日本消化器外科学会雑誌
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36 巻, 3 号
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  • 須郷 広之, 佐藤 泰然, 松本 浩次, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄
    2003 年 36 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 肝癌切除後の再発例を対象に再発後の予後因子を多変量解析を用いて検討した. 対象: 肝癌治癒切除後, 術後再発を認めた143例を対象とした. 検討項目は初回手術時因子として18項目, 再発時因子として6項目の計24項目を選択した. 結果: 再発後生存率の比較では初回切除時因子のうち性別(男性), 術前transcatheter arterial chemoembolization (TACE)(無), 肝硬変例, 被膜浸潤(有), 門脈浸潤(有)で, また再発時因子では無再発期間(<1.1年), 肝外再発 (有), 残肝再発腫瘍数 (多発), 残肝再発範囲(多区域), 再発後治療 (非切除), 再発clone (肝内転移)のそれぞれで有意に予後不良であった. 以上11因子の多変量解析の結果, 肝外再発 (Risk ratio;9.040), 肝硬変 (RR;6.794), 術前TACE (RR; 3.575) の3因子が独立した再発後の予後因子として有用であり, 初回手術時の腫瘍因子や治療因子の関与は認められなかった. 結語: 再発肝癌では肝外再発の有無, 肝硬変の有無, 術前TACEの3因子が独立した予後因子として重要であり, この結果から術前TACEが再発後の予後改善に寄与する可能性が示唆された.
  • 岡田 憲幸, 和田 道彦, 正井 良和, 宮原 勅治, 橋本 隆, 今井 史郎, 柳橋 健, 小西 豊, 梶原 建熈
    2003 年 36 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 急性膵炎に伴って生じた膵仮性嚢胞を分類し, 手術適応と予後について検討した. 対象と方法: 当院における過去15年間の急性膵炎に伴う膵仮性嚢胞症例38例を手術施行例と非施行例に分類し, その経過と仮性嚢胞の性状, 手術適応と術式, 予後を検討した. 結果: 保存的治療に抵抗し手術を要した症例は全体で21例 (55%) あった. 手術を要した症例は保存的症例に比べ, 膵仮性嚢胞が単房性のもの, 膵尾部のもの, 膵管との交通があるもの, 嚢胞最大径の大きいものにそれぞれ多く見られた (統計上の有意差はなかった). 手術は切除術13例 (膵体尾部切除11例, 膵頭十二指腸切除2例), 嚢胞消化管吻合4例, 開腹ドレナージ4例であった. 開腹術の適応は次の4種類に分類できた.(1) 難治性で腹部症状が軽快しないもの11例, (2) 膿瘍化したもの4例, (3) 嚢胞から出血の見られたもの3例, (4) 腫瘍性病変の疑われたもの3例であった. 出血の2例, 感染の1例に対し緊急手術が施行された. 全手術症例とも1度軽快退院したが, 8例が膵炎で再入院し3例に仮性嚢胞の再発がみられた. 結語: 膵仮性嚢胞の最大径が大きく難治性のもので膵炎の入院を繰り返している症例は手術適応を考慮しながら治療する. 嚢胞内出血や感染, 膿瘍を生じたときは緊急手術適応となりうる. 手術だけでは膵炎の再燃する症例もあり, 嚢胞に対する治療とともに膵炎に対する治療が大切と考えられた.
  • 濱洲 晋哉, 横尾 直樹, 北角 泰人, 足立 尊仁, 吉田 隆浩, 浦 克明, 田中 善宏, 長田 博光, 岡本 清尚
    2003 年 36 巻 3 号 p. 186-191
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    最近数年間に3例の胃管癌切除例を経験したので報告する. 症例1は68歳の男性. 平成6年に食道亜全摘, 胸骨後胃管再建術を施行した. 2年後, 再建胃管にI型早期胃管癌を認め, 内視鏡的粘膜切除術を3回施行したが, 3年7か月後に肺梗塞で死亡した. 症例2は55歳の男性. 平成5年に食道亜全摘, 胸骨後胃管再建術を施行した. 7年後, 再建胃管にIIc+III型早期胃管癌を認め, 部分切除術を施行した. 1年10か月後の現在, 再発徴候はなく生存している. 症例3は76歳の男性. 平成元年に食道全摘, 胸骨後胃管再建術を施行した. 12年後に3型進行胃管癌を認めた. 胃管亜全摘術を施行したが, 1年2か月後に再発のため死亡した. 一般に胃管癌の予後は不良とされるが, 早期発見による長期生存例の報告も多くみられる. 食道癌術後は胃管癌の発生を念頭におき, 定期的な内視鏡検査による早期発見につとめるべきと考える.
  • 山田 敬之, 六本木 隆, 前村 道生, 本間 学, 山田 達也, 竹吉 泉, 大和田 進, 森下 靖雄
    2003 年 36 巻 3 号 p. 192-195
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は77歳の女性で, 1994年4月に集団検診で胃角部の異常を指摘され, 同年6月の胃内視鏡検査で大きさ3×3cm, 0-IIc, 生検で印環細胞癌と診断された. 治療目的で当院へ紹介されるも, 患者が治療を拒否したため, 経過観察となった. 2002年2月に上腹部痛で近医を受診し, 胃内視鏡, 胃X線検査で胃角部前壁にfoldの集中を伴う大きさ5×5cmの陥凹性病変を認め, 同部の生検で印環細胞癌と診断された. 画像診断で所属リンパ節転移や遠隔転移を認めなかった. 2002年2月に手術診断sT1 (SM), sN0, sH0, sP0, sM0, Stage Iaで幽門側胃切除, D2郭清を施行し, B-I法で再建した. 病理はsig, pType 0-IIc, pT1 (M), pN0, sH0, sP0, sM0, Stage Iaであった. ある種の早期胃印環細胞癌は長期間粘膜内に留まり, 進行しないことが示唆された.
  • 鈴木 潤, 長島 郁雄, 白鳥 昌利, 小出 泰平, 安達 実樹, 今村 哲夫, 志賀 淳治, 冲永 功太
    2003 年 36 巻 3 号 p. 196-201
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性. 黄疸を主訴に入院. 経皮経肝胆嚢造影にて, 総肝管に限局した狭窄像を認めたため, 胆管癌を疑い開腹手術を施行した. 手術時上部胆管に限局した狭窄部を含めた肝外胆管切除, 胆嚢摘出術, 肝管空腸吻合術を施行した. 病理組織学的に, 狭窄部には悪性所見を認めず, 胆管周囲の繊維化と著明な慢性炎症浸潤を認め, 限局型の原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis; PSC) と診断された. 術後8か月を経過した現在, 再発の兆候もなく健在である.
    過去の文献的考察をふまえ, 本症例のような限局型PSCは, びまん型で予後不良な定型的PSCとは, 明らかにその臨床像と経過が異なっており, 同一疾患として扱うことの妥当性について, 今後検討を加えるべきと考えられた.
  • 合田 文則, 石村 健, 出石 邦彦, 岡野 圭一, 唐澤 幸彦, 臼杵 尚志, 前場 隆志, 前田 肇
    2003 年 36 巻 3 号 p. 202-207
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で, 下部胆管癌による閉塞性黄疸に経皮経肝胆道ドレナージ (以下, PTBD) を施行. 経腸栄養や利胆剤併用での減黄は不良でPTBD後4週目までの胆汁量は120ml/日, 清水の減黄率b値は-0.0189であった. 遷延性閉塞性黄疸と診断し, 茵陳蒿湯と自家胆汁投与を開始した. 胆汁量は410ml/日と増加し, 黄疸は急速に改善しPTBD後7周目までの清水の減黄率b値は-0.0504となった. 膵頭十二指腸切除術による根治術を施行しトラブルなく退院した.
    近年, 漢方製薬茵陳蒿湯は胆汁鬱滞に起因する肝細胞のアポトーシスを抑制し, 閉塞性黄疸からの障害肝の回復を促すとの知見が得られており, 閉塞性黄疸の胆道ドレナージ時には自己胆汁投与などとの併用が有用な薬剤と考えられた.
  • 鈴村 潔, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 渡邉 芳夫, 金岡 祐次, 鈴木 正彦, 菅原 元
    2003 年 36 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除後15年後に残存尾側膵に発生した膵癌に対し残膵全摘術を行った1例を報告した.
    症例は70歳の女性で, 1983年4月に十二指腸乳頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を行っている. 1997年6月頃から, 心窩部痛, 背部痛が出現し, CT, MRIで膵空腸吻合部を中心に腫瘤像を認め, 腫瘍マーカーの上昇を認めた. CTガイド下生検で悪性所見が得られず, 経過観察していたところ腫瘤の増大を認めた. その後の検査の結果残膵に発生した膵癌と診断し1998年8月, 残膵全摘術, 脾摘出術を行った. 腫瘤は組織学的にpapillary adenocarcinomaと診断した. 本症例は膵頭十二指腸切除術後15年を経過していること, 初回切除時の病理組織学的所見で膵断端に癌細胞や異型細胞を認めなかったことから異時性重複癌の可能性が高いと考えられた.
  • 十二指腸切除術後膵胃吻合部癌の1例
    蔡 建強, 辻 龍也, 渡邉 すぎ子, 高森 啓史, 金光 敬一郎, 平岡 武久, 川筋 道雄
    2003 年 36 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部癌に対する幽門輪温存膵頭十二指腸切除後5年目に発生した残膵癌に対し残膵全摘を行い根治切除をしえた1 例を経験したので報告する. 患者は75 歳の女性で, 1994年9月十二指腸乳頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し, 膵断端は組織学的に癌浸潤陰性であり, 膵胃吻合により再建した. 術後経過良好であったが5年後の1999年11月検診目的で施行した胃内視鏡検査で胃体中部後壁の膵胃吻合部に中心陥凹を有する隆起性病変を認め生検ではtubular adenocarcinomaであった. 隆起の主座は残膵吻合部にあったので残膵癌と判断し残膵全摘, 胃幽門側切除, 摘脾を行い胃空腸吻合で再建した. 最終病理組織診断は膵乳頭腺癌で (ts4, s0, rpo, pv0, a0, t1b, n0, stage II) であった. 十二指腸乳頭部癌切除術後の残膵癌の切除報告は極めてまれであり, 根治切除ができた貴重な症例と考えられるので重複癌や転移再発癌との鑑別も含めて報告する.
  • 田中 善宏, 横尾 直樹, 北角 泰人, 白子 隆志, 田中 千弘, 浦 克明, 濱洲 晋哉, 長田 博光, 岡本 清尚
    2003 年 36 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔内出血を契機に発見された退形成性膵管癌 (巨細胞型) の1例を経験した. 症例は84歳の女性. 主訴は上腹部痛. 腹部US で腹水貯留と膵尾部の径4.5cm大の腫瘤を認め, 腹部造影CTで脾静脈から門脈本幹への陰影欠損と, 胃の大彎側に怒張した血管影を認めた. 緊急開腹術により, 怒張した大網静脈からの出血と判明し, 結紮止血術を施行した. また, 膵尾部腫瘤の組織生検にて, 膵巨細胞癌と診断されたが, 術後30日目に肺・肝転移を認めたため, 根治術の施行は断念した. その後, 膵腫瘤の増大・肝転移は進行するものの, 肺転移は術後1年目には消失するという稀有な経過をたどった. 本疾患は, 血管への浸潤性が高く, 自験例でも脾静脈の腫瘍塞栓による側副血行路の発達・怒張・破綻が腹腔内出血の原因と考えられた.本疾患の手術適応については, その極めて高い血行性転移率を考慮し, 慎重に検討する必要がある.
  • 小松 周平, 内藤 弘之, 田村 祐樹, 目片 英治, 川口 晃, 阿部 元, 遠藤 善裕, 来見 良誠, 花澤 一芳, 谷 徹
    2003 年 36 巻 3 号 p. 224-228
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    小腸出血は, 出血部位の同定が難しく, 診断, 治療において難渋することが多い. 症例は75歳の女性で, 約半年の反復するタール便と貧血で来院した. 小腸造影および注腸検査で, 上行結腸に多発する憩室と, 回腸末端に約2cmの隆起性病変を認め, 回盲部切除術を施行した. しかし, 一か月後に再びタール便が出現し, 腹部血管造影を施行したところ, 空腸第3動脈の動脈枝末梢に, 動静脈奇形 (AVM) が存在することが確認された. 手術は, 術直前に予め血管造影で動静脈奇形が確認された第3空腸動脈にカテーテルを留置し, 術中に留置カテーテルからインジゴカルミンを注入して病変部位を含む支配領域を染色して切除する方法を行った. 手術後の経過は良好で, 現在, 消化管出血を認めていない. 小腸出血の診断には, 血管造影が有効であり, 術中カテーテル留置による病変部位を含む染色法が, 開腹時の切除部位同定に極めて有効であると考えられた.
  • 竹並 和之, 吉井 克己, 松村 直樹
    2003 年 36 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    癌腫に伴う腸重積症例は比較的まれであり, なかでも横行結腸での発生はさらにまれである. 横行結腸癌による成人腸重積症の1例を報告し文献的考察を加えた.
    症例は88歳の女性. 腹痛, 腹部膨満感を主訴にイレウスの診断で入院. 上腹部に腫瘤を触知し, 腹部超音波検査で同部位に横断像でmultiple concentric ring signを縦断像でhay-fork signを認めた. 腹部CT検査で横行結腸が肛門側に順行性に陥入し, 先進部で腫瘤影を認めた. 横行結腸癌による腸重積を考え横行結腸切除術を施行した. 腫瘍は径6.5×4.5cmの全周性の1型で, 組織学的には粘液癌で深達度se, ly1, v1, n0, Stage IIであった.
    1990年から現在までに報告された横行結腸癌による腸重積症は自験例を含め8例のみであった. 大腸癌による成人腸重積症の本邦報告73例を集計し, その臨床的特徴を再考した.
  • CEA高値を考察
    櫻井 孝志, 立松 秀樹, 山高 浩一, 山本 貴章, 有澤 淑人, 川原 英之
    2003 年 36 巻 3 号 p. 234-239
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は84歳の女性. 平成14年2月腹痛・嘔吐・下痢・血便を主訴に入院. 既往歴として高血圧・狭心症・糖尿病があり内服治療中であった. 便細菌培養にて病原性大腸菌O-1を検出, CT・下部消化管内視鏡検査にて下行結腸に壊死を伴う炎症を認め, 細菌性腸炎による脱水を誘因とした虚血性大腸炎と診断した. 入院翌日のCEAが106.1ng/mlと異常高値を示し, 悪性腫瘍の検索を行ったが病変を認めず. 26日後のCEA再検査では正常化していた. 3月13日下行結腸切除術および人工肛門造設術施行した. 病理診断上悪性所見を認めず, 免疫組織化学染色によるCEA局在も正常であった. 検索上, 虚血性腸炎におけるCEA上昇は, 今らの1例報告のみであった. CEA高値を呈した機序は不明であった. 発症時に細菌性腸炎に罹患していたことによるCEA産生活性化の可能性や, 膿瘍腔内に便汁が多量に貯留した可能性などの複合的な要素の関与が考えられた.
  • 辻江 正徳, 柴田 信博, 野村 孝, 奥田 博, 竹田 雅司
    2003 年 36 巻 3 号 p. 240-244
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性. 下腹部不快感を主訴に近医受診し, 便潜血陽性のため当院を紹介された. 大腸内視鏡検査にて直腸に隆起性病変を認め, 生検にて腺癌と診断した. MRIでは, 腸管壁外へ充実性に発育する粘膜下腫瘍様の形態を示していた. 子宮および回腸に浸潤していたため, 前方切除術, 子宮・両側付属器合併切除と回腸部分切除を行った. 病理組織では腫瘍の大部分を占める内分泌細胞癌の表層に分化型腺癌の小巣が数カ所併存しており, さらに内分泌細胞癌の中にカルチノイド腫瘍様の像を示す部位が見られた. 患者は多発肝転移, 大動脈周囲リンパ節転移および局所再発のため術後5か月で死亡した. 内分泌細胞癌は高率に粘膜内に分化型腺癌を有しているが, 本例のようにカルチノイド腫瘍に類似した組織の混在はまれであるので報告した.
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