日本消化器外科学会雑誌
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32 巻, 5 号
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  • 竹村 茂之, 宮 喜一, 鷹尾 博司, 梅本 敬夫, 佐治 重豊
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1133-1141
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌の根治手術施行例で, 術直前のメチルプレドニゾロン (250mg) 投与の影響を, ステロイド投与 (S) 群 (n=9) と非投与 (C) 群 (n=9) に分け検討した. その結果, S群はC群に比べ有意に, 心拍数と体温の上昇が少なく, カテコラミン投与量とCRPが低値で, 血中TNF-α, IL-1β, IL-6, IL-8値が低値であった. また, 血中IL-10値はS群で術後7日目に有意の高値を, IL-12値はC群で術後72時間目から7日目に5例で増加がみられた. T cell growth suppression (TGS) 活性は, S群がC群に比べ術後6から72時間目の間で抑制傾向がみられた. 他に, S群の2例で術後3日目以降にショックに至る合併症を認めた. 以上の結果, ステロイド術直前投与は, 炎症性サイトカインの産生を抑制し, 術後の過大な生体反応を軽減できるが, 術後3日目以降の宿主免疫活性を抑制する可能性が示唆された. それゆえ, 癌細胞遺残が推察される症例では, ステロイド投与は慎重であるべきと推察される.
  • 大久保 賢治
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1142-1151
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌に対する持続温熱腹膜灌流療法 (CHPP) の適応症例を, adjuvant chemotherapy施行の有無, リンパ節転移 (n因子), 腹膜播種 (P因子) の程度, p53, ビメンチン (VT), growth index (GI) の発現と予後との関係を分析し検討した. 対象はstage IVbでH0の47例である. うちCHPP施行19例, 非施行28例で, 切除標本主病変の免疫染色で, p53染色率70%以上の高発現例をp53 (+), VTは染色された例をVT (+), GIは14以上と14未満の2群に分類した. CHPPを施行したadjuvant chemother-apy施行例, P (-) 例, p53 (-) 例の生存率は, CHPP非施行の生存率と比較して良好な傾向にあった (Cox-Mantel test p<0.05). しかし, Coxの比例ハザード法による解析では, P因子, p53が予後決定因子であり, CHPPの施行の有無は予後因子として重要ではなかった.
  • 高金 明典, 寺島 雅典, 米沢 仁志, 入野田 崇, 阿部 薫, 荒谷 宗充, 中屋 勉, 大山 健一, 下沖 収, 斎藤 和好
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1152-1159
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    高齢者胃癌の術後合併症の危険因子ならびに予後規定因子を同定するために, 多変量解析を用いて検討した. 当科において1986年から1997年までに胃切除術を施行された75歳以上の高齢者胃癌症例78例に対し, ロジスティック回帰分析を用いて術後合併症発生の危険因存子を同定し, さらに線形判別式を求めた. また, Cox's proportional hazard modelを用いて予後に関与する独立した因子を同定した. 術後合併症は術前赤血球数ならびに術中出血量と関連が強く, これより線形判定式 (Z)=0.0011×術中出血量-0.0027×術前赤血球数 (×104/μl)+0.3342を得た. また, 予後規定因子として根治度が最も強い相関を示し, ハザード比で比較すると根治度BはA より16.1倍予後不良であった. 以上より高齢者胃癌といえども, 術前全身評価で良好な症例は, 術中出血量を極力抑えることにより術後合併症を予防可能であり, 根治度Aを目指した手術を考慮すべきである.
  • 広川 雅之, 本田 一郎, 渡辺 敏, 藤田 昌宏
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1160-1165
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1997年までに千葉県がんセンターで術後1年以上経過した胃癌手術例2,642例のうち他臓器がんとの重複症例は152例 (5.8%), 発生間隔別では同時性群44例, 胃癌先行群52例, 胃癌後発群56例であった. 第1度近親者の悪性腫瘍家族歴陽性例は同時性群17例, 胃癌先行群27例であった. 切除胃癌の組織型は分化型, 壁深達度はt1が多く, 胃癌後発群にn (+), stage IV症例が多かった. 他臓器がんは大腸が36病変と最も多く, 同時性群, 胃癌先行群に消化器系がんが多かった. 胃癌手術後の累積5年生存率は同時性群28.1%, 胃癌先行群79.4%, 胃癌後発群52.3%で胃癌先行群が他群に比べ良好であった. 早期胃癌では同時性群が不良で, 進行胃癌では胃癌先行群が良好であった. 胃と他臓器重複癌は重複癌の発生間隔によって臨床的特徴が大きく異なっており, 今後重複癌の問題を論じる場合は同時性, 異時性に分けて検討する必要があると考えられた.
  • 桂巻 正, 平田 公一, 荒谷 純, 松野 孝, 永山 稔, 木村 仁, 磯部 将人, 古畑 智久, 高島 健, 向谷 充宏
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1166-1172
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝切除後の血中アポ蛋白Bを測定し, 術後肝機能の評価としての有用性を検討した. 1997年1月から1998年6月までの当科で施行された肝切除症例のうち, 術前・術後にアポ蛋白Bと総ビリルビン (T. Bil), albumin, ICG15分, lectin-cholesterol acyl transferase (LCAT), prealbuminの各値を測定し, その解析が可能と判断された32例を対象とした. 施行した術式の内訳は肝部分切除6例, 肝亜区域切除8例, 1区域切除4例, 2区域切除14例であった. 全症例が耐術し肝不全の発症はなかった. 術式間で術後アポ蛋白Bの推移に有意差はなかった. 術後7日目のアポ蛋白BとLCAT, prealbumin, T. Bilとはそれぞれ有意な相関を認め (r=0.847, r=0.665, r=-0.442), ICG15分およびalbuminとは有意な相関はなかった. 以上よりアポ蛋白Bは肝切除後の肝機能回復の有用な指標になると思われた.
  • 鈴木 修司, 吉川 達也, 新井田 達雄, 吾妻 司, 大坪 毅人, 木暮 道夫, 本橋 洋一, 高崎 健
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1173-1178
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は1990年以来胆道癌手術の適応拡大, 安全性向上のため経皮経肝的門脈塞栓術 (PTPE) を導入してきた. PTPE前後の形態的, 機能的変化についてPTPEを施行した胆嚢癌3例, 胆管癌3例を対象に検討した. 形態的肝再生はCTによる体積変化を検討し機能的肝再生はプレアルブミン, レチノール結合蛋白, トランスフェリン, 過酸化脂質, 酸素飽和度, アンモニア, エンドトキシンの各項目をPTPE前後において左右肝静脈, 門脈血中より採取し塞栓葉, 非塞栓葉に分け検討した. 非塞栓葉はPTPEにより27.8±5.2%の増大を示し, rapid turnover proteinの変化は明らかでなかった. しかし, 非塞栓葉にて若干アンモニアは増加し, エンドトキシンは減少した. エンドトキシンは残肝増大率と強い負の相関を示した. 以上よりPTPE後の非塞栓葉において肝網内系の機能が亢進することが示唆された.
  • 阪本 雄一郎, 伊山 明宏, 佐藤 清治, 宮崎 耕治
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1179-1183
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1982年から1997年までの16年間に経験した絞扼性イレウス手術症例35例と癒着性イレウス手術症例41例を対象とし, retrospectiveにsystemic inflammatory response syndrome (SIRS) 判定の有用性を検討した. 絞扼性イレウス症例を初診時SIRS群, 経過観察中SIRS移行群, 非SIRS群に分類し, 腸管壊死との関連を検討した. また, 同様に分類したSIRS判定を癒着性イレウス症例にも行い比較した. 絞扼性イレウス症例において, 初診時SIRS群の94.7%, SIRS移行群の66.7%は, 手術施行時すでに腸管壊死に陥っており, 両群の壊死腸管の平均長は129cmであった. 非SIRS群にも30%に腸管壊死を認めたが, 壊死腸管の平均長は24cmにすぎなかった. 癒着性イレウスの初診時SIRS群は2.3%であった. SIRS判定は, 絞扼性イレウスの補助診断として有用で, 特にSIRSの有無は壊死腸管の長さを反映することが示唆された.
  • 中江 史朗, 石川 羊男, 国安 哲矢, 小西 宗治, 金田 邦彦, 河村 貴, 寒原 芳浩, 河野 範男, 中谷 正史
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1184-1191
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    便潜血陽性で発見された大腸癌101例と有症状の大腸癌578例を臨床病理学的に比較した. 便潜血群は増加傾向にあり, 有症状群は最近6年間でほぼ同数であった. 便潜血群の結腸・直腸比は67.3%・32.7%で, 有症状群の52.8%・47.2%に比べて結腸が有意に高率であった (p<0.01). 便潜血群の5生率90.8%は, 有症状群の60.5%より高かった (p<0.0001). 有症状群で深達度mpまでの癌は右側結腸8.5%, 左側結腸17.1%, 直腸35.9%で, 右側結腸では直腸より有意に低率で (p<0.001), 左側結腸に対しても低率の傾向であった. 便潜血群ではmpまでの比率はどの部位でも50%以上であった. mpまでの癌で便潜血群の比率は, 右側結腸64.0%, 左側結腸34.6%, 直腸19.7%で, 口側ほど高率であった. 以上より便潜血検査がさらに普及することで診断の遅れやすい右側結腸癌の予後向上が期待できると考えられた.
  • 篠塚 望, 小山 勇, 鈴木 義隆, 新井 庸倫, 沼尻 良克, 長島 直樹, 松本 隆, 大畑 昌彦, 安西 春幸, 尾本 良三
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1192-1197
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化器癌手術計31症例を対象とし, 受診時ヘモグロビン (Hb) 濃度13.0g/dl未満で術前貯血期間が十分に得られた16症例に対し, 皮下注用遺伝子組み替えヒトエリスロポエチン (r-HuEPO: エスポー) を自己血貯血前より投与 (前打ち投与群) し, 貯血時にのみr-HuEPOを投与した15例 (前打ち非投与群) と比較検討した. 前打ち投与群におけるr-HuEPO初回投与時のHb濃度は11.9±1.0g/dlであったが, 初回貯血時には12.6±1.3g/dlと有意に上昇し, 術前自己血貯血量は914±195mlとなった. また, 前打ち投与群における術前Hb増加量および貧血回復率は, 有意差はないものの前打ち非投与群に比べ高値を示す傾向を示した. 貧血を合併した消化器癌症例におけるrh-EPO貯血前投与は, 貯血に伴う貧血進行の防止や自己血貯血量の確保に有用となりうる可能性が示唆された.
  • 五十嵐 章, 奥田 康一, 西脇 真, 辻塚 一幸, 清野 徳彦, 住山 正男, 堀部 良宗
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1198-1202
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性で, 上腹部不快感を主訴に近医受診し, 当院を紹介された. 上部消化管造影, 内視鏡検査にて食道胃接合部に隆起性の腫瘍を認めた. 胃全摘, 膵尾脾合併切除術を施行した. 切除標本で食道胃接合部に7.0×7.5cmの3型の腫瘍を認め, 病理組織学的検査では小細胞癌と診断された. 所属リンパ節に癌転移はなかったが, 類上皮細胞および多核巨細胞からなるサルコイド反応を認めた. また, 脾臓にも著明なサルコイド反応を認めた. サルコイド反応はさまざまな悪性腫瘍の所属リンパ節にみられるが, 脾臓にみられた報告は少ない. また, 予後不良といわれる比較的まれな胃小細胞癌に予後良好とするサルコイド反応を認めた報告例はなく, 極めてまれな症例と考え文献的考察を加え報告する.
  • 西 宏之, 仲原 正明, 荻野 信夫, 中尾 量保, 李 千万, 辻本 正彦
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1203-1207
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌切除後の乳糜胸に対し, OK-432とミノサイクリンの投与が有効であった1例を経験した. 患者は62歳の男性. 胸部中下部食道癌に対し右開胸開腹にて胸腹部食道切除, 胸腔内食道胃管吻合, リンパ節郭清を施行した. 第1病日より右胸腔ドレーンから1,400~2,000ml日の排液を認めた. 摂食にて排液は白濁し, 乳糜胸と診断. 排液量が減少しないため, 第13病日より3日間, 胸腔内にOK-43210KEとミノマイシン200mgを投与した. 排液は著減し, リンパ管造影にてTh10で造影剤の途絶を確認した. 第18病日に胸腔ドレーンを抜去した. 隔壁化された胸水の貯留を認めたが, 徐々に減少し, 第51病日には胸水をほとんど認めなくなった. 食道癌切除後の乳糜胸に対する胸膜癒着療法の本邦報告例は4例で, 排液は500~2,200ml日, 第11~20病日に胸膜癒着剤が投与され, 全例治癒していた.
  • 松田 政徳, 藤井 秀樹, 茂垣 雅俊, 松本 由朗
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1208-1212
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の男性.B型肝炎ウイルスキャリアー.肝右葉の肝細胞癌の診断で肝右葉切除術を受けた.腫瘍は最大径6.0cmの中分化型肝細胞癌で, 肝内転移と被膜浸潤を認めた.術後に肝動脈注入療法を施行.14か月後, 肝内側区域と外側区域に再発巣を認め, 開腹下にマイクロ波焼灼術を行った.4か月後のCT検査で, 肝左葉に多発性の腫瘤像と中肝静脈内から下大静脈に腫瘍栓を認めた.その2か月後のCTでは, 中肝静脈の腫瘍栓は右房に達し, 外側区域はlow densityを示し, うっ血性の変化が示唆された.その後, 肝性昏睡が急激に進行し約10日後に死亡した.剖検では, 内側区域に再発腫瘍を認め, 連続性に中肝静脈, さらに右房にいたる腫瘍塞栓が形成されていた.左肝静脈根部は腫瘍栓により閉塞していた.本症例は続発性のBudd-Chiari症候群を呈し, 外側区域肝細胞のうっ血と広汎な壊死により急速に肝不全が進行し死亡したものと考えた.
  • 世古口 英, 土江 健嗣, 栗木 浩, 坂口 憲史, 林 英司
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1213-1216
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    X症例は48歳の女性. 約1年前よりときどき右季肋部痛があった. 近医を受診し腹部超音波検査で総胆管の拡張を指摘され, 精査加療目的で当院に紹介となった. 超音波内視鏡, 内視鏡的逆行性膵胆管造影などを施行し, 先天性総胆管拡張症と診断されたが, 膵・胆管合流異常は明らかではなかった. 拡張胆管の切除術を施行した. 乳頭側の切除線を決定するために施行した術中胆道造影では膵・胆管合流異常を認めなかった. 総胆管の胆汁中のアミラーゼの値は32IUlと正常範囲内であった.
    本症例は先天性胆道拡張症と膵・胆管合流異常の関係を考えるうえ/で興味ある症例である
  • 黒木 嘉人, 小田切 春洋, 坂本 隆, 塚田 一博
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1217-1221
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    黄疸の発症する前の胆管癌の早期診断はいまだ困難であるが, 今回, 我々は初診時に無黄疸の粘膜内胆管癌の1例を経験した. 症例は72歳の女性. 火事による気道, 角膜熱傷などにて当院に入院したが, 入院時検査から持続する肝胆道系酵素の上昇を認めた. USとCTにて下部胆管に腫瘤像を認め, ERCPにて4.5cm長の結節集簇様の陰影欠損を認めた. 全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術施行し, 術中操作にて腫瘍は一部脱落したが, 切除標本では乳頭状に増殖する連続性のない2個の病変 (1.2×1.2cm, 1.8×0.9cm) が見られた. 病理組織像はいずれも粘膜内に限局した乳頭腺癌であった (pap, m, med, INFα, ly0, v0, pn0, hinf0, ginf0, panc0, du0, pv0, a0, n (-), hm0, dm0, em0, t1, stage I, cur A). 術後17か月現在, 再発なく外来通院中である.
  • 廣瀬 昌博, 横田 友弥, 杉田 敦郎, 村尾 眞一, 河内 寛治
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1222-1226
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は26歳の男性. 発熱, 咽頭痛を主訴に当院内科入院. 初診時より口腔内アフタおよび前胸部の毛嚢炎様皮疹を認めていた. 第5病日突然右下腹部痛を認め, 翌日, 消化管穿孔の診断で手術を施行した. 手術所見で病変は盲腸から上行結腸に2か所の穿孔部を認めた. 手術は同部を正常部を含めて切除し, 単純縫合閉鎖とした. 病理組織学的検査ではpunched outと称されるperforated ulcerで, 周辺は非特異的炎症所見を認めた. 術後網膜ブドウ膜炎とHLA-B51が陽性であったことから, 腸管型Behcet病と診断した. 術直後よりステロイドとサラゾピリンを使用し, 栄養は中心静脈栄養に頼らず, 術後経過は概ね良好であった.
    従来, 腸管型Behcet病の腸管穿孔における手術法は, 1mの回腸を含む右半結腸切除が最適とされてきた. しかし, 本例から穿孔部の部位や数・大小にもよるが, 術式は単純縫合閉鎖など最小限にとどめるのも良策であることが示唆された.
  • 宇高 徹総, 堀 堅造, 安藤 隆史, 辻 和宏, 三谷 英信, 山根 正修, 浜崎 美景
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1227-1230
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症は種々の消化器疾患に併発して出現する比較的まれな病態で, 予後の不良の徴候とされている. 今回われわれは, 門脈ガス血症を呈した結腸腸管嚢腫様気腫症の手術により救命しえた1例を経験したので報告する.
    症例は75歳の女性で, 突然発症した右下腹痛を主訴に来院した. 腹部CT で肝の左右両葉に肝内門脈に沿って樹枝状陰影に広がるair density areaを認めた. また, 盲腸, 上行結腸, 横行結腸の腸管壁内に気腫像を認めた. 門脈ガス血症を呈した結腸腸管嚢腫様気腫症と診断した. 症状が急速に増悪したため, 発症から12時間後に緊急手術を施行した. 盲腸から横行結腸まで嚢腫様気腫性変化を認め, 右半結腸切除術, 回腸瘻および横行結腸瘻を造設した. 術後経過良好にて, 回腸瘻, 横行結腸瘻閉鎖術および回腸横行結腸吻合術を施行し, 初回手術後より79回目に軽快退院した.
  • 江畑 智希, 宮田 完志, 服部 龍夫, 小林 陽一郎, 加藤 真, 米山 文彦, 竹内 英司
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1231-1234
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝鎌状動脈を認めた3例を経験したので報告する. 頻度は腹部血管造影156例のうち1.9%であった. 肝動注化学療法を施行する際は本動脈の処理を行うべきである.
    症例1: 乳癌肝転移にて施行した血管造影で左肝動脈より分岐する肝鎌状動脈を認めた. 肝動脈CTで内側枝・外側前枝の分岐部から腹側に向かい, その後腹直筋直下を臍方向に走行する肝鎌状動脈が描出された.
    症例2: 小腸平滑筋肉腫の肝転移にて施行した血管造影で中肝動脈から臍方向に走行する肝鎌状動脈を認めた. 選択的造影では深下腹壁動脈との吻合が描出された. 肝動注化学療法の前に塞栓術を施行した.
    症例3: 胆嚢癌の診断で施行した血管造影で肝鎌状動脈が描出されたため, 手術時に肝鎌状間膜, 肝円索を採取した. 病理組織学的に外膜が肥厚した径1mmの動脈を認めた.
  • 山本 貴章, 河地 茂行, 川原 英之, 濱谷 昌弘, 櫻井 孝志, 井上 聡, 高山 伸, 原 正
    1999 年 32 巻 5 号 p. 1235-1239
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性, 肝硬変で外来通院中に繰り返すタール便のため入院となり, 上下部消化管を精査したが出血源不明のため, 腹部血管造影を施行した. 空腸動脈末梢に動脈相早期から静脈相後期まで造影される拡張した静脈が確認され, 空腸の動静脈奇形と診断した. 病巣が小さく局在診断が困難と予想されたため術前に選択的血管造影で病巣近傍の動脈内にマイクロコイルを留置した. 手術は腹腔鏡下に開始し, 透視下にコイルを確認して血管の支配領域に従って空腸を腹腔外に誘導し約33cm切除した. 摘出標本では暗褐色の粘膜が帯状に約5cmにわたり存在し, 組織学的には粘膜下層を中心に脈管の拡張が認められた. 術後経過は良好で第11病日に退院し, 術後1年以上経過した現在まで再出血を認めていない.「マイクロコイル留置後の腹腔鏡下手術」は消化管動静脈奇形の治療法として有力な選択枝のひとつになりえると考えられた.
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