日本消化器外科学会雑誌
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34 巻, 10 号
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  • 小林 理, 金成 正浩, 吉川 貴己, 円谷 彰, 西連寺 意勲, 本橋 久彦
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1501-1505
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌再発例の病態は多様であり, 再発後の予後因子は明確ではない. そこで胃癌再発例に対する再発腫瘍摘除の予後因子としての意義を再発後生存期間から検討した. 対象は1986年から2000年9月再発した202例中に再手術で再発腫瘍を摘除しえた18例 (8.9%) である. 再手術の目的は根治手術 (根治群) 9例, 確定診断 (診断群) 5例, 症状改善 (QOL群) 4例に分類された. 切除臓器は卵巣が4例, 結腸・直腸が3例, 肝が3例, リンパ節が2例, 局所が2例, 腹膜, 副腎, 脳, 肺が各1例であった. 手術死亡はなかった. 対象例の無病期間は111から2,228日で平均は根治群が934日, 診断群が1,038日, QOL群が1,001日と有意差はなかった. 再発時のperformance status (PS) はPS0が11例, PS1が7例. 血清CEAかCA19-9の異常値から再発診断した症例は6例. 摘除術後の再々発は17例で, 部位は摘除臓器以外が11例で多臓器再発を6例に認めた. 転帰は肝切除の1例が5年以上無再発生存中で, 17例は3年以内に死亡し, 2年以上生存は卵巣切除の4例であった. 再発後のmedian survivalは根治群が15.6か月, 診断群が14.4か月, QOL群が11.6か月であった. QOL例は根治例 (p=0.0399), 診断例よりも有意に短期間であったが (p=0.0351), 根治例と診断例に有意差はなかった (p=0.8467). 胃癌の再発診断において約1割の再摘除可能例が存在し, これらの病変は早期発見によって再発後生存期間の延長が図れると思われた.
  • 初瀬 一夫, 上野 秀樹, 相原 司, 大渕 康弘, 川原林 伸昭, 渡辺 覚文, 石川 啓一, 橋口 陽二郎, 望月 英隆
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1506-1511
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 大腸癌肝転移切除後の予後規定因子から肝切除に意義ある症例を明らかにすること. 方法: 大腸癌肝転移切除92例を対象とし, 予後因子として, 1. 原発巣因子; 存在部位, 主組織型, 壁深達度, リンパ節転移, 簇出, 2. 肝転移巣因子: 転移時期, 転移個数, 存在部位, 最大径, 3. 治療因子: 切除術式, 予防的肝動注をとりあげ予後を規定する因子を解析した. つぎにその予後規定因子をもとに階層化モデルを作成しその予後を検討した. 結果: 単変量解析では簇出, 壁深達度, リンパ節転移, 肝転移時期, 肝転移個数, 予防的肝動注が有意であった. Stepwise変数選択法では簇出2, 3 (簇出陽性), 壁深達度se (a2) 以深 (壁深達度陽性), 同時性肝転移 (肝転移時期陽性) の3因子が独立して予後を不良にしていた. これらをふまえA群: 3因子陰性or簇出以外1因子陽性 (39例), B群: 簇出陽性or他2因子陽性 (21例), C群: 簇出かつ他1因子陽性or 3因子陽性 (32例) に階層化した. A, B, C群の5生率は55.5%, 17.5%, 0%であった. 肝外再発率はA群に比べB, C群で, 残肝再発率はA, B群に比べC群で高率であった. 3因子陽性では3年以内に全例死亡した.考察: 大腸癌肝転移に対し簇出, 壁深達度, 転移時期に基づく階層化から3因子陰性あるいは簇出以外1因子陽性は積極的な切除対象であるが, 3因子陽性では何らかの補助療法が確立されない限り切除対象外と考える.
  • 中房 祐司, 廣橋 喜美, 田中 聡也, 北島 吉彦, 佐藤 清治, 宮崎 耕治
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1512-1521
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    進行下部直腸癌治療における側方郭清の役割の明確化を目的に背景因子と側方転移頻度, 側方郭清の有無が予後に及ぼす影響との関係を解析した. 側方郭清群の5年生存率は, 非施行群と比較して深達度al (ss) 以上 (86.1% vs 58.5%), 腫瘍径3cm以上 (86.7% vs 64.9%), 高・中分化腺癌 (88.1% vs 69.8%) で有意に良好であり (p<0.05), 局所再発率の改善を伴っていた. 上方転移陽性では陰性に比較して側方転移頻度 (5/16例vs 0/18例) が高いものの (p<0.05), 側方郭清の有無によって生存率に有意差を認めず, リンパ節転移陽性症例の生命予後は不良であった. 以上, 進行下部直腸癌の中でも深達度al (ss) 以上, 腫瘍径3cm以上, 高・中分化腺癌, 上方転移陽性は側方郭清の積極的適応であるが, リンパ節転移陽性症例の予後は側方郭清を加えてもなお不良であることが示された.
  • 高山 智燮, 山田 行重, 久永 倫聖, 北東 大督, 中島 祥介
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1522-1526
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肺扁平上皮癌の胃転移であると臨床的に確認した1例を経験した. 症例は71歳の男性. 胃潰瘍の経過観察目的に施行した上部消化管内視鏡にて胃癌と診断され, 手術目的に当科に紹介, 入院となった.入院時の胸部X線写真にて左上肺野に異常陰影を認め, 気管支鏡下生検にて扁平上皮癌と診断された. 上部消化管超音波内視鏡にて胃体上部前壁に中心潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認め転移性胃癌が疑われたが, 生検では低分化癌のため転移性胃癌の確診ができなかった. しかし, 入院中に胃病変より出血し吐血したため胃全摘術を施行した. 切除標本の病理組織検査にて肺癌と同様の組織像であり, 転移性胃癌と判断した. 原発性肺癌の胃転移が生前に診断された症例はまれであり, 過去の本邦報告例とあわせ80例について検討し, 報告する.
  • 浅川 真巳, 金子 巌, 武鑓 豊文, 一ノ瀬 庸, 田中 俊郎, 瀬戸山 博, 岡部 道雄, 保坂 直樹
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1527-1531
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌病巣と領域リンパ節内に結核病変を有する胃切除症例を経験したので報告する. 症例は74歳の女性. 20年前より, 検診で肺野の異常陰影を数回指摘されたが精査加療歴はなかった. 嚥下困難を主訴に当院を受診し, 下部食道浸潤を伴う胃噴門部癌と診断された. また, 胸部単純X線および胸部X線CT像では左下肺野に線状石炭化陰影を認めた. 入院後, 食道ステントを留置, 化学療法施行後, 右開胸開腹による下部食道切除, 胃全摘, 膵体尾部脾臓合併切除を施行した. 術後の病理組織学的検索の結果, 胃癌病巣中心部とリンパ節内に結核結節を認めたが, 結核菌は検出されなかった. 病理組織像から胃結核の併存と診断した. 術後18か月経過した現在, 胃癌の再発と結核の再燃はない. 検索した限り, 本邦では胃癌と胃結核の併存例は17例で, 本症例はまれであると考え報告した.
  • 山田 英貴, 金井 道夫, 小川 弘俊, 中村 從之, 大場 泰洋, 濱口 桂, 木村 恵三, 朴 哲浩, 佐藤 健一郎, 矢野 孝
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1532-1536
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性. 1998年9月30日, 肝転移を伴うAFP産生胃癌のため, 幽門側胃切除術, 肝部分切除術 (S4c+S8) を施行した. 術前の血清AFP値は5715ng/mlであった. 術後, 右肝動脈内にカテーテルを留置し, 20PODに塩酸エピルビシン20mgを動注, 引き続きフルオロウラシル (以下, 5-FU) を250mg/日, 週5日, 3週間間欠動注した. その後, 近医にて5-FUを2,500mg/週, 16回 (総量;43,750mg) 間欠持続動注を受けた. 術後9か月のCTで肝右葉のグリソンに沿った樹枝状の不染域を認めた.画像上門脈内腫瘍栓を否定できず, 肝右葉切除術を施行した. 組織学的にグリソン周囲に漏出した胆汁を伴う肝壊死であった. 本症例では5-FUの肝動脈内動注化学療法のため胆管壁内動脈の障害から胆管壊死が生じ, 胆汁漏出によるグリソン鞘炎が原因で門脈閉塞と肝壊死が生じたと考えられた. 初回手術後2年7か月の現在再発兆候なく健在である.
  • 植木 匡, 石塚 大, 杉本 不二雄, 斉藤 六温
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1537-1541
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は55歳の男性で, 右季肋部痛を主訴に来院した. 高血圧と糖尿病の既往があった. CT検査にて胆嚢内と肝内胆管にガス像を認め, 来院当日に胆嚢摘出術を施行した. 胆嚢内に径が1~3mm以内のビリルビン結石を17個認め, 病理検査にて胆嚢壁に壊疽性変化を認めた. 胆汁培養にてclostoridium属が検出された. 症例2は47歳の男性で右側腹部痛を主訴に来院した. 喘息の既往があった. CT検査にて胆嚢内, 胆嚢壁と肝内胆管にガス像を認め, 来院翌日に胆嚢摘出術を施行した. 胆嚢内に径が1~5mmのビリルビン結石を多数認めた. 病理組織学的に, 胆嚢壁の壊疽性変化を認めた. 胆汁培養にて, klebsiella, aeromonous, enterococcus, citrobacterが検出された. 経過はいずれも良好であった. 肝内胆管ガス像を認める気腫性胆嚢炎はまれであり, 本邦および本症例を含めた22例を集計し文献的考察を含め報告する.
  • 石井 要, 田中 茂弘, 中村 隆, 佐々木 正
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1542-1546
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性で, 検診での腹部超音波検査にて胆嚢内に隆起性病変を指摘された. 腹部CT検査でも体部中心に不均一にエンハンスされる隆起性病変が認められた. 内視鏡的逆行性膵管胆管造影検査では主膵管と総胆管とが2.5cmにわたり共通管をつくる膵胆管合流異常が認められた. 総胆管は非拡張型であった. 胆嚢内は頸部から体部にかけ陰影欠損像が認められた. 腹部血管造影検査では胆嚢腫瘤部から胆嚢床に一致して腫瘍濃染像が認められた. 以上より膵胆管合流異常を伴う進行胆嚢癌と診断し, 肝S4a+S5+胆摘およびD2郭清術, 胆管空腸吻合術が行われた. 腫瘍は大きさ3.5×2.5cmの結節型腫瘤であった. 病理組織学的には多角形細胞, 紡錘形細胞あるいは多核巨細胞から成る異形度の強い未分化癌と診断された. 免疫組織学的にはEMA, AE1/AE3, CA19-9, CEAで陽性であったが, vimentin, AFPは陰性であった.
  • 高林 直記, 米山 さとみ, 中村 光一, 小西 毅, 小助川 雅巳, 須並 英二, 古川 憲一, 小林 亮, 平松 毅幸, 原 宏介
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1547-1551
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性で, 数年来続く腹痛があり腸閉塞のため入院した. 精査にて小腸腫瘍を認め小腸部分切除術を施行した. 回腸末端より90cmの回腸に25×15×12mm大の粘膜下腫瘍と, その近傍の腸間膜に約4.5cm大の腫大リンパ節を認めた. この腫瘍による壁肥厚・変形が腸閉塞の原因であった. この他に径10mm大と径3mm大の粘膜下腫瘍を認めた. 病理学的検索では, 3個の腫瘍はいずれもカルチノイド腫瘍であり, 銀染色による分類では銀還元性細胞型で, 免疫染色にて腫瘍細胞内にセロトニンが認められた. リンパ節には転移を認めた. 小腸カルチノイド腫瘍は転移をきたしやすく, また多中心性に発生することが多いとされる. 本腫瘍の5年生存率は55~58%と良好であり, 本症例も術後4年半で再発はみられない. しかし, 5年経過後も再発がみられるとされ, より長期のfollow upが必要であると考えられる.
  • 大西 一朗, 鎌田 徹, 林 泰生, 湊屋 剛, 道輪 良男, 竹田 利弥, 小矢崎 直博, 神野 正博, 小浜 隆文
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1552-1555
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹膜原発漿液性乳頭状腺癌は, 卵巣の漿液性乳頭状腺癌と類似した組織でありながら卵巣に異常を認めないもので, 腹膜原発の腫瘍と考えられている. 症例は61歳の女性. 右下腹部痛と腹部膨満感を主訴に来院した. 腹水穿刺細胞診でclassV: adenocarcinomaと診断され, 全身の検索を行ったが, 原発巣は不明であった. 開腹所見では, 大網に多数の漿液性嚢胞を伴う腫瘍を認め, 術中迅速病理診断で卵巣の漿液性乳頭状腺癌に組織像が類似していた. 卵巣は肉眼上正常であり, 腹膜原発漿液性乳頭状腺癌と診断し, 可及的に腫瘍を切除した後, シスプラチンを腹腔内投与した. 術後はカルボプラチンとシクロフォスファミドによる化学療法が著効し, その後の再開腹では明らかな腫瘍は認められなかった. しかし, 腹腔洗浄細胞診にて癌細胞の遺残をみとめたことから, さらに化学療法を追加し, 退院した. 初回手術後12か月の現在, 腫瘍の再燃の兆候はない.
  • 井川 理, 宮田 圭悟, 高橋 滋, 柿原 直樹, 松村 博臣, 飯塚 亮二, 藤井 宏二, 泉 浩, 竹中 温, 徳田 一
    2001 年 34 巻 10 号 p. 1556-1560
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵体部膵管内乳頭腫瘍の1例に体部横断切除を行い, 膵端々吻合にて再建した. 症例は67歳男性, 症状はなく, 検診の腹部超音波検査で, 径3.5cmの体部嚢胞性病変を認め紹介された. ERCP, 膵液細胞診で膵管内乳頭腺腫と診断した. 術中の所見より, 再建法は膵の端々吻合を選択した. 術後合併症なく良好に経過し, 術後1年4か月後のERCPで, 吻合部尾側の膵管は拡張なく良好に造影された. 3年を経過し健存中である. 膵空腸吻合では, 術後の膵管造影による残存膵尾部の検索が困難であり, 自験例の膵胃吻合でも造影成功例はなかった. 膵端々吻合は生理的であり, 手術時間も短く, 術後のフォローアップのためにも優れた術式であると考えられた.
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