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齊藤 素子, 梨本 篤, 藪崎 裕
2004 年 37 巻 1 号 p.
1-6
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
目的:2000年末までに当科で経験した残胃癌のうち, 初回手術時Billroth I法で再建された72症例(初回良性群:B群20例, 初回悪性群: M群52例)を対象とし, その臨床病理学的特徴を検討した.結果:残胃癌手術時平均年齢はB群60.5歳, M群67.0歳であった. 介在期間はB群15.4年, M群8.2年でM群で有意に短かった. 性別は両群とも男性に多かった. 発生部位は非断端部がB群14例(70.0%)M群42例(80.8%)で,両群とも非断端部に多かった. 残胃癌早期例はB群6例(30.0%), M群24例(46.2%)でM群に多かった. 残胃癌切除率はB群90.0%, M群96.2%と高率であった. 組織型では分化型が多くB群12例(60.0%), M群35例(67.3%)であった. リンパ節転移陽性例はB群14例(70.0%)M群15例(28.8%)でB群に多く, 転移リンパ節はB群でNo.1/3/7, M群ではNo.2/11に多かった. 初回が多発胃癌であった7症例中6例は6年以内に残胃に癌が発見された. 考察: M群で介在期間が短い理由として, 胃癌発生母地の残存と多発胃癌の遺残例の存在の可能性が示唆された. また, B群で進行癌症例が多かったことより, 良性疾患での胃切除後の定期検査が見落とされている可能性がある. 良性悪性にかかわらず, 胃切除後は計画的に長期観察を行う必要があり, 早期発見,治療が重要である.
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楠本 祥子, 仲川 昌之, 渡辺 明彦, 石川 博文, 阪口 晃行, 山田 高嗣, 大槻 憲一, 横谷 倫世, 本郷 三郎
2004 年 37 巻 1 号 p.
7-13
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
目的: Mannheim Peritonitis Index(以下, MPI)を用いた消化管穿孔性腹膜炎症例の予後予測およびMPIの予後反映度とその問題点について検討した. 方法: 当科で手術を行った, 虫垂炎由来を除く108例の腹膜炎症例を対象としMPIを求め, MPIと予後との相関を検討した. 結果: 死亡率は, 男性5.3%, 女性15.2%. 年齢別では, 死亡例はすべて50歳以上であった. MPIと死亡率を比較すると, MPI≤26で死亡率は3.8%, MPI>26で死亡率は41%であった. MPI26以下を生存, 27以上を死亡とした予後予測は, sensitivity77.7%, specificity97.9%, accuracy88.8%であった. さらに, MPIに, 腎不全の合併を独立した危険因子として加え, 補正MPIを求め検討した. 補正MPI29以下を生存, 30以上を死亡とした予後予測は, sensitivity88.8%, specificity 93.9%, accuracy92.6%となり, MPIよりも予後予測に優れていた. 結論: 簡便な因子を用いて腹膜炎症例の予後を予測できるMPIは, 臨床的に有用であることが証明された. 複数の臓器不全や重篤な慢性疾患の合併を加味すれば, 予後判定の正診率がさらに向上すると考えられた.
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川村 秀樹, 神山 俊哉, 倉内 宣明, 中川 隆公, 蒲池 浩文, 横山 良司, 工藤 岳秋, 下國 達志, 松下 通明, 藤堂 省
2004 年 37 巻 1 号 p.
14-20
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
目的:
99mTc-GSAシンチグラフィから肝切除術式を選択するためのパラメータを得る簡便な方法の1つはICGR
15値に換算することである. LHL15値, HH15値の特性を考慮した換算式をもとめた. 対象と方法: 対象は1995年6月から2002年9月までに
99mTc-GSAシンチグラフィとICG負荷試験を施行後, 肝切除を行った144例. LHL15値, HH15値とICGR
15値との1次回帰式から換算式をもとめた. 結果: LHL15値, HH15値とICGR
15値にはそれぞれ有意な相関を認めたが(r=0.585p<0.0001, r=0.477p<0.0001), それほど強い相関ではなかった.
99mTc-GSAシンチグラフィでは肝障害度が軽度の場合はHH15値の, 高度の場合はLHL15値の分散が大きくなる特性を認めたことから, 高い相関を得るために肝障害度別に分けた回帰式をもとめた. liver damage AではICGR15=114-108×LHL15, BではICGR
15=-41+103×HH15の変換式が得られ, 肝障害度別に分けない場合に比べてICGR
15値との相関が高かった(r=0.68p<0.0001). 考察: LHL15値, HH15値からICGR
15値へ換算するための換算式をもとめる場合, 肝障害度別に分けた換算式を用いた方がよい.
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術後合併症との関連
木村 徹, 高橋 毅, 佐藤 光史, 柿田 章
2004 年 37 巻 1 号 p.
21-30
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
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フリー
はじめに: 肝切除周術期において血清ヒアルロン酸(Hyaluronic acid: 以下, HA)値および血清α
1-アンチトリプシン(α
1-Antitrypsin: 以下, AT)値を測定し, 合併症発症との関連に, ついて検討した. 方法:肝切除29例の周術期において血清HA値およびAT値を測定した. 術前HA値によって,高値群(HH群)14例, 正常群(HN群)15例に分類し, 胃切除群(GX群)10例を対照として変動を比較した.また,術後合併症発症群と非発症群での変動を比較した. 結果: 術前HA値はICG R15と正相関, PT, HPT, Ch Eと逆相関を示した. また, 肝線維化の程度ではHH群はHN群に比べ, 肝硬変症例が圧倒的に多く, 有意差が認められた(p<0.01). 29例中6例に術後合併症を発症, HH群のSIRS症例からの発症であった. 合併症群では非合併症群に比べHA値は術前後を通じ有意に高値(p<0.05)であった. AT値は合併症群で第1病日に術前値に比べ有意な低下(p<0.01)を示し, また第3病日以降では, 非合併症群に比べ有意に低値(p<0.05)であった.術前HA 値と術後第3病日のAT値は逆相関を示した. 考察: 術前からHA値が高く,肝類洞内皮細胞機能低下があった症例では, その程度に応じてprotease inhibitorであるAT の術後における産生が低下しており, SIRSから合併症に移行しやすいと考えられた. したがって,術前HA値は合併症の有用な予測因子であると思われた.
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宮崎 道彦, 黒水 丈次, 豊原 敏光, 竹尾 浩真, 衣笠 哲史
2004 年 37 巻 1 号 p.
31-38
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
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脱出性痔疾患に対するジョンソン・エンド・ジョンソン社製PPH
®(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)キットを用いた肛門手術を検討した. 対象と方法: H12.3月-H13.9月に施行した100例(観察期間6日~497日)を対象とした. 男: 女比61: 39, 年齢56.6±15.3歳(29歳~88歳), 疾患はGoligher分類III IV 度内痔核65例, III IV 度内痔核+直腸粘膜脱17例, 直腸粘膜脱18例をretrospectiveに検討(H14.1月調査). 検討項目は術式, 早期の転帰, 内圧を評価した. また, 退院後の経過をアンケートによって検討した. 結果: 入院中に腫脹27%, 出血7%(外科的止血3例), 肛門痛8%, 下腹部痛1%, 尿閉2%を経験した. 術後1か月目に脱出5%, 出血2%(外科的止血1例), 狭窄2%, 便失禁4% を経験した. 脱出で1例, 狭窄で2例は再手術となった. 肛門管最大静止圧, 感覚閾値, 最大耐容量は術後2週間目には術前と比べて有意(P<0.05)に低下したが1か月以降には回復した. 結語: PPH
®による直腸肛門手術は安全で有効ではあるが経過不良例を念頭に置いて今後, 長期の経過観察が望まれる.
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島田 和典, 前田 純, 廣田 昌紀, 高橋 修, 小武内 優
2004 年 37 巻 1 号 p.
39-44
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
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症例は71歳の男性. タール便を主訴に1999年7月30日当院入院となった. 胃X線造影検査および胃内視鏡検査にて前庭部前壁および体上部前壁の2か所に隆起性病変を認め, 生検の結果, いずれも平滑筋肉腫であった. 腹部CT検査では右副腎に径30×25mm の腫瘤を認め, 超音波下針生検にて胃平滑筋肉腫の転移と診断した. 9月13日2病変に対して胃部分切除術を行い, その後cyclophosphamide, vincristine, adriamycin, dacarbazine によるCYVADIC療法を1コース施行したところ, 右副腎転移巣は縮小し, 腹部CT検査上60%の縮小率を認めた. さらに11月10日動脈塞栓療法を施行し, 縮小率は80%となった. 右副腎以外に転移巣を認めず, 2000年3月1日右副腎摘出術を施行した. 病理組織ではviable cellは認めなかった. 副腎摘出術後3年3か月経過した現在,無再発生存中であり, 胃平滑筋肉腫の進行症例に対するCYVADIC療法および動脈塞栓療法の有用性が示唆された.
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輿石 直樹, 井出澤 剛直, 井上 亜矢子, 熊田 哲, 柴 修吾, 渡邊 美穂, 瀧川 拓人, 岡崎 護, 木嶋 泰興, 冨永 邦彦
2004 年 37 巻 1 号 p.
45-50
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は77歳の男性. 体重減少を主訴に入院となった. 精査にて, Vater乳頭部の未分化型腺癌との診断になり, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 腫瘍は露出腫瘤型で, 深達度はOddi筋までであった. 主座は小型腫瘍細胞がシート状に増殖し, 粘膜側に腺癌構造伴っており, 免疫組織学的検索においてNSEとchromogranin Aは陽性で, desminとS-100蛋白は陰性で, 腺内分泌細胞癌と診断した. 腺内分泌細胞癌は腺癌から分化を伴ったものとされており, その悪性度は高く, 比較的小さな病変で診断・治療されても,予後不良とされている. 本症例も術後14か月で多発性肝転移のため死亡した. 十二指腸乳頭部原発の腺内分泌細胞癌の本邦での報告は自験例を含め14例とまれである.本邦報告例とともに文献的考察を加え報告する.
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山田 英貴, 金井 道夫, 中村 從之, 大場 泰洋, 濱口 桂, 小松 俊一郎, 鷲津 潤爾, 桐山 真典, 矢野 孝, 杉浦 浩
2004 年 37 巻 1 号 p.
51-56
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は80歳の男性. 2001年10月24日から食欲不振と尿濃染を自覚し, 近医を受診. CTで肝内胆管の拡張と総胆管内の腫瘤像を認め, 当院へ紹介. ERCP, MRCP, PTBDチューブからの胆管造影で中部胆管に境界明瞭な乳頭状の腫瘍を認め, PTCS直視下生検で低分化腺癌と診断. 以上より中部胆管の乳頭型胆管癌と診断し胆管切除術・リンパ節郭清を行った.
病理組織学的には核 細胞比が高い小型の細胞がシート状, 充実性に増殖する腫瘍であり, chromogranin A染色陽性で, small cell carcinoma (pure type) と診断した. 術後合併症なく, 第19病日に退院したが,術後9か月目の2002年9月, 肝転移のため再発死亡した.
胆管小細胞癌の報告例は欧米などの報告を含め11例と極めてまれである. しかし, 術前の画像診断で乳頭型の胆管癌を認め, 生検で低分化腺癌を認めた場合には本症を考慮する必要があると思われた.
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白潟 義晴, 吉冨 摩美, 池袋 浩二, 澤田 尚, 糸井 和美, 福山 学, 西川 秀文, 水野 恵文, 牧野 尚彦
2004 年 37 巻 1 号 p.
57-62
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は68歳の女性. 腹痛と褐色尿出現し近医を受診した. 膵腫瘍と閉塞性黄疸を指摘され当院へ紹介された. 腹部造影CT検査にて膵頭部に内部が不均一に造影される最大径4cm の腫瘍とこれに連続して門脈に接する 胞様病変, 胆道造影にて総胆管末端での完全閉塞, を認めた. 血管造影にて膵頭部における著明な腫瘍濃染と4cm長に及ぶ門脈の狭窄像を認めたため, 悪性腫瘍を否定できず手術を施行した.膵頭部に4cmの弾性硬の腫瘍とこれに連続して膵外に突出し門脈に強固に癒着する3cmの腫瘍を認め門脈とは剥離不可能で膵頭十二指腸切除とともに4cmの門脈を合併切除し門脈再建を施行した. 病理組織診断は膵漿液性 胞腺腫で悪性像を認めなかった. 術後経過は良好であった. 膵漿液性 胞腺腫は従来良性疾患とされ切除に門脈合併切除を要したのは極めてまれであり,また本症例は肉眼形態も極めてまれと考えられた. 文献的考察を加え報告した.
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小野 文徳, 小野地 章一, 吉田 節朗, 内山 哲之
2004 年 37 巻 1 号 p.
63-67
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は71歳の男性. 約20年前に背部打撲により脾損傷と診断され, 保存的に加療されたことがある. その後は特に外傷の既往はない. また, 3年前頃から心房細動のためアスピリンを服用しており, 半年前に脳梗塞を発症している. 脳梗塞後のリハビリにて近医入院中, 腹部CT検査にて脾 胞を指摘された. その1週間後, 突然の左側腹部痛とショック症状を呈したため当院に搬送された. 腹部CT検査および腹腔穿刺にて脾破裂による腹腔内出血と診断し, 緊急手術を施行した. 腹腔内に多量の凝血塊と血性腹水を認めるとともに, 脾には仮性襄胞とその破裂が認められ,外側は横隔膜,大網と強固に癒着していた. 病理組織検査では, 外傷性変化とともに, 新旧の壊死巣・出血巣が混在した脾梗塞の所見を認めた. 本症例の脾破裂の直接原因は脾梗塞と考えられたが, 外傷性変化, 抗凝固薬の服用も影響したものと考えられた.
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松橋 延壽, 長尾 成敏, 田中 千弘, 杉山 保幸, 佐治 重豊
2004 年 37 巻 1 号 p.
68-72
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は62歳の男性.胸部食道癌および孤立性肝転移を伴うS状結腸癌の診断のもとに右開胸開腹食道亜全摘, S状結腸切除, 肝外側区域切除を施行した. 術後経過は良好で経口摂取開始後も順調であった. ところが第28病日目より食後の腹痛を自覚し, 絶食にて改善するパターンを繰り返すため癒着性イレウスと診断し, 第37病日目に再開腹した. 開腹すると左上腹部に浮腫状に拡張した限局性の小腸係蹄が4か所存在し, 同部が腹痛の原因と判断した. 切除小腸は回盲部より約60cmの部位より口側に約1mの回腸を切除した. 病理組織学的検査で, 鬱血, びらん, 潰瘍所見を認めischemic ileitisと診断された. 教室では食道癌切除術後に深部静脈血栓症, 肺塞栓の発症予防目的で術後1週間にわたって抗凝固療法を施行しているが, 周術期以後にも遅発性の血栓症を合併する可能性が示唆された.
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大川 卓也, 仁瓶 善郎, 山下 俊樹, 林 哲二, 杉原 健一
2004 年 37 巻 1 号 p.
73-77
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
腸間膜デスモイド腫瘍はまれな疾患で, 家族性大腸腺腫症, 手術, 外傷, 妊娠などの既往を有する症例に発生することが多い. 今回我々は, 小腸間膜原発デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は58歳の男性で, 56歳時に食道癌の手術を受けた. 腹部腫瘤触知・腹痛を主訴に近医受診, 腹部腫瘤と診断され当科紹介となった. 腹部超音波・CT・MRI・血管造影検査にて小腸間膜に境界比較的明瞭な腫瘤を認め, 小腸間膜充実性腫瘍と診断し, 腫瘤摘出術を施行した. 腫瘤は110×65×58mmで, 組織学的には分化した線維芽細胞と豊富な膠原線維からなり, 核分裂像は認めず, Masson染色で青染, Vimentin染色陽性にてデスモイド腫瘍と診断した. 腸間膜腫瘍の術前質的診断は困難なことが多いが, 本症例のように画像上腫瘍血管像を認めない充実性腫瘍の場合, デスモイド腫瘍も念頭において手術に臨むべきである.
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白井 量久, 深田 伸二, 伊藤 直史, 山口 竜三, 向山 博夫, 成田 道彦
2004 年 37 巻 1 号 p.
78-81
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
虫垂原発の癌はまれで, 特に虫垂原発低分化型癌の報告例は少ない. 今回我々は虫垂腫瘍を疑い手術を施行し, 術後病理所見から低分化腺癌と診断した1症例を経験したので報告する. 症例は63歳の女性. 右下腹部に限局した疼痛を訴え当院を受診した. 腹部超音波検査で右側腹部に52×32mm大のhypoechoic massを認めた. 腹部造影CT検査では, 上行結腸外側に接する50×30×50mmの辺縁に造影効果を認める内部は不均一な低吸収域のcystic massがあり虫垂腫瘍の診断で, 結腸右半切除術 (D3) を施行した. 病理組織所見から虫垂原発低分化腺癌と診断した. 術後1年6か月でCA19-9が185U/mlと上昇したため精査したところ, 右卵巣転移を認め, 切除した. 初回手術後2年9か月経過した現在, 再発の徴候なく生存中である. 原発性虫垂癌は比較的まれな疾患であり, なかでも低分化腺癌は自験例を含め4例が報告されているのみであり, 極めてまれである.
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林 忠毅, 中村 利夫, 丸山 敬二, 三岡 博, 深澤 貴子, 宇野 彰晋, 東 幸宏, 今野 弘之, 中村 達
2004 年 37 巻 1 号 p.
82-86
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は53歳の女性, 右下腹部痛を主訴に来院. 大腸内視鏡検査, 腹部CT検査にて上行結腸に約8cm大の2型腫瘍が認められた. また術前に行った造影MRIのT1強調像で右内腸骨静脈に造影効果を認めない部位が認められ, 血栓性閉塞が疑われた. 上行結腸癌の術前に, 肺梗塞を防ぐ予防的な治療の必要があると考えられた. 全身麻酔下に肺梗塞の予防処置として下大静脈フィルターを留置した後に結腸右半切除術を施行した. 周術期に肺梗塞症などの合併症はなく経過は良好で, 術後15日目に退院, 術後10か月の現在, 癌の再発および肺梗塞の徴候なく社会復帰している. 内腸骨静脈血栓症は症状に乏しく, 術前に指摘されることはまれである. 腹部手術の術前に腸骨静脈血栓を認めた場合は肺梗塞の原因となりうるので, 術前の下大静脈フィルターの挿入が予防的治療として有効であると考えられた.
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桐山 真典, 金井 道夫, 中村 從之, 大場 泰洋, 濱口 桂, 小松 俊一郎, 山田 英貴, 小出 史彦, 渡辺 芳雄
2004 年 37 巻 1 号 p.
87-91
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は58歳の女性. 主訴, CA19-9高値. 検診腹部超音波検査で総胆管の拡張を指摘され, 当院受診した. 血液検査でCA19-9 160U/mlと高値であるものの, MRCP・CTでは特に異常なく経過観察とした. その後さらにCA19-9が上昇したため再施行したCTで前仙骨部の腫瘤影を認めた. 注腸検査で直腸後壁の壁外性圧排像を認めた. 直腸超音波内視鏡検査では, 同部位に比較的均一な内部エコーを持つ多房性腫瘤を認めた. 直腸後壁粘膜下腫瘍を疑い, 経仙骨的直腸切除術を行い腫瘤を切除した. 組織学的にTailgut cystと診断した. 免疫染色では嚢胞壁はCA19-9陽性であった.
術後経過は良好で, CA19-9値は2週間後には正常化した. 原因不明のCA19-9の上昇を認める症例では本疾患も疑う必要があると思われた.
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澤井 照光, 長谷場 仁俊, 山下 秀樹, 竹下 浩明, 日高 重和, 辻 孝, 七島 篤志, 山口 広之, 安武 亨, 中越 享, 永安 ...
2004 年 37 巻 1 号 p.
92-97
発行日: 2004年
公開日: 2011/06/08
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症例は急性進行性糸球体腎炎のためステロイド治療中の71歳の女性で, 下腹部痛のため緊急入院した. 体温38.8℃, 脈拍数115/分, 下腹部に筋性防御を認め, 白血球数1,900/mm
3で, 腹部CTにより直腸穿孔と診断された. ハルトマン手術を行った後, 持続的血液濾過透析とレスピレーター管理により順調に経過していたが, 術後8日目に突然全身倦怠感を訴え, モニター上心室頻拍が出現した. リドカイン静注後の心電図でII, III, aVF, V2~V6と広範囲にST上昇がみられ, 心エコーでは心基部の過収縮と中部から心尖部にかけてのバルーン状拡張がみられ,“たこつぼ型心筋症” と診断された. 左室内圧較差は60~130mmHgで, これによる低心拍出が心室頻拍の原因になった可能性が示唆された. 心エコーを中心に厳重な経過観察を行ったところ, 発症2日目より徐々に壁運動の改善がみられ, 21日目には左室内圧較差も軽快した. 本症の原因として消化器外科手術は重要で, 消化器外科医にとって周知しておくべき術後合併症の1つである.
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