究の流れを紹介しながらその治療方針について述べる.
    術前管理の基本方針は尾状葉を除いた肝内全区域の選択的経皮経肝胆管ドレナージを行って障害肝の再生を促すと共に, 選択的胆管造影, 時には経皮経肝胆道鏡検査で詳細な癌の進展度診断を行う. 区域性胆管炎の診断と治療には特に注意を要する. 広範肝切除が予定された場合には経皮経肝門脈枝塞栓術 (PTPE) を行う. 予定残肝機能評価を行ってから尾状葉切除を伴う肝区域切除を行う. 肝動脈神経叢郭清は必須である. 門脈合併切除は予後の改善につながるので積極的に行う. 術後は静脈栄養よりも経腸栄養をすべきであり, 術前・術後を通して外瘻胆汁は積極的に腸管内へ返却して肝再生の促進を計る. PTPE後, 手術後にカラードプラによる肝血流動態のチェックをすることも必須である.
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