日本消化器外科学会雑誌
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38 巻, 6 号
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  • 加藤 俊二, 松倉 則夫, 小野寺 浩之, 奥田 武志, 水谷 崇, 木山 輝郎, 吉行 俊郎, 藤田 逸郎, 徳永 昭, 田尻 孝
    2005 年 38 巻 6 号 p. 579-584
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 胃癌手術での在院死例の原因を分析, 危険因子を想定し, その指標をもとに在院死例が減少したかをプロスペクティブに検証した. 対象: 1991~2000年の10年間の胃癌手術例を対象に前半6年690例で在院死危険因子をレトロスペクティブに解析, 後半4年491例でその因子を検証した. 成績: 前半の在院死は46例 (6.7%, 男女比32: 14, 平均65±9歳, 術死13例, 平均在院日数33±60日, 胃全摘術24例: 11%, 幽門側胃切除18例: 5.3%, 胃腸吻合術2例, 試験開腹術2例), 後半は14例 (2.9%, 男女比8: 6, 平均66±10歳, 術死5例, 平均在院日数69±45日, 胃全摘5例: 2.4%, 幽門側胃切除4例: 1.7%, 胃腸吻合4例, 試験開腹1例) で胃切除術後の在院死は42例 (6.1%) から9例 (2.1%) と改善された. 胃切除例の死亡原因は癌腫症が前半19例, 後半6例, 術後合併症が前半22例, 後半2例と両者による死亡数減少が目立った. 在院死危険因子である, 1) 術前PS低下をもたらす基礎疾患例, 2) 手術直前PNI (小野寺指数) が40以下, 3) 術前化学療法施行後2週間以内の手術例, 4) 腫瘍マーカー値が正常上限2倍以上もしくは術前FDP 著明上昇例, 5) 手術根治度Cが予測されるなどの項目が二つ以上ある症例を手術対象からはずすことが成績に寄与した. 考察: 胃癌術後の在院死例を減らすために上記因子による症例選別が有効であり, 今後, 危険因子のスコア化で在院死例を減らすことが可能と考える.
  • 河内 保之, 清水 武昭, 新国 恵也, 西村 淳, 角田 和彦, 岩谷 昭
    2005 年 38 巻 6 号 p. 585-591
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 胃全摘後症例のQOL向上をめざし, 2001年より胃全摘後の再建法として空腸パウチ・ダブルトラクト法 (以下, PDT法) を導入した. PDT法の安全性, 有効性について検討した. 対象: 2001年5月より2004年3月までに行ったPDT法72例と従来行っていたRoux-enY法 (以下, R-Y法) 84例と比較した. 結果: 手術時間はPDT法277分, R-Y法261分であった. 全体の術後合併症はPDT法30.6%, R-Y法32.1%で差はなく, 再建に関する合併症はPDT法9.7%, R-Y法13.1%であった. 術後1年以上再発なく経過したPDT法40例とR-Y法32例を比較すると, 術前体重を100とした%体重では術後1年目でPDT法95.7, R-Y法88.9であり, PDT法が体重の回復が良好であった. 食事に関するアンケート調査や総コレステロール値, アルブミン値, リンパ球数では差がなかった. 考察: PDT法はR-Y法に比べ合併症の増加はなく, 術後体重の回復が良好であり, 有効な再建法であると考えられる.
  • 壁島 康郎, 高橋 洋子, 亀山 哲章, 戸泉 篤, 田村 洋一郎, 影山 隆久
    2005 年 38 巻 6 号 p. 592-597
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 大腸癌手術症例に対する術後早期における大建中湯投与の有用性を検討した. 対象と方法: 2000年1月から2003年12月に当院において大腸癌手術が施行された98例 (平均年齢67.9±11.8歳男性: 女性=47: 51) のうち, 第1~2病日に大建中湯 (7.5g/日) の投与群と非投与群に分け, 排ガス日, 術後在院期間, 術後早期の腸閉塞発症率を検討した. 対象から縫合不全, 感染症症例は除外した. 解析は開腹手術 (投与群24例, 非投与群51例), 腹腔鏡下手術 (投与群16例, 非投与群7例) に分けて行った. 結果: 開腹術症例における背景因子に, 2群間に有意差は認めなかった. 排ガス日 (POD) は投与群: 2.4±0.7, 非投与群: 3.4±1.6 (P=0.007), 術後入院日数 (POD) は投与群: 8.4±1.6, 非投与群: 12.3±7.1 (P=0.009) であった. 在院期間中における腸閉塞発症率は, 投与群0%(0/24), 非投与群5.8%(3/51) であった. 術後入院日数の一元配置分散分析においては, 術中出血量に次いで大建中湯投与の有無が有意な因子であった. 一方, 腹腔鏡下手術症例においては, 2群間に入院期間・腸閉塞発症率における有意差は認められなかった. 考察: 開腹大腸癌手術後早期における大建中湯投与は, 入院期間の短縮, 術後腸閉塞の予防に有用である可能性が示された.
  • 森田 大作, 市倉 隆, 木村 幹彦, 帖地 憲太郎, 三枝 晋, 矢口 義久, 坂本 直子, 望月 英隆
    2005 年 38 巻 6 号 p. 598-602
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    化学療法後にSIADHをきたした食道癌の1例を経験したので報告する. 症例は66歳の男性で, 嚥下困難を主訴に来院し, 食道癌の診断により, 入院した. 入院後精査で, 大動脈浸潤が疑われたため, 低用量cisplatin (CDDP) と5-FUによる化学放射線療法の施行を計画した.CDDP 3mg/body/day, 5FU 500mg/body/day にて化学療法を開始した. 化学療法開始後3日目に, 血清Na濃度が105mEq/l, 血清Cl値は75mEq/lと著明に低下し, 見当識障害も出現した. 他に1日尿量3,500ml, 尿中Na: 122mEq/l, 尿浸透圧364OSM であり, Syndrome ofinappropriate antidiuretic hormone secretion (SIADH) の診断基準を満たしていた. 化学療法は中止し, SIADHの加療のため, 水制限と塩分補給したところ, 化学療法中止後3日で意識障害, 電解質異常ともに改善傾向を示した.
  • 工藤 明敏, 得能 和久, 森田 克彦, 平木 桜夫, 福田 進太郎
    2005 年 38 巻 6 号 p. 603-607
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    高カロリー輸液 (IVH) 施行中, 輸液内容が血管外に漏出し, 呼吸困難, 胸水が貯留した症例を2例経験した. 症例1はIVH 開始後5日目に喘息様呼吸困難で急激に発症した. 気管内挿管を要し, 著明な低酸素血症, 進行性アシドーシス, 両側胸水貯留, 心タンポナーデとなった. CTにてCVカテ先端近傍の縦隔にエアーを認め, 側注の際に混入されたものと考えた. 胸腔, 心嚢ドレナージ, CVカテ抜去により救命しえた. 症例2はIVH開始後18日目に呼吸困難, 胸水貯留で発症した. 胸水糖濃度測定とCVカテからの色素注入で胸水が着色したことにより診断した. CVカテ留置後IVHの滴下が不良となり, 他に原因の考えられない呼吸困難や胸水の貯留した際は, 輸液内容の血管外漏出を疑い, 胸水糖濃度測定やCVカテから色素注入検査を施行し, この病態を早期に診断しなければならない. カテーテルの抜去と胸腔, 心嚢ドレナージや病態にあわせた集中治療が必要である.
  • 石山 哲, 出江 洋介, 葉梨 智子, 吉田 操
    2005 年 38 巻 6 号 p. 608-613
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の女性で, 嚥下障害, 体重減少を主訴に来院した. 胸部CTにて左肺下葉に胸膜陥入像を伴う腫瘤影を認め, 肺胞洗浄細胞診 (BAL) にて腺癌と診断された. また, 上部消化管造影, および内視鏡検査で胸部食道に, 粘膜面に変化のない全周性狭窄を認め, 超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診 (EUS-FNAB) を施行したところ, BALと同様の細胞を認め, 腺癌が強く疑われた. 対側肺転移, 食道転移を有する原発性肺癌, StageIVと診断した. 80歳と高齢であり, 呼吸機能, 腎機能の低下を認めたため, 姑息的治療を選択し, 経口摂取を可能にするための食道ステントを挿入し退院となった. 悪性腫瘍の血行性, リンパ行性食道転移は比較的まれであり, 自験例を含め19例の報告があるのみである. 今回, 我々はEUS-FNAB にて診断しえた, 肺癌の食道転移を経験したので文献的考察を加え報告する. 悪性腫瘍の血行性, リンパ行性食道転移は比較的まれである. 症状を有することが少なく, 剖検にて発見されることが多い.術前診断しえた症例は自験例を含め19例の報告を認めるのみである. 今回, 我々は超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診 (fine needle aspiration biopsy under endoscopic ultrasonography: 以下, EUS-FNAB と略記) にて診断しえた肺癌の食道転移を経験したので報告する.
  • 有本 裕一, 大田 浩平, 大谷 博, 金 義哲
    2005 年 38 巻 6 号 p. 614-619
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹膜播種を伴った胃原発の悪性gastrointestinal stromal tumor (GIST) 手術後に, メシル酸イマチニブを補助化学療法として投与し, 術後21か月間無再発生存中の症例を経験した. 患者は49 歳の女性で, 上腹部痛を主訴に来院した. 腹部CTにて胃壁に接する径約10cm大の腫瘍を認め, 諸検査にて胃原発壁外発育型粘膜下腫瘍と診断し手術を施行した. 術中, 両側横隔膜, 腹壁などに腹膜播種性転移と考えられる腫瘤を多数認めた. 主腫瘍に対し胃局所切除術, 腹膜播種性転移腫瘤に対し可及的切除を施行した. 腫瘍は楕円形核を有する紡錘形細胞の密な増生を認め, 他の腫瘤部も主腫瘍部と同様であった. 免疫染色所見, 腫瘍の大きさや分裂像, 腹膜播種性転移の存在よりuncommitted type の悪性GIST と診断した. 外科的治療がGISTに対する治療の第1 選択ではあるが, 今後イマチニブを用いた治療法が進歩し, GISTの治療成績がさらに向上することが期待される.
  • 大井 正貴, 森本 雄貴, 大澤 亨, 小池 宏, 三宅 哲也, 広川 佳史
    2005 年 38 巻 6 号 p. 620-625
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で, 平成13年6月に原発性肺癌のため他院で左肺全摘出術, 平成14年2月に胃腫瘍のため胃部分切除術をうけ, 肺癌の胃転移と診断された. 同年6月発熱, 全身倦怠感, 食欲不振のために当院を受診した. 胃穹窿部に表面不整な隆起性腫瘤を認め, 生検でmalignantgastrointestinal stromal tumor と診断されたが, 肺癌の胃転移も否定できず, 噴門側胃切除術を施行した. 病理組織学的検査, 免疫組織化学染色, 術前の血清Granulocyto-coloneystimulating factor (以下, G-CSF) 値が高値であったことより, 肺癌術後のG-CSF産生転移性胃癌と診断した. 同年12月, 横行結腸間膜に腫瘤を形成したために, 腫瘤切除術, 横行結腸部分切除術を行った. やはり, 肺癌の転移であった. G-CSF 産生肺癌の胃転移症例は予後不良とされるが, QOL の改善を考慮した外科的治療が必要となることがある. 今回, 肺癌術後のGCSF産生転移性胃癌の1例を経験したので報告する.
  • 森山 裕煕, 黒瀬 通弘, 渡辺 剛正, 野中 泰幸, 林 同輔, 徳田 直彦, 児島 亨, 高田 晋一
    2005 年 38 巻 6 号 p. 626-631
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔動脈 (以下, CA) 起始部に閉塞が認められる症例に対して膵頭十二指腸切除術 (以下, PD) を行う際には, 肝血流が問題となる. CA起始部閉塞を伴う十二指腸乳頭部癌に対して, 血行再建を行うことなく安全にPDを施行できた1例を経験したので報告する. 症例は75歳の女性で, 全身倦怠感と右季肋部痛にて入院. 内視鏡検査にて十二指腸乳頭部癌と診断し, 上腸間膜動脈造影にて, 膵アーケード, 背側膵動脈を通じて肝動脈, 脾動脈が描出された. 造影CTによる3D再構成軸位断像にて, CA起始部の閉塞が確認され, 最終的に手術を行った. CA起始部に瘢痕性の狭窄を認め, 解除を試みたが総肝動脈 (以下, CHA) に明らかな拍動をみなかった. ところが, 胃十二指腸動脈をテストクランプし血流量計でモニターしたところ, CHAに背側膵動脈からと思われる求肝性の血流を認め, 血行再建を行うことなく安全にPDを施行することができた.
  • 梶川 真樹, 石山 聡治, 澤田 憲朗, 小野 謙三, 鈴木 康彦
    2005 年 38 巻 6 号 p. 632-637
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸から空腸に多発し, さらに腸間膜リンパ節転移, 脳転移を来したgastrointestinalstromal tumor (以下, GISTと略記) の1例を経験した. 症例は76歳の男性で, 主訴は黒色便.上部消化管内視鏡による生検で, 十二指腸低分化型腺癌の疑診にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 術中所見で空腸にも腫瘍が計5か所にみられ, また小腸間膜内に複数個のリンパ節転移もみられた. 十二指腸・空腸の腫瘍は, いずれも免疫染色でKITレセプターが陽性のためGISTと診断された. 術後, 多発性の脳転移が判明, メシル酸イマチニブの投与と全脳照射を行ったが効果なく, 術後6か月で死亡した. GISTは近年, その発生機序や治療法に関する知見も含め多数報告されているが, 本症例は, 小腸に多発し, リンパ節転移, 脳転移を来し, メシル酸イマチニブも無効であったまれな症例であり, GISTの多様性をあらためて認識させられた貴重な1例と思われた.
  • 隈元 雄介, 栗原 直人, 菊池 潔, 露木 晃, 藤城 保男
    2005 年 38 巻 6 号 p. 638-643
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性で, 検診で施行された上部消化管造影検査で十二指腸球部の異常を指摘され, 当院紹介受診. 上部消化管内視鏡検査, CT, MRI, 超音波内視鏡検査を施行し, 最大径35mmの十二指腸球部粘膜下腫瘍と診断された. 腫瘤が第3層由来であり, 基部が細く可動性良好であったので, 内視鏡下ポリープ切除術が可能と判断し, 施行した. 切除標本は35×25×25mmで, 病理組織学的にBrunner腺過形成と診断された. 偶発症はなく, 経過は良好で, 11病日に退院した. 1年間の経過観察中に再発は認めていない. Brunner腺過形成は比較的頻度の高い病変であるが, 30mmを越えるものはまれであり, 文献的考察を加え, 報告した.
  • 本邦報告27切除例の検討
    甲斐 千晴, 別府 透, 今村 裕, 石河 隆敏, 今井 克憲, 土居 浩一, 辛島 龍一, 池田 公英, 松野 文彦, 江上 寛
    2005 年 38 巻 6 号 p. 644-649
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性で, 主訴は右季肋部痛. CEA, AFPは正常範囲内で, HBs抗原, HCV抗体は陰性. 腹部エコーで肝S6に8.3×6.5cm, S8に1.7×1.5cmの極めて低エコーな腫瘍を認めた. DIC (drip infusion cholangiography)-CT では, S8腫瘍内を偏位なく貫通する肝内胆管像が高濃度領域として確認された. 針生検診断は未分化癌であった. 術前は胆管細胞癌を疑い, 肝拡大右葉切除術を施行した. リンパ節転移や脾腫は認められず, 肝臓原発の腫瘍であった. 病理検査では, リンパ球が腫瘍内をびまん性に占居していた. 免疫染色では, CD 20陽性であり, 肝原発非ホジキンリンパ腫B細胞型と診断された. 術後に再発 (胸腔) を認めたが, CHOP療法を行い完全寛解に至った. 肝原発悪性リンパ腫においては, 特徴的な画像を手がかりに本症を疑い, 生検標本の免疫染色を行うことが術前の正確な診断につながる.
  • 岡村 圭祐, 富山 光広, 鈴置 真人, 近藤 哲, 加藤 紘之
    2005 年 38 巻 6 号 p. 650-654
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の女性で, 肝機能障害の精査目的に当院へ入院した. 超音波検査にて, 16mmの胆嚢隆起性病変が発見され, 同病変はカラードプラ上, 拍動波を有していた. また, 造影CTで強くenhanceされ, さらに血管造影上濃染像を示したことから豊富な血流を認める隆起性病変であると判断した. 癌との鑑別が困難であり開腹胆嚢摘出術を施行した. 組織学的には間質に豊富な血管が存在し, 炎症性細胞の著しい浸潤が認められたが悪性所見はなく, 最終的にコレステローシスを合併する炎症性胆嚢ポリープと診断した. 本症例では, 血流は豊富で癌との鑑別に苦慮したが, 最高血流速度がその鑑別に有用であることが示唆された. なお, 本症の成因には, コレステローシスの関与の可能性があった.
  • 浅岡 忠史, 近藤 礎, 永野 浩昭, 花田 浩之, 左近 賢人, 堂野 恵三, 梅下 浩司, 中森 正二, 若狭 研一, 門田 守人
    2005 年 38 巻 6 号 p. 655-660
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性で, 全身倦怠感, 右季肋部痛を主訴に来院した. 術前の画像検査では, CTで胆嚢窩に淡く造影される5cm大の腫瘤を認め, MRIでは, T1強調画像でlow intensity, T2強調画像でhigh intensityとして描出された. 腫瘍マーカーはAFP-L3が陽性であった. 肝細胞癌, または混合型肝細胞癌と診断し手術を施行した. しかし, 術中に胆嚢癌と診断されたため, 拡大肝左葉切除術とリンパ節郭清術を施行した. 術前血清の術後AFP電気泳動解析では, AFPL2とAFP-L3分画が検出され, 非肝細胞癌パターンであった. 以上より, 胆嚢に隣接するAFP産生腫瘤については, 胆嚢癌の可能性を念頭におくことが必要である. また, 血清のAFP電気泳動解析が肝細胞癌とAFP産生胆嚢癌の鑑別診断に有用となる可能性がある.
  • 西川 隆之, 金沢 景繁, 坂田 親治, 藤田 みゆき, 清田 誠志, 堀 高明, 徳原 太豪, 大杉 治司
    2005 年 38 巻 6 号 p. 661-666
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性で, 平成13年2月初旬に閉塞性黄疸の診断にて当院入院となった. 諸検査の結果, 門脈本幹および肝動脈浸潤を伴った根治切除不能肝門部胆管癌と診断した. 門脈浸潤に対し, 平成13年4月初旬に経皮経肝的に門脈ステントを留置した. 次いで, 同4月中旬に胆管浸潤に対し右前枝より総胆管内に胆道ステントを留置, 同5月初旬に退院した. その後外来にて約2年間経過観察していたが, 平成15年5月中旬に食思不振, 嘔吐がみられたため再入院となった. 上部消化管内視鏡像上, 胃幽門部に腫瘍の壁外性圧迫による狭窄像がみられ, 同6月中旬消化管ステントを留置したところ食事の摂取が可能となった. その後癌性腹膜炎が増悪し, 初回門脈ステント留置2年4か月後の平成15年8月下旬死亡した. 本症例に対する門脈, 胆管および胃幽門部へのトリプルステント留置は長期にわたり良好なQOLが得られ, 有効であった.
  • 徳山 泰治, 清水 泰博, 安井 健三
    2005 年 38 巻 6 号 p. 667-672
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の女性で, 2001年2月, 腹痛が出現し近医を受診した. 諸検査で胆道系に異常を指摘され当院へ紹介された. 腹部造影CTで胆嚢体部に3cm大の結節状の腫瘤を認めた. 肝十二指腸間膜内リンパ節は腫大し膵頭部への浸潤が疑われ, 大動脈周囲リンパ節 (No.16b1) は1cm大に腫大していた. 肝門部で右肝動脈は腫大リンパ節により強く圧排されていた. ERCPでは非拡張型膵胆管合流異常が存在し, 胆嚢体部に腫瘍による陰影欠損を認め, 総肝管および総胆管はリンパ節により圧排されていた. 以上より, 傍大動脈リンパ節転移を伴う進行胆嚢癌と診断し, 2001年5月肝右葉切除・膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理診断は乳頭腺癌, 進達度ss, No.8p, 12b, 12p, 14, 16b1 リンパ節が転移陽性でn3, stage IVaであった. 術後膵液瘻を併発したが術後49日目で退院し, 2004年12月現在, 再発の兆候なく外来通院中である.
  • 池永 直樹, 西原 一善, 勝本 富士夫, 松永 浩明, 奈須 俊史, 大城 由美, 中守 真理, 豊島 里志, 小野 稔, 光山 昌珠
    2005 年 38 巻 6 号 p. 673-678
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は50 歳の女性で, 全身倦怠感を主訴に近医を受診した. 腹部超音波検査で膵体部に径1cm の腫瘍を認め, 当院紹介となった. 腹部CT では膵体部に造影効果のある径1cm の腫瘍を認め膵内分泌腫瘍が疑われたが, 腹部MRI ではT1, T2強調像ともに低信号であり, 膵内分泌腫瘍としては非典型的な所見であった. 血清CA19-9が1,459.2U/ml と高値であり, 膵管癌の可能性も否定できず, 外科的切除を施行した. 病理組織検査で腫瘍細胞は膵島類似の索状配列をなし, 一部に腫瘍細胞と連続して腺管構造を伴っていた. また, 間質が高度に線維化しており, これがMRI T2強調像で腫瘍が低信号を示した原因と考えられた. 免疫染色では内分泌細胞の部分がグルカゴンに陽性, 腺管構造の部分がCA19-9染色に陽性を示し, 非機能性膵内分泌腫瘍と診断した. 膵内分泌腫瘍の起源に関しては諸説有るが, 内分泌腫瘍細胞と腺管組織が連続性を持つことより膵内分泌腫瘍の起源として多分化能を持つ膵管上皮が考えられた.
  • 小橋 重親, 青柳 武史, 三澤 一仁, 大黒 聖二, 長佐古 良英, 長谷川 公治, 大川 由美, 佐野 秀一, 中西 昌美, 田原 正彦
    2005 年 38 巻 6 号 p. 679-683
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の女性で, 平成9年4月, 左後腹膜腫瘍 (平滑筋肉腫) の診断で, 腫瘍, 左腎臓摘出術を施行した. 平成12年2月上旬, 肝転移に対してS2, S4の肝部分切除. また, 平成13年12月中旬, 残肝再発のため肝外側区切除施行した. いずれも病理組織学的に平滑筋肉腫の肝転移と診断された. 平成14年7月下旬, 腹痛の精査のため再入院した. 腹部CTにて膵尾部に2cm 大のlow density areaを認め, 平滑筋肉腫の局所再発と診断し, 8月下旬, 手術を施行した. 腫瘍は膵内に存在したため膵転移と診断し, 膵体尾部切除術を施行した. 後腹膜原発平滑筋肉腫の膵転移の切除例は今回検索しえたかぎりでは報告が見られず, 非常にまれな症例と考えられた. 転移性膵腫瘍において, 切除例に長期生存の報告もあり, 治療法の1選択肢として外科的切除も考慮すべきである.
  • 小山 剛, 貝崎 亮二, 森本 純也, 愛田 良樹
    2005 年 38 巻 6 号 p. 684-689
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈血栓症に対し手術を施行し, 術後早期再燃に対し, 経カテーテル的血栓吸引療法を施行した1例を経験したので報告する. 症例は65歳の男性で, 心窩部痛を主訴に受診した. 既往歴は心筋梗塞, 脳梗塞, 糖尿病で, 高度炎症所見をきたすも症状が軽く, 早期診断が困難であった. 造影CTにて上腸間膜動脈血栓症と診断され, 発症から約44時間後手術を施行した. 開腹すると, 小腸は大部分が壊死をきたしており, 広範囲小腸切除術および右半結腸切除術を施行した. 術後経過は良好であったが, 術後7日目に右上腹部の圧痛が出現し, 炎症所見の再上昇も認めた. 造影CTでは明らかな異常を認めなかったが, 腹部血管造影にて血栓症再燃と診断した. 引き続き経カテーテル的血栓吸引療法を施行し, 多量の血栓除去に成功し, 血流の再開通を認めた. 上腸間膜動脈血栓症に対し本手技を用いた報告は本邦6例目であり, 本症に対し有効な治療法であると考えられた.
  • 佐藤 友威, 三科 武, 鈴木 聡, 大滝 雅博, 宮澤 智徳, 坂本 薫, 中野 雅人, 深瀬 真之, 松原 要一, 畠山 勝義
    2005 年 38 巻 6 号 p. 690-695
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    成熟型腸間膜奇形腫の1例を経験した. 症例は45歳の男性で, 腹痛を主訴に来院し, 腹部CT, 超音波検査で右下腹部に境界明瞭な一部石灰化を有する嚢胞性病変を認めた. 血清CEA, CA19-9はそれぞれ138ng/ml, 53U/mlと高値で, 悪性腫瘍も否定できなかった. 開腹すると回盲部腸間膜に9×5cm大の嚢胞性腫瘍を認めた. 被膜に覆われており浸潤傾向を認めなかったため, 腸管を切除せず腫瘍切除術のみ施行した. 術後の病理組織診で良性の成熟型奇形腫と診断された. 血清CEA, CA19-9ともに術後2か月でほぼ正常化した. 高CEA, CA19-9血症を伴う腸間膜奇形腫は, 我々が検索した範囲では他に報告を認めなかった. 腸間膜腫瘍の鑑別には奇形腫も念頭におく必要があり, 腸間膜奇形腫の治療は腫瘍摘除で十分であることから, 拡大手術を含めた過大な侵襲は避けるべきであると考えられた.
  • 川崎 誠康, 阿部 元, 藤野 和典, 花澤 一芳, 谷 徹
    2005 年 38 巻 6 号 p. 696-700
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    横隔膜ヘルニアの中で最もまれで, かつ術前に両側性と確診したMorgagni孔ヘルニアの1例を経験した. 症例は60歳の女性で, 呼吸苦を主訴に受診した. 胸部X線で右下肺野に腸ガス像を認め, 横行結腸の右胸郭内への脱出と診断した. 経肛門的にairを注入し結腸を強調して撮影するCT colonographyにて冠状断画像を得た結果, 横行結腸が2回ループを描き左右の胸腔内にそれぞれ陥入している像を認め, 両側性であることが判明した. 手術は経腹的に施行. 術前診断どおり横行結腸を内容とする両側性のもので, ヘルニア門を横隔膜縫縮とメッシュの縫着にて修復した. 本疾患は通常右側胸腔へ結腸・大網などが脱出するものだが, 両側例の報告も3.9%ある. 経胸法では両側例に対応できず術前の評価は重要である. CT colonographyは結腸を内容としたMorgagni孔ヘルニアの術前検索に簡便でかつ大変有用であった.
  • 大迫 智, 臼井 智彦, 西田 智樹, 城野 晃一
    2005 年 38 巻 6 号 p. 701-705
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は90 歳の女性で, 右鼠径部腫瘤と局所の炎症症状にて当科に紹介された. 初診時, 右鼠径部に6cm大の弾性軟の腫瘤を認め, 右鼠径部から大腿内側の皮膚に発赤を認めた. 骨盤部造影CTにて, 右大腿ヘルニア嚢内に盲端に終わる腸管を認め, その周囲に膿瘍形成が疑われたため, 大腿ヘルニア内壊疽性虫垂炎と診断し, 手術を施行した. 鼠径部からアプローチし, ヘルニア嚢内の膿瘍をドレナージした後, 同一術野で虫垂切除術とMcVay法による大腿ヘルニア根治術を行った. 術後, 創感染を合併したが保存的に治癒した. ヘルニア内虫垂炎はまれな病態であり, ヘルニア門での虫垂の締め付けにより虫垂炎が発症する. 症状としては炎症がヘルニア内に限局することにより古典的な虫垂炎の身体所見が出ず, 鼠径部腫瘤・腫脹と皮膚症状が前面に出るため, 診断が困難である. 正確な術前診断にはCTでの画像診断が有用である. 治療は, 全身状態が悪化する前に速やかに外科的治療を行うことが望ましい.
  • 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 松山 隆生, 長谷川 聡, 名取 志保, 長谷川 誠司, 仲野 明, 家本 陽一
    2005 年 38 巻 6 号 p. 706-711
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    成人腸重積症は小児に比べ比較的まれで, 大腸では癌腫によるものが多く, その先進部は腫瘍であることが多い. 今回, 我々は腫瘍から約2cm離れた盲腸に形成された出血性梗塞巣を先進部として発症したと考えられる盲腸癌腸重積症の1例を経験したので報告する. 症例は55歳の女性で, 持続する腹痛, 下痢, 食思不振を主訴に当院を受診し腸閉塞の診断で入院した. 腹部超音波検査, CT, 注腸造影X線検査で腸重積症の特徴的所見を呈しており, 手術を施行した. 開腹にて, 横行結腸まで入り込んだ重積を認めた. 容易に重積は解除されたが, 先進部の腫瘤から虫垂側に非連続性の別の腫瘤を触知した. 病理組織学的検査では, 先進部の腫瘤は出血性梗塞巣であり虫垂側の腫瘤は盲腸癌と診断された. 今回の腸重積症の先進部は, 盲腸癌を先進部とし重積と解除を繰り返した末に生じた出血性梗塞巣と推察された.
  • 寿美 哲生, 望月 眞, 鈴木 芳明, 高木 眞人, 青木 利明, 葦沢 龍人, 冨岡 英則, 森 康治, 勝又 健次, 青木 達哉
    2005 年 38 巻 6 号 p. 712-716
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    上行結腸に発生した扁平上皮癌を経験したので報告する. 症例は51歳の男性で, 下腹部痛を主訴とし, 精査の結果, 多発肝転移を伴う上行結腸癌と診断し, 結腸右半切除術を施行した. 標本全割による病理組織学的所見では, 腺腫成分は認めたが, 腺癌成分は認めず, 角化像を認めたため, 中分化型扁平上皮癌と診断した. 第27病日に退院となったが, 第65病日に悪液質により死亡した. 本疾患の発生については, 腺腫成分を伴っていることより, 腺腫よりの発癌が示唆された. 本疾患は発見時すでに遠隔転移を来している症例が多いため予後不良であり, 集学的治療の改善により成績の改善が期待される.
  • 大山 健一, 高金 明典, 曽根 美雪, 加藤 健一, 川村 秀司, 遠野 千尋, 斎藤 和好
    2005 年 38 巻 6 号 p. 717-721
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で, 某医で1989年8月に胃癌にて胃全摘術を施行, 術後縫合不全のため再手術が施行され, 再手術後難治性の腹腔内膿瘍を形成したが保存的に加療された. 以後は特に自覚症状なく経過していたが, 2003年12月肺炎症状のため近医入院となり, 注腸造影X線検査にて結腸脾彎曲部と左肺S9の気管支との交通を認め結腸気管支瘻の診断となった. 結腸に悪性病変を疑う所見がなく, 炎症性腸疾患などの基礎疾患もないことから, 前回手術後の横隔膜下膿瘍に起因したものと考えられた. 本症例は高齢であるうえに偶発的に発見された肝腫瘍が生検の結果cholangiocarcinoma と診断されたため, 根治手術は施行せず上行結腸に双口式人工肛門を造設した後, 血管造影手技を用いた金属コイルによる気管支塞栓術を施行し良好な経過が得られた. 結腸気管支瘻はまれな疾患であり, 文献的考察を加え報告した.
  • 池永 雅一, 関本 貢嗣, 山本 浩文, 池田 正孝, 三宅 泰裕, 金 柄老, 能浦 真吾, 永野 浩昭, 左近 賢人, 門田 守人
    2005 年 38 巻 6 号 p. 722-727
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は40 歳の妊婦 (22週5日) で右季肋部痛を主訴に来院した. 家族歴に父が59歳時直腸癌, 姉が45歳時に大腸癌と診断されている. 遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (Amsterdam criteria II) の診断基準に合致した. 右季肋部痛にて腹部超音波検査を施行したところ肝腫瘤を指摘された. 精査にて多発肝転移を伴うS 状結腸癌と診断した (妊娠23週2日). 本人・家族と治療方針につき相談した結果, 胎外生活が可能となる妊娠28週まで待ったうえで癌治療を行うこととした. 待機中にイレウス症状が進行し, 母体の全身状態も悪化したために緊急手術を施行した (妊娠24週4日). 術直後に胎児死産となり, また術後13日目に多臓器不全にて死亡した. 妊娠に合併した悪性腫瘍の治療に際して, 妊婦に関わるさまざまな因子を考慮し治療法の選択をすべきである.
  • 金廣 哲也, 湯浅 吉夫, 信原 宏礼, 首藤 毅, 上松瀬 新, 津村 裕昭, 村上 義昭, 末田 泰二郎
    2005 年 38 巻 6 号 p. 728-733
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    皮下気腫を呈した極めてまれな宿便性S状結腸穿孔を経験した. 症例は87歳の男性で, 脳梗塞の既往, 高度の慢性便秘があった. 2002年11月13日突然嘔吐が出現し, 翌日には意識レベル低下, 血圧低下のため紹介入院となった. 腹部は全体に緊満しており, 圧痛, 筋性防御を認めた. 血液検査で白血球減少, 肝・腎機能障害を認めた. 体部CTにて腹腔内遊離ガス像および縦隔, 後腹膜からS状結腸間膜, さらに頸部, 左側胸部から左側腹部にかけての広範な皮下気腫を認めた. 開腹すると, 下行結腸から直腸にかけて著明な拡張を認め, 拡張したS状結腸の内側から腸間膜側に4.5×3.4cm大, 楕円形の穿孔部位が存在した. S状結腸間膜は気腫状で腹腔内汚染は高度であり, Hartmann手術を行った. 病理では穿孔部に憩室は認めず, 高度の便秘によってS状結腸壁が圧迫壊死に陥り発症したと考えられた.
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