日本消化器外科学会雑誌
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33 巻, 2 号
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  • 池田 佳史, 新見 正則, 捨田利 外茂夫, 三吉 博, 花谷 勇治, 高見 博, 小平 進
    2000 年 33 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Laser-Doppler Flowmetry法に基づく組織血流量計を用いて, Albert-Lembert法による胃管と層々吻合法による胃管との血行動態の違いを比較・検討した.(対象と方法) A-L縫合胃管27例と層々縫合胃管7例の計34例を対象とした. 胃管作製後, 胃管先端から1cmごとに血流量を測定した. また, 吻合部となる胃管の血流量を吻合前後に測定し, 胃管先端より吻合部までの距離を測定した.(結果) 各測定点での層々縫合胃管の血流量はA-L縫合胃管の血流量と同程度以上に保たれていた. 吻合部の血流変化と距離は, 層々縫合胃管では16.5±2.2ml/min/100g, 7.0±1.1cmで, A-L縫合胃管では12.0±4.2, 3.7±0.3であった.(考察) 層々縫合胃管は胃管延長の面で良好であり, 血流の豊富な, 先端より離れた部位での吻合が可能となり縫合不全をさらに減少させ得る術式であると考えられた.
  • とくにhypodiploidとp53の関連について
    松本 光正, 宮地 和人
    2000 年 33 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Flow cytometry (FCM) を用いる方法は, 短時間に多くの細胞を測定することが可能であり, multi scanで多因子を一度に測定できる利点がある. 胃癌患者57例を対象として, FCMを用い, 細胞周期上にてhypodiploidで示されるアポトーシス細胞とsynthesis phase fraction (SPF), アポトーシスを制御する癌抑制遺伝子p53や癌遺伝子bcl-2の発現を比較検討した. 癌組織中のhypodiploidは平均2.6%, SPFは, 17.3%であり, 非癌部に比較して高値であった. 組織型分類においての未分化型のhypodiploidおよびSPFは各3.38%, 18.88%であり分化型の1.64%, 16.24%より高値であった. p53陽性群では, SPFの低下はなく, S期, G2/M期のチェックポイントに作用し, アポトーシスへの誘導が示唆された.
  • 市倉 隆, 小川 敏也, 帖地 憲太郎, 間嶋 崇, 上藤 和彦, 望月 英隆
    2000 年 33 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃全摘後の空腸pouch-Roux-Y再建の臨床的意義を検討するため, 根治度A, Bの胃全摘症例を, 同再建が行われた33例 (pouch群) とρ-Roux-Y再建が行われた38例 (ρ群) とに分け比較した. pouch作製にともなう合併症はなく, 他の合併症の頻度も両群間で差はみられなかった. 手術時間の中央値はpouch群310分, ρ群290分であった. 術後愁訴に関するアンケートの結果, 1回食事摂取量が術前の7割以上の症例はpouch群で84%とρ群の38%に比べ多かった (p=0.01). 逆流感を訴える症例はpouch群で16%とρ群の46%に比較して少なかった (p=0.03). ダンピング症状の頻度もpouch群で少ない傾向にあった. X線学的に代用胃からの食物排出をみると, pouch群ではρ群でみられた摂取後初期の急速排出が著明に抑制されていた. 空腸pouch-Roux-Y再建は安全性・簡便性に優れ, 術後愁訴の面でもρ-Roux-Y再建に比べ良好で, 胃全摘後の標準的再建となりえよう.
  • 畠山 優一, 佐久間 浩, 柿沼 雄二, 長谷川 有史, 佐藤 尚紀, 小山 善久, 井上 典夫, 土屋 敦雄, 竹之下 誠一, 尾股 定夫
    2000 年 33 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は肝線維化率が硬変肝切除後の肝再生能評価に有用であることを報告した. 今回, 超音波ドプラによる肝静脈波形解析および硬さセンサーによる肝臓の硬さの定量化が簡便に肝線維化率を推定するのに有用かを検討した. 1997年4月から1998年8月までの肝癌9例と他疾患6例の15例を対象とし, 術前に血液検査, ICG R15, K ICGの測定を行い, また超音波ドプラにより肝静脈波形を解析してpulsatility index (PI) とresistance index (RI) を得た. 術中に硬さセンサーを用いて肝臓の硬さを定量化してtactileを得, 肝生検を行い肝線維化率を測定した. これら各データ間の関係を検討するとPI, tactileと肝線維化率との間には有意な関係が認められ, 重回帰分析からも肝線維化率の推定に有用との結果を得た. 超音波ドプラの肝静脈波知解析によるPIの測定は術前において, 硬さセンサーによる肝臓の硬さの定量化は術中において肝線維化率の推定に有用と示唆された.
  • 前村 公成, 高尾 尊身, 徳田 浩喜, 内倉 敬一郎, 木原 研二, 久保 昌亮, 中島 三郎, 柳 政行, 新地 洋之, 愛甲 孝
    2000 年 33 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    超音波振動メス (ハーモニックスカルペル; 以下, ハーモニックと略記) を用いた腸管切離・吻合における影響とその有用性を, 金属メス, 電気メスと比較して評価した. ビーグル犬12頭を用いおのおのの器具による小腸の切離・吻合を行い, 切離時の出血量および術後第1, 3, 5, 7, 14, 21病日目の吻合部の微細血管構築像と病理組織像で比較検討した. ハーモニックでは切離時の出血はほとんどみられなかった. 微細血管構築像についてはavascular area占居率が金属メスより高かったが, 新生血管占居率に有意差はみられなかった. 病理組織像については腸管の層構造 (粘膜下層, 筋層の構築) の消失と細胞浸潤の広がりを測定した結果, 第14病日では電気メスに比べ良好な組織構造の再生が認められた. 以上よりハーモニックは, 高い止血効果と, 電気メスより早い創傷治癒帰転を有し, 腸管の切離・吻合における臨床的な有用性が示唆された.
  • 鈴木 康司, 渡邊 正志, 菊池 誠, 長谷部 行健, 中崎 晴弘, 戸倉 夏木, 船橋 公彦, 辻田 和紀, 寺本 龍生, 小林 一雄
    2000 年 33 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移に対する肝切除後の予防的動注療法の意義について検討を加えた. 大腸癌肝転移104例のうち原発・肝転移単共に完全切除しえた46例を対象とした. 予防的動注群18例と非動注群28例で生存率を比較すると有意に予防的動注群が予後良好であった. 予防的動注群の無再発生存率は良好な傾向にあり, 残肝再発をきたした症例でも予防的動注群で残肝再発までの期間が有意に延長していた.また, 肝切除後の残肝・肺再発率はほぼ同等であったが, 肝切除後の初回再発様式で予防的動注群のすべてが根治可能再発であったのに対し, 非動注群では根治困難再発または肝門部リンパ節+残肝再発が多く再肝切除率が低下していた. その他, 残肝再発例のCEA doubling timeは動注療法によって有意に延長した. 以上より大腸癌肝転移切除後の予防的動注療法は, 腫瘍の発育速度・再発量を抑え, 残肝再発までの期間を延長させ, 結果的に再肝切除率を高めることが示唆された.
  • 黒川 幸典, 吉川 宣輝, 三嶋 秀行, 藤谷 和正, 辛 栄成, 沢村 敏郎, 西庄 勇, 蓮池 康徳, 小林 研二, 辻仲 利政
    2000 年 33 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去34年間に当科で切除された4型大腸癌15例の臨床病理学的特徴について, 4型を除く全大腸癌2,912例と比較検討した. 平均年齢は54.5歳, 初発症状は便秘, 腹痛が多かった. 腫瘍最大径の平均値は9.5cmと一般大腸癌よりも有意に大きく, 深達度は全例ss (a1) 以上で, また腹膜転移陽性は33.3%, リンパ節転移陽性は93.3%と, 一般大腸癌よりもP, n因子の陽性率が有意に高く, 低分化腺癌の割合も53.3%と有意に高かった. 予後は極めて不良であり, 術後8か月目で無再発生存中の1症例を除いた14例の3年生存率は7.1%, 全例が4年以内に原病死した. 吉川分類によるscirrhous typeの予後は他のtypeよりも有意に良好であり, Coxの比例ハザードモデルによる単変量・多変量解析でも吉川分類が有意な予後規定因子であった.
  • 佐藤 真輔, 瀧田 尚仁, 加戸 秀一, 渡野辺 郁雄, 須郷 広之, 三上 陽史, 松本 文夫, 津村 秀憲, 渡部 洋三
    2000 年 33 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は23歳の女性で, 離乳食開始時より食後の嘔吐を認められていた. 徐々に嚥下困難が進行し, 6歳時に先天性食道狭窄症と診断されたが, 合併奇形は認められていない. 以後, 近医で内視鏡検査, 食道造影にて経過観察をし, 時にbougieを行っていた. 22歳時の検査にて内視鏡ファイバーが通過困難となり, 手術目的にて当院外科入院となった. 当院での内視鏡検査にて切歯より約30cmと40cmの部位2か所に狭窄が認められた. 平成10年11月12日, 右開胸開腹食道亜全摘, 胸腔内胃管食道吻合, 胆摘, 幽門形成が施行された. 病理組織診断にて2か所の狭窄とも筋性線維性食道狭窄症と診断された. 本症例は狭窄部が2か所認められたこと, 保存的治療が無効であったことより食道亜全摘術が施行された. 成人例の先天性食道狭窄症の報告は少なく, また, 2か所に狭窄を有した筋性線維性狭窄は本邦での報告がなくまれな症例である.
  • 砂山 健一, 高木 正和, 小林 恵子, 小里 俊幸, 大場 範行, 中上 和彦, 伊関 丈治, 遠山 和成, 室 博之
    2000 年 33 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性. 幼児期に全内臓逆位を指摘されていた. 主訴は嚥下時の閉塞感. 上部消化管内視鏡検査にて切歯列より30cmに内腔の1/3を占居する腫瘍を認め, 腫瘍の肛門側には複数の黒色斑を認めた. 生検にて悪性黒色腫と診断された. 左開胸開腹により胸部食道切除術を行った. 組織学的にjunctional activityを認め原発性悪性黒色腫と診断した. 食道癌に準じた進行度はM0 Pl0 sm1 n (-) と診断した. 腫瘍肛門側の黒色斑はintramural metastasisと診断した. 肉眼的に正常な食道壁にatypicalmelanotic hyperplasiaが広範囲に認められた. 術後補助療法は行わなかった. 術後2年無再発生存中である. 本症例を加え長期無再発を期待できる因子に関して文献的考察を加え報告する.
  • 岩瀬 和裕, 桧垣 淳, 三方 彰喜, 田中 靖士, 吉川 正人, 岸本 朋乃, 鳥飼 慶, 豊岡 圭子, 弓場 健義, 上池 渉
    2000 年 33 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    幽門輪保存胃亜全摘術後6か月目にビタミンB1欠乏による脚気ニューロパチーを発症した1例を報告した. 症例は32歳の男性で, 胃癌に対して幽門輪保存胃亜全摘術を行い噴門形成を付加した近位側空腸パウチ間置法にて再建した. 退院後飲酒せず食事内容に偏食は認められなかったが, 術後3か月目の腹部CT検査では間置空腸の著明な拡張が認められた. 術後4か月目頃より経口摂取は順調に進んだが, 術後6か月目に靴下型知覚障害ならびに下肢遠位筋優位の筋力低下が認められた. 神経生理学的検査では腓腹神経の感覚神経活動電位消失が認められ, 血中ビタミンB1値は11 (正常値20-50) ng/mlと低値であった. ビタミンB1の投与により症状は軽快した. 胃切除術後に上部消化管内容のうっ滞を併発した場合には, ビタミンB1欠乏の可能性をも念頭に置く必要があると考えられた.
  • 東 久弥, 横尾 直樹, 加藤 達史, 福井 貴巳, 山口 哲哉, 岡本 清尚
    2000 年 33 巻 2 号 p. 196-199
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝原発扁平上皮癌の1例を経験したので報告する. 症例は58歳の男性. 上腹部痛を主訴に来院した.血液検査では胆道系酵素の軽度上昇がみられたが, 腫瘍マーカーはいずれも正常値内であり, B型およびC型肝炎ウイルスマーカーは陰性であった. 腫瘤は肝S4に存在し, 腹部USでは境界不鮮明で内部が低エコー像として, 腹部CTでは内部不均一な低密度領域として, 腹部MRIではT1強調で低信号, T2強調で高信号の像として描出された. 血管造影では, 腫瘤に一致して淡い濃染像を認めた. 肝左葉切除術を施行, 腫瘤は径4.5×3×3cm, 被膜は無いものの境界は比較的明瞭であり, 割面は黄白色であった. 組織学的には, 角化を伴った比較的分化度の高い扁平上皮癌であり, 腺癌成分を認めなかった. 背景の肝組織に炎症や線維化などの変化はみられなかった. 術後1年9か月を経た現在, 再発徴候無く健在である.
  • 河野 修三, 小林 功, 織田 豊, 羽田 丈紀, 大森 秀一郎, 笹屋 一人, 羽野 寛, 山崎 洋次
    2000 年 33 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性. 平成7年12月5日に直腸癌に対して前方切除を施行し, 平成9年8月26日には孤立性肝転移に対して肝S7を部分切除した. 術中超音波検査では, 切除域に門脈浸潤などを疑う所見はみられなかった. しかし病理組織検査では, 腫瘍は長径17mmの腺癌の多発結節で, その結節は系統的に胆管の腫瘍浸潤として分布しており, 切除断端は陽性であった. 平成10年7月8日に肝右葉切除, 横隔膜合併切除術を施行した. 病理組織検査では, 前回の切除部位は壊死を伴い空洞状になっていて, この中に癌細胞の遺残はみられなかった. 癌細胞は空洞直下の門脈域胆管内にみられ, 中枢側に向かって発育していたが, 切除断端は陰性であった.
    肉眼的にも認知される転移性肝癌の胆管内発育はまれである. 門脈域胆管浸潤による断端陽性症例では系統的肝切除が有効である.
  • 松田 政徳, 藤井 秀樹, 茂垣 雅俊, 松本 由朗
    2000 年 33 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性. 1992年7月14日, 肝外発育型肝細胞癌の診断で肝外側区域切除を施行した. 腫瘍は細い茎で肝外側区域と連続し, 最大径6.5cmの有茎型腫瘍で, 肝内に腫瘤性病変は認めなかった. 腫瘍は病理組織学的に中~低分化型肝細胞癌で, 茎の部分で腫瘍の脈管侵襲を認めた. 術後18か月目, 内側区域に径1.5cmの腫瘤を認め, 再切除術を実施した. 再発腫瘍は組織学的に初回切除腫瘍の組織型に類似した中分化肝細胞癌であり, 肝内転移再発と考えた. その後は5年以上無再発で生存中である. 肝外発育型肝細胞癌は有茎型であっても肝内転移を考慮した系統的肝切除術を選択する必要があることを示唆する症例である.
  • 広利 浩一, 原 隆志, 山崎 左雪, 河島 秀昭, 石後岡 正弘, 細川 誉至雄
    2000 年 33 巻 2 号 p. 210-214
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    非常にまれな下部胆管原発の印環細胞癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は57歳の男性. 糖尿病のため経過観察中, 血糖コントロール不良, 胆道系酵素上昇を認めた. 腹部CTでは膵頭部から十二指腸下行脚に突出する1.5cm大の腫瘤を認めた. ERCPでは下部胆管の不正狭窄像, その上流および主膵管の拡張像, また, 乳頭部の著明な腫大がみられ, 生検の結果は印環細胞癌であった. 乳頭部癌の術前診断にて膵頭十二指腸切除術を施行. 肉眼所見はVater乳頭近傍の総胆管に約1.5cmの結節型の腫瘍を認め, 組織学的に同部は印環細胞癌であり, 下部胆管において高分化型管状腺癌が上皮内を進展し, また胆管壁在の神経浸潤を主とする形で肝側に著しく広がり肝側胆管断端陽性であった. 胆管腔内照射および外照射を追加し, 術後1年の現在, 生存中である. このような胆管原発の印環細胞癌は, 特に胆管壁内進展を十分に考慮し, 診断, 治療を行うことを要する.
  • 山本 栄和, 田中 明, 辻 勝成, 吉田 秀行, 前田 敏樹, 武田 亮二, 片岡 正人, 岡村 隆仁, 宇都宮 裕文, 向原 純雄
    2000 年 33 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の女性. 以前よりときどき, 右上腹部痛を自覚していた. 市民検診にて肝嚢胞を指摘され, 精査目的にて入院となった. 腹部CT, 超音波検査にて肝左葉に直径7cm大の嚢胞性病変を認め, 嚢胞壁から内腔に突出した乳頭状隆起が見られた. MRIではT1強調画像で高信号, T2強調画像でも高信号な嚢腫を肝左葉に認め, その内部に嚢胞壁と連続し内腔へ突出した充実性部分が見られた. 画像検査上, 胆管嚢胞腺癌に特徴的所見であり, 術前, 胆管嚢胞腺癌と診断し, 拡大肝左葉切除, 尾状葉切除, リンパ節郭清術を施行した. 嚢胞内溶液はゼリー状で粘液性であり, 肉眼的に薄い嚢胞壁と嚢胞壁から突出した充実性の部分から成っていた. 病理組織学的に嚢胞内に存在する充実性部分には異型性のある粘液上皮が塊をなして浸潤増殖しており, 胆管嚢胞腺癌と診断した. 術後2年10か月経過した現在, 再発兆候なく健在である.
  • 角 泰廣, 尾関 豊, 立山 健一郎, 山田 卓也, 吉田 直優
    2000 年 33 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈の動脈硬化性狭窄を伴った膵頭部癌の1切除例を経験したので報告する. 症例は69歳の女性. 健康診断で肝障害を指摘され, 諸検査で膵腫瘍が疑われ当科へ紹介された. 腹部computedtomography・経皮的胆管造影・内視鏡的逆行性膵管造影で膵頭部主膵管は閉塞し, 総胆管および膵体尾部主膵管が拡張していた. 血管造影で上腸間膜動脈本幹に片側性の狭窄があり, 総肝動脈から膵頭部アーケードを介して上腸間膜動脈が造影された. 幽門輪温存膵頭十二指腸切除ならびに上腸間膜動脈本幹の狭窄部の血栓除去を併施した. 組織学的には膵頭部に高分化管状腺癌を認めた. 術後造影で上腸間膜動脈の血流は良好であり, 第52病日に軽快退院した. 1年9か月後の現在, 腹痛・下痢などの症状なく, 無再発生存中である.
  • 二村 直樹, 鬼束 惇義, 林 勝知, 柴田 雅也, 阪本 研一, 安村 幹央, 広瀬 一, 下川 邦泰
    2000 年 33 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸間膜に脂肪腫を合併し, 多中心性に発生したと考えられる後腹膜脂肪肉腫の1例を経験したので報告する. 症例は57歳の男性. 1996年9月, 近医通院中に行われた腹部超音波検査で左上腹部を中心とした腫瘤を指摘された. 腹部超音波, CT, MRIにて正中から左腎の腹側と左腎の頭側から腎門に各1個の腫瘤が認められた. 左腎の腹側の腫瘤は一部に脂肪が認められると判断し, このことから脂肪肉腫と診断した. 手術所見では後腹膜に, 左腎の腹側と左腎の頭側から腎門に各1個の腫瘤が存在し, それらは連続していなかった. 画像診断にて左腎の腹側の腫瘤の一部は脂肪であると判断した部分はS状結腸間膜に存在する独立した腫瘤であった. これらを摘出した. 病理組織検査では2個の後腹膜腫瘍は粘液型の脂肪肉腫であった. S状結腸間膜腫瘍は脂肪腫であった. 脂肪腫を合併し, 多中心性に発生した脂肪肉腫と考えられた.
  • 照屋 淳, 出口 宝, 竹島 義隆, 仲地 厚, 武藤 良弘
    2000 年 33 巻 2 号 p. 230-234
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の男性で, 腹痛と発熱を主訴に当院を受診した. 理学所見では腹部は著明に膨満し, 腸雑音は消失していた. 腹部全体に圧痛と腹膜刺激所見を認めた. 腹部単純X線検査, 腹部CT検査, 超音波検査を施行し, 確定診断が得られなかったが急性腹症で緊急手術を行った. 手術所見で結核性腹膜炎と診断したが, 癌性腹膜炎も否定出来ないため, 腹水, 血液, 腹膜, 大網および白色結節を採取し, 病理検査と腫瘍マーカー測定を行った. その結果, 腹水中のCA125, CA19-9が極めて高値であった. 結核性腹膜炎でADA, CA125が高値を示した症例報告は多いが, 腹水, 血清中のCA19-9が高値を示した報告は著者らが検索した限りではみられなかった. 患者は抗結核化学療法で腹膜炎所見は軽快し, CA19-9値は正常域となった. 抗結核化学療法によるCA19-9値の変化を観察しえた, 興味ある症例と考え報告する.
  • 二上 文夫, 小西 一朗, 千田 勝紀
    2000 年 33 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性. 主訴は腹部膨満, 腹痛, 嘔吐. 2年前に右扁桃原発悪性リンパ腫 (stage I) にて治療を受け完全寛解をえた. 腹部単純X線で小腸ガスを認め, イレウス管を挿入し症状は消失したが, 造影にて空腸に境界が比較的明瞭な狭窄像を認め, 小腸悪性腫瘍を疑い手術を施行した. Treitz靭帯より150cmの空腸に, 肉眼的奬膜浸潤陽性の腫瘍を認め, リンパ節郭清を伴う小腸部分切除を行った.腫瘍は70×45mmのBorrmann 2型様で, 組織学的にdiffuse, medium-sized cell, B cell typeの悪性リンパ腫と診断された. 深達度はseで, リンパ節転移は認めなかった. 悪性リンパ腫がWaldeyer輪と消化管に重複発生することが知られているが, 自験例のごとき空腸病変の報告はこれまで認めていない. 小腸悪性リンパ腫とくに深達度seの予後は不良とされ, 術後6か月の現在, 化学療法を施行し厳重フォローアップ中である.
  • 廣瀬 昌博, 難波 康男, 山本 吉浩, 井上 禎三, 藤原 恒弘
    2000 年 33 巻 2 号 p. 240-244
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は88歳の女性. 嘔吐をともなう左下腹部痛を主訴に近医を受診した. 胸部X線写真で右心横隔膜角に腫瘤陰影とCTで胸腔内に腸管陰影と腸閉塞の診断で当科紹介となった. 左下腹部を中心に腹膜刺激症状を認めたので, 当科では左下腹部に病変を有する汎発性腹膜炎と診断し, 手術を施行した.開腹するとS状結腸に穿孔を認め, 先に修復した. また, 横行結腸と大網が右傍胸骨孔から胸腔内に嵌入しており, これらを腹腔内に還納し, ヘルニア門を縫縮閉鎖した. 以上からMorgagni孔ヘルニアをともなう特発性S状結腸穿孔と診断した. 術後21日MRSA肺炎を合併し, 治療に難渋したが術後39日退院することができた.
    自験例は特発性S状結腸穿孔とMorgagni孔ヘルニアが併存した非常にまれな症例で, いずれの疾患も高齢者急性腹症診療の際には念頭に置かねばならない.
  • 桂巻 正, 平田 公一, 永山 稔, 木村 仁, 磯部 将人, 松野 孝, 古畑 智久, 浦 英樹, 向谷 充宏
    2000 年 33 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    血管吻合をより短時間で容易に施行できる器械吻合器VCSクリップを豚肝移植における肝動脈吻合において使用し, その有用性を検討した. 体重21~29kgの豚18頭に同所性肝移植を施行した. 肝動脈吻合はレシピエントとドナーの総肝動脈 (直径約3mm) の端端吻合で, 4点に支持糸をかけてその間をVCSクリップSサイズを約3~4針ずつ合計12~16針かけることで行った. 肝動脈吻合は顕微鏡を使用せず可能で, 吻合に要した時間は全例で20分以内であった. 術後3日目以上生存した豚は18頭中14頭 (77.8%) で, その内で1頭 (7.1%) のみに術後10日目に肝動脈血栓が生じたが, 全体の動脈の開存率は92.9%で解剖所見においても狭窄などは認めなかった. 術後45, 90日まで長期生存させた豚においても成長に伴った問題点はなかった. VCSクリップは肝動脈吻合を容易にし, 吻合時間を短縮させたので, 臨床においても使用すべき有用な器材であると考えられた.
  • 別府 透, 山本 謙一郎, 広田 昌彦, 山口 康雄, 比企 裕, 松田 貞士, 石河 隆敏, 前田 誠士, 藤山 重俊, 小川 道雄
    2000 年 33 巻 2 号 p. 250-254
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内視鏡的経鼻胆管ドレナージ (endoscopic naso-biliary drainage: ENBD) による胆管クーリング下経皮的マイクロ波凝固療法 (PMCT) を試行した. 症例は60歳の女性. 後区域グリソン鞘に近接した20×17mm の高分化型肝細胞癌を認めた. C型肝硬変を合併しており, 臨床病期はII期であった.ENBD チューブから冷却した生理食塩水の注入と吸引を繰り返すことにより胆管をクーリングした.1.6mmの深部針で60W, 30秒凝固の条件で5回のPMCT を試行した. 術後に一過性の高アミラーゼ血症を認めたが, 保存的に治癒した. 治療後の造影CTでは血管損傷を認めることなく, 腫瘍は周囲肝組織を含めて直径30mmの造影効果のない低吸収域となった. 胆管についてはMRCPで経過観察を行っているが, 狭窄や拡張を認めていない. 術後半年の現在, 無再発生存中である.
    本法は肝内グリソン鞘に近接した肝細胞癌治療における新しい選択肢となりうる.
  • 赤木 真治, 竹末 芳生, 横山 隆, 村上 義昭, 今村 祐司, 横山 雄二郎, 金廣 哲也, 大毛 宏喜, 坂下 吉弘, 松浦 雄一郎
    2000 年 33 巻 2 号 p. 255-259
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化器手術後での抗菌剤の腸内細菌叢への影響を検討するため, 胃切除患者7例を対象に術後cefazolin投与 (3g/日, 4日間) し, 前後の糞便中の各種細菌数を算出した. 嫌気性菌総菌数は軽微だが有意 (p<0.05) な減少を示した (前: 10.3±0.34→後: 9.89±0.22 log CFU/g). 菌種別ではBacteroides spp., Eubacterium spp., Lactobacillus spp. (おのおのp<0.01), Veillonella (p<0.05) は有意の低下を, Bifidobacteriumspp. では低下傾向 (p=0.09) を認めた. 嫌気性菌の減少はcefazolinに対する感受性に関係なく同程度減少しており, cefazolinより絶食, 腸蠕動低下, ストレスなど手術の影響が関与したと考えた.好気性菌では菌数に変化なく, Enterococcus, Clostolidium, Pseudomonas aeruginosa, Candidaなどの耐性菌の増加は認めなかった. 以上よりcefazolin術後4日間の予防投与では, 腸内フローラの生態系はほぼ維持されたと推察した. したがって, cefazolinは消化器術後の予防抗菌剤として適切と考えた.
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