はじめに: 直腸肛門奇形術後症例の肛門感覚能について検討した報告はない. そこで肛門管粘膜電流感覚閾値について検討を試みた.
対象: 直腸肛門奇形術後症例24例 (男性19例, 女性5例, 5~48歳, 平均年齢18.3歳) と正常対照11例 (男性4例, 女性7例, 9~52歳, 平均年齢30.7歳) とした. なお, 直腸肛門奇形術後症例は高位病型は13例, 中間位病型は6例, 低位病型は5例であった.
方法: 肛門管粘膜電流感覚閾値は肛門皮膚縁と同部より1cmおよび2cm口側の3か所で測定を行い, 対照群と症状別に直腸肛門奇形術後症例について検討した.
結果: 肛門管粘膜電流感覚閾値は対照群と比較して直腸肛門奇形術後症例群, とくに高位・中間位病型では明かに肛門管の各部位で上昇していた. 低位病型の肛門管下部は対照とほぼ同様であった. 臨床症状の検討では, ガスと便の識別困難症例群と便失禁群の肛門管上部・中部において有意に閾値の上昇を認めた (p<0.01, p<0.01).
考察: 肛門粘膜感覚能からみると直腸肛門奇形術後症例において高位病型と中間位病型の病態は同様であり, 低位病型に比べて不良であった. そして肛門管の上部・中部における肛門管粘膜感覚能は, ガスと便の識別および便の保持に重要であることが示唆された.
抄録全体を表示