日本消化器外科学会雑誌
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36 巻, 6 号
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  • 山田 和彦, 大山 繁和, 太田 惠一朗, 松原 敏樹, 山口 俊晴, 武藤 徹一郎
    2003 年 36 巻 6 号 p. 443-450
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 大動脈周囲, 特に大動脈裂孔周囲リンパ節の解剖所見を解剖体と手術所見で比較し, その相違について検討した. 対象と方法: 38体の医学教育研究用に献体された成人解剖体と大動脈裂孔周囲のリンパ解剖が観察できた16例の胃癌手術例を対象とし, 大動脈裂孔周囲の腰リンパ本幹の経路, 乳糜槽との関連を検討した. 結果: 解剖体では, 左の腰リンパ本幹は平均2.07 (1~3) 本, 右は1.16 (1~2) 本で, 腰リンパ本幹はしばしば大動脈裂孔を通して縦隔へ達し, そこで胸管を形成していた. 大動脈裂孔以外を通るリンパ管は細いリンパ管で4例 (13%) あった. 乳糜槽の形成は, 2例 (5%) に認められた. 手術所見では全例に太い腰リンパ本幹を認めた. 大動脈裂孔を通らない症例も存在した (4例25%). 大動脈裂孔を通してのリンパ経路が主であった. 考察: 腹部大動脈周囲リンパ節から胸管へ流れる経路は, 大動脈裂孔を通る経路が主流と考えられた. したがって, 大動脈周囲リンパ節郭清に際しては, 左右腎動脈背側にある大動脈裂孔を意識することが重要と考えられた. しかし, 横隔膜の内側脚と中間脚の間へ流れる経路が併存しうることも留意する必要がある.
  • 池田 太郎, 富田 凉一, 福澤 正洋
    2003 年 36 巻 6 号 p. 451-457
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 直腸肛門奇形術後症例の肛門感覚能について検討した報告はない. そこで肛門管粘膜電流感覚閾値について検討を試みた. 対象: 直腸肛門奇形術後症例24例 (男性19例, 女性5例, 5~48歳, 平均年齢18.3歳) と正常対照11例 (男性4例, 女性7例, 9~52歳, 平均年齢30.7歳) とした. なお, 直腸肛門奇形術後症例は高位病型は13例, 中間位病型は6例, 低位病型は5例であった. 方法: 肛門管粘膜電流感覚閾値は肛門皮膚縁と同部より1cmおよび2cm口側の3か所で測定を行い, 対照群と症状別に直腸肛門奇形術後症例について検討した. 結果: 肛門管粘膜電流感覚閾値は対照群と比較して直腸肛門奇形術後症例群, とくに高位・中間位病型では明かに肛門管の各部位で上昇していた. 低位病型の肛門管下部は対照とほぼ同様であった. 臨床症状の検討では, ガスと便の識別困難症例群と便失禁群の肛門管上部・中部において有意に閾値の上昇を認めた (p<0.01, p<0.01). 考察: 肛門粘膜感覚能からみると直腸肛門奇形術後症例において高位病型と中間位病型の病態は同様であり, 低位病型に比べて不良であった. そして肛門管の上部・中部における肛門管粘膜感覚能は, ガスと便の識別および便の保持に重要であることが示唆された.
  • 長井 和之, 柳橋 健, 宮原 勅治, 岡田 憲幸, 和田 道彦, 正井 良和, 橋本 隆, 今井 史郎, 小西 豊, 梶原 建熈
    2003 年 36 巻 6 号 p. 458-463
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性. 幼少時より頻回の咳嗽を, 特に成人後はビール摂取時の咳嗽を自覚していた. また, 肺炎を繰り返していた. 約3年半前に食道気管支瘻と診断されていたが, 今回当科にて食道造影, 食道内視鏡, 気管支鏡の各検査を行い, 胸部中部食道前壁と左主気管支との間に瘻孔を確認した. また瘻孔対側となる食道後壁には径約2cmの隆起性病変 (扁平上皮癌) を認めた. 同病変を内視鏡的に切除したところ深達度sm2であったため, 右開胸開腹にて食道切除を行い, 瘻管は結紮・切離した. 病理組織学的には瘻管内腔は重層扁平上皮で覆われており, 粘膜筋板を伴っていた. 病歴, 術中所見, 病理組織学的所見よりBraimbridge II型先天性食道気管支瘻と診断した. 本疾患と食道癌との合併例は極めてまれである. 当症例では瘻孔と食道癌病変の位置関係から, 瘻孔の存在が癌発生の一因になった可能性も考えられた.
  • 浅井 浩司, 五十嵐 誠治, 清水 秀昭, 宮田 博志, 堀口 潤
    2003 年 36 巻 6 号 p. 464-469
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性. 胸部つかえ感を主訴に近医を受診. 食道癌の診断で当センター紹介入院となった. 入院時白血球数は12,400/mm3と高値であった. 入院後, 術前化学療法を施行したが, 白血球はさらに上昇し22,200/mm3に達した. 血中G-CSF値も120pg/mlと高値であった. 化学療法後の評価では, 腫瘍径は1か月間で約4倍に増大したことから1コースで終了, 食道亜全摘術を施行した. 病理組織学的所見は腫瘤部分ではいわゆる癌肉腫, 茎の部分では腺癌, 基部では類基底細胞癌の組織像を認めた. 術後白血球数は徐々に低下し, またG-CSFも25pg/mlと低下した. 抗G-CSF抗体を用いた免疫染色でも腫瘤部分で陽性であり, G-CSF産生腫瘍と診断した. 短期間で急速増大し, このように多彩な組織像を呈したG-CSF産生性“いわゆる食道癌肉腫”の報告例はなく極めてまれな症例であると考えられた.
  • 酒田 和也, 池田 義和, 森 匡, 岡本 公子, 出口 寛, 中川 勝裕, 安光 勉
    2003 年 36 巻 6 号 p. 470-475
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は72歳の女性. 胃癌の診断にて胃全摘術施行. 術翌日に敗血症性ショック・ARDSが出現し全身状態も急速に悪化した. 当初感染源は不明であったが, 腹満, 下痢に続いて, 腹部皮膚の壊死性変化や胸壁の皮下気腫を生じた. 集中治療を行うも術後3日目に死亡したが, 術後2日目に採取した検体からAeromonas hydrophilaが検出された. 院内感染を疑い, 病院環境調査を実施したが, 患者由来と同一の菌株は検出されず, 感染経路は特定できなかった. 同菌は食中毒の原因となることがあるが, 自験例のごとく敗血症から電撃的な経過をたどる症例も本邦で過去15年間に31例報告されている. なかでも術後の感染例はまれではあるが, 発症すると致死的で, 外科手術の際にはその存在と危険性を念頭に置く必要があると考えられる.
  • 山家 仁, 伊藤 俊哉, 北岡 文生, 石津 要, 青木 浩一, 大谷 博
    2003 年 36 巻 6 号 p. 476-481
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は70歳の女性. 十二指腸GISTとして発症し, 十二指腸部分切除術を施行した. 術後2.2年目に横行結腸間膜に, 術後6年目に肝に孤立性転移を来し, いずれも切除しえた. 1. 病理組織学的ならびに免疫組織化学的所見は3腫瘍とも類似しており, c-kit, CD34, vimentin陽性のGISTと診断された. なお, 原発性腫瘍に比べ, 転移性腫瘍の方が悪性度のポテンシャルが高い傾向を示した. 2. 十二指腸腫瘍の栄養血管は上腸間膜動脈と左結腸動脈の二重支配を受けていた. 3. 結腸間膜転移巣の腫瘍倍増時間 (DT) は約85日であった. 4患者は術後7年の現在も健常であることより, 術後10年以上にわたる6か月ごとの定期的追跡調査ならびに転移巣が発生した場合には積極的切除術を行うことを推奨する.
  • 近藤 礎, 堂野 恵三, 左近 賢人, 永野 浩昭, 林 太郎, 梅下 浩司, 中森 正二, 若狭 研一, 門田 守人
    2003 年 36 巻 6 号 p. 482-487
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝実質内に腫瘍巣を指摘しえない胆管内発育型肝細胞癌はまれで, 当施設肝細胞癌切除例 (484例) の0.4%(2例) に認めた. 症例1は前区域胆管内に腫瘍栓を認め, 前区域切除術と腫瘍栓の摘出術を, 症例2は左肝管内腫瘍栓と肝S8に孤立性の肝細胞癌を認め, 腫瘍栓摘出をともなう肝左葉切除術と肝S8の腫瘤に対するPEITを施行した. 切除標本の病理組織学的検討では, いずれも肝実質内に腫瘍巣は指摘できず, 症例1が低分化型, 症例2は低分化型と高分化型肝細胞癌 (肝S8腫瘤) であった. 予後は, 症例1が術後5か月目に残肝多発再発で原病死. 症例2は残肝多発再発に対してTAEをくり返したが, 術後3年目に原病死している. 肝実質内に腫瘍巣が指摘しえない胆管内発育型肝細胞癌は低分化で, その予後は不良であった. このような症例に対しては手術に加え, 有効な補助療法の開発が急務と考えられた.
  • 白石 好, 森 俊治, 磯部 潔, 中山 隆盛
    2003 年 36 巻 6 号 p. 488-492
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    非常にまれであるハンドル外傷による胃破裂とIIIa型膵損傷を合併した1例を経験し, 胃切除と膵胃吻合による尾側膵温存術式にて救命しえたので報告する. 患者は64歳の男性で, 交通事故による腹部打撲と吐血を主訴に救急搬送された. 腹部CTでFree Air, 腹腔内出血を認めたため胃破裂疑いで緊急手術となった. 手術所見は胃前壁の体下部から幽門前庭にかけて約7cmの破裂創と胃角部小彎に出血性潰瘍を認めた. また, 上腸間膜静脈右縁にて膵の完全断裂を認めた. 出血は胃潰瘍によるものと判断した. 止血のために胃切除施行し膵温存のため膵尾側の膵胃吻合を施行した. 急性期の経過は順調であったが, 軽度の膵液瘻を認めた. 退院6か月経過後でも血糖値, 膵外分泌機能には異常を認めなかった. 自験例と文献的考察から消化管破裂や大量出血を合併した症例では, 膵温存術式として膵胃吻合は適した再建法であると考えられた.
  • 内藤 春彦, 折茂 達也, 皆川 のぞみ, 濱田 朋倫, 安達 大史, 白戸 博志, 近藤 啓史, 荻田 征美
    2003 年 36 巻 6 号 p. 493-496
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性で, 盲腸原発の粘液癌, n2 (+), p2 (S状結腸近傍) に対し回盲部切除+D3郭清+腹膜転移摘除およびマイトマイシン10mg散布施行した. 1年3か月後よりCEA値上昇がみられ, CT, MRI, 内視鏡検査にて異常所見はなかったが, 十分な説明と同意のもとに2年3か月後試験的開腹術を施行した. 手術創下, 腹壁, 吻合部, ダグラス窩に計5個の腫瘤をみとめ, これらを摘出した. 初回手術より5年3か月後, CT上, 脾臓腫瘤をみとめ脾臓摘出術を施行した. この際の洗浄細胞診はclass Vであった. マイトマイシン10mg腹腔内散布した. これら腫瘍はすべて粘液癌であった. 術後5'DFUR 800mg/日を6年間投与し, 初回手術から13年6か月の現在無治療であるが無病健存である.
  • 池野 龍雄, 杉山 敦, 志村 国彦, 市川 英幸, 川口 研二, 川崎 誠治
    2003 年 36 巻 6 号 p. 497-502
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸間膜脂肪織炎は腸間膜に起こる原因不明な非特異性炎症疾患である. 我々は同病と診断したが, 保存的に軽快せず外科的切除を施行し, 良好な経過をたどった2例を経験したので報告する. 症例1は65歳の男性, 腸閉塞にて入院. 絶食, 抗生剤にて症状軽快したが, 大腸内視鏡検査にて, 下行結腸に全周性の狭窄と浮腫, 腹部CT検査にて同部位における腸管壁および腸間膜の肥厚を認め, 下行結腸の腸間膜脂肪織炎と診断した. 保存的治療を継続したが, 腸管狭窄が改善せず, 結腸左半切除術を施行した. 症例2は61歳の男性, 下腹部痛を主訴に来院. 注腸造影検査, 腹部CT検査にてS状結腸の腸間膜脂肪織炎と診断. 絶食, IVH管理にて保存的に症状軽快したが, 食事を始めると症状悪化を繰り返し, 徐々に食欲低下, 体重減少も見られたため手術適応と判断し, 直腸低位前方切除術を施行した. 術後の経過は両症例とも良好であり, 現在まで再発は見られていない.
  • 河内 康博, 神保 充孝, 重田 匡利, 井口 智浩, 藤田 雄司, 宮原 誠, 久保 秀文, 長谷川 博康, 宮下 洋
    2003 年 36 巻 6 号 p. 503-508
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    過去5年間に内視鏡的切除もしくは外科的切除を施行した大腸癌症例は1021例で, 病理組織学的検査で結腸内分泌細胞癌と診断した3例を検討した. 男性2例, 女性1例, 平均年齢は65.3歳で, 全大腸癌の0.29%であった. 占居部位は上行結腸2例, S状結腸1例であった. 3例とも深達度はss以深の進行癌で, 脈管侵襲陽性, 血行転移を認めた. 切除標本の免疫染色でNSE, chromogranin Aおよびsynaptophysin抗体陽性所見より内分泌細胞癌と診断し, 1例には腺癌の共存を認めた.
    内分泌細胞癌は, きわめて生物学的悪性度が高く, 外科的治療のみでの治癒は期待できない. 生検で未分化癌, 低分化腺癌と診断された場合, 内分泌細胞癌を念頭に置いた積極的検索を行い, 手術のみならず補助化学療法が必要と考えられた.
  • 太平 周作, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 坂本 英至, 伊神 剛, 森 俊治, 服部 弘太郎, 水野 隆史, 杉本 昌之, 深見 保之
    2003 年 36 巻 6 号 p. 509-513
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    遅発性外傷性腸管穿孔は非常にまれで, 腸間膜動脈の血行障害による腸管の虚血が原因と言われている. 今回われわれは受傷後13日目に穿孔した下行結腸が体表面へ穿破し, ドレナージによる保存的治療で治癒できた症例を経験したので報告する. 症例は31歳の男性. 交通外傷のため当院へ搬送された. 腹部に広範囲な熱傷を認め, 植皮術を行った. 第13病日左側腹部の植皮部より便汁様の滲出液を認めた. 同部位より造影を行うと, 下行結腸と思われる腸管との交通を認めた. 腹部全体に及ぶ熱傷のため開腹手術による治療は困難と判断し, ドレーンを挿入し持続吸引を行い保存的治療を行った. 第109病日瘻孔の閉鎖を確認した. 瘻孔の閉鎖に長期間を要したが, 本症例のような場合, 確実なドレナージによる治療法も一つの選択肢として考慮されるべきである.
  • 長谷部 行健, 永澤 康滋, 小池 淳一, 塩川 洋之, 善利 元臣, 西田 祥二, 上林 洋二, 大谷 忠久
    2003 年 36 巻 6 号 p. 514-518
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹壁瘢痕ヘルニアの外科治療は古くから行われており手術方法は多岐にわたる. 今回術後の再発防止を目指し, より強固なヘルニア門の修復と補強に重点をおいた手術を施行し良好な結果を得たのでその手技を報告する. 手技の要点は腹直筋前鞘筋膜を用いたtension free repair, メッシュを用いた強固な補強, 生理的腹壁に近い構造の構築, ヘルニア嚢非開放の4点である. ヘルニア嚢は非開放とし, ヘルニア門の修復は左右腹直筋前鞘をoverlap縫合し修復した. 縫合部上をメッシュにて被覆補強した. 前鞘欠損部にもメッシュを当てより強固な補強を行った. 6例に施行した. 平均年齢64.5±7.4歳, 平均BMI 27.5±1.7, 平均最大径82.5±41.4mm, 平均観察期間18.0±5.9か月と少ないが現在のところ再発なく経過している. 症例数の蓄積, 長期にわたる経過観察が必要であるが, 術後の再発防止を期待できる方法ではないかと思われた.
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