日本消化器外科学会雑誌
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37 巻, 10 号
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  • 波戸岡 俊三, 篠田 雅幸, 陶山 元一, 光冨 徹哉
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1595-1602
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 食道癌術後患者で, insulinにより血糖を150mg/dl以下にコントロールする方法 (以下, IIT と略記) の有効性を評価することを目的とした. 対象および方法: 2002年1月から2003年2月までに食道切除を行った連続41症例を対象とした. insulinの持続静注を17例に行い, 血糖値を90-150mg/dlの範囲に管理した. insulin治療を行わなかった24例を対照群とした. 結果: IIT群では, 平均血糖値は137mg/dlであった. IIT群で50mg/dl以下の低血糖はみられなかった. 術後1, 2, 3病日の血清アルブミン値は, IIT群で良好に維持されていた (P<0.01). 炎症のマーカー (C-reactive protein, 白血球数) は, 両群で差はなかった. Systemic inflammatory response syndrome 発生期間は, 統計学的な有意差はないがIIT群で短い傾向であった (P=0.057). 術後合併症は, 対照群で頻度が高い傾向を示したが, 有意な差はなかった (P=0.34). 特に感染症は, IIT群で頻度が少なかったものの統計学的な有意差は認められなかった (P=0.057). 考察: 食道癌術後患者で血糖値を150mg/dl以下に管理するIITは, 安全に実施可能であり, 感染に関連した合併症を減らす可能性がある.
  • 角田 明良, 中尾 健太郎, 高田 学, 神山 剛一, 平塚 研之, 山崎 勝雄, 鈴木 直人, 林 征洋, 保田 尚邦, 草野 満夫
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1603-1609
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 大腸癌患者術後のquality of life (以下, QOL) を信頼性と妥当性の確認されたQOL調査票で前向きに解析した研究は少ない. 本研究の目的は術後12か月間の経時的なQOLを評価し, 術後1年におけるQOLを予測する因子を明らかにすることである. 方法: 根治度Aの手術が行われた大腸癌患者46名を対象に, European Organization for Research and Treatment of Cancer (以下, EORTC) のQOL調査票であるEORTC QLQ-C30日本語版を用いて, 術後12か月間のQOLを前向きに評価した. また, 術後1年のQOLを予測する因子を解析した. 結果: 各尺度の経時的変動をみると, global QOLは術後1か月で最低値を示し, 術後6か月以降で改善した. emotional function は術前と比べて術後2か月以降で改善した. fatigueとpainは術後1か月で最低値を示し, おのおの術後7か月以降と2か月以降で改善した. 術後1年のQOLの予測因子として, 雇用, リンパ節転移, stomaの有無の3つが重要な因子であった. 考察: 大腸癌患者の術後1年間のQOLで有意の変動を示したのはglobal QOL, emotional function, fatigue, pain の4つの尺度であった. 雇用, リンパ節転移, stomaの有無は術後1年のQOLの重要な予測因子であった.
  • 癌死患者の遺族調査から
    藤本 肇, 橋口 陽二郎, 上野 秀樹, 望月 英隆
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1610-1615
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 大腸癌術後に原癌死した症例の遺族に対してアンケート調査への回答を依頼し, 癌告知と終末期医療についての現状と問題点について検討した. 方法: 1992年以降8年間の当科手術例のうち該当する187症例の遺族に, 癌の告知状況と終末期の医療に関するアンケートを行い, 回答のあった95例につき検討した. 結果: 告知状況については3群に分けられ, 癌告知された告知群35%, 告知されていないが家族の判断では患者が癌を自覚していたと思われる自覚群53%, 癌を自覚していない非自覚群12%となっていた. 告知率は対象期間の後半で有意に高率であった. 告知群では, 終末期の病態を受容できていたとする回答が63%と, 非自覚群の18%と比べて有意に高率であった. 遺族の告知肯定意見は告知群では75%で, 非自覚群の36%に比べ有意に高率であった. 主治医との意思疎通の程度は, 癌の病期別には差がなかったが, 術後生存期間による差を認めた. 対象中, 在宅死は7.4%であった. 病院死となった症例のうち88%は当院以外の一般病院での死であり, これら病院での終末期管理に満足と答えたのは27%に過ぎなかった. 考察: 早期からの癌告知が終末期の病態の受容を良好にすることが示唆された. 告知の有無と程度, 家族の告知希望が異なる場合の扱いについて, あらかじめ患者の意思を確認したうえで告知を行うことが, 終末期の環境の構築に貢献するものと思われた.
  • 木内 誠, 椎葉 健一, 石井 誠一, 溝井 賢幸, 小山 淳, 松野 正紀, 佐々木 巌
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1616-1621
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の男性で, 健康診断精査時の上部消化管内視鏡検査にて胃内に多発する小ポリープを指摘された. 生検の結果, 胃カルチノイドと診断され当科紹介となった. 血液検査では血清ガストリン値が800pg/mlと高値であり, 内視鏡的胃酸分泌試験で無酸を呈していた. 超音波内視鏡で最大のポリープは深達度sm1と診断され, リンパ節転移の可能性もあると判断し胃全摘術およびD1リンパ節郭清を施行した. 病理組織所見では最大のポリープを含めた3個のポリープがカルチノイドで, 他は過形成ポリープと診断された. 最大のカルチノイドは深達度smで静脈侵襲陽性 (v1) であったが, 他のカルチノイドはmに限局し脈管侵襲陰性でリンパ節転移は認めなかった. 術後は合併症なく経過, 血中ガストリン値も正常化し第27病日に退院した. A型胃炎に続発し高ガストリン血症を伴う多発性胃カルチノイドの1例を呈示し, その病態と治療方針について文献的考察を加えて報告する.
  • 加納 久雄, 三松 謙司, 金田 英秀, 久保井 洋一, 大井田 尚継, 天野 定雄
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1622-1626
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    術前に粘膜下腫瘍が疑われ術後に胃結核と診断された1例を経験した. 症例は79歳の男性で, 既往歴は30歳時に右肺結核にて区域切除を施行し, 以後肺結核の再燃は認めていなかった. 現病歴は平成14年5月37.8℃の発熱と腹痛を認め紹介受診. 不明熱として対症療法を行っていた. 平成15年3月精査のための上部消化管内視鏡検査にて胃体上部前壁に4cm大の正常粘膜に覆われた粘膜下腫瘍を認めた. 形態的にGISTも否定できないため手術を施行. 術式は胃局所切除を施行. 肉眼的には内部に淡黄色の膿汁を貯留した膿瘍形成を示しており, 病理学的には抗酸菌は同定できなかったが, 中心に乾酪壊死を認めLanghans巨細胞を伴った類上皮肉芽腫を認め, 胃結核の診断になった. 胃結核は腸結核の中でもまれであるが, 結核患者は現在でも減少しておらず, 当疾患にも注意が必要と考えられた.
  • 工藤 明敏, 徳久 善弘, 森田 克彦, 平木 桜夫, 福田 進太郎, 江口 信雄
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1627-1632
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃悪性リンパ腫と早期胃癌の共存例は非常にまれである. 病理組織学的に興味が持たれ, 文献的考察を加え報告する. 症例は63歳の男性, 慢性肝炎 (HCV+), 胃潰瘍で, 内科治療中であった. 胃内視鏡生検にて胃幽門部にIIc (adenocarcinoma), 胃体上部に悪性リンパ腫を診断され, 胃全摘術を施行した. 切除標本の全割病理組織学的検索では胃悪性リンパ腫は表層型で, 胃全体に散布しており6病変認められた. しかも, そのうちの2病変に相接してtubular adenomaの存在もみられた. 深達度はsmでLSG分類ではdiffuse lymphoma, medium sized cell type, B cellであった. 一方, 胃癌は幽門部後壁小彎側に存在しIIc, 深達度はm, 組織型は中分化腺癌 (tub2) であった. 胃粘膜よりHelicobacter pyloriが証明された. リンパ節転移はなく, 両者は全く別々に離れ存在していた.
  • 横山 智至, 飯室 勇二, 岩井 輝, 羽賀 博典, 寺嶋 宏明, 山本 成尚, 山本 雄造, 猪飼 伊和夫, 嶌原 康行, 山岡 義生
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1633-1638
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の男性で, 心窩部痛, 右季肋部痛および黄疸を主訴に近医受診し, 肝S5に径5cm大の腫瘍を指摘され当科紹介となった. HBsAg (-), HBcAb (-), HCVAb (-). 胃前庭部後壁にも腫瘍性病変を認め, 血清AFP, PIVKA-II, CEA値はいずれも異常高値であった. 術前診断は3型胃癌の肝転移とし, 胃亜全摘術, 肝右葉切除術を施行した. 胃病変はT1 (sm, IIa+IIc), 肝腫瘍は白色調で硬く被膜を有さず, 右肝管1次分枝内に腫瘍栓を伴っていた. 胃肝両病変ともに充実性配列主体の低分化腺癌 (hepatoid-adenocarcinoma) の像を呈し, 類似の免疫組織染色パターンであることから, 胃低分化腺癌の肝転移と診断した. AFP, PIVKA-II産生T1胃癌の報告は少なく, 胆管腫瘍栓を伴う転移性肝癌も非常にまれである. 胃癌の幼若化現象, 癌胎児性抗原産生の面から興味深い症例であると考えられる.
  • 相馬 智, 石本 喜和男, 大柳 治正
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1639-1644
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で, 心窩部痛と体重減少を主訴に受診した. 胃透視および内視鏡検査では胃体上部から幽門部までを占めるBorrmann 3型胃癌で, 胃体下部大彎から空腸へ直接通じる瘻孔を認めた. 開腹すると, 癌は横行結腸間膜, 空腸, 膵へ直接浸潤を示したが, 肝転移と癌性腹膜炎は認めなかったので, 空腸を含めてen-blocに左上腹部内臓全摘術を施行した. 術後の病理診断は低分化腺癌で, 胃空腸瘻管壁は腫瘍細胞で占められるも, リンパ節はNo.3, No.4の1群のみ陽性のn1症例であった. 術後経過は順調で第40病日に退院した. 現在18か月が経過して体重は8kg増加し, 再発なく健在である. 胃癌による空腸瘻の報告はきわめてまれで, 本例は内外を通じて5例目である. 治療は, 隣接浸潤臓器の合併切除を含めた拡大手術が唯一の選択である.
  • 本邦報告例の集計を含めて
    横溝 博, 山口 賢治, 一二三 倫郎, 林 亨治, 平田 稔彦, 寺倉 宏嗣, 山根 隆明, 川口 哲, 福田 精二, 松金 秀暢
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1645-1652
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は24 歳の女性で, 職場の健康診断で施行された腹部超音波検査にて6cm 大の肝右葉の腫瘤性病変を指摘され当院に紹介された. CT にて腫瘤は中心性瘢痕の部分を除いて強い早期濃染を示し, Superparamagnetic iron oxide (SPIO)-enhanced MRI では取込みを認めず著明な高信号を呈しfibrolamellar carcinoma (FLC) が疑われた. 肝右葉切除が行われ, 病理組織学的に強い好酸性を示す大型の腫瘍細胞が層状の膠原線維により区画されておりFLCと診断された. FLC は通常型肝細胞癌とは異なる臨床病理学的特徴を有し, 肝硬変のない若年者に好発する. しばしばリンパ節転移を伴う事から治療にあたっては肝切除に加えリンパ節郭清を行う必要がある. FLC に関する本邦報告例の集計52例を含め文献的考察を加えて報告する.
  • 上田 順彦, 川崎 磨美, 上藤 聖子, 古屋 大, 中川原 寿俊, 岡田 章一, 吉光 裕, 木下 一夫, 澤 敏治
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1653-1657
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹膜播種を伴った膵体尾部癌に対して原発巣と腹膜播種巣切除および持続温熱腹膜潅流 (continuous hyperthermic peritoneal perfusion; CHPP) などの集学的治療により, 5年間無再発生存中の1例を経験したので報告する. 症例は60歳の男性. 腹部CTでは膵体尾部に約4cm大の不整な低吸収域の腫瘍を認め, 腹部血管造影では脾動脈の壁不整と脾静脈の閉塞を認めた. 術前腹腔洗浄細胞診はclass IIであった. 膵体尾部癌と診断し手術を施行した. 手術所見では膵体尾部に約4cm大の腫瘍を認め, 横行結腸間膜上に米粒大の腹膜転移巣を2個認めた. D1リンパ節郭清を伴う膵体尾部+脾切除および腹膜播種巣を含めた横行結腸間膜部分切除後, CDDP 300mg, MMC 30mg, VP-16 300mg を併用したCHPPを施行した. 組織学的進行度はpT4, pN0, pM1 (PER) でpStage IVbであった. 術後動注化学療法 (CDDP50mg, VP-16 100mg を6クール) 施行した. 術後5年たった現在, 再発の徴候なく生存中である.
  • 小林 久美子, 飯合 恒夫, 亀山 仁史, 加納 恒久, 松木 淳, 岡本 春彦, 須田 武保, 畠山 勝義
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1658-1663
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は65歳の男性. 主訴は食欲不振, 下痢, 血便. 内視鏡検査で胃と大腸にポリポーシスを認め, Cronkhite-Canada症候群 (CCS) と診断された. また, 上部直腸に高分化型腺癌を認めた. ステロイド治療で症状が改善した後, Hartmann式直腸切断術を施行した. 症例2は57歳の男性. 主訴は下痢, 味覚異常. 内視鏡検査で胃と大腸にポリポーシスを認めた. 直腸S状部の隆起性病変に対して内視鏡的粘膜切除術を施行したところ, 組織学的には高分化型腺癌であり, 周囲粘膜はCCSによる粘膜病変であった. CCSのポリープは非腫瘍性ポリープとされているが, 近年, 消化器癌の併存例が多数報告されている. 一般に予後は不良であるとされているが, 治療法の改善に伴い多くの長期生存例を認めている. このような中で, 当症例のように癌を併存する症例も増加することが考えられ, CCSに対しては注意深い経過観察が重要であると考えられた.
  • 狩俣 弘幸, 池松 禎人, 藤谷 健二, 猪熊 孝実, 松尾 圭, 黒田 宏昭, 山本 孝夫, 西脇 由朗, 木田 栄郎, 脇 慎治
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1664-1667
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    成人に発生する腸重積はまれであり, その多くは器質的疾患を合併している. なかでも下行結腸は後腹膜に固定されており腸重積は発生しにくいとされる. 今回我々は腸重積で発症したまれな下行結腸癌の1例を経験したので報告する. 症例は54歳の男性で突然の腹痛と下痢で発症し2日後には嘔吐も出現, 当院を受診した. 左下腹部に有痛性手拳大腫瘤を触知し, 腹部単純撮影にて左側結腸に鏡面像を認め大腸イレウスの診断で入院した. CTで左側結腸に特異的な多重層構造を認め腸重積の診断で緊急手術を施行した. 開腹すると下行結腸のほぼ中程で腸重積を認め, 年齢より悪性腫瘍の可能性を考慮してD2 郭清を含めた下行結腸切除を行った. 切除標本割面で重積先進部に3cm大の扁平隆起性病変を認め, 組織学的に深達度mpの高分化型腺癌であった. 本例は先天的に結腸脾間膜が欠損し, 腸間膜が後腹膜に固定されていなかったために, 下行結腸癌が先進部となり腸重積が合併したものと考えられた.
  • 岡田 恭穂, 鈴木 幸正, 中川 国利, 桃野 哲
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1668-1673
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸間膜原発の平滑筋肉腫の1切除例を経験したので報告する. 症例は50歳の女性で, 健診で左側腹部腫瘤を指摘された. 左卵巣腫瘍を疑われ, 当院に入院した. 左下腹部に14cm大の辺縁不整・弾性硬の腫瘤を触知した. USでは左卵巣近傍に低エコーの腫瘤像を, CTでは子宮左頭側に14×13×8cmの不整形腫瘤とダグラス窩に腹水を認めた. MRIで腫瘤は, T1強調でlow, T2強調では辺縁部はlow, 内部はhigh intensity を示した. 開腹したところS状結腸間膜に腫瘤が存在し, 左卵巣と癒着していたため卵巣と共にS状結腸を切除した. 明らかな転移や腹膜播種を認めなかった. 病理学的に腫瘍は, 紡錘形細胞の密な増殖が主体で, 異型大型核と細胞分裂像を認めた. なお免疫染色ではα-SMAおよびdesmin陽性で, 平滑筋肉腫と診断した. 術後5か月現在, 全身状態は良好で, 外来にて経過観察中である.
  • 濱洲 晋哉, 横尾 直樹, 木元 道雄, 白子 隆志, 足立 尊仁, 吉田 隆浩, 田中 善宏, 長田 博光, 北村 好史, 岡本 清尚
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1674-1679
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌穿通による肛門周囲膿瘍を経験した. 直腸癌による肛門周囲膿瘍はまれに報告されているが, S状結腸癌による症例は過去に報告がない. 症例は51歳の男性で, 肛門部痛を主訴に来院した. 骨盤部CT検査で坐骨直腸窩膿瘍と診断し, 切開排膿術を施行した. 術前より腫瘍マーカーの上昇を認めていたため, 局所の炎症が改善した時点で大腸ファイバー検査などにより精査した結果, S状結腸癌との診断を得た. 全身麻酔下に開腹したところ, ほぼ全周を占める2型腫瘍が存在し, 潰瘍底が骨盤底へ穿通し, さらに肛門挙筋群を穿破して坐骨直腸窩に膿瘍腔を形成していることが判明した. S状結腸切除術を施行し, 手術を終了した. 病理組織学的検査上, 高分化型腺癌であった. 腫瘍は, 固有筋層を越えていたが腹壁への癌細胞浸潤はなく, 根治的切除が可能であった. 肛門周囲膿瘍では, 本疾患を含めて悪性腫瘍が存在しうることも念頭におくべきであると考えられた.
  • 岡崎 誠, 坂口 博美
    2004 年 37 巻 10 号 p. 1680-1681
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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