日本消化器外科学会雑誌
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33 巻, 8 号
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  • 福永 哲, 木所 昭夫, 福永 正氣, 永仮 邦彦
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1445-1449
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    早期胃癌症例に対するD1+αリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除術の手術侵襲度を, メディエータの推移から, 開腹による幽門側胃切除術と比較検討した. 対象は各群10例ずつで, Interleukin-6 (IL-6), Interleukin-10(IL-10)と好中球elastase(PMN-E)を術前から術後第3病日まで測定した. 結果, IL-6, IL-10の推移の比較では, 両群ともに術後軽度の上昇を示し群間で違いはみられなかった (IL-6: p=0.1, IL-10: p=0.78). PMN-E の推移の比較では, 腹腔鏡下幽門側胃切除術では術後の上昇が少なく, 開腹下幽門側胃切除術では継続的な上昇がみられその推移に違いがみられた (p=0.04).以上よりIL-6, IL-10は両群ともに上昇が少なく差が見られなかったが, PMN-E の推移の違いから腹腔鏡下幽門側胃切除術の開腹幽門側胃切除に対する低侵襲性が示唆された.
  • 谷光 利昭, 稲田 高男, 五十嵐 誠治, 堀口 潤, 尾形 佳郎
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1450-1454
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1987から98年までの12年間における多発早期胃癌症例83例および同期間内に初回手術が施行されfollow up中に残胃癌が診断された早期胃癌11例の臨床病理学的検討より, 早期胃癌術後における残胃follow upの意義を検討した. 多発胃癌症例の85.5%は分化型腺癌症例であり, 副病巣も94.4%が分化型症例であった. 副病巣における術前診断率は28.9%に過ぎず, 大部分の症例は術後病理検索によって診断された. 残胃癌11例の初回手術から診断までの平均期間は4年, 全例10年以内であり, 初回手術時の遺残癌と考えられた. したがって早期胃癌, 特に分化型腺癌症例の術後には遺残した微小病変の存在を念頭に置き詳細な残胃の観察が重要である.
  • 梨本 篤, 諸田 哲也, 藪崎 裕, 土屋 嘉昭, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1455-1460
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌術後イレウスの実態を明らかにするとともに, 縮小手術による術後イレウスの予防効果を検討した. 対象は1996年12月までの10年間に経験した初発胃癌切除2,314例で, 術後イレウスは入院治療を必要としたものとした. 術後イレウスは121例(5.2%)で, 60例に手術が施行された. 腸閉塞発生回数は平均1.8(1~10)回であり, 胃癌手術から腸閉塞手術までは中央値181日, 1年以内59.0%, 3年以内85.2%であった. イレウスに対する術式は, 癒着剥離術63.4%, 小腸部分切除術33.3%, が主体であった.術後イレウスの発生率は幽門側切除5.1%, 全摘6.2%, 噴門側切除9.1%, 部分切除0%であった. リンパ節郭清D1以下群はD2以上群より低率であり, 大網温存群は大網切除群より低率であった. 一方, 幽門側切除早期癌の遠隔成績は, 大網切除の有無, リンパ節郭清度別に差を認めなかった. 早期胃癌に対しては可及的に, リンパ節郭清度の縮小や大網温存を図ることが, 術後イレウスの減少や術後のQOL 向上に寄与するものと思われた.
  • 仲地 厚, 下地 英明, 宮里 浩, 伊佐 勉, 白石 祐之, 草野 敏臣, 武藤 良弘
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1461-1467
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化管平滑筋腫瘍48例を対象として予後判定因子を得るため無再発群35例と再発群13例に分け検討した. 再発群で腫瘍径10.9±5.3cm(無再発群: 4.5±3.5cm), 核分裂数1.64±1.38 (0.24±0.67), MIB-1細胞数150.7±78.4個 (32.9±41.4個), MIB-1指数5.29±2.72%(1.21±1.38%)で無再発群に比較し有意に高値であった. 核DNA量計測でaneuploidは再発群 (71.4%)が無再発群 (40.9%)より多い傾向であった. p53蛋白陽性は4 例ですべて再発群であった. 単変量解析ではMIB-1細胞数とMIB-1指数が最大の予後規定因子であった. MIB-1指数が5以上かMIB-1細胞数が160以上でp53蛋白陽性で全例再発していた. カットオフ値の設定を試みると境界領域に含まれる症例が散見され, カットオフ値にある程度の幅をもたせ境界領域に含まれる症例の適切な経過観察が必要と思われた.
  • 西野 佳浩, 広橋 一裕, 首藤 太一, 井上 清俊, 葛城 邦浩, 田中 宏, 久保 正二, 木下 博明
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1468-1472
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれが切除した肝細胞癌562例のうち1998年7月までに臨床的に肺転移を来たした23例を肺転移巣切除8例 (肺切群) と非切除15例 (非肺切群) に分け各群の臨床像を比較した.
    肺転移時に残肝再発を併存した症例は肺切群, 非肺切群でそれぞれ5例, 10例であった. このうち非肺切群3例には追加治療を行いえなかった. 肺転移までの期間, 肺転移巣の局在に差はなかったが, その個数は肺切群では全例countableで, 非肺切群では3例がuncountableであった.
    肝切除後累積生存率および肺転移後累積生存率とも肺切群が良好であった (p=0.0447, p=0.0020).また, 非肺切群死亡11例中3例が肺転移に起因する癌死であったが, 肺切群死亡4例の死因は肺転移によるものでなかった.
    肺転移巣数がcountableで, 残肝再発の制御されている肝癌切除後肺転移例に対して肺切除を行うべきであると考える.
  • 佐々部 一, 恩田 昌彦, 田中 宣威, 横山 滋彦
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1473-1482
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    癒着性イレウスにおける閉塞程度の定量化を目的として, CO2ガスを用いて閉塞部口側の小腸内圧を測定する方法を考案し, これを選択的小腸内圧 (SIPS) として提唱しその意義について検討した.対象はlong tubeを挿入した50例, 測定は第3病日以降1~3回施行した. また, 全例で選択的小腸造影 (SBE) を施行した. SIPSはその圧曲線よりI~III型の圧波形に分類された. 平均圧を測定時間内の圧曲線を積分し時間平均として求め, 閉塞程度を評価する指標とした. 平均圧は非閉塞像5.2±2.5cmH2O(mean±SD), 屈曲像6.8±3.9cmH2O, 狭窄像13.2±7.4cmH2O, 完全閉塞像14.9±7.1cmH2Oと定量的に閉塞の程度を把握できた. 解除群では圧波形はI型, 手術群ではIII型を示し, 平均圧ともそれぞれ6.9±44cmH2O, 15.5±7.0cmH2Oと有意差を認めた (p<0.01). SIPSを経時的に測定し圧波形, 平均圧を検討することは癒着性イレウスの治療方針決定の補助診断として意義のあるものと考えられた
  • 鈴木 修司, 林 恒男, 田中 精一, 今里 雅之, 武雄 康悦, 梁取 絵美子, 木村 政人, 鈴木 衛, 羽生 富士夫, 笠島 武
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1483-1487
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性. 吐血を主訴に近医入院. 入院後, 消化管造影検査にて下部食道の狭窄を指摘され, 食道腫瘍を疑われ当院転院となった. 消化管造影検査にて下部食道に全周性狭窄と潰瘍病変を認めた. また, 内視鏡検査にて多発性食道潰瘍瘢痕と門歯列より約35cmでの全周性狭窄を認めた. CT検査でも同部位での全周性壁肥厚を認めた. 通過障害が, 高度となったため, 食道切除を施行した.標本では潰瘍性病変と全周性壁肥厚像を認め, 病理検査では線維芽細胞の増生像, 反応性血管増生像, 異型のない形質細胞, 小型リンパ球, 好酸球, 多核白血球などの浸潤像より, 食道のinflammatorypseudotumor (IPT)と診断された. 術後経過は良好であった. 食道に発生したIPTはこれまで極めてまれとされている. 我々は進行性に食道狭窄を呈したIPTを経験したので若干の文献的考察を含め報告した.
  • 庄司 勝, 豊野 充, 田村 真明, 西 功太郎, 外田 洋孝, 後藤 智司, 内田 孝
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1488-1492
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性. 胸部食道癌の診断で, 胸腔鏡下食道切除術を行った. 術後, 縫合不全から, 胃管肺瘻を形成した. 8か月に及ぶ難治性瘻孔であったが, 気管支鏡下のフィブリン糊充填に先だって, 血管塞栓用コイルを瘻孔内に留置したところ, 瘻孔は閉鎖した. 本法についての報告はなく, 難治性瘻孔に対する, 有効な非観血的治療法と考えられた.
  • 町田 彰男, 村上 雅彦, 新谷 隆, 李 雨元, 草野 満夫, 大池 信之, 諸星 利男
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1493-1497
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    高ガストリン血症, A型胃炎を伴った多発性胃カルチノイドの1例を経験した. 症例は49歳の女性.上部消化管内視鏡検査にて胃体部に多発する小隆起性病変を認め, 生検にてカルチノイドと診断された. 明らかなカルチノイド症状は認めず, 血中ガストリンは2,670pg/mlと高値を示した. 多発性胃カルチノイドの診断で内視鏡切除施行し, 病理学的検索で病巣が粘膜下層まで浸潤していたので, 胃全摘・リンパ節郭清 (D1+α)を行った. 切除標本上A型胃炎を伴った多発するECMとカルチノイド(sm, n0)が確認された. 術後血中ガストリン値は正常となった. 高ガストリン血症, A型胃炎を伴った多発性胃カルチノイドに対する治療は, 微小病変でもリンパ節転移や遠隔転移がみられること, 残胃にカルチノイドが遺残することを考慮すると, リンパ節郭清を伴った胃全摘術を施行すべきと考えられた.
  • 榊原 年宏, 坂本 隆, 斉藤 光和, 山崎 一麿, 井原 祐治, 田内 克典, 清水 哲朗, 塚田 一博, 岡田 英吉
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1498-1502
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性. 肝嚢胞, 脂肪肝の経過観察目的で行った腹部CTで, 胃体上部大彎の胃壁外に4cm大の充実性腫瘍を指摘された. 胃内視鏡検査ならびに超音波内視鏡検査にて胃固有筋層と連続する平滑筋腫と診断した. さらに, 入院時の胃内視鏡検査で認められた胃壁圧排所見が, 術直前の再検査で消失していたことから有茎性の腫瘍であると判断し, 手術は腹腔鏡下に胃楔状切除を行った. 術後病理組織学的に胃平滑筋芽細胞腫, 免疫組織学的には狭義のstromal tumorに該当する腫瘍と診断された. 術後2年再発なく生存中である. 本腫瘍は約30%が胃壁外性に発育するとされている. 術前診断率が低く, 特に有茎性に発育することはまれであり, その術前診断, 術式および悪性度診断の問題点を中心に文献的考察を加えて報告した.
  • 森田 眞照, 石橋 孝嗣, 原 均, 奥田 準二, 土肥 健彦, 西口 完二, 岩本 充彦, 井上 仁, 谷川 允彦
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1503-1506
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝血管筋脂肪腫を術前に診断しえ, 腹腔鏡下肝切除を施行した1例を経験したので報告する. 症例は35歳の男性で, 検診時の超音波検査で肝外側区域に直径約2cm大の増大傾向のある高エコー陰影を指摘され来院. CT検査で不均一にエンハンスされる脂肪成分を含む腫瘍を認め, MRI検査でもT1強調画像のin phaseで高信号の部分がout of phaseで低下したこと, T2強調画像で高信号を認めたことなどより肝血管筋脂肪腫を疑った. 手術は腹腔鏡下にボール型とscissor typeの超音波振動メスを使用して肝部分切除を施行した. 摘出標本は直径2cm大の黄褐色の腫瘤で, 病理学的にHMB45染色などで肝血管筋脂肪腫と診断された. 術後1日目から歩行可能で鎮痛剤はほとんど必要とせず, 術後8日目に退院した. 腹腔鏡下肝切除は症例を選べば, 低侵襲である点で良い手術術式と考えられた.
  • 横井 佳博, 蜂谷 貴, 倉地 清隆, 岡本 和哉, 土屋 泰夫, 奥村 拓也, 鈴木 昌八, 今野 弘之, 中村 達
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1507-1511
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    従来, 肝静脈を介して右心房にまで進展した肝癌は, 癌の末期的病変として切除適応外と考えられていた. しかし, 右心房腫瘍塞栓は右心不全および肺塞栓により, 突然死を引き起こす可能性があることから, 可及的に摘除を必要とする病態である. 症例は54歳の男性. 肝左葉を主座とし, 骨転移を伴う進行肝癌であったが, CTで中および左肝静脈より, 下大静脈および右心房に腫瘍栓を形成していることが発見された. 拡大肝左葉切除および体外循環下に心房腫瘍栓を摘除した. 術後33日目に退院し, 術後12か月経過した現在も生存中である. 肝細胞癌による右心房腫瘍栓の切除は, 自験例を含め, 本邦で18例が論文報告されている. 肝原発巣を含めた根治的腫瘍摘除が行われた13例中, 3例は2 年以上生存していることから, 心房に浸潤した進行肝癌に対しても, 肝内, 肝外転移のコントロールが可能であれば, 切除が推奨される.
  • 江崎 稔, 千木良 晴ひこ, 加藤 岳人, 柴田 佳久, 尾上 重巳, 杢野 泰司, 吉田 克嗣, 神谷 諭, 安部 哲也, 前多 松喜
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1512-1515
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性. 進行直腸癌に対する低位前方切除術の5か月後に, 経過観察のため行った腹部超音波検査で肝外側区に腫瘍が発見された. Computed tomography(以下CT), 血管造影検査を行い, 門脈左枝に腫瘍栓を伴った直腸癌の肝転移と診断した. 肝左葉切除を施行した. 切除標本では, 肝外側区域および内側区域の肝実質に多発性腫瘤があり, 門脈外側前後枝を充満し先端が門脈左枝まで達する腫瘍栓を認めた. 組織学的に直腸癌からの転移性病変であることが確認された. 患者は肝切除2年2か月後残肝再発を認め, 治療するも3年10か月後癌死した. 転移性肝癌における門脈内腫瘍栓の頻度は約10%と低率で, 本症例のように1次分枝まで進展する症例はまれである. しかし, 腫瘍栓の存在は外科治療上重要であり, 正確な術前診断が必要である.
  • 杉原 重哲, 上村 晋一, 小林 広典, 生田 義明, 金子 隆幸, 江上 哲弘
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1516-1519
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の男性で, 上腹部痛を主訴に来院した. 腹部超音波検査で胆嚢頸部および体部に約8mm大の隆起性病変を認めた. 腹部CT検査では胆嚢に造影効果を有する隆起性病変を認めた. ERCPでは胆嚢は造影されなかった. 胆嚢癌も否定できない胆嚢ポリープの診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. 切除標本では胆嚢頸部から体部にかけて8か所に2~5mm大の黒色のpolypoid lesionを認め, 病理組織診断では悪性黒色腫であった. 早急に全身検索を行ったところ頭皮に15mm大の悪性黒色腫を認め, 胆嚢病変は転移巣と判断した. また, 頭部CT上, 脳にも5mm大の転移巣を認めた. Cisplatindecarbazine-vincristine併用化学療法を施行したが, 10か月後死亡した.
  • 松久 忠史, 秦 温信, 松岡 伸一, 安念 和哉, 植村 一仁, 菊地 弘展, 佐野 文男
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1520-1524
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    初回手術時には原発巣が不明で, 約6か月後の再手術時に小腸原発と判明した腹膜偽粘液腫の1例を経験したので報告する. 症例は60歳の男性. 右側腹部痛と発熱を主訴に当院を受診し上行結腸の内側に腹膜刺激症状をみとめたため当科に入院した. 血液検査では高度の炎症所見, CTでは上行結腸の内側に腫瘤像をみとめた. 腹腔内膿瘍を疑い緊急手術(結腸右半切除術)を施行, 腸間膜に主座を置くゼリー状物質と膿瘍が存在し, 一部に粘液産生性の高分化腺癌をみとめ, 腹膜偽粘液腫の診断を得たが, 原発巣は不明であった. 5か月後, CTで右腸骨窩に腫瘤像をみとめ再発の診断のもと再手術を施行, 回腸に腫瘍が存在し病理組織学的に初回病巣の原発巣と判明した. 腹膜偽粘液腫において原発巣が不明な場合には, 小腸原発も念頭に置いた慎重な検索が必要である.
  • 加藤 直人, 鈴木 弘治, 田中 淳一, 利野 靖, 今田 敏夫, 天野 富薫, 高梨 吉則
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1525-1528
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性. 発熱, 腹痛を主訴に来院, 腹部全体に反跳痛, 筋性防御が認められ, 汎発性腹膜炎の診断にて開腹した. 手術所見では漿液性腹水少量, 小腸間膜の肥厚, 発赤を認めるのみであった. 腸間膜脂肪織炎を疑い一部生検を施行し, 閉腹した. 術後39℃の発熱が8日目まで持続したが, γ-globulin投与したところ平熱化し, 炎症は鎮静化した. 病理組織所見では, 変性脂肪細胞, 炎症細胞浸潤, 微小膿瘍が認められ, 脂肪織炎と診断した. 腹水細菌培養は陰性であった.
    腸間膜脂肪織炎は原因不明の比較的稀な疾患であり, その臨床像は多彩なため診断は困難で確立した治療法はない. 今回, 我々はγ-globulin投与が奏効したと思われる1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 加藤 達哉, 児嶋 哲文, 清水 鉄也, 北城 秀司, 小西 和哉, 山吹 匠, 奥芝 俊一, 加藤 紘之, 佐藤 英俊
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1529-1533
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は23歳の女性. 右下腹部痛, 発熱を主訴に当科受診. 典型的な急性虫垂炎の所見を呈していたため, 腹腔鏡下に虫垂切除術を施行した. 虫垂の病理診断はAcute on chronic appendicitisと報告された. しかし, 術後も微熱, 右下腹部痛, CRP高値の持続がみられ諸検査にてCrohn病と診断された.その後, 上行, 横行結腸の狭窄が高度となりイレウス症状も出現したため結腸右半切除を施行し, その切除標本において病理学的にCrohn病が確認された. 虫垂の病理所見を再検討したところ虫垂根部に裂溝に伴う限局性急性炎症像がみられ, その深層に巨細胞を伴う非乾酪性肉芽腫を認めたことから, Crohn病による急性化膿性炎症と最終診断された. 本症例のように急性虫垂炎の原因としてCrohn病によるものがありえるため, 鑑別診断の1つとして本症を念頭に置くべきであり, また虫垂切除後の発熱, 腹痛, 炎症反応の持続がみられた場合は早期に本症を疑った精査が重要である.
  • 作左部 大, 吉岡 浩, 丹羽 誠, 小棚木 均, 浅沼 義博, 杉田 暁大
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1534-1538
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    褐色細胞腫と消化器癌の合併例の報告はまれである. 今回, われわれは直腸癌に合併した無症候性異所性褐色細胞腫の1例を経験したので報告する. 症例は60歳の女性. 下腹部痛, 便通異常のため受診し, 大腸内視鏡検査, 注腸造影検査で直腸癌と診断された. 術前の腹部CT検査で下腸間膜動脈根部近傍の大動脈周囲に腫瘍を認め, リンパ節転移と診断した. 術中, 大動脈周囲の腫瘍摘出時に著しい高血圧と摘出後の血圧低下を認めた. 術後の病理組織学的検査で直腸癌と異所性褐色細胞腫と診断された. 褐色細胞腫は術前および術中に適切な血圧管理および輸液療法を行わないと危険であり, 時に致命的となる. 直腸癌にともなう大動脈周囲腫瘍も認めてもリンパ節転移とはかぎらず, その腫瘍の大きさや部位, 第1群リンパ節腫脹の有無などからその他の原因や疾患も考慮する必要があると考えられた.
  • 津川 猛士, 亀山 雅男, 村田 幸平, 大東 弘明, 平塚 正弘, 佐々木 洋, 甲 利幸, 石川 治, 今岡 真義, 春日井 務
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1539-1543
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    子宮体部から大腸への転移は, 自験例を含め本邦報告2例とまれであり, 今回, 子宮体癌の上行結腸転移に, 悪性リンパ腫を合併した1切除例を経験したので報告する. 症例は, 58歳の女性. 子宮体癌 (高分化腺癌) にて準広範子宮全摘術施行. 2年8か月後に腟断端再発をきたし, CDDP 120mg, CPA1,000mgの投与を3クール, 骨盤内に総量60Gyの放射線照射を行った. 1か月後右上腹部痛出現, 上行結腸に径4cm大の腫瘤を認め, 結腸右半切除 (D3郭清) 施行. 迅速組織診にて, 骨盤腔内に子宮体癌の再燃を確認, 一方, 結腸切除標本における病巣の主座は粘膜下層にあり, 組織像も酷似しており子宮体癌の大腸転移と診断した. また, リンパ節の迅速組織診にて悪性リンパ腫の所見を得た. 現在, 再燃傾向なく生存中. 放射線や化学療法が奏効しやすい子宮癌の術後には, 造血器腫瘍も念頭に置いたフォローが望まれる.
  • 岩佐 和典, 斉藤 貢, 北村 秀夫, 三輪 晃一
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1544-1548
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜に生じた異常裂孔に起因する内ヘルニアは極めてまれで, 本邦ではこれまで50例の報告しかない. 今回, 我々は異常裂孔に腸管が嵌頓し, イレウスとなった1例を経験したので報告する. 症例は開腹手術の既往がない44歳の女性で, 腹痛, 嘔吐を認め来院, イレウスと診断され入院した. CTでは子宮の左側に拡大した腸管がみられたが確定診断できず, 保存的に治療を行った. 第3病日に疼痛が増強したため, 原因不明のイレウスとして手術を施行したところ, 左子宮広間膜に異常裂孔が存在し, 回盲弁から80cm口側の回腸が嵌頓していた. このため25cm長の壊死腸管を切除し, 異常裂孔を閉鎖した. 本症は疾患の知識がないと術前に確定診断することは困難であるが, CTが診断の有力な手段となると考えられた. また, 開腹術の既往がないイレウス症例には, 子宮広間膜の異常裂孔等に起因する内ヘルニアを鑑別診断に加える必要があると考えられた.
  • 軽部 友明, 阿部 恭久, 西郷 健一, 青山 博道, 平澤 博之, 落合 武徳, 奥山 和明
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1549-1553
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    長時間の砕石位によりcrush syndromeとなった1例を経験した. 症例は66歳の男性, 1995年, 直腸癌に対し低位前方切除術施行, 1998年8月3日直腸癌骨盤内再発により腹会陰式直腸切断術を施行. 手術開始より砕石位とし, 会陰部操作の際下肢の屈曲を強化, その1時間後より血圧低下, 脈拍上昇をきたした. 手術時間は14時間33分 (出血量4,390g). 手術終了より数時間後に下肢の変色に気づき, 乏尿を認め血清Cre, K値は上昇し続けた為, 持続的血液濾過透析を開始, 第22病日に透析を離脱, 全身状態が改善した. 腓骨神経麻痺が残り現在は杖歩行可能である. 文献的検索では砕石位によるcompartment syndromeのうち筋膜切開施行29例中, 腎不全発症率は0~20%と低率であるが, 神経麻痺は75%以上に認めた. 砕石位手術の際は, crush syndromeを念頭にいれ, 砕石位は必要時のみに留め, 予防に努めることが重要であると思われた.
  • 生田 真一, 初瀬 一夫, 川原林 伸昭, 相原 司, 望月 英隆
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1554-1558
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は透析歴10年の48歳の男性. 近医で直腸癌を疑われ当科紹介入院となった. 術前検査中に黄疸が出現, 精査で肝門部胆管・直腸同時性重複癌と診断された. 1998年8月6日, 拡大肝右葉・尾状葉切除, 胆管切除, 左肝管空腸Roux-en-Y吻合術を施行した. 術前3日間は連日透析を施行し, 輸血により貧血を補正した. 術中出血量は2,950ml, 尿量は0ml, 術中輸液は1号液と5%ブドウ糖液で維持し, 濃厚赤血球6単位, 新鮮凍結血漿(FFP)18単位を輸血した. 術後輸液は50%ブドウ糖液とFFPを中心にGI療法を併用して1日1,500ml前後としたが, 心不全, 肝不全徴候は認めず血清K値は正常範囲で経過した. 術後透析は48時間後から抗凝固剤にフサン®を用いて再開したが出血傾向は認めなかった. 術後17週目に直腸癌に対しHartmann手術を施行した. 慢性血液透析患者においても周術期管理に留意すれば, 広範囲肝切除などの高度侵襲の手術も重大な合併症なく施行しうると思われた.
  • 品川 長夫, 真下 啓二, 岩井 重富, 横山 隆, 竹山 廣光
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1559-1563
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    外科医を対象としたアンケート調査(回答率: 66.2%)の結果, 術後感染予防については以下のようなコンセンサスが得られていると考えられた. 感染予防薬の選択基準は, (1) 手術時に汚染すると予想される細菌 (ブドウ球菌属, 大腸菌, K. pneumoniae, B. fragilis group)に対して抗菌力を有する薬剤を選ぶ, (2) 汚染菌の発育阻止可能な濃度が目的部位で達成される薬剤を選ぶ, (3) 重篤な副作用が考えられる薬剤であってはならない, (4) 皮膚常在菌叢や腸管内常在菌叢などの生体環境を乱さない薬剤を選ぶ, (5) 術後感染症の治療薬として新しい薬剤は残しておく, などであり, 代表的な予防薬はペニシリン薬や第1~2世代セフェム薬である. 手術中有効濃度を保つように配慮し, 無菌手術では2日以内, 準無菌手術では4日以内とし, 感染が疑われる場合には, 早期治療として予防薬を中止し, 予防薬とは交差耐性を持たない薬剤に変更するのが原則である.
  • 糸山 進次, 石原 省
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1564-1565
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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