日本消化器外科学会雑誌
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35 巻, 4 号
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  • 本邦報告26切除例の検討も含めて
    伊神 剛, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 芥川 篤史, 菅原 元, 鈴村 潔
    2002 年 35 巻 4 号 p. 357-361
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    1971年から1997年までの27年間に当院で経験した噴門側胃切除術後の残胃の癌切除例は6例で, これは同時期に施行した噴門側胃切除術症例120例の5.0%にあたる. 再手術時の平均年齢は65.2歳 (48~75歳), 男5例, 女1例であった. 初回手術から再手術までの期間は平均100.5か月 (48~204か月) で, 全例食道胃吻合が施行されていた. 初回病変は早期癌3例 (m, n (-) 1例, sm, n (-) 2例), 進行癌2例 (mp, n2 (+) 1例, se, n1 (+) 1例), 平滑筋腫1例であった. 残胃の癌は早期癌4例 (m, n (-) 2例, sm, n (-) 2例), 進行癌2例 (se, n2 (+) 1例, se, N4 (+) 1例) であった. 予後は進行癌症例が再手術後7か月, 36か月で癌死したが, 早期癌症例は全例現在生存中 (12~138か月) である. 自験例含め, 本邦における噴門側胃切除術後の残胃の癌切除例は26例で, 初回早期胃癌で, 残胃の癌は早期癌, 初回良性疾患, 進行胃癌で, 残胃の癌は進行癌が多かった.
  • 首藤 太一, 広橋 一裕, 山本 隆嗣, 上西 崇弘, 田中 肖吾, 小川 雅生, 竹村 茂一, 田中 宏, 久保 正二, 木下 博明
    2002 年 35 巻 4 号 p. 362-368
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    対象と方法: 最近10年間の肝細胞癌 (肝癌) 切除387例中, 腫瘍径2cm以下の小型肝癌82例を対象に, I. 肝癌取扱い規約の定義に基づく早期肝癌20例 (早期群) と残り非早期肝癌 (非早期群) 62例の臨床病理像を比較し, II. 早期群の無再発生存率 (TFS) 向上に関与する因子について解析を行った. 結果: I. 両群の肝機能検査値に差はなかったが, 早期群にHBs抗原陽性例はみられなかった. 腫瘍径は早期群1.5cm, 非早期群1.7cm (p<0.1). 早期群の6例と非早期群の21例が多発肝癌と診断され, そのうち多中心性発生はそれぞれ5例 (82%), 6例 (29%) であった (p<0.05). なお早期群に門脈内腫瘍栓はみられず, 肝硬変, 肝炎併存率に差はなかった. 1, 5年TFSでは早期群が良好であった (早期: 非早期, 100, 57%: 82, 22%, p<0.05). 一方, 累積生存率では両群間に差はなく, 両群とも死亡例の2 3は癌死であった. II. 早期群のTFS向上には術前アルブミン高値, 治癒切除 (治癒度A, B) が関与していた. 考察: 早期群にはHBs抗原が検出されず, 多中心性発生が多くみられた. 非早期群に比べさらに小型で, 門脈内腫瘍栓はみられず, TFSは良好であった. しかし再発後には非早期群と同様の転帰をたどり, そのadvantageが失われた. したがって早期群の成績向上には, 長期無再発を期待しうる治癒切除 (治癒度A, B) が必要であると考えられた.
  • 石田 秀之, 古河 洋, 龍田 眞行, 桝谷 誠三, 今村 博司, 清水 潤三, 増田 慎三, 江角 晃治, 川崎 高俊, 里見 隆
    2002 年 35 巻 4 号 p. 369-373
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    はじめに: 欧米では大腸癌の予後因子としてリンパ節の転移個数が重要視されている.方法: 当院でのDukes C治癒切除 (cur A) 結腸癌144例を対象に予後因子について検討した.結果: 5年生存率でみると, 組織学的壁深達度, リンパ管侵襲, 血管侵襲で有意差はみられなかった.また大腸癌取扱い規約のn1群 (n=94, 72.2%) とn2+n3群 (n=45+5, 66.2%) で有意差はみられなかった (p=0.74). リンパ節転移個数を2個以下 (n=86) と3個以上 (n=58) で分けた場合 (80.7% vs 52.8%)(p=0.011), およびTNM分類である3個以下 (n=104) と4個以上 (n=40) で分けた場合 (78.3% vs 46.7%) (p=0.022) に有意差がみられた.考察: リンパ節転移のある症例では転移個数が予後を決定する因子であった. 大腸癌取扱い規約に予後因子として転移個数をとり入れるのが良いと考える.
  • 山中 秀高, 西垣 英治, 岡島 明子, 杉浦 友則, 川井 覚, 岡田 禎人, 北川 喜己, 河野 弘, 松浦 豊
    2002 年 35 巻 4 号 p. 374-378
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    今回, 肝細胞癌とアルドステロン産生副腎腺腫のまれな重複例を経験したので報告する. 症例は64歳の男性. 心筋梗塞, 狭心症で入院中, 血液検査で高Naと低K血症, 肝機能異常, HCV陽性, PIVKAIIの高値を認めた. ホルモン検査, 立位負荷やACE阻害剤負荷試験で不応性の低レニン血症と高アルドステロン血症を認めた. 腹部CT検査で肝S8と左副腎に造影される腫瘤を, 腹部血管造影検査で肝S8に腫瘍濃染像を, 副腎シンチで左副腎のhot tumorを認めた. 肝硬変合併肝細胞癌およびアルドステロン産生副腎腺腫と診断した. 心筋梗塞, 狭心症治療中, 肝細胞癌は動脈塞栓術, Conn's症候群は投薬治療で経過観察し, 心機能の安定後, 肝前区域切除術, 左副腎全摘出術を施行した. 摘出標本で肝細胞癌と左副腎腺腫と診断され, 非腫瘍部肝は乙'型肝硬変であった. 肝硬変合併肝細胞癌では続発性アルドステロン症による副腎病変も念頭に置くべきと思われた.
  • 松山 隆生, 角 泰廣, 澤田 傑, 村瀬 勝俊, 吉田 直優, 尾関 豊
    2002 年 35 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    右中肝静脈から下大静脈への腫瘍栓を伴う肝細胞癌を経験したので報告する. 症例は51歳の男性. 1997年7月からB型肝硬変と肝細胞癌のため近医で内科的治療を繰り返されていた. 2000年7月の腹部CTで肝S7に3cm大の再発腫瘍と, 右中肝静脈から連続して下大静脈にわずかに突出する腫瘍栓を認めた. 8月の腹部MRIでは腫瘍栓は下大静脈内に約4cm進展していた. 8月18日に肝右葉切除術とtotal hepatic vascular exclusionを用いた下大静脈腫瘍栓摘出術を施行した. 術後経過は順調で第24病日に退院した. 下大静脈に進展した肝細胞癌であっても, 根治切除が可能であれば十分に延命効果が期待でき, また根治切除でなくとも患者のQOLを著しく改善できる可能性があるので積極的な対応が必要と考える.
  • 日比野 茂, 藤岡 進, 加藤 健司, 待木 雄一, 朽名 靖, 竹之内 靖, 高見澤 潤一, 高良 大介, 吉田 カツ江
    2002 年 35 巻 4 号 p. 384-388
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    早期より転移が認められ悪性度が高かったが, 長期生存が得られた胆嚢カルチノイドの1例を経験した. 症例は61歳の女性. 右季肋部痛を主訴に来院した. 腹部超音波, 腹部CTにおいて胆嚢を囲むように腫瘤が存在した. 胆嚢癌と診断し肝右3区域切除を施行した. 病理組織学的に低悪性度の腫瘍細胞が胞巣状に配列し, Grimelius, chromograninA染色陽性で胆嚢カルチノイドと診断した. 術後, 残肝S2の転移, 右腎転移, 大動脈周囲リンパ節転移および右副腎転移などを認めたが, 種々の治療により6年9か月の生存が得られた.
  • 金澤 英俊, 木村 桂子, 日江井 賢, 鳥本 雄二, 江畑 智希, 小田 高司, 神谷 順一
    2002 年 35 巻 4 号 p. 389-392
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は, 上腹部痛を主訴とする61歳の男性である. 24年前, 胆石・総胆嚢結石のため胆嚢摘出術・総胆管十二指腸側々吻合術を受けた. 画像診断の結果, 吻合部直上の総胆管狭窄と診断し, 胆管切除, 胆管空腸吻合術を施行した. 切除した胆管は30mmで, 病理組織学的に, 胆管壁の慢性炎症所見と線維性肥厚を認め, 異型上皮を伴った胆管上皮, 付属腺の過形成を吻合部下流側に認めた. 総胆管十二指腸吻合術や乳頭括約筋形成術などの術後には, 腸内細菌, 食物残渣, 膵液が胆管内に流入する. こうした機械的, 化学的刺激が異型上皮の発生に関与したものと考える.
  • 田中 基文, 金丸 太一, 田中 賢一, 井上 和則, 山本 正博, 出射 由香
    2002 年 35 巻 4 号 p. 393-397
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌を合併した胆嚢胃瘻の1切除例を報告する. 症例は74歳の男性. 嘔気, 嘔吐を主訴に他院を受診し, 検査にて内胆汁瘻を疑われ当院に転院となった. 上部消化管内視鏡にて幽門部に嵌頓する結石を認め, また腹部単純CTおよび腹部超音波検査では胆嚢内に結石像を認め, 胆嚢と胃の境界は不明瞭であった. 以上より胆嚢胃瘻による幽門部での胆石の嵌頓と診断し, 開腹手術を施行した. 胆は肝十二指腸間膜および胃幽門部と強固に癒着しており, 幽門小彎前壁に瘻孔を形成し, 胃内には幽門部に嵌頓する径約4cmの結石を認めた. 胆摘, 瘻孔切除および胃壁欠損部の閉鎖を行った. なお術後の病理学的検索にて, 胆嚢頸部から体部にかけての粘液腺癌が認められ, 深達度は漿膜下層であった.
    胆嚢胃瘻は, 内胆汁瘻に占める割合が約4%とされる比較的まれな疾患であり, さらに胆嚢癌を合併した症例は極めて少なく, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 北郷 実, 相浦 浩一, 若林 剛, 鈴木 慶一, 星本 相淳, 橋本 健夫, 寺山 清美, 亀山 香織, 向井 万起男, 北島 政樹
    2002 年 35 巻 4 号 p. 398-402
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の男性. 平成11年6月右肺癌にて開胸右肺上中葉切除, 壁側胸膜合併切除術を施行し, 術後放射線療法 (50Gy) を行った. 術後6か月頃より左手握力の低下を認め, 頭部MRI検査にて脳腫瘍が疑われ, 平成12年1月開頭腫瘍摘出術を施行し, 肺癌の脳転移と診断された. 同時期より腹部CTにて膵尾部に腫瘤が認められ, その後徐々に増大してきたため当科に紹介された. ERP下生検を施行したところ肺癌の膵転移が疑われ, 同年10月膵体尾部切除術を施行した. 病理所見で肺癌の組織所見と一致し, 肺癌からの転移性膵腫瘍と診断された. 転移性膵腫瘍と原発性膵腫瘍の鑑別は画像検査だけでは困難で, 既往歴を念頭に置き, ERP下生検または術中病理検査を併用した総合的な診断が必要と思われた. 治療方針として原発巣が制御され, 遠隔転移も限局し切除により制御しえると判断されれば, 積極的な外科的切除の適応になると考えられた.
  • 只友 秀樹, 葦沢 龍人, 安藤 昌之, 丸山 祥司, 原田 佳明, 大沼 忍, 瀧本 雅文, 小 泰久
    2002 年 35 巻 4 号 p. 403-407
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の女性. 肝機能精査目的にて初診. 腹部超音波, CTにて膵体尾部近傍に境界明瞭で周囲臓器よりも低吸収域を示す5×6cm大の充実性腫瘍を認めた. MRCPでは膵管の異常を認めず, 血管造影では動脈から分岐する多数の新生血管がみられ, さらに脾静脈の圧迫閉塞に伴う側副血行路が確認された. 術前画像診断では, 膵原発ないし後腹膜由来の神経原性腫瘍を最も考慮し, 開腹下に摘出術を施行した. 境界明瞭で被膜を有する充実性腫瘍が膵内に形成されており, 膵体尾部, 脾合併切除術を施行した. 病理学的には, 紡錘形細胞が主に束状に増生し, 部分的に核の腫大や不整がみられた. 免疫染色はS-100蛋白陽性であり, Antoni A型の神経鞘腫と診断した. 膵の非上皮性腫瘍は非常に少なく, なかでも神経鞘腫は自験例を含め, 従来14例の報告にすぎず, 極めてまれな症例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告した.
  • とくにCTによる術前診断について
    吉田 秀明, 高田 智明, 塚田 守雄, 加藤 紘之
    2002 年 35 巻 4 号 p. 408-412
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性. 数年前から胃潰瘍と診断されていたが放置していた. 2000年10月24日突然出現した腹部激痛を主訴に当院を受診した. 左下腹部に強い圧痛を伴う腫瘤を触知し, 超音波検査では内部に高輝度エコーを有する低吸収性腫瘤が描出された. 腹部X線CTでは, 胃角小彎側前壁の肥厚とそれに接した, 内部にfat densityの層状構造を伴うlow density massを認めた. また, 少量の腹水を認め, 胃潰瘍穿孔, 膿瘍形成と診断し, 緊急開腹術を施行した. 術中所見で大網の右側自由縁が捻転・飜転し壊死に陥り胃角前壁に炎症性に癒着したものと判明した. 壊死部大網と癒着していた胃壁の一部を切除した. 特発性大網捻転症は, 圧痛点が最初から限局している, 消化器症状に乏しい, 痛みに比べ発熱と白血球数増加の程度が軽いという特徴があり, 腹部X線CT検査で術前確定診断が可能な急性腹症の一疾患である.
  • 安村 幹央, 飯田 辰美, 後藤 全宏, 岡田 将直, 村瀬 勝俊, 水谷 知央, 二村 直樹, 阪本 研一
    2002 年 35 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    大量下血で発症した小腸クローン病の1例を経験した. 症例は16歳の男性. 突然の大量下血の後意識消失し, 出血性ショック状態で来院した. 上部下部消化管内視鏡では異常を認めず, 上腸間膜動脈造影で, 回腸動脈支配領域にextravasationを認めた. 入院後10単位の輸血を要し, 下血が続いたため, 入院から4日目に開腹術を施行した. 小腸壁は全体に充血し浮腫状で腸間膜側に肥厚が目立ち, fat wrappingを認めた. 腸管切開により腸間膜側に縦走潰瘍を認めたためクローン病を疑い回腸を約80cm切除し, 端々吻合した. 摘出標本で腸間膜側に65cmにわたり連続する縦走潰瘍と2か所の浅い潰瘍を認めた. 病理組織学的には全層性の炎症所見と非乾酪性肉芽腫を認め, クローン病と診断された. クローン病で出血を初発症状とし, 緊急手術を要する事は極めてまれである. 自験例は術後6年7か月を経過した現在まで再発の徴候を認めていない.
  • 吉田 貢一, 山田 哲司, 森田 克哉, 中村 寿彦, 八木 真悟, 北川 晋, 中川 正昭, 関 雅博, 片柳 和義, 車谷 宏
    2002 年 35 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性. 腹痛を主訴に来院し麻痺性腸閉塞の診断で入院したが, 保存的治療により改善せず手術を選択した. トライツ靭帯から約40cmにわたる空腸に斑状の全層壊死を認め, 小腸部分切除術を施行した. 術後の血管造影では上腸間膜動脈, および下腸間膜動脈領域の多発性動脈瘤を認めた. 膠原病の検索では陰性であった. 術後43日目に血行再建術を施行した. 切除された動脈瘤の病理学的所見で中膜の分節状の欠損を認め, segmental arterial mediolysisと診断した. 腹部大動脈臓器分枝動脈瘤の診断に際してはsegmental arterial mediolysisの可能性を念頭に置き, より広範な動脈領域の検索が必要であると考え, 血行再建術についても積極的に検討すべきであると考えた.
  • 鈴置 真人, 菱山 豊平, 中村 豊, 平 康二, 竹内 幹也, 橋本 裕之, 安藤 政克, 近藤 哲, 加藤 紘之
    2002 年 35 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性. 便潜血反応陽性を指摘され, 近医を受診した. 下部消化管内視鏡検査にて結腸に多数のポリープと回腸終末部に径8mmの粘膜下腫瘍様病変が認められ, 生検の結果, 回腸終末部の病変はカルチノイド腫瘍と診断された. 当科を紹介され, 入院の後に回盲部切除を施行した. 切除標本において腫瘍径は8×7mm, 病理組織検査では深達度は粘膜下層深部, 所属リンパ節に1個の転移を認めた.
    回腸カルチノイドは本邦ではまれであり, 本症例はリンパ節転移を伴った例の腫瘍径としては最小であった. 一方, 小腸カルチノイドの報告の多い欧米では, 腫瘍径が10mm未満の症例のうち約20%にリンパ節転移が認められるとされている. これらから腫瘍径が小さい症例においても, リンパ節転移を念頭に置いた術式の選択が重要であると考えられた.
  • 西條 文人, 舟山 裕士, 内藤 広郎, 福島 浩平, 柴田 近, 北山 卓, 松野 正紀, 佐々木 巌
    2002 年 35 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は, 19歳の男性. 1999年9月, 下血にて発症し潰瘍性大腸炎の診断を受けた. その後再燃緩解を2度繰り返し, 2001年3月腹痛, 下血にて再燃し, 当院内科受診. ステロイド強力静注療法を再び施行したが, ステロイド離脱困難となったため, 手術目的に当科入院となった. 術前CT検査にて右総腸骨静脈血栓症, さらに肺血流シンチグラフィーにて肺塞栓を認めた. 術前より下大静脈フィルターを挿入し, ダンテパリンナトリウム (フラグミン(R)) を投与し, 大腸亜全摘術・回腸人工肛門造設術・直腸粘液瘻造設術を施行した. 術後の下大静脈造影では, 再び血栓形成を認めたため, 血栓溶解療法を施行した. 下大静脈フィルター抜去後は経過良好でワーファリンを経口投与し退院した. 潰瘍性大腸炎の治療にあたっては静脈血栓症の合併に留意し, 症例により抗血栓療法, 予防処置が必要と考えられた.
  • 中澤 哲, 梁 英樹, 吉田 一成, 秋山 和宏, 山下 由紀, 亀岡 信悟
    2002 年 35 巻 4 号 p. 431-435
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    消化器癌の転移様式のなかで骨髄転移はまれであり, 中でも大腸癌を原発とした播種性骨髄癌症の報告は極めて少ない. 今回, われわれは同時性肝転移を有する上行結腸癌の原発巣術後, 急激な転帰で死亡した1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する. 症例は57歳の女性. 1か月来, 腹部膨満を訴えイレウス状態で入院した. 肝転移 (H1) を伴う上行結腸癌と診断, まずイレウス解除を目的に右半結腸切除術施行した. 術後1週より38度台の発熱が続き, 腰~大腿部痛を訴え, LDH, ALPの著名な上昇を認めたため骨シンチグラフィーを施行, 多発骨転移と診断した. 3週目には出血傾向が出現, 末梢血中に骨髄芽球を認め, 骨髄生検にて骨髄転移を診断した. その後, 急速にDICに移行し術後53日目に死亡した. 1979年から2001年までの22年間における医学中央雑誌を検索した限り, 分化型大腸癌の骨髄癌症の報告は本邦初例であった.
  • 渡部 雅人, 石川 奈美, 亀岡 宣久, 的場 直行, 藤井 輝正, 増田 弘志, 佐藤 和洋, 岩田 隆子
    2002 年 35 巻 4 号 p. 436-439
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性, 卵巣嚢腫として経過観察されていたが, CTにて仙骨前神経原性腫瘍を疑われ当科入院した. 現症よりvon Recklinghausen病と診断され, 直腸診にて直腸後壁に弾性硬の腫瘤を触知した. CT, MRIにて仙骨前面に7cm大の胞形成を伴う充実性腫瘤を認めた. 血管造影では正中および左外側仙骨動脈より栄養されるhypervascular massを認めた. 悪性末梢神経性腫瘍を疑い, 腫瘍摘出術を施行した. 摘出標本は8×6×5cm大で重さは130gの黄白色調被膜に覆われた大小の胞形成を伴う充実性腫瘍であった. 病理学的に良性神経鞘腫と診断された.von Recklinghausen病に合併した仙骨前神経鞘腫は極めてまれで, 文献上, 欧州誌に類似報告が1例あるのみであった.
  • 窪田 公一, 高橋 弘, 小川 健治, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎
    2002 年 35 巻 4 号 p. 440-444
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    イレウスで発症した結腸癌の術後に, 減圧目的で留置中のイレウス管が誘因で腸重積症を発生した症例を経験したので報告する.
    症例は52歳の女性で, 腹痛と嘔吐で入院した. 腸閉塞症状のためにイレウス管を挿入し, 結腸癌に対して左結腸切除術を行った. イレウス管はバルーン解除のまま先端を回腸末端部に留置し, 術後4日目に排ガスの確認後に抜去した. 同日夜間に嘔吐が出現し左腹部に膨隆と圧痛を認めた. イレウス管の再挿入時の造影で空腸の術後腸重積症と判断された. 開腹所見では順行性3筒性腸重積を認めた. 腸重積は用手整復可能で同部位に腫瘤, 癒着, 捻れなどなく, 血行障害もなかった.
    自験例は順行性でイレウス管抜去直前の空腸の伸展が腸重積部位に一致することより, イレウス管の留置中に発生し, 術中所見やイレウス管との位置関係より, 口側空腸の蠕動運動による輪状筋の痙性収縮が弛緩した肛門側空腸に嵌入して発生したと考えられた.
  • 池田 公正, 島野 高志, 北田 昌之, 塚原 康生, 柴田 高, 福島 幸男, 秦 信輔, 赤木 謙三, 藤田 淳也, 奥山 正樹
    2002 年 35 巻 4 号 p. 445-449
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    腸管子宮内膜症の癌化例は極めてまれであり, 自験例を含めてこれまで世界で16例の報告をみるのみである. 今回, われわれは直腸子宮内膜症癌化の1例を経験したので報告する. 症例は56歳の女性. 25歳時子宮内膜症の手術を受けている. 主訴は下血で, 大腸内視鏡および注腸造影で上部直腸に中心潰瘍を伴う粘膜下腫瘍が認められた. 骨盤CTおよびMRIでは直腸間質内の嚢胞状リンパ節転移が認められた. 開腹時腫瘍は直腸前壁に存在し, 子宮・回腸と一塊となっており, 低位前方切除, 子宮・両側附属器・回腸合併切除を施行した. 病理組織学的検査で, 子宮内膜腺と周囲結合織を認め, これに接して腺癌の乳頭状増殖・浸潤を認めた. リンパ節転移も組織学的に確認された. 以上の所見より, 直腸子宮内膜症の癌化と診断した. 患者は, 術後5か月に多発性肝転移を来し, 10か月で死亡した. 腸管子宮内膜癌におけるリンパ節転移は予後不良を示唆する因子と考えられた.
  • 永野 靖彦, 川浦 範之, 松田 悟郎, 窪田 徹, 田中 邦哉, 遠藤 格, 関戸 仁, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    2002 年 35 巻 4 号 p. 450-454
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    71歳の女性.糖尿病にて近医通院中, 肝機能障害が出現したため腹部超音波検査をうけた. 肝右葉から内側区域にかけて7cm×5cmの腫瘍を認めたため, 当科紹介入院となった. 既往歴は4年前に他院で大腸ポリープ切除を受けていた. 超音波検査では被膜を有する内部均一で辺縁整の高エコーを呈した. 腹部CT検査では低吸収値を示し造影早期相で辺縁に造影効果を認めた. 腹部血管造影では周囲血管は圧排偏位し辺縁より造影される淡い濃染像を認めた. 以上より肝細胞腺腫を疑い, 肝中央2区域切除術を施行した. 病理組織診断はカルチノイドであった. 4年前に切除された大腸ポリープを検索すると, 径1.1cmの筋層浸潤のないカルチノイドであり, 肝腫瘍はその転移であると診断した. 腫瘍径2cm未満で筋層浸潤のない直腸カルチノイドの肝転移例は自験例を含め12例とまれであるが, 転移の可能性を考慮し, 厳重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 角谷 昌俊, 北上 英彦, 寺本 賢一, 池田 淳一, 須永 道明, 新里 順勝, 小沢 達吉, 加藤 紘之
    2002 年 35 巻 4 号 p. 455-459
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の女性.下痢, 体重減少, 顔面の紅潮を主訴に近医を受診. 低カリウム血症と腹部CTで膵尾部近くに腫瘤像を指摘され, 当科へ紹介入院となった. 入院時, 水様性下痢, 低カリウム血症, 顔面紅潮, 耐糖能異常を認め, WDHA症候群が疑われた. 動脈造影検査にて左上腹部に腫瘍濃染像を認め, 静脈血サンプリングで左副腎静脈のカテコラミンとVIPが著明高値であり, VIP産生性褐色細胞腫と診断した. 左副腎腫瘍摘出術を施行し, 病理組織学的所見ではVIP産生性神経節細胞腫と褐色細胞腫の併存と診断された. 術後, 前記症状は劇的に改善し, 外科的摘出が有効であった.
  • 森脇 義弘, 吉田 謙一, 松田 悟郎, 長谷川 聡, 山本 俊郎, 杉山 貢, 望月 康久, 高橋 利通
    2002 年 35 巻 4 号 p. 460-464
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
    ジャーナル フリー
    下行性壊疽性縦隔炎 (DNM) の縦隔ドレナージに前方からのアプローチを採用し, 良好な視野, ドレナージ効果を得たので報告する. 糖尿病, 慢性肝炎の既往がある56歳の男性. 両側頸部左前胸部蜂窩織炎, 縦隔炎で当センターへ転院. 後咽頭腔開大, 縦隔開大を認め緊急手術となった. 気管切開の可能性を考慮し頸部中央には切開線をいれない両側頸部斜切開とした. 浅頸, 深頸筋膜, 胸鎖乳突筋に壊死を認め, 深頸部血管鞘を開放, 大動脈弓までの縦隔ドレナージを施行した. 皮弁や胸鎖乳突筋を顎部と前頸部皮膚に縫合固定し創を開放した. 術後, 右頸部, 前頸部の炎症は急激に改善した. 気管切開は, 右前方斜めから施行し, 同時に右頸部創を縫合閉鎖した. 右前方からの縦隔ドレナージは, 第2, 第3肋骨胸骨付着部上を縦切開, 第3肋軟骨を4cm切除し直視下に上大静脈周囲に至った. 以降, 病状は安定し, 第52病日に転院となった.
  • 下間 正隆, 高野 学
    2002 年 35 巻 4 号 p. 465-466
    発行日: 2002年
    公開日: 2012/02/15
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