日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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34 巻, 4 号
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  • 小川 道雄
    2001 年 34 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Theodor Billroth 教授 (1829~1894) の門下からは数多くの外科学の指導者が輩出した. Billrothが遺した書簡, 発表した論文や書籍の中から, 彼が外科医を育てるためにどのような教育を行っていたか, 彼が理想の教育者についてどのような考えをもっていたか, について推察した.
  • 保谷 芳行, 川野 勧, 山崎 哲資, 村井 隆三, 又井 一雄, 山崎 洋次
    2001 年 34 巻 4 号 p. 303-306
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    術前化学療法 (5-FU: 500mg/m2/day, civ, day 1-5, day 8-12, CDDP: 5mg/m2/day, div, day 1-5, day 8-12) を行った進行食道癌および進行胃癌症例における自己血輸血の安全性確保のため, 化学療法終了後3日目に採取した保存自己血中の抗癌剤濃度を経時的に測定するとともに, 保存自己血の血清カリウム (K) 値の変動で細胞毒性を評価した. 5-FU濃度は, 全症例において自己血採取後1日目から測定限界の1ng/ml以下となった. CDDP濃度は, 自己血採取後1日目の平均濃度は0.55±0.25μg/mlであり, 殺細胞効果が懸念される濃度が残存し経時的な減少も認めなかった. 採血後21日目の保存自己血の血清K値は, 日赤保存非照射血の血清K値 (17.5±1.3mEq/ml) と同等の値を示した. したがって, 本研究の投薬方法は残存CDDPによる保存自己血への影響は低いと考える. しかし, 高用量のCDDPを使用した際は, 十分に血中濃度が低下してから自己血の採取を行うことが肝要と考える.
  • 濱田 清誠
    2001 年 34 巻 4 号 p. 307-315
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝虚血再灌流障害に対するischemic preconditioning (以下, IPと略す) の効果をラットを用いて, 10分虚血5分再灌流群 (A群), 30分虚血5分再灌流群 (B群), 無虚血前処置群 (C群) の各群を作成し, 以下の項目を検討した. 術前, IP後, 60分全肝虚血後, 再灌流60分および120分後に血清AST, ALT, 尿酸値, 肝組織グリコーゲン値, 乳酸値, 肝組織energy charge, 肝組織血流量および組織像を検討した. A群はB群, C群と比較して再灌流60分後にAST, ALT, 肝組織乳酸値が低値を示し, 肝組織グリコーゲンは消費され, 肝組織血流量も良好に維持された. また, 組織学的に細胞傷害の程度が最も軽く, 経時的にグリコーゲン量は減少した. 以上より, 10分虚血5分再灌流によるIPは再灌流後の肝細胞障害を軽減する上で有効であり, IPの肝保護効果には肝組織グリコーゲンの消費が深く関与していると考えられた.
  • 齊藤 直人, 篠塚 望, 小山 勇
    2001 年 34 巻 4 号 p. 316-322
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Vascular closure staple (VCS) を用いた総胆管直接閉鎖術の有用性を実験的に検討するため, ラット閉塞性黄疸モデル22例および, ウサギ5例に対しVCSを用いた総胆管の直接閉鎖術を施行した. 総胆管結紮ラットモデルにおいて, クリップによる閉鎖時間は全例5分以内であった. また, 閉鎖後, 7病日, 28病日ともに死亡したラットはなく, 明らかな腹腔内膿瘍や胆道狭窄は認めなかった. 閉鎖後総胆管の組織学的検索においても, 7病日, 28病日ともにVCSの内腔への突出, 切開部の肥厚, 切開部の炎症性変化は認めなかった. ウサギモデルに対して総胆管閉鎖後5病日に耐性テストを施行したが平均180±27mmHGの圧に耐えられた. VCSを用いた総胆管直接閉鎖術は, 臨床例特に腹腔鏡下手術においても応用できると思われ今後も検討する必要があると考える.
  • 平井 敏弘, 桧原 淳, 井上 秀樹, 峠 哲哉, 井上 優, 阪上 享宏
    2001 年 34 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    手術侵襲が腫瘍の転移を促進し, その主因であるサイトカイン・ストームの制御が臓器障害にみならず癌患者の予後の向上にも重要であることを報告してきた. 今回ラットを用いてEPC-K1とmethylprednisolone (MP) が, 手術侵襲後の血清中の各種反応物質にどのように影響を与えるかについて検討した. 手術侵襲後のIL-6値は開胸開腹 (TL) 後に有意に上昇した. Endotoxin値は同様に上昇したが有意ではなかった. LPOおよびcorticosterone値は手術直後値が上昇した. IL-6およびendotoxin値はEPC-K1およびMPで抑制された. LPO値はEPC-K1でのみ抑制された. 血清corticosterone値は両者で抑制されず, MP群でより高値であった. さらに, 開胸開腹術後にsecond attackを負荷すると血清IL-6値およびNO値, 肝LPO値は著明に上昇し, EPC-K1およびMPはこれを抑制する傾向は示したがその効果は不十分であった. 以上の結果より, EPC-K1はMPよりも術後反応物質を効率よく抑制したが, second attackがかかった場合にはその抑制効果は不十分であることが判明した.
  • 花井 雅志, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 米山 文彦, 服部 龍夫, 湯浅 典博
    2001 年 34 巻 4 号 p. 329-333
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌術後に発生した食道胃管吻合部肺瘻を, 内視鏡的フィブリン糊注入により治癒せしめた症例を経験した. 症例は60歳の男性. 胸部中部食道癌に対し右開胸開腹, 胸部食道亜全摘, 胸腔内食道胃管吻合術を施行した. 術後経過は良好で術後8日目の上部消化管造影でも異常を認めず経口摂取を開始した. 左噴門リンパ節に転移を認めたため術後21日目から5日間化学療法を施行し, 34日目に退院した. 術後3か月目より発熱, 咳嗽が出現し, 肺炎, 肺膿瘍と診断された. 上部消化管造影で食道胃管吻合部から肺内へ瘻孔が造影されたため, 肺瘻と診断した. 絶飲食, 抗生剤投与により肺の炎症は消退したが瘻孔は閉鎖しなかったため, 内視鏡的にフィブリン糊を注入した. その後, 瘻孔は閉鎖し, 注入後6日目より経口摂取を開始し, 2年後も瘻孔の再発を認めない.
  • 坂口 博美, 岸本 秀雄, 小林 英昭, 渡辺 智仁, 橋川 観, 佐野 力, 神谷 順一, 二村 雄次
    2001 年 34 巻 4 号 p. 334-338
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性. 主訴は腹部膨満感で, 肝機能異常を近医で指摘され, 当院に入院した. 磁気共鳴画像を用いた膵胆道投影法 (MRCP) で胆嚢結石と中下部胆管内に長径18mmの片側性の陰影欠損を認め, 胆管腫瘍を疑った. 内視鏡的逆行性胆道造影法 (ERC) でも同様の所見を認め, 内視鏡的透視下生検の結果は腺癌であった. ERC像, 経口胆道鏡および胆管内超音波検査で腫瘍の表層拡大進展はないと診断し, 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 切除標本では中下部胆管に20×12mmの乳頭状の腫瘍を認め, 病理組織学的には管状腺癌中分化型で, 深達度は線維筋層にとどまる早期癌であった. 術後経過は良好で第43病日, 軽快退院した. 術後1年10月の現在, 再発の徴候なく健在である. 中下部胆管癌が無黄疸で診断されることは少なく, 文献的考察とともに胆管癌の早期診断におけるMRCPの有用性を報告した.
  • 裴 英洙, 細川 治, 林 裕之, 道傅 研司, 渡辺 国重
    2001 年 34 巻 4 号 p. 339-343
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性. 煙草20本/日, 日本酒1日5合を30年続けてきた. 3日前から下痢と腹痛にて紹介医で補液療法を受けていたが, 突然左上腹部に激痛が出現し, ショック状態に陥り, 当院に紹介された. 顔貌は苦悶状, ショック状態, 左上腹部から臍周囲に疼痛, 圧痛著明であった. 腹部CTで膵体部から尾部に浮腫性変化と膵の周囲に内部不均一で辺縁不明瞭, 造影効果のある腫瘤を認め, 翌日の腹部超音波検査で内部に一部high echoicな部分を有する嚢胞への進展を確認した. 以上より膵仮性嚢胞内出血と診断し, 上腸間膜動脈造影により中結腸動脈の仮性動脈瘤が出血源と判明した. 絶飲絶食のもとに点滴, 抗生物質, 膵酵素阻害剤の投与で経過を追ったところ膵炎は沈静化し, 2か月後の動脈造影とCTで仮性動脈瘤は消失し, 膵仮性嚢胞は著明に縮小した.
  • 寺島 雅典, 阿部 薫, 藤原 久貴, 高金 明典, 荒谷 宗充, 入野田 崇, 中屋 勉, 大山 健一, 稲葉 亨, 斎藤 和好
    2001 年 34 巻 4 号 p. 344
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 柏木 秀幸, 小村 伸朗, 矢野 文章, 石橋 由朗, 羽生 信義, 青木 照明
    2001 年 34 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 胃食道逆流症に対する腹腔鏡下噴門形成術の有用性や問題点を明らかにする.
    対象と方法: 87例の術中・術後経過と, 国際食道疾患会義によるAFP分類に基づき, その治療効果について検討した. 年齢は52±16歳 (18~81歳) で, 男性が52例, 女性が35例であった. 噴門形成術としては, Nissen法が56.3%, Toupet法が40.2%, そしてDor法が3.5%に行われた.
    成績: 胃の損傷, 気胸, 脾臓よりの出血などの合併症が11.5%に見られたが, 開腹移行例は認められなかった. プロトンポンプ阻害薬抵抗例に対しても良好な治療成績を示した. また, Nissen法とToupet法で治療成績による差は見られなかった. 在院期間も短く, 良好な成績であったが, 嚥下困難2例, 胃食道逆流症の再発1例で再手術が行われた.
    結論: 腹腔鏡下噴門形成術は, 胃食道逆流症に対し, 安全性が高く, 有用な治療である.
  • 大谷 剛正, 中村 隆俊, 金沢 秀紀, 相原 成昭, 国場 幸均, 井原 厚, 柿田 章
    2001 年 34 巻 4 号 p. 351-356
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡補助下手術につき臨床学的検討を行った. 全潰瘍性大腸炎776例中119例に対し手術を施行. このうち回腸嚢肛門管吻合 (IACA) 症例は28例で, 腹腔鏡下手術10例, 開腹手術18例であった. 開腹手術との比較では,腹腔鏡下IACA手術時間: 377分, 開腹IACA: 308分, 出血量は腹腔鏡下IACA: 177ml, 開腹IACA: 363mlであった. 経口摂取開始日は両群とも貯留内減圧チューブを1週間挿入してあるので腹腔鏡下IACAで10.3日, 開腹IACAで19.2日であった. 有意差を認めたのは経口摂取開始から退院までの期間で, 腹腔鏡下IACA: 14.9日, 開腹IACA: 23.8日であった. 退院時排便回数は有意差なく腹腔鏡下IACA: 8.0行, 開腹IACA: 11.0行であった. 腹腔鏡下. IACAは回復も早く, 患者の手術侵襲も軽く今後の発展が期待される手術方法である.
  • 白石 憲男, 安田 一弘, 猪股 雅史, 安達 洋祐, 北野 正剛
    2001 年 34 巻 4 号 p. 357-360
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1991年, 内視鏡的粘膜切除術 (EMR) の適応とならない早期胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術 (LADG) を開発し, これまでに81例に施行してきた. それらの適応理由は, 大きな, または潰瘍瘢痕を有するM癌59%, 軽度SM浸潤癌20%だった. 全例D1+αのリンパ節郭清を行った. 術後合併症は, 肺炎, 吻合部狭窄, 膵液漏の3例のみに認め, すべて保存的に治癒した. 摘出標本の検討では, sm浸潤を示した4例のみに1群リンパ節転移を認めたが, 6~98か月の経過観察期間, 再発を認めていない. これまでに解析した症例対象研究においてもLADGは開腹下手術に比べ, 低侵襲性および術後患者のquality of life (QOL) の向上に寄与していることが示されてきた.
    LADGは, 根治性を兼ね備えており, 安全性, 有用性に優れた術式である.
  • 雨宮 邦彦, 郷地 英二, 中島 伸之
    2001 年 34 巻 4 号 p. 361-365
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下虫垂切除術は腹腔鏡下手術の持つ利点を最も多く享受できる手術であるが, 腹腔鏡下胆嚢摘出術ほどには普及していない. 我々は1991年以来330例に腹腔鏡下虫垂切除術を施行し, 非常によい結果を得ている. 急性虫垂炎に対して腹腔鏡下手術を始める前の開腹虫垂切除術50例, 初期の頃の腹腔鏡下虫垂切除術50例そして1999~2000年に施行した最新の症例50例について検討した. 検討項目は背景因子として, 性, 年齢, WBC, 手術診断であり, 検討内容は手術時間, 洗浄液量, 術後疼痛, 輸液日数, 食事の摂取状況, 入院日数, 合併症である. 手術時間は延長するが, 他の点においては腹腔鏡下手術が勝っていた. 開腹虫垂切除術ではある程度の頻度で必発する, 治療に難渋するような腹壁膿瘍は腹腔鏡下手術では皆無であった. 腹腔内ですべての手技が行われ, トロッカーを通して虫垂を取り出す腹腔鏡下手術の真骨頂である.
  • 長谷川 博俊, 渡邊 昌彦, 山本 聖一郎, 北島 政樹
    2001 年 34 巻 4 号 p. 366-369
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1992年から現在までの8年間に大腸癌患者327例 (Dukes A: 245例, B: 38例, C: 39例, D: 5例) に対し腹腔鏡下大腸切除術を施行した. 術後観察期間中央値は37か月 (1~97か月) であった. 飲水と経口摂取開始日は術後1日と3日で, 術後在院日数の中央値は8日であった. 術後合併症は36例 (11.0%) に認め, このうち創感染が14例 (4.3%) であった. 治癒切除322例中9例 (2.8%) に再発を認めた. このうち腹膜再発を認めた4例の深達度はss: 1例, se: 2例, si: 1例であった. Kaplan-Meier法による5年全生存率はDukes A: 99.3%, B: 100%(4年), C: 79.3%であった. 早期大腸癌に対する腹腔鏡下手術の長期予後は良好で, 本法の良い適応であると思われた. mp癌の予後も比較的良好であったが, ss以深の進行癌に対しては慎重な経過観察が必要である.
  • 荒木 靖三, 的野 敬子, 中川 元典, 宮城 佳昭, 笹冨 輝男, 犬塚 清久, 石橋 生哉, 緒方 裕, 白水 和雄, 磯本 浩晴
    2001 年 34 巻 4 号 p. 370-374
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    早期直腸癌の局所治療は癌浸潤度, 腫瘍の局在部位・大きさによって治療方法は選択される. なかでも大きな腺腫, 粘膜癌, 一部のsm癌に対する低侵襲手術方法として管腔内視鏡手術が要求される. そこで, 早期直腸癌に対するTEMの適応についてEMRと比較検討し, さらにTEMの適応拡大のために手術手技の工夫を加えた.
    腫瘍の大きさでは腫瘍径が15mm以上の病変はEMRで水平方向の断端陽性となることがあり, TEMの手術適応と考えられた. また, 腫瘍の局在ではBuess式直腸鏡を使用するために肛門縁より5~20cmの直腸腫瘍がTEMの良い適応と考えられた. しかしながら, 直腸鏡の外径が40mmであるために直腸管腔が狭い症例は直腸粘膜を損傷する危険性があるのであらかじめ術前に注腸検査で直腸の走行や口径を確認することも重要である.
  • 芳賀 克夫, 池井 聰, 片淵 茂, 水谷 純一, 平野 祐一, 西岡 涼子
    2001 年 34 巻 4 号 p. 375-380
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    【目的】手術リスク評価法E-PASSを用いて, 腹腔鏡下手術 (LS) の侵襲度を術後合併症発生の観点から評価した.【方法】予定LS症例1,754例で, 術後合併症発生率, 在院死亡率, 術後在院日数, 入院治療費, E-PASSの手術侵襲スコア (SSS), 総合リスクスコア (CRS) を開腹手術 (OS) と比較検討した.【成績】術式別にSSSを検討すると, 全般的にLSはOSより著明に低値を示した. LS全体の術後合併症発生率は3.0%, 在院死亡率は0%であったが, これはCRSから予測される術後合併症発生率および死亡率にほぼ一致した. LSおよびOSを含めた症例で, CRSは術後合併症の重症度や入院治療費と有意な正の相関を示した. LSはOSと比べ, CRSが小さく, 入院治療費も低く, 術後合併症があった場合でも軽症のものが多かった. 急性胆嚢炎の胆摘症例で, LSの術後在院日数はOSより有意に短く, 術後合併症の発生率も低かった. Stage Ia胃癌の幽門側胃切除症例でLSとOSを比較すると, 同様の結果が得られた.【結論】LSは低侵襲であり, high risk患者にも積極的に適用すべきである.
  • 井上 善文, 木村 聡宏, 藤田 繁雄, 野呂 浩史, 谷口 英治, 弓場 健義, 西田 俊朗, 伊藤 壽記, 大橋 秀一, 松田 暉
    2001 年 34 巻 4 号 p. 381-386
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内視鏡外科は低侵襲手術と呼称されているが, 客観的指標に基づいた評価は十分にはなされていない. 低侵襲手術と呼称されている腹腔鏡下胆嚢摘出術・胃部分切除術 (LMIN群), 中等度侵襲手術: 開腹下幽門側胃切除術 (ODG群), 高度侵襲手術: 開腹下胃全摘術 (OTG群) を対象として, 術後回復状況を加速度センサーを用いた体動の累積加速度の測定により判定し, 手術侵襲を評価する臨床的指標としての意義について検討した. 体動の累積加速度は術後1~7日目までの測定においてLMIN群がODG群, OTG群に比べて有意に高く, この順に術後の身体活動性が高いことが示された. また, 体動が術前の90%まで回復するのに要した日数 (recovery time) は, LMIN群, ODG群, OTG群の順に短く, 侵襲度が低いほど術後体動の回復が早いことが示された. 加速度センサーを用いた体動の累積加速度の測定は, 術後回復状況を定量的に評価できる指標であると考えられる.
  • とくにlong NC症例に注目して
    上野 桂一, 吉谷 新一郎, 仁丹 利行, 北林 一男, 中野 泰治, 斉藤 人志, 小坂 健夫, 喜多 一郎, 高島 茂樹
    2001 年 34 巻 4 号 p. 387-392
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    教室で施行している高度進行消化器癌に対する低用量CDDP/5FU分割投与法の成績を検討した. 6か月以上NC継続例を「long NC症例」, long NCでかつ同期間に腫瘍マーカーの上昇を認めなかった症例を「dormant症例」と定義した. 評価可能症例115例のうち奏効例 (CR+PR) は11例 (9.6%) で, 有効例 (CR+PR+long NC) は30例 (26.1%) であった. Long NC症例は19例にみられ, Dormant症例は9例であった. 奏効例, 有効例の生存期間はPD症例に比べ有意に延長し, 経動脈的投与が経静脈的投与に比し有効例が多く, 有効例はすべて3クール以上施行例であった. Dormant症例をPD症例と比較すると, 治療前の小野寺指数が高く, 施行クール数の多いものやフッ化ピリミジン内服併施例の占める割合が高かった. 本療法は患者の生存期間延長と負担軽減を目的としたものであり, tumor dormancy therapyとしての可能性が示された.
  • 高橋 豊, 北方 秀一, 磨伊 正義
    2001 年 34 巻 4 号 p. 393-396
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回, tumor dormancyを目的とした化学療法として, CPT-11の低用量投与法を試みた. 低用量投与としては, 25mg/m2をday 1, 2, 3/wで毎週継続するレジメとした. 対象は, 転移性胃癌と大腸癌, それぞれ8例, 計16例である. その結果, 低用量投与では副作用が激減し, grade 3以上の骨髄抑制を3例 (18.6%) をみるのみであった. また投与期間は著明に延長し, 平均7.1月で従来法1.8月の約4倍にも相当した. 抗腫瘍効果では, 奏効率が50%と従来法の29.4%と大きな差は認められなかったが, timeto progression (TTP) では, 低用量群では平均5.3月と, 従来法群の1.6月と3倍以上の差が認められた. またmedian survival time (MST) もそれぞれ11.5月, 4.5月と有意差が認められた. 以上本法は, 縮小よりもTTPの延長から生存期間の延長をもたらす化学療法, いわゆる“dormant chemotherapy”と考えられた.
  • 杉山 保幸, 佐治 重豊, 安田 邦彦, 森 茂, 松尾 篤, 渡辺 敦
    2001 年 34 巻 4 号 p. 397-402
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    免疫療法と低用量化学療法の併用による消化器癌のtumor dormancy therapyの確立を目的として, 基礎的, 臨床的検討を行った. OK-432, PSK, lentinanはin vitroで胃癌細胞のアポトーシスを誘導した. また, 単独では細胞傷害作用を示さない低濃度のFUraとCDDPを併用した場合にもアポトーシスが誘導され, これにlentinanを加えるとさらにアポトーシス陽性細胞が増加する場合も観察された. 胃癌6例, 大腸癌19例の切除標本から採取した癌組織を, CD-DST法で単独では効果がみられない低濃度のFUraとCDDPを併用して接触させた結果, 10例で増殖抑制効果が認められた. さらに, 評価可能病変を有する進行胃癌9例に低用量CDDP・FUra+lentinan療法を可能な限り反復した結果, 直接効果はPR: 2例, MR: 1例, NC: 5例, PD: 1例であり, 特記すべき副作用は認められなかった. 以上から, 本療法は癌細胞のアポトーシスを効率的に誘導する優れた消化器癌の治療戦略の1つであることが示された.
  • 宮崎 知, 濱路 政靖, 伊豆蔵 正明, 西嶌 準一, 奥 邦彦, 岡 義雄, 中野 博史, 西田 幸弘
    2001 年 34 巻 4 号 p. 403-408
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    進行ならびに再発消化器癌に対する温熱化学療法のtumor dormancy therapyとしての意義を検討した. 肝病変24例 (転移性20例, 原発性4例), 膵病変33例 (非切除膵癌), 骨盤内病変17例 (直腸癌再発) に温熱化学療法 (RF波誘電加温, cisplatin 10mg, mitomycin C 4mgを加温時に静注) を施行した. 腫瘍縮小効果から見た奏功率は肝病変38%, 膵病変25%, 骨盤病変29%であった. 腫瘍マーカー値の減少は肝病変63%, 膵病変68%, 骨盤病変43%に認めた. 臨床症状の改善を肝病変63%, 膵病変73%, 骨盤病変64%に得た. 腫瘍縮小効果別の1年生存率は肝病変: 有効 (以下, PR) 29%, 不変 (以下, NC) 30%, 進行 (以下, PD) 0%, 膵病変: PR 50%, NC 25%, PD 0%, 骨盤病変: PR 25%, NC 30%, PD 0%で, 各病変ともPR, NC症例はPD症例に比べ高い1生率を得た. 温熱化学療法はquality of lifeの改善や生存期間の延長に寄与すると考えられtumor dormancyの誘導を目的とした治療法としての意義を認めた.
  • 上田 祐二, 伊藤 剛, 奥川 郁, 藤原 斉, 藤 信明, 吉村 哲規, 山下 哲郎, 藤木 博, 原田 佐智夫, 山岸 久一
    2001 年 34 巻 4 号 p. 409-414
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々の施設において施行している, 進行固形癌患者に対するHLA-A24拘束性CTL誘導性CEAペプタイドと末梢血単球由来樹状細胞を用いた癌ワクチン療法のtumor dormancy therapyとしての可能性を検討した. 対象症例は15例であるがそのほとんどが消化器癌患者である. 6例に治療開始後血清CEA値の低下あるいは上昇の抑制が認められた. これら血清CEA値の変動から判断した有効症例においては, 無効例に比べ平均生存期間が延長する傾向が認められ, tumor dormancyからlong NCを経て, 治療開始後1年半を経過している長期生存例も得ている. 特異的能動免疫療法である本療法が有効に作用するためには, PHA幼若化反応に代表される患者末梢血Tリンパ球の反応性が保たれている事が必要であった. 今後はbulky tumor massから開放された外科手術後, あるいは化学, 放射線療法後の微小残存病変からの再発を予防するために臨床応用されていくべきものであり, そこに本療法のtumor dormancy therapyとしての意義も見出されるであろう.
  • 田中 真二, 杉町 圭史, 山下 洋市, 島田 光生, 杉町 圭蔵
    2001 年 34 巻 4 号 p. 415-419
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    癌血管新生因子の抑制はtumor dormancyを誘導するが, その標的分子の同定が急務である. 我々は肝癌組織から新しい血管新生遺伝子をクローニングし, そのシグナル制御による腫瘍抑制分子を開発したので報告する. Targeted differential display法を用いて, 高度の血管新生を示す肝癌の特異的遺伝子として新しい血管新生遺伝子Angiopoietin-2をクローニングした. Angiopoietin-2遺伝子導入肝癌細胞は, マウス腹腔内接種により肝などに腫瘍形成し腹腔内出血死した. その機能抑制分子を癌細胞接種マウスへin vivo electroporation法により導入すると, 著しい腫瘍抑制効果を認めた. 我々が同定したAngiopoietin-2は肝癌の血管新生因子として重要であり, その抑制はtumor dormancyを誘導する画期的な分子標的となることが明らかとなった.
  • 新しい血管新生阻害物質の単離・精製とその抗腫瘍作用
    鬼塚 伸也, Oliver Kisker, Steven Pirie-Shepherd, Judah Folkman, 兼松 隆之
    2001 年 34 巻 4 号 p. 420-424
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ヒト膵癌培養細胞から新しい血管新生阻害物質の単離を行い, 血管内皮細胞増殖抑制効果および腫瘍増殖抑制作用, さらにtumor dormancy therapyへの応用の可能性について検討した. ヒト膵癌細胞株BxPC-3の培養上清を用いヘパリンカラム, ゲル濾過カラム高速液体クロマトグラフィー (HPLC) により最終蛋白精製産物を得た. SDS-PAGE, microsequenceでアミノ酸配列を決定した. SCIDマウス背部皮下にBxPC-3を移植し新規血管新生阻害物質を21日間投与し腫瘍増殖抑制効果を検討した. 新しい血管新生阻害物質はおのおの58kDa, 53kDaのlatent form, leaved formのantithrombin III (aaAT-III) であった. aaAT-III投与により, 膵癌の増殖は対照群に比べ90%抑制され, 投与開始時とほぼ同じ大きさに維持されていた. aaAT-IIIはdormancyを誘導し, 今後膵癌に対するtumor dormancy therapyへの応用が期待できる.
  • 砂村 眞琴, Dan G. Duda, 島村 弘宗, 元井 冬彦, 八岡 利昌, 渋谷 和彦, 武田 和憲, 松野 正紀
    2001 年 34 巻 4 号 p. 425-430
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    遺伝子導入した線維芽細胞をdrug delivery system (DDS) として用いtumor dormancy therapyへの応用の可能性を検討した. ヒト膵癌株PK-1, SCIDマウスを実験に用いた. NIH3T3線維芽細胞にIL-12遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて導入し, IL-12を持続的に産生するdrug delivery cell (IL-12/3T3) を作製した. soluble VEGF receptor (s-fltl), brain specific angiogenesis inhibitor 1 (BAI1) のcDNAを組み込んだアデノウイルスベクター (Axflt, AxBAI1) を作製した. マウス背部に透明窓を装着, 同部に腫瘍を移植して腫瘍血管新生過程を解析した. IL-12/3T3は血管新生を抑制し, この作用は抗IFN-γ抗体で消失した. IL-12によりIP-10, IFN-γの発現が誘導され, VEGFおよびbFGFの発現は低下した. Axflt, AxBAI1は腫瘍血管新生と腫瘍増殖を有意に抑制した. IL-12を産生するDDSには抗腫瘍効果が認められ, s-flt1やBAI1もこのシステムに応用可能なことが判明した.
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