日本消化器外科学会雑誌
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33 巻, 10 号
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  • 上田 順彦, 根塚 秀昭, 山本 精一, 吉光 裕, 礒部 芳彰, 竹下 八洲男
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1737-1743
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor (GIST) の免疫組織化学的検索の臨床的意義と問題点を明らかにすることを目的として広義のGIST12例を検討した. 悪性度の判定は腫瘍径と核分裂度により3段階に分類した.Grade Iのnormal cellular typeの3例は固有筋層と同様の染色態度を示した.その他の9例ではvimentin とCD34の染色性は固有筋層と比較して増加した. また, grade Iのuncommitted typeの2例は悪性度が低いことを考慮に入れて判定すると, 免疫染色所見から分化度が低い腫瘍であると考えられた. 一方, grade II, IIIの中のcombined typeの2例とα-SMA3 (+), desmin3 (+) のsmooth muscle type1例は分化した細胞を発生母地とした腫瘍と考えられたが, 免疫染色所見のみでは悪性度の判定はできなかった. 以上よりGISTの免疫染色所見は悪性度の基準を明確にした上で判定することにより, はじめて臨床的評価が明らかになると考えられた.
  • 神谷 紀之, 遠藤 格, 瀧本 篤, 藤井 義郎, 関戸 仁, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1744-1750
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝門部上部胆管癌44例を対象に, 予後規定因子と術後放射線療法 (post operative radiotherapy: PORT) の治療効果を検討した. 切除例は32例で切除率は72.7%であった. 切除例の平均観察期間は20.6か月で, 1, 3, 5生率は79.9%, 59.8%, 39.3%であった. 単変量解析ではリンパ節転移の有無とPORTの有無が, 多変量解析ではPORTの有無が予後規定因子と考えられた. 1, 3生率は, 根治度A, BかつPORT (-) 群の83.3%, 40.0%に対して根治度CかつPORT (+) 群では100%, 53.3%と, 根治度CでもPORTにより根治度A, Bと同等の生存率が得られた. PORT施行例では組織学的にhm2, em2において局所再発を認めず, 特に肝側胆管断端, 剥離面の癌遺残に対する再発抑制効果があると思われた.
  • 勝又 健次, 壽美 哲生, 山本 啓一郎, 片柳 創, 室橋 隆, 長島 一浩, 葦沢 龍人, 小柳 泰久, 青木 達哉, 加藤 孝一郎
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1751-1757
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌92症例においてp53の点突然変異, p21(WAF1)の発現を測定し, アポトーシスの出現を検討した. p53はPCR-SSCP法にて点突然変異, p21は免疫染色法にて20%以上の癌細胞核が染色されるものを陽性とし, アポトーシスはDNAのラダーにて検索した. p53点突然変異の有無, p21の発現と病理学的因子の相関は認めなかった. p53とp21, DNAラダーの出現との間には相関関係はなく, p21陽性例ではDNAラダーの出現率が低く, p21陰性例ではDNAラダーの出現率が高かった (p<0.0115). さらに, p53点突然変異を認めない群ではp21陽性例でDNAラダーの出現を認めず, 陰性例ではDNAラダーの出現率が高かった (p<0.0015). 以上よりp21の存在によりDNAが修復されアポトーシスは誘導されず, p53が機能している場合にはp21によりさらに強い傾向があることが示された.
  • 富田 凉一, 池田 太郎, 五十嵐 誠悟, 萩原 紀嗣, 藤崎 滋, 福澤 正洋
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1758-1761
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    排便障害 (残便感, 便秘, 排便困難, 会陰部重圧感など) の有無により, rectocele例 (全例女性;有症状38例, 無症状16例) の病態生理学的相違があるかどうかの解明を目的に, 直腸肛門内圧検査法を用いて, 排便異常のない女性 (16例) を対照に比較検討した. その結果, 排便障害の有無に関係なく, 内・外肛門括約筋機能 (対照に比較して, 肛門管最大静止圧と肛門管最大随意収縮圧は明らかに低値), 直腸貯留能 (対照に比較して, 直腸最大耐容量は低値, コンプライアンスは明らかに低値), 直腸感覚能 (直腸最小知覚量と直腸最小耐容量は高値) などの低下を認めた. そして, 直腸内圧は対照より明らかに高値を示した. すなわち, rectocele例では, 排便障害の有無に関係なく, 直腸壁の弾性能低下に高い直腸内圧が存在していることが判明した. これらのことは, rectoceleの成因に関与している可能性を示唆するものと思われた.
  • 北島 政幸, 小野 憲, 高田 丈, 関 英一郎, 冨木 裕一, 林田 康男, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦, 高瀬 優, 松本 俊治
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1762-1766
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性. 左上腹部痛を主訴として来院. 腹部超音波, CT検査で周囲組織を圧排するように発育した胃原発と思われる腫瘍を認めた. 胃内視鏡検査では胃体中部後壁に2個の潰瘍を伴う大きさ10cm大の粘膜下腫瘍様の病変を認め, 潰瘍辺縁からの生検はGroup Vであった. 胃体中部後壁5'型T4, 胃癌の診断で, 胃全摘術および脾臓, 横行結腸合併切除術を施行した. 病理組織学的検査では円形から短紡錘形の核より成る小型の細胞が索状配列, 偽ロゼット構造を形成し, NSE染色, Grimelius染色, chromogranin A染色陽性で胃内分泌細胞癌と診断した.
    胃内分泌細胞癌は全胃癌中0.06~0.08%とされ, さらに壁外性の発育を示した症例は自験例を含め3例にすぎず, 形態的にもまれなものと思われた.
  • 樋渡 清司, 石神 純也, 崎田 浩徳, 帆北 修一, 夏越 祥次, 愛甲 孝
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1767-1770
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌術後に発症したサイトメガロウイルス (以下, CMV) 肺炎の2治験例を経験した. 症例1は63歳の男性. 4型胃癌に対して術前腹腔内にシスプラチンを投与し, 胃全摘術を施行した. 術後間質性肺炎を発症した.CMV肺炎を疑い, 抗ウイルス剤を先行投与し, 軽快治癒した. 原因検索の結果, CMV肺炎と診断された. 症例2は66歳の男性. 左肺癌と早期胃癌の重複癌で, 術前放射線療法を受けていた. 幽門側胃切除術施行後, 間質性肺炎をきたした. 抗ウイルス剤投与にて治癒しえた. 治療後にCMVが同定された. 両症例とも肺炎発症時にリンパ球数は低下しており, 術前の化学療法あるいは放射線療法による免疫能低下がCMV肺炎発症に関与したと推定された. 抗ウイルス剤による治療後に起因ウイルスが同定された. CMV肺炎の治療成績は不良であり, 本疾患が強く疑われる場合, 抗ウイルス剤の早期投与は有用と考えられた.
  • 土井 新也, 奥村 徹, 秋元 佳太郎, 三崎 三郎, 本郷 三郎, 中野 博重
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1771-1774
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性. 上腹部痛を主訴に来院した. 内視鏡下生検の結果, 十二指腸原発の悪性リンパ腫と診断した. CHOP療法を2クール行ったが, 十二指腸狭窄による通過障害を認めたため, 膵頭十二指腸切除術を行った. 切除標本の病理組織所見では, リンパ腫成分を認めず, CHOP療法により完全寛解が得られていたことが判明した. 従来, 本症例のようなNaqviの臨床病期stage Iにあたる早期の消化管原発悪性リンパ腫には手術治療が第1選択とされ, 進行例には集学的治療が行われていた. しかし, 最近では本症例と同じく, 早期症例に対する化学療法有効例が報告されている. 長期予後については今後検討を要するが, 今回の治験から, 十二指腸悪性リンパ腫のstage I症例に対する化学療法は有効であると考えられた.
  • 正木 裕児, 岡田 敏正, 定平 吉都
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1775-1779
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸と小腸に同時性に多発し, 穿孔性腹膜炎をきたしたT細胞性悪性リンパ腫を経験した.症例は75歳の男性, 主訴は上腹部痛で上部消化管内視鏡で十二指腸潰瘍が認められた. 潰瘍部からの生検にてT細胞型悪性リンパ腫と診断されたため, cyclophosphamide, adriamycin, vincristine, prednisolone療法 (以下, CHOP療法) を3クール施行し, 外来で経過観察していたところ強い上腹部痛で来院, 腹部CTにてfree airを認め消化管穿孔による汎発性腹膜炎にて緊急手術を施行した. 術中に小腸に多発する腫瘍を認め, その1か所が穿孔を起こしていた. 消化管原発T細胞性悪性リンパ腫はまれで, B細胞性悪性リンパ腫に比べ予後は悪く, 注意すべき疾患であると考えられた.
  • 宇野 雄祐, 平野 誠, 川口 雅彦, 村上 望, 野澤 寛, 吉野 裕司, 塚山 正市, 太田 尚宏, 橘川 弘勝
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1780-1784
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性.1997年8月に検診の腹部超音波検査で肝内側区に8cm大の単房性嚢胞を発見された. 腹部CT検査では, 嚢胞内壁は平滑で, 内腔は均一な低吸収性単房性嚢胞であった.1998年10月27日, 背部痛を主訴に当科を受診した. 腹部超音波検査で, 嚢胞の内部に2.5cm大の小嚢胞を認めた. 腹部CT検査では, 嚢胞壁に内腔へ突出する乳頭状隆起もみられた. 動脈造影下CT検査では, 嚢胞壁, 嚢胞内腔の不整隆起, および小嚢胞壁が造影された. 以上より, 肝嚢胞腺癌の疑いで肝内側区域部分切除術を行った. 切除標本では嚢胞壁内に小嚢胞以外にも微小嚢胞を認めた. 病理組織学的検査では, 嚢胞壁全体と小嚢胞壁は癌組織であるが, 微小嚢胞の内壁は腺腫と診断された. 本症例では, 肝嚢胞腺腫から肝嚢胞腺癌が発生したものと思われた. さらに, 経過観察中に認められた嚢胞の形態変化は, 癌細胞の増殖によってもたらされたものと考えられた.
  • 早馬 聡, 森田 高行, 藤田 美芳, 仙丸 直人, 宮坂 祐司, 加藤 紘之
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1785-1788
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    本邦でもまれな肝・リンパ節再発を来したpagetoid spreadを伴う肛門管早期癌の1例を経験したので報告する. 症例は67歳の男性で, 排便時肛門痛, 出血を主訴に来院, 肛門鏡検査にて肛門管5時方向に粘膜下腫瘍を認め, 経肛門的腫瘍摘出術を施行した. 病理組織所見として低分化腺癌, 深達度sm, ly2, v0, 肛門腺由来の肛門管癌の診断を得た.この結果, 追加切除が必要と判断し, 腹会陰式直腸切断術を施行した. 病理組織所見は低分化腺癌, 深達度sm3, ly2, v0, n (-) で周辺にpagetoid spreadを伴っていた. 術後1年目よりCEAの上昇を認め以後漸増した. 1年6か月後のCTにて, 両鼠径部リンパ節腫大と肝S7の腫瘤影を認め, 肝部分切除術および両側鼠径部リンパ節郭清を施行した. 病理組織学的に肛門管癌の転移と診断された.再手術後1年6か月の現在, 再発の徴候なく健在である.
  • 押切 太郎, 中村 文隆, 道家 充, 増田 知重, 宮崎 恭介, 金古 裕之, 樫村 暢一, 松波 己, 近藤 哲, 加藤 紘之
    2000 年 33 巻 10 号 p. 1789-1793
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は64歳の女性で, 喘息症状の悪化にて入院となり, 末梢血好酸球増多, 筋生検における血管炎の存在を認め, Churg-Strauss syndrome (以下, CSSと略記) と診断されたステロイドの維持療法中, 短期間に2度の小腸穿孔をきたし手術を施行したが, その後血管炎の増悪による胆嚢壊死, 消化管壊死・出血をきたし死亡した. 症例2は67歳の男性で, 数年前より喘息症状がみられた. 多発単神経炎による下肢の脱力にて入院となり, 末梢血好酸球増多・神経生検における血管炎の存在を認め, CSSと診断された.ステロイドのパルス療法を施行後に小腸穿孔をきたして手術を施行し, 現在経過観察中である. 両症例とも病理組織学的に切除標本に血管炎像を認め, ステロイド投与にての寛解は得られなかった. ステロイド治療に抵抗を示すCSSが消化管穿孔を合併した場合, 再穿孔する可能性が高いと思われた.
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