日本消化器外科学会雑誌
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33 巻, 6 号
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  • 青木 毅一, 池田 健一郎, 佐藤 信博
    2000 年 33 巻 6 号 p. 693-702
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌患者の経腸栄養 (EN) 中心の術後栄養管理において, 1病日からのtotal parenteral nutrition (TPN) 付加投与が骨格筋あみの酸代謝, 創傷治癒を改善するかを, EN単独管理とTPNとの併用管理の2群で比較した. 22例がentryし, 各群1例ずつdrop outし1群10名ずつで検討した. ENは両群とも3病日より開始増量し, 8病日に30kcal/kgを投与した. EN+TPN群はTPNを1病日に20kcal/kg, 2病日以降はENと併せ30~35kcal/kgを投与した.両群のアミノ酸動員率, 栄養指標, 創傷治癒因子には差はなかった. 5, 7病日の血中尿素窒素と14病日までの窒素排泄量がEN+TPN群で有意に高かった. 以上より, TPN付加投与は骨格筋あみの酸代謝, 創傷治癒, 栄養状態を改善せず, 逆に窒素負荷を惹起し, 食道癌術後には不要と考えられた.
  • 小棚木 均, 佐藤 恵美, 村越 智, 高橋 智和, 飯田 正毅, 今 博, 斎藤 由理, 伊藤 正直, 小山 研二, 石田 秀明
    2000 年 33 巻 6 号 p. 703-708
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    効率的な大腸癌肝転移の術前検査の確立を目的に, 進行大腸癌症例354例 (内, 肝転移例63例) を対象にして, CTとUSの感度や正診率, 肝転移発見の効率や費用を検討した. 肝転移の判定は術後5年の観察で判明したもので行った. 肝転移検出のsensitivity, specificity, accuracyは, CTで65%, 94%, 89%, USで57%, 97%, 91%と, 両者に有意差はなかった. また, CTとUSが共に施行された例では65%, 93%, 88%と, 単独検査に比べて双方を行うことによる診断能の有意な向上はなかった.肝転移例における肝内進展状況の診断能は十分ではなかった. 肝転移例1例発見に要した費用は単純CTで6,298点, 造影CTで20,169点, USで5,773点と, USが安価だった. 大腸癌肝転移の診断能は, CTとUSでほぼ同等であり相補する点も少ないことから双方の検査を行う必要性はなく, cost-benefitの点からUSを選択すべきである.
  • 長谷川 久美, 杉原 健一, 榎本 雅之, 吉永 圭吾
    2000 年 33 巻 6 号 p. 709-715
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌 (閉塞群: 46例) の予後不良である原因を検索し, その治療方針を検討した. 閉塞群は非閉塞性大腸癌 (対照群: 872例) に比較し遠隔転移が多く, 切除率が低く, 術後30日以内の死亡が多く認められた. 閉塞群の切除例 (閉塞・切除群36例) の臨床病理学的因子および予後を, 対照群の中から性別, 年齢, 部位, 深達度, 環周率をmatchingさせて抽出した非閉塞・切除群 (108例) と比較検討した. 閉塞・切除群の腫瘍径は非閉塞・切除群より有意に小さかったが, その他の臨床病理的因子に有意差はなく, 両群の生存率にも有意差を認めなかった. また, 閉塞・治癒切除群においても, 非閉塞・治癒切除群に比較し, 遜色ない生存率を得られた.
    閉塞性大腸癌においても, 切除可能例にたいしては, 積極的な手術が必要と思われ.
  • 宮島 伸宜, 高橋 克行, 山川 達郎
    2000 年 33 巻 6 号 p. 716-720
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術症例に対して67Ga citrateとNavigatorを用いたリンパ節転移判定を試みた. まず, 開腹下に行った大腸癌切除症例10例において, 実際のリンパ節の測定値とバックグラウンドの測定値の比 (測定比) が2.0をcut off値として転移の有無を検討したところ, 陽性リンパ節は100%, 陰性リンパ節は97.3%の精度で判定可能であった. 切除標本からの結果を基に腹腔鏡下に術中リンパ節転移の有無を検索した10例においても, 全例で転移有無の判定が可能であった. 以上の結果より, 67Ga citrateとNavigatorを用いたリンパ節転移判定は非常に有効な手段であり, ことに触知感覚のない腹腔鏡下手術においては手術術式を決定する上で短時間に, 簡便に施行することのできる優れた方法と考えられた.
  • 秦 怜志, 天野 定雄, 桜井 健一, 藤井 宏, 朴 英智, 加納 久雄, 大井田 尚継, 三宅 洋, 福澤 正洋, 杉谷 雅彦
    2000 年 33 巻 6 号 p. 721-724
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性. 1997年8月26日, Mt-Ltの長径13cm, 2型食道癌に対し右開胸開腹食道亜全摘, 2領域リンパ節郭清 (D2), 胸骨後頸部食道胃管吻合術を施行し, 病理組織所見では低分化型扁平上皮癌, pT3N2M0→pStage IIIであった. 1998年4月にSCC値の上昇および腹部CTにて左副腎に直径5.5cmの低吸収域を認め, 画像上単独副腎転移と診断し, 食道手術後10か月に左副腎摘出術を施行した. 腫瘍は弾性硬で大きさは6.5×5.5×4.0cmで, その割面は白色充実性で病理組織学的に食道癌組織所見と類似し副腎転移と診断された. 術後1年2か月の現在再発の徴候なく社会復帰している. 食道癌切除後の副腎転移は切除不能のことが多くその予後は著しく不良であり, 切除しえた本邦報告例は自検例が2例目であった. 副腎以外に転移巣が認められず切除可能な場合には積極的な切除の意義があると考えられた.
  • 上原 圭介, 長谷川 洋, 永井 英雅, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 伊神 剛, 太平 周作, 雨宮 剛, 高橋 祐
    2000 年 33 巻 6 号 p. 725-729
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 主訴は悪心嘔吐. 近医にて十二指腸通過障害を指摘され当院に入院し, 上部消化管造影検査では十二指腸球部に圧排像を認め, CT・MRIでは十二指腸に近接する直径約5cmの腫瘤像を認めた. 十二指腸球部の粘膜下腫瘍と診断し, 幽門輪の一部を含めた十二指腸部分切除術を施行した. 切除標本の免疫組織化学的検索ではc-kit, CD34が陽性, 筋原性マーカーのsmoothmuscle-actin (SMA), 神経原性マーカーのS-100蛋白で陰性であった. 以上より, gastrointestinal stromaltumor (GIST), uncommitted typeと診断した.
    GISTは消化器外科の分野でも普及しつつある概念であり, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 市原 利晃, 斉藤 孝, 鈴木 克彦
    2000 年 33 巻 6 号 p. 730-734
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性. 上腹部痛を主訴に近医受診, 腹部超音波検査にて胆嚢癌が疑われ, 精査加療目的で当院入院した. 入院時検査でAFP 336ng/ml, CEA 32ng/ml と上昇していた. 入院時の腹部超音波検査, 腹部CT検査, 腹部MRI検査にて胆嚢壁に不整な肥厚を認めた. 血管造影では胆嚢腫瘍に一致するドーナツ状の造影を認めた. 以上より胆嚢癌の診断で肝切除 (S4a, S5, S6とS8の部分切除), 胆管空腸吻合術を施行した. 切除標本では胆嚢に結節型7×5×5cm 大の腫瘍を認め, 腫瘍は漿膜面を越え, 肝床, 胆管側へ浸潤していた. 病理組織所見から中分化型の胆嚢癌と診断された. 術後42日目にはAFP 4ng/ml, CEA 1.4ng/mlと減少していた. 腫瘍マーカーの発現は局在が違っていた. AFPおよびCEA 産生性胆嚢癌の報告はまれであり, 検索した範囲で本邦では20例をみるにすぎない. そのほとんどが肝転移を伴っていた.
  • 金子 隆幸, 杉原 重哲, 小林 広典, 原田 洋明, 生田 義明, 江上 哲弘, 本郷 弘昭
    2000 年 33 巻 6 号 p. 735-739
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性. 9年前, 食道癌と肺癌に対して, 右開胸開腹による胸部食道亜全摘と右肺上葉切除を行い, 胸骨後ルートに胃管を挙上し, 頸部吻合した. 今回, 検診目的の腹部CTにて, 膵頭部に嚢胞性腫瘤を認め, 膵管内乳頭腺癌の診断にて, 膵頭十二指腸切除術を行った. この際, 胃管の血流保持のため, 右胃大網動脈を温存した. 術後膵空腸吻合部から膵液瘻を生じたが保存的治療で軽快退院し, 現在健在である. 食道癌, 肺癌, 膵癌の三重複癌の手術例の報告は今までにない. これらの手術においては, 過大な手術侵襲や術後合併症が問題となり, また, 消化管再建における臓器温存の血行維持と郭清範囲との関係において配慮が必要であった. 今後重複癌は増加すると思われ, 重複癌を念頭においてfollow upする必要がある.
  • 西岡 将規, 石川 正志, 花城 徳一, 菊辻 徹, 柏木 豊, 三木 久嗣
    2000 年 33 巻 6 号 p. 740-744
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    開口障害の原因となった左下顎部の巨大デスモイド腫瘤を摘出し, 術後にsulindacを経口投与して経過良好なガードナー症候群の1例を経験したので報告する.
    症例は14歳の女性. 左下顎部の腫瘤により開口障害が出現し来院. MRI検査では左下顎部にT1で低信号, T2でやや高信号の巨大な腫瘤を認め, 咽頭および舌根部は圧排されていた. 大腸内視鏡検査ではポリープ5個のみ認めた. 腫瘤摘出術を施行したが咽頭深部で腫瘤が残存したため術後sulindacを投与した. 開口障害は改善し, 経過は良好である.
    ガードナー症候群では大腸癌, 十二指腸腫瘍, デスモイド腫瘍が大きな死因をしめるが, デスモイド腫瘍は術後の腹壁, 腹腔内に生じることが多く, 手術既往のない下顎部発症はまれである. sulindacによる大腸腺腫の減少, デスモイド腫瘍の縮小が報告されており, 腫瘤摘出術後のsulindac投与により予後, QOLが向上する可能性があると思われた.
  • 白子 隆志, 横尾 直樹, 北角 泰人, 東 久弥, 福井 貴巳, 田中 千弘, 吉田 隆浩, 秦 浩一郎, 浦 克明, 岡本 清尚
    2000 年 33 巻 6 号 p. 745-749
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性. 主訴は成人病検診便潜血陽性. 1998年11月の成人病検診で, 便潜血陽性を指摘され, 注腸造影X線検査・大腸内視鏡検査で, 虫垂は確認できず, 盲腸の有茎性ポリープ (生検で腺管腺腫, Group III) と診断された. また, 腹部CT検査で盲腸内の造影効果のある腫瘤が確認された. 以上より, 悪性腫瘍を考慮してリンパ節郭清を伴う回盲部切除術を施行した. 切除標本では約40mmの腫瘍とともに虫垂が盲腸内に重積しており, 還納できなかった. 病理組織学的検査で, 腫瘍は虫垂の腺管腺腫と診断された. 虫垂良性腫瘍は極めてまれな疾患で, 本邦報告例は自験例を含め14例と少なく, 画像診断上・形態学的にも興味ある1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 竹山 廣光, 大原 永子, 赤毛 義実, 田中 守嗣, 福井 拓治, 早川 哲史, 毛利 紀章, 山本 稔, 佐藤 幹則, 真辺 忠夫
    2000 年 33 巻 6 号 p. 750-754
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の男性. 腹痛を主訴に来院. 注腸X線, 内視鏡検査にて盲腸底部に大小不同の結節集簇性病変と, 回盲弁直上およびその2cm肛門側の上行結腸, 直腸にそれぞれ2mm, 10mm, 5mmの粘膜下腫瘍 (SMT) を認めた. 直腸のSMTに対してはポリペクトミーを施行し, 盲腸の結節集簇性病変と上行結腸の2か所のSMTに対して回盲部切除を施行した. 3個のSMT はいずれも粘膜下層に存在し, 好酸性顆粒をもつ多型細胞が胞巣状に増生しており顆粒細胞腫と診断された. 免疫組織学的染色では, S-100蛋白陽性, NSE (neuron-specific-enolase) 陽性, desmin陰性であり神経原性と考えられた. 欧米では悪性例も報告されており, 確実な切除が重要である. 本症例においては7年を経過した現在, 再発を認めていない. 大腸における多発性の顆粒細胞腫は過去2例を認めるのみで極めてまれである.
  • 伊神 剛, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 太平 周作, 高橋 祐, 森 俊治, 上原 圭介, 宮崎 晋
    2000 年 33 巻 6 号 p. 755-759
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は26歳の女性で, 腹痛を契機に精査でRbに発生した直腸カルチノイドと診断した. 超音波内視鏡で, 深達度smと診断し, 周囲リンパ節の腫脹を1個認めた. 患者の希望により, 経仙骨的腫瘍摘出術を施行した. 摘出した標本は腫瘍径12×12mm, 壁深達度sm の直腸カルチノイドであった. リンパ節は3個中1個に転移を認めた. 追加リンパ節郭清が必要と考えたが, 患者の希望により追加切除は施行しなかった. 術後経過は良好で, 結果的に術後7年間無再発生存中である.
    本邦における腫瘍径20mm未満かつ筋層非浸潤の直腸カルチノイドのリンパ節転移例は, 自検例を含めて12例ときわめてまれで, 若干の文献的考察を含めて報告する.
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