日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
37 巻, 9 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 小山 基, 森田 隆幸, 村田 暁彦, 佐々木 睦男
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1509-1516
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 家族性大腸腺腫症 (FAP) に対する予防的手術の術式として, 結腸全摘回腸直腸吻合術 (IRA), 回腸肛門吻合術 (IAA), 回腸肛門管吻合術 (IACA) が選択される. 今回, IRAの長期的な術後経過から, 手術術式と治療方針について検討を加えた. 対象: 1970年から2002年までのFAP初回手術例は72例で, 1990年までの予防的あるいは治癒手術例は42例であった. このうち直腸病変が非密生型であること, 下部直腸に癌の合併がないこと, 術後定期的追跡調査ができることを前提にIRAを29例に施行した. 結果: IRA初回手術29例の性別は男性16例, 女性13例で, 平均年齢は28.9歳であった. 平均19.7年の術後観察期間において, 残存直腸からの発癌が8例 (27.6%) で認められた. その内訳は, 男性3例, 女性5例であり, 初回手術時の平均年齢は30.3歳であった. 初回手術時の癌合併は4例で認められ, 密生型が4例, 非密生型が4例であった. APC遺伝子変異は検索した7例全例 (codon 348-785: 1例, codon 658-1283: 3例, codon 1099-1700: 3例) で認めた. 初回手術から残存直腸発癌までの平均期間は15.0年 (1.3~30年) であり, 再手術は, IACA2例, 腹会陰式直腸切断術2例, 局所切除1例, IAA 3例を施行した. 1年に1~2回の定期的検査を継続していたが, 5例がmp以深の進行癌であり, 2例は残存直腸の発癌のため死の転帰をとった. 結語: 手術時には直腸病変が非密生型であっても, その時点で病態が完成しているわけではなく, 予防的手術の術式としては, 原則としてIAAもしくはIACAを選択すべきことが確認できた.
  • 中房 祐司, 北島 吉彦, 佐藤 清治, 田中 雅之, 田中 聡也, 宮崎 耕治
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1517-1524
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究では局所進行大腸癌における周囲臓器浸潤の臨床的意義について検討した. 方法: 当科で1992-98年に根治度A手術を施行した深達度ss (a1) 以深の大腸癌患者323例を対象として, 組織学的周囲臓器浸潤と臨床病理学的因子の関係を調べ, 臨床病期分類を参考に予後に与える影響を解析した. 結果: ss (a1) 以深大腸癌323例中si (ai) 症例は28例 (8.7%) であった. si (ai) 癌はss (a1)~se (a2) と比較して腫瘍径が大きく, 隣接臓器合併切除や輸血の頻度, 出血量が多く, 手術時間が長かった (p<0.0001). 大腸癌取扱い規約II-IIIa期症例 (n=261) の生存率をss (a1)~se (a2) とsi (ai) とで比較すると全く差を認めなかったが (p=0.9591), n (-) とn1 (+) では有意差を認めた (p=0.0487). リンパ節転移陰性であるTNMII期症例 (n=177) をIIA期 (pT3) とIIB期 (pT4) とで比較しても, 両群の生存率に差を認めなかった (p=0.8069). ss (a1) 以深大腸癌全体の予後因子を多変量解析するとリンパ節転移 (p=0.0043) と輸血 (p=0.0223) のみが独立因子として残った. 結論: 根治切除局所進行大腸癌における組織学的周囲臓器浸潤はリンパ節転移と比較して直接的予後決定因子としての意義は小さいが, 周術期因子への影響は大きく, 輸血などを介して間接的に予後を左右する可能性がある. 周囲臓器浸潤を伴う大腸癌ではこれらを認識したうえでの治療法選択や周術期管理が必要である.
  • 小松 大介, 高橋 耕平, 久米田 茂喜, 青柳 大樹, 大谷 方子
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1525-1530
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, 40歳時に胃ポリポーシスを指摘され毎年経過観察を行っていた. 持続する貧血と低蛋白血症に対し鉄剤投与, プロトンポンプ阻害剤内服, Helicobacter pylori除菌などの内科的治療を行ったが抵抗性であり, 症状の増悪をみたため胃全摘術を施行した. 摘出標本では胃全体に無数のポリープが密生しており, 一部皺襞の肥厚も認めた. 明らかな家族歴はなく, 皮膚・毛髪・爪に異常所見を認めず, 病理組織検査を含め胃限局性若年性ポリポーシスと診断した. 若年性ポリポーシスの胃限局型は自験例を含め本邦で20例報告されており, そのうち9例で腺癌を合併していた. 長期予後は良好であり, 治療として積極的な外科的切除を考慮すべきであると思われた.
  • 笠島 浩行, 渡辺 伸和, 諸橋 聡子, 吉崎 孝明, 大石 晋, 舘岡 博, 猪野 満, 武内 俊, 田中 隆夫
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1531-1536
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性で, 平成14年1月に腹部腫瘤を主訴に受診し精査加療目的に入院となった. 腹部CTでは右下腹部に直径18cmの腫瘍と肝外側区域に低吸収域を認めた. 上部消化管内視鏡検査では粘膜に異常所見を認めなかった. 肝転移を伴う間葉系腫瘍の診断で開腹術を施行した. 術中所見では胃後壁から発生した壁外性発育を示す腫瘍で, 右胃動脈, 右胃大網動脈から栄養されていた. 腫瘍を含め幽門側胃切除を施行した. 組織所見では高分化型脂肪肉腫と診断された. 胃原発脂肪肉腫は極めてまれな疾患であり, 欧米, 本邦報告あわせて29例のみであった. 脂肪肉腫は比較的予後良好とされているが, 肝転移を伴う胃原発脂肪肉腫は予後不良であった
  • 内藤 哲也, 中川 悟, 池田 義之, 矢島 和人, 金子 耕司, 小向 慎太郎, 大橋 学, 神田 達夫, 西倉 健, 畠山 勝義
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1537-1542
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    扁桃悪性リンパ腫の精査中に発見された早期胃癌と胃悪性リンパ腫の衝突腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は62歳の男性で, 2002年7月, 左扁桃腫脹を主訴に当院耳鼻咽喉科を受診し, 左扁桃悪性リンパ腫 (diffuse large B cell type) と診断された. 全身検索のために施行した上部消化管内視鏡検査にて胃体下部後壁に早期胃癌を発見され, 2002年9月10日, 当科にて幽門側胃切除, D2 リンパ節郭清を施行した. 病理診断の結果, 病変は高分化型腺癌 (深達度m) と悪性リンパ腫 (diffuse large B cell type, 深達度sm2) の衝突腫瘍を形成しており, リンパ節転移は認めなかった. 術後, 2002年10月18日より左扁桃悪性リンパ腫に対して, 当院関連病院内科にてCyclOBEAP療法を6コース施行し, 完全寛解を得た. 現在までに胃悪性リンパ腫, 胃癌および扁桃悪性リンパ腫の再発を認めていない.
  • 稲川 智, 福永 潔, 阿竹 茂, 明石 義正, 松田 充宏, 辻 勝久, 石川 詔雄
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1543-1548
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    術前に診断しえた傍十二指腸ヘルニアの3例を経験したので報告する. 症例1は49歳の男性. 約5か月に及ぶ腹痛, 嘔吐を主訴にイレウスの診断で入院. UGI, 腹部CTで傍十二指腸ヘルニアと診断し, 手術を施行した. 症例2は80歳の女性. 7日前から腹痛が徐々に増強し, 当院に搬送された. 右腹部に腫瘤を触知し, CTで傍十二指腸ヘルニアと診断し, 全身状態の悪化を懸念し, 手術を施行した. 症例3は53歳の女性. 約3か月に及ぶ食後の腹痛, 嘔吐を主訴に近医を受診. 胃内視鏡検査で異常なく, 経過観察されるも, 腹痛悪化し, 当院受診. 腹部CTで傍十二指腸ヘルニアと診断し, 手術を施行した. 3例とも術後経過は良好であった. 開腹既往のないイレウス症例では診断に苦慮することが多い. そこで当院で過去5年間に手術を施行した開腹既往のないイレウス症例を検討した. 開腹既往がなく, 腹痛を繰り返す症例では傍十二指腸ヘルニアも考慮する必要があると考える.
  • 境 雄大, 小倉 雄太, 成田 淳一, 木村 大輔, 須藤 武道, 相内 晋, 藤田 孟
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1549-1554
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    結腸癌を合併した原発性胆汁性肝硬変 (PBC) の1例を報告する. 症例は58歳の女性で, 全身倦怠感, 黄疸を主訴に当院を受診した. 血液生化学検査で肝機能異常を認めた. HBS抗原, HCV抗体は陰性, 抗ミトコンドリア抗体が陽性で, PBCの診断を得た. 下部消化管精査にてS状結腸に腫瘍を認め, 生検にて腺癌の診断を得た. 肝機能正常化後, 結腸癌に対しS状結腸切除術, D2郭清, さらに肝生検を施行した. 術後経過は良好であった. S状結腸に40×37mmの3型腫瘍を認め, 病理組織的に中分化型腺癌の診断を得た. 深達度はss, リンパ節転移を認めず, Stage IIであった. 肝生検標本ではPBCの診断で, Scheuer分類のII期であった. PBCに肝外悪性腫瘍を合併した症例は散見されるが, 大腸癌との合併症例の報告はまれである. PBC患者では初診時および経過観察時に消化管を含めた肝外悪性腫瘍の検索を行うべきである.
  • 高橋 豊, 山本 雅一, 大坪 毅人, 桂川 秀雄, 片桐 聡, 吉利 賢治, 高崎 健, 時長 一元
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1555-1559
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で, 外側区の肝細胞癌に対し他医にてTAE, 経皮的エタノール注入療法をくり返し施行されていたが, 再発をくり返すため当院紹介となった. 再TAE施行するも腫瘍の縮小効果が得られず再入院となったが, 入院当日に黒色便と貧血を認め突然の上腹部痛, 嘔気が出現した. 腹部超音波, CT検査にて肝外側区域に胆管内腫瘍栓を認めその末梢胆管の拡張を認めた. 血管造影検査では外側区域に腫瘍濃染像を認め, 経皮経肝胆道造影では左胆管が造影されず総胆管末端に血腫によると思われる透亮像を認めた. 以上より肝細胞癌の胆管内腫瘍栓からの胆道内出血と診断した. 開腹すると左胆管内に腫瘍栓があり腫瘍栓からの出血と胆管内の凝血塊を認め, 肝左葉尾状葉切除, 総胆管血腫掻爬を施行した. 病理組織像はsar-comatous changeを伴う低分化型肝細胞癌であった.
  • 笹屋 高大, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 鈴木 正彦, 鷲津 潤爾, 坂田 慶太
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1560-1564
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で, 既往歴として膝関節炎のため10年前からアスピリンを1日1錠内服していた. 心窩部痛が出現し, コーヒー残渣様の吐血をきたしたため精査目的で当院を受診した. 腹部CTでは膵尾側に68×74mm大の嚢胞性腫瘤を認め, その内部に高吸収域が存在し, さらに中心部に低吸収域を認めた. CT値はそれぞれ17HU, 75HU, 45HUであった.ERCP検査では, 拡張した分枝膵管から嚢胞内へ造影剤が貯留した. 腹部MRI で膵嚢胞内出血と診断したが腫瘍マーカーの上昇もあり膵癌も否定できないため, 膵体尾部脾合併切除術を施行した. 摘出標本では膵尾部腹側面に9×7cm大の弾性軟な嚢胞性腫瘤を認め, 嚢胞内腔に血腫が存在したが, 腫瘍性病変を認めなかった. 組織学的に嚢胞壁は一層の円柱上皮に覆われており, 膵嚢胞腺腫と診断した. 術後経過は順調で術後第22病日に退院した.
  • 高山 祐一, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 米山 文彦, 太田 英正, 竹内 英司, 小森 康司, 山田 達治, 渡邊 真哉, 宇野 雅紀
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1565-1570
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    主膵管, 総胆管に異常を来さなかったために, 術前診断に難渋した副膵管領域原発膵管癌の1例を経験したので報告する. 症例は69歳の男性で, 主訴は嘔気, 嘔吐. 上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚が全周性狭窄を呈し, 粘膜に発赤, 浮腫などの変化を認め, UGIでは一部, 不整像, 硬化像を認めた. CTでは膵頭部領域腫瘤像が描出され, magnetic resonance cholan-giopancreatographyでは総胆管, 膵管には異常所見を認めなかった. 開腹すると十二指腸下行脚から膵頭部前面の漿膜のひきつれを認め, 迅速組織診で腺癌と診断されたために, 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 腫瘍は十二指腸粘膜下から膵頭部にかけて存在し, 膵実質よりは十二指腸側への進展が優位であった. 病理組織学的には主膵管に異常なく, 副膵管に乳頭状に腺癌が存在し, 副膵管領域原発の高分化型管状腺癌と診断された.
  • 藤田 武郎, 大村 泰之, 高尾 智也, 西 英行, 福田 和馬, 間野 正之, 小松原 正吉, 土井原 博義, 清水 信義, 田口 孝爾
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1571-1576
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Solitary fibrous tumor (SFT) はまれな線維性腫瘍であり, 多くは胸腔内に発生する. 今回われわれは横隔膜原発の悪性SFTの1例を経験したので報告する. 症例は80歳の女性で, 右季肋部痛を主訴に来院した. 腹部CT上肝右葉に8cm大の腫瘍があり, 精査加療目的に入院となった. 術前検査で原発性肝腫瘍もしくは横隔膜原発の間葉系腫瘍を疑い, 開腹術を施行した. 腫瘍は横隔膜より発生しており肝は腫瘍により著明な圧排を受けていたが浸潤は認めなかった. 一部肋軟骨を含めて横隔膜とともに腫瘍切除を行った. 病理組織学的には長紡錐形~多角形の細胞がさまざまな密度で存在し, 免疫組織化学的にはVimentin (+), CD34 (+), S-100 (-), Desmin (-), glycogen (+) であり, 核分裂像8/10 HPFと非常に多く悪性SFTと診断した. 術後, 8か月経過の現在, 無再発生存中である.
  • 柳沢 智彦, 小澤 昭人, 石橋 久夫, 荒井 健一
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1577-1581
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性で, 右下腹部痛と発熱のため来院した. 右下腹部に限局した腹膜刺激症状を認め, 急性虫垂炎, 大腸憩室炎が疑われたが, 腹部超音波, CTにおいて, 虫垂の腫大や上行結腸の炎症性変化は強くなく, 回腸末端に強い壁の肥厚性変化を認めた. 急性虫垂炎穿孔による腹膜炎を否定できず開腹手術を施行した. 虫垂炎は軽度で回盲部に炎症性腫瘤を認めた. これに対し回盲部切除術を施行した. 回盲弁から3cmの回腸に憩室があり穿通し腸間膜膿瘍を形成していた. 病理組織学的所見とあわせ, 回腸憩室穿通による腸間膜膿瘍と診断した. 術後経過は良好で術後第37病日に軽快退院した.
  • 佐藤 耕一郎, 佐川 純司, 一迫 玲, 熊本 裕行, 山口 正人
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1582-1587
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    本邦ではまれなdiclofenac sodiumによると考えられる多発性横行結腸穿孔の1 症例を経験したので報告する. 症例は31歳の男性で, 慢性扁桃炎に対する扁摘後の疼痛管理にdiclofenac sodiumを75-112.5mg/日, 頓用として同坐薬50-100mg/日を使用していたところ, 術後第13病日に突然強い心窩部痛を訴えた. 白血球26,440/μl, CRP8.1mg/dlであり, 局所所見では腹部全体が板状硬, 腹部X-Pにて右横隔膜下にfree gasを認めたことにより, 消化管穿孔による腹膜炎と診断し, 緊急手術を行った. 術中所見では多発性横行結腸穿孔による汎発性糞便性腹膜炎であり, 穿孔部周囲の血流は良好であった. 同症例に対し, 穿孔部を含めた広範囲の上行, 横行結腸部分切除を行った. 病理学的所見では穿孔部を含め, 多発性の深い潰瘍形成が認められ, アポトーシス小体も散見された. 術後経過は良好で, 第22病日に退院した.
  • 内田 洋一朗, 木下 浩一, 田中 具治, 金井 陸行, 田野 龍介, 高林 有道
    2004 年 37 巻 9 号 p. 1588-1593
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    (症例1) 68歳の女性. 食道癌 (Stage IV) に対し, FP療法 (5-FU: 750mg/day×5days, CDDP: 80mg/day×1day) を施行した. 第5病日目に, 意識障害・痙攣および低Na 血症 (109mEq/L) を認めSIADH (ADH 不適合分泌症候群) と診断した.(症例2) 60歳の女性. 膵頭部癌 (Stage IVA) に対し, FP療法 (5-FU 250mg/day持続動注・CDDP 10mg動注週3 回投与) を4クール施行後, Grade 4の骨髄抑制, 低Na血症 (123mEq/L) を認めた. 尿中Na 125mEq/L, 1日尿Na 525mEq/day, 血中ADH 7.9pg/mLであり, SIADHと診断した. SIADHの早期発見・治療には頻回な血清Na値の測定が有用であると考えられた. 消化器固形癌領域でCDDPが誘因と考えられたSIADHの発症例はこれまで報告がなく, 発症機序なども不明である.
feedback
Top