日本消化器外科学会雑誌
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36 巻, 2 号
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  • 田部井 功, 久保 宏隆, 矢野 文章, 稲田 晴生
    2003 年 36 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    経腸栄養管理中における胃食道逆流による誤嚥性肺炎予防のために栄養剤の粘度に着目した. 経腸栄養剤に含まれる遊離Ca2+とペクチンが結合し粘調度が高まる性質を利用, 胃食道逆流障害に起因する誤嚥性肺炎の予防に寄与できると考えた. 対象と方法: 1) LMペクチンを主成分とするREF-P1 (90g) と遊離型カルシウムを60mg/ml含有する市販経腸栄養剤K-3S (400ml) を混合したときの粘度の変化を調べた. 2) 4人の健常人ボランテアーに対し急速に経腸栄養剤を投与し, REF-P1投与の有無で胃食道pH モニタリングを行い, 胃食道逆流障害を観察した. 3) 全国9施設における16例の嚥下障害患者における使用アンケート調査を紹介する. 結果: 1) 経管栄養剤K-3Sの粘度は8cpであり, REF-P1を加えたとき粘度は900cpまで上昇し安定した. 2) K-3Sのみの胃食道逆流率が3 時間の検査中2.1%だったのに対し, REF-P1を使用した場合はわずか0.3%だった. 3) 毎食逆流の見られた患者はいなくなり, 嘔吐, 下痢, 熱発などの副作用を訴える患者数も減少した. まとめ: 胃食道逆流による誤飲性肺炎の予防のためペクチン液を開発, 投与することにより胃内で経腸栄養剤をゲル化し, 粘度を調整, 逆流を防止することができた. さらに投与時間の短縮が計れ治療計画上, 有用な経腸栄養剤投与法と思われる.
  • 辻 秀樹, 安藤 重満, 榊原 堅式
    2003 年 36 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 癌に対する根治性を保持しつつ, 術後の消化吸収機能を維持し, 胆石発生頻度を抑制する目的で, 迷走神経肝枝・腹腔枝温存胃癌手術を行った. 対象と方法: 左胃動脈を根部で結紮切離して逆行性に腹腔枝を遊離する方法で温存手技が容易になり, D2リンパ節郭清と同等のen bloc郭清ができることより, 神経温存手術を早期癌のみならず進行癌の一部まで適応を拡大した. 病巣占居部位が小彎側ならMP, NO, 大彎側ならSE (S1程度), 近傍のN1までとした. 1994年からの6年3か月間で, 術後2年以上経過した137例を対象に術後のQOLを中心に検討した. 術式別では幽門側胃切除術 (VP-DG) 99例, 幽門保存胃切除術 (VP-PPG) 22例, 胃全摘術10例, 噴門側胃切除術6例であった. 術後の体重の減少率と胆石発生率についてはVP-DG・PPGの121例を対象に検討した. 対照としてD2郭清を伴う幽門側胃切除術66例 (D2-DG) を用いた. 結果: 137例のうち早期癌103例, 進行癌34例であった. VP-DG・PPG群では術後3か月から体重の回復が見られ, 体重の減少率はVP-DG・PPG群95.7%, D2-DG群91.5%で, 両群間に有意差を認めた (P<0.0001). 全摘術では90.2±6.3%, 噴切術94.3±6.5%であった. 胆石発生率はVP-DG・PPG群1.7%(2/121), D2-DG群13.6%(9/66) で, 両群間に有意差を認めた (P=0.0016). 結語: 迷走神経温存手術は術後のQOLの向上に有用であることが示された. また温存手術を進行癌の一部に行ったが, 今後さらに検討する必要があると思われた.
  • 石黒 秀行, 桑原 義之, 篠田 憲幸, 佐藤 篤司, 木村 昌弘, 小山 浩, 寺下 幸夫, 小西 滋, 杉浦 弘典, 藤井 義敬
    2003 年 36 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    右側大動脈弓に合併した早期食道癌の1手術例を経験した. 症例は58歳の男性. 健診時の上部消化管内視鏡検査にて異常を指摘され, 当院を紹介された. 術前の諸検査から右側大動脈弓を伴う食道表在癌と診断し, 食道亜全摘術・胸骨後胃管再腱術を施行した. 食道への到達経路には左開胸を用いた. 術中所見では, 下行大動脈に憩室がみられ, 左鎖骨下動脈が同部より分岐していたことから, stewart分類IIIb型の右側大動脈弓と診断した. また, 食道癌の占居部位はこの大動脈憩室と左動脈管索が食道を圧排する部位に一致していた. 右大動脈弓に合併した食道癌の報告はまれで, 本邦では自験例を含め7例のみであった.
  • 藤田 武郎, 川崎 賢祐, 大村 泰之, 西 英行, 福田 和馬, 間野 正之, 小松原 正吉
    2003 年 36 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で, 発熱, 腹痛にて当院救急外来を受診. 腹部CTで造影効果中等度の内部不均一な, 約11cm大の腫瘍性病変を胃大弯側近傍に認めた. 腹部血管造影では右胃大網動脈より腫瘍は濃染された. 胃大彎を原発とする間葉系腫瘍を疑い開腹手術を行った. 術中所見および組織学的所見より大網原発腫瘍と診断した. また免疫染色にてCD34, C-KITともに陽性であり大網原発のgastrointestinal stromal tumorと診断した. 術後1年3か月の現在, 無再発で生存中である.
  • 三方 彰喜, 岩瀬 和裕, 桧垣 淳, 田中 靖士, 吉川 正人, 岸本 朋乃, 上池 渉
    2003 年 36 巻 2 号 p. 96-99
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性. 1997年10月, 穿孔性十二指腸潰瘍に対し腹腔鏡下大網充填術を施行し, 2受容体拮抗剤の投与を行った. 術後6か月目に行った内視鏡検査にて, 潰瘍の治癒を確認し, 2受容体拮抗剤の投与を中止した. 1998年6月15日激しい上腹部痛が出現し, 当院受診. 腹部X線検査にて腹腔内遊離ガス像を認め, 十二指腸潰瘍の再穿孔を疑い緊急手術を施行した. 腹腔鏡下に観察すると前回同様十二指腸球部前壁に穿孔を認めた. 発症後短時間であり, 再度, 大網充填術を施行した. 再手術後の内視鏡検査にてH. pyroli陽性であり除菌を行った. 4か月目の内視鏡検査では十二指腸に潰瘍病変は認めなかったが, 2受容体拮抗剤の投与を継続し, 術後3年11か月経過した現在, 潰瘍の再発は認めていない. 腹腔鏡下大網充填術後の再穿孔例に対しても腹腔鏡下大網充填術は考慮すべき術式であると思われた.
  • 村岡 篤, 渡辺 信之, 池田 義博, 勝野 剛太郎, 國土 泰孝, 立本 昭彦, 香川 茂雄, 津村 眞, 鶴野 正基
    2003 年 36 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の女性. 超音波スクリーニングにて肝腫瘍を指摘される. 肝S8に約8cm大の壁が不整な嚢胞性腫瘍と両葉に多発小結節を認め, 悪性肝腫瘍とその肝内多発転移が強く疑われたが確定診断に至れず, 肝腫瘍破裂の可能性も考慮して手術を施行. 術中迅速標本で結節は良性病変と診断されたため, 結節を一部残存させたまま肝右葉切除術を行った. 病理組織で主腫瘍は肝カルチノイド, 多発結節は結節性再生性過形成 (NRH) と診断された. 結節は術後消失し, 組織学的に肝類洞の拡張, 異常血管形成がみられたことから, 肝内異常循環による発生が推察された. 術後4年以上経た現在まで肝カルチノイド, NRHともに再発の兆候は認めていない. 本症例は, 肝カルチノイドにNRHが併存した非常にまれな症例で, 肝結節性病変の発生機序に関して大きな情報をもたらすと考えられた.
  • 飯田 拓, 山際 健太郎, 八木 眞太郎, 藤井 幸治, 濱田 賢司, 水野 修吾, 田端 正己, 横井 一, 伊佐地 秀司, 上本 伸二
    2003 年 36 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は30歳の女性. 1991年頃より心窩部痛が出現, 腹部超音波・CTにて肝外側区域に約3.5cm大の嚢胞性病変を指摘された. 1996年には肝病変は11cm大に増大し, 塩酸ミノサイクリン局注療法を施行された. 1998年のCTにて再度6.5cm大に増大, 嚢胞壁の肥厚および嚢胞内隔壁が出現したため, 肝嚢胞腺腫または嚢胞腺癌と診断, 肝外側区域切除術を施行した. 摘出標本は7.5×6×4cm大の多房性病変で, 組織学的には上皮細胞に悪性所見なく, 嚢胞壁は紡錘状の卵巣様間質細胞で構成されており, hepatobiliary cystadenoma with mesenchymal stroma (CMS) と診断された. 検索しえたCMS本邦報告例は13例で全例女性であった. 自験例では卵巣様間質細胞は免疫化学染色でER・PgR陽性であった. CMSは予後良好とされるが, malignant potentialを有する前癌病変であり, 癌化例も認めることから積極的な外科的切除が必要と考えられた.
  • 武田 和永, 長堀 薫, 大田 貢由, 秋山 浩利, 木村 英明, 長峰 弘太郎, 関戸 仁, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    2003 年 36 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    拡大肝切除後の遷延した高ビリルビン血症に対して, 集学的治療を実施し, 奏効した症例を経験したので報告する. 症例は58歳の男性. 診断はS状結腸癌術後の転移性肝癌でS1, S5以外の全亜区域に転移巣を認めた. これに対し, 2回に分けて肝切除を施行した. 術直後から発熱とビリルビン値の上昇を認め, 肝不全に陥った. 血液培養からMethicillin-resistant Staphylococcus epidermidis, Enterococcus faecalisが検出され, 肝生検にてディッセ腔側の肝細胞索に線維化を認めた. 残肝は, 術後43日で術前体積の96%まで腫大した. 感染が制御された後も, 高ビリルビン血症が依然として持続した. これに対し, 高圧酸素療法, 利胆剤, フェノバール, ステロイド投与を実施し, ビリルビン値が改善した. 感染制御後に使用した利胆剤とステロイドによる肝細胞, 胆管上皮保護作用や, 高圧酸素療法による肝細胞の酸素化作用が有効であった可能性が示唆された.
  • 小林 広典, 杉原 重哲, 金子 隆幸, 原田 洋明, 生田 義明, 江上 哲弘, 瀬戸口 美保子
    2003 年 36 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の女性. 主訴は右季肋部痛で胆石症の診断にて手術目的紹介となった. 腹部超音波・CT検査にて胆嚢壁は不規則に肥厚し, 体部にhigh densityな部を認め, 胆嚢癌を否定できず, 開腹胆摘術を施行した. 胆摘後, 胆嚢を検するに胆嚢底部から頸部まで乳頭状に増殖した充実性の腫瘤が胆嚢内腔を占め, 術中迅速病理では肉腫との返事でリンパ節郭清を伴う胆管切除および肝床部切除術を追加した. 病理組織学的には腺癌と紡錘形細胞肉腫からなり, 内部に類骨形成を認める胆嚢癌肉腫と診断した. 術後4年経過した現在再発の兆候を認めていない.
  • 高見沢 潤一, 藤岡 進, 加藤 健司, 待木 雄一, 朽名 靖, 石川 玲, 吉田 カツ江
    2003 年 36 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳のボリビア人女性で, 1997年10月27日, 他医にて腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた. 慢性胆嚢炎の病理組織診断であった. 1998年12月より右悸肋部痛を認め, 肝膿瘍として保存的に加療された (別の他医). その後右悸肋部痛が続き, 腹壁腫瘤を認め, 1999年7月26日当科入院となった. 腹部CT検査にて腫瘤は肝床部から肝実質へおよぶ径約8cmの充実性部分を伴う多嚢胞病変とそれらとは独立した嚢胞病変を皮下および腹腔内に複数個認め, 8月11日手術を施行した. 肝床を中心とした腫瘤は十二指腸球部, 横行結腸に浸潤していた. また, 前回術創の皮下から腹腔内, 大網に嚢胞性病変を計4個認め, 肝床切除, 胃, 十二指腸, 横行結腸合併切除, 腹壁腫瘤摘出を施行した. 術後の病理組織診断では腫瘤はすべて粘液嚢胞腺癌であった. 初回手術時の切除胆嚢を再検したところ, 一部に同様な粘液嚢胞腺癌を認め, 最終的に腹腔鏡下胆嚢摘出術後に肝床, 皮下, 腹腔内に再発した胆嚢粘液嚢胞腺癌と診断した.
  • 村田 聡一郎, 井坂 直秀, 山田 圭一, 稲川 智, 阿竹 茂, 辻 勝久, 石川 詔雄, 稲留 征典
    2003 年 36 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    AIDSが誘因となった播種性非定型感染症にて腸閉塞をきたした1例を経験した. 症例は48歳の男性. 主訴は腹痛と嘔吐であった. 開腹既往歴なし. 1996年カリニ肺炎にてAIDS発症, その後サイトメガロ網膜炎, 陰部ヘルペス, 頸部リンパ節腫脹を伴う播種性非定型抗酸菌感染症を発症し当院外来にて加療中であった. 2000年に左下腹部痛を主訴に当院を受診した. 身体所見上左下腹部圧痛を認め, 諸検査にて腸閉塞と診断され, 入院した. 入院3日後症状増悪し緊急開腹手術を施行した. 開腹所見にて, 横行結腸と癒着しarch を形成する上部空腸腸間膜リンパ節の著明な腫大を認め, 空腸が陥入し腸閉塞となっていた. Archを解除し陥入する小腸を引き出したところ, 腸管の色調は著明に改善を認めたために腸切除を行うことなく手術を終了した. 術後25日目に退院したが, 術後123日目にAIDSの増悪にて死亡した. AIDSが誘因となった腸閉塞は本邦でも今後増加する可能性があり, 文献的考察を加え報告する.
  • 小林 靖幸, 戸田 央, 大場 宗徳, 中谷 雄三
    2003 年 36 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の女性. 近医で両側卵巣腫瘍・腹水を指摘され当院入院となった. CTにて両側卵巣に多房性腫瘤を認め, 転移性卵巣腫瘍が疑われたため, 消化管の精査を行ったところ上行結腸癌を指摘された. その後両側胸水出現したため胸・腹水細胞診行ったが, いずれも陰性であった. 臨床所見より癌性胸腹膜炎の可能性が高いと診断し, 化学療法施行後手術を行った.開腹時両側卵巣に15cm大の多房性腫瘍を認め, 両側卵巣切除・単純子宮全摘, 上行結腸癌に対しては右半結腸切除 (D3) を施行した. 術中腹水細胞診は陰性であった. 病理組織検査では原発巣は高分化腺癌で, 卵巣腫瘍は転移性腫瘍であった. 11病日に胸水は消失し, 両側卵巣転移によるMeigs症候群と診断した. 消化管腫瘍の卵巣転移によるMeigs症候群は非常にまれであるが, 診断・治療に当たってはその可能性を考えた積極的な精査を行うことが大切である.
  • 和久 利彦, 渡辺 和彦
    2003 年 36 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の女性. 右側腹部痛, 発熱を主訴に当院を受診. 腹部超音波検査および腹部CT検査にて径13cm大の単房性嚢胞を認めた. 腹痛の増強とともに筋性防御が出現し, 緊急開腹術を施行した. 表面平滑で巨大な腫瘤が横行結腸間膜から発生しており, 横行結腸に強固に癒着していた. 腫瘤とともに横行結腸を合併切除した. 腫瘤は15×12×10cm大の単房性嚢胞で, 嚢胞内容液は悪臭を伴う褐色膿性液であった. 病理組織学的には嚢胞壁は線維性結合織を主体に形成され, 脂肪織を巻き込み壊死と多数の好中球浸潤を伴っていたが, 内腔面・嚢胞内容液に上皮細胞は認めなかった. 肉眼的・病理組織学的に横行結腸との交通は認められなかった. 以上より, 感染性仮性腸間膜嚢胞と診断した. 感染を伴い急性腹症として発症した仮性嚢胞の報告例はなく, 自験例はきわめてまれな1例と考えられた.
  • 白石 好, 磯部 潔, 森 俊治, 中山 隆盛
    2003 年 36 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    回腸狭窄と同部位の腸管腹壁瘻による皮下膿瘍を合併したCrohn病に対し, 腹腔鏡補助下手術を施行した. 症例は30歳の男性, 1996年発症のCrohn病でステロイドと経腸栄養による内科的治療を施行していた. 2001年10月23日回腸終末の狭窄を伴う瘻孔に起因する右下腹部の皮下膿瘍を認めたが, 切開排膿で軽快した. しかし, 2001年12月17 日同部位に皮下膿瘍が再燃し, 狭窄によって経腸栄養でも腹痛を認めるようになった. 狭窄に対しては内視鏡下バルーン拡張術を施行したが奏効せず, 外科的治療の適応と判断した. 禁食, 高カロリー輸液で炎症軽快とステロイド減量を待ち2002年2月19日腹腔鏡補助下右結腸切除, 回腸切除術を施行した. 回盲部と腹壁に強度の癒着を認めたが容易に剥離可能で小切開創より病変部を露出し切除吻合した. 術後は合併症なく軽快退院した. 瘻孔や膿瘍を形成するCrohn病も適切な保存的管理で腹腔鏡手術の適応となると考えられた.
  • 吉田 徹, 馬場 祐康, 下沖 収, 阿部 正, 菅井 有, 幅野 渉, 上杉 憲幸, 中村 眞一, 斎藤 和好, 野水 整
    2003 年 36 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    若年性大腸癌でミスマッチ修復遺伝子の異常を確認した症例を報告する. 症例は28歳男性. 下痢を主訴に来院した. 下腹部に小児頭大の腫瘤を触知し, 直腸診で肛門縁から3cmに全周性の腫瘤を認めた. CT, MRIにて骨盤腔内に充実性腫瘤を認め, 生検の結果直腸癌の診断で手術を施行した. 病理組織学的検査では高分化型腺癌, a1 n0 ly1 v1 stage IIで粘液産生が著明であった. 癌部の遺伝子不安定性の検索を行ったところhigh-frequency Microsatellite insta-bility (MSI-H) であった. germ lineでの検索でhMSH-2遺伝子にinframe変異を認め, 遺伝性非ポリポージス大腸癌と診断した. 散発例大腸癌でも, MSI-Hの症例は家族を含め, 癌の早期発見のために注意深いfollow upが必要である.
  • 保田 尚邦, 渡辺 誠, 田中 啓貴, 斎藤 加奈, 渡辺 健一, 神坂 幸次, 樋渡 克俊, 草野 満夫
    2003 年 36 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性で, 1990年2月に当院内科で小腸大腸型のクローン病と診断されていた. 2000年3月22日, 腹痛と腹満を主訴に来院した. 入院時現症では発熱や頻脈などの中毒性所見は認めず, 腹部所見では臍左側を中心に圧痛を認めるも腹膜刺激症状は認めなかった.注腸検査にて横行結腸から下行結腸を中心に拡張した腸管を認めた. 保存的治療に抵抗性のため手術を施行した. 手術所見では, 右側結腸の著しい短縮を認め, 横行結腸と下行結腸を中心に巨大結腸が認められたため, 結腸全摘術を施行した. また, 小腸狭窄を認め40cmの小腸を部分切除した. さらに, 5時方向に2次口のある痔瘻を認めたためLay openを施行した. 非中毒性巨大結腸症に対しても厳重に臨床症状をモニターリングし, 保存的療法が無効であれば外科治療を考慮するべきと考えられた. 小腸狭窄, 痔瘻と非中毒性巨大結腸症を呈したクローン病の1例を経験したので報告した.
  • 藤井 祐三, 柳衛 宏宣, 長谷部 浩亨, 吉崎 巌, 江里口 正純
    2003 年 36 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は18歳の男性, 下腹部腫瘤と頻尿を主訴に来院. 下腹部正中に小児頭大の無痛性で可動性不良の硬い腫瘤を触知した. エコー, CT, MRI, 注腸造影にて左尿管の途絶, 左水腎症, 直腸狭窄像を呈し, 骨盤腔内に最大径18cmの充実性腫瘍を認めた. 血管造影では血管に富む腫瘍を認め, 左閉鎖動脈と上直腸動脈に栄養されていた. 術前腫瘍塞栓術を施行し, 腫瘍とともに左尿管, 膀胱, 左精嚢, 直腸を合併切除した. 再建は, 左尿管と膀胱との間にS状結腸を間置し, 直腸は低位前方切除とした. 摘出標本では大小さまざまな不規則な血管腔の周囲に紡錘形の細胞の増生を認め, 分裂像や核異型性に乏しく低悪性度のhemangiopericytomaであった. 術後6年, 再発転移を認めていない. 本疾患は病理組織像のみからでは良悪性の鑑別が困難であり, 今後とも長期にわたる経過観察が必要と思われる.
  • 浜井 洋一, 棚田 稔, 青儀 健二郎, 石崎 雅浩, 久保 義郎, 大住 省三, 栗田 啓, 佐伯 英行, 高嶋 成光
    2003 年 36 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    近年, 本邦でも肺塞栓症の増加傾向が指摘されている. 我々は1994年1月から2001年3月までに, 消化器外科術後の急性肺塞栓症を5例経験した. これは同時期の全身麻酔下消化器外科手術の0.2%であった. 軽症であった1例以外は, 歩行開始日のトイレ歩行時にショック症状にて発症した. 術中に波動型末梢循環促進装置を使用し予防を行っていた症例にも発症を認めた. 肺血流シンチ, 胸部CTにて診断を行い, 治療は抗凝固療法としてヘパリンを, 血栓溶解療法としてウロキナーゼ, またはtissue plasminogen activator を投与した. 5例中3例を救命しえたが, 血栓溶解療法後に出血性脳梗塞を発症した症例と, 心肺停止にて発症した症例は救命できず, 死亡率は40%であった. 肺塞栓症はいったん発症すると重篤となる場合が多く, 高危険群には弾性ストッキングの着用, ヘパリン投与など, さらなる予防法を考慮する必要があると思われた.
  • 山口 佳之, 川渕 義治, 大下 純子, 峠 哲哉
    2003 年 36 巻 2 号 p. 171
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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