日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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39 巻, 10 号
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  • 佐藤 太一, 神藤 英二, 橋口 陽二郎, 上野 秀樹, 望月 英隆
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1571-1576
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 特殊2重染色により静脈とリンパ管を識別し, 2重染色法により判定されたリンパ管侵襲 (以下, lyと略記), 静脈侵襲 (以下, vと略記) の臨床的意義を検討した.方法: curA手術が行われたss大腸癌初回手術125例を対象とし, 代表的1切片に対し, CD34免疫染色に弾性染色を加えた2重染色を施行. 1か所でもリンパ管侵襲, 静脈侵襲を認めた場合をly (+), v (+), まったく認めない場合をly (-), v (-) と定義し, 2重染色による分類および特殊染色の意義について検討した.結果: vはリンパ節転移との間に強い相関を認めた (p=0.01). 予後解析からは, ly (+) 群はly (-) 群に比べ予後不良の傾向を認め (5生率88.9% vs 75.6%, p=0.06), v (+) 群はv (-) 群に比べ予後不良の傾向を認めた (5生率90.0% vs 78.9%, p=0.09). リンパ節転移有無, ly, vを共変量とした多変量解析ではリンパ節転移のみが独立した予後因子として選択された (p=0.008). また, 4個以上の静脈侵襲所見の有無で検討したところ, 静脈侵襲にはリンパ節転移有無とは独立性を有する臨床的意義が存在した.考察: 予後因子としての意義は, 侵襲所見の有無を基準とした場合, ly, vともにリンパ節転移を凌駕しえないが, 4個以上の静脈侵襲所見はリンパ節転移の有無と同様に重要な臨床的意義を有すると考えられた.
  • 新垣 雅人, 児嶋 哲文, 平口 悦郎, 村上 貴久, 松本 譲, 寺本 賢一
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1577-1581
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    横隔膜ヘルニアの1型であるまれな傍裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する. 症例は70歳の女性で, 固形物摂取時の嚥下困難と嘔吐を主訴に, 当院を受診した. 上部消化管内視鏡検査とバリウム検査にて, 食道裂孔ヘルニアの傍食道型と術前診断した. 手術は腹腔鏡下に行い, 食道胃接合部および胃上部付近を剥離し, 後縦隔内に入り込んでいた胃穹隆部を整復したところ, ヘルニア門は左横隔膜にあり食道裂孔との間には横隔膜脚が介在していた. 横隔膜ヘルニア (傍裂孔ヘルニア) と判断し, ヘルニア門を閉鎖した後, 食道胃接合部付近剥離による逆流を考慮してToupet法を施行した. 術後経過は良好で, 11日目に退院した. 本症はまれな病態で, かつ術前診断が困難であることより術式の選択に迷うが, 本例ではヘルニア門の閉鎖とToupet法を施行し良好な結果を得ることができたことから, 本疾患に対し, 状況に応じてToupet法などを用いることは有用と考えられる.
  • 小出 一樹, 加藤 良二, 吉田 豊, 田中 宏, 杉下 雄為, 二本柳 康博, 長島 誠, 大城 充, 若林 巳代次, 山口 宗之
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1582-1585
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の女性で, 腹部違和感を主訴に2003年6月当院を受診した. 既往で1歳9か月時に大網嚢胞腫摘出術を受けていた. 理学的所見では右上腹部に境界不明瞭で軟らかい腫瘤が3~4横指大に触知され, 腹部超音波検査, 腹部CTで右上腹部に嚢胞性腫瘍が認められた. 原発不明の嚢胞性腫瘍の診断にて手術を施行, 腫瘍は胃結腸間膜内に手拳大に透見され多房性を呈し, 内容は漿液性の液体であった. 隣接する他臓器との連続性はなく, 嚢腫を摘出した. 病理組織学的にリンパ管腫と診断された. 成人の大網リンパ管腫の発生はまれである. 本例では小児期に大網嚢腫の手術歴があり, 再発かまたは初発時と同様の機序で新たに発生した可能性が推察された. 30年以上経過後の再発は検索した範囲では報告がない. 再発防止を念頭においた処置が重要であると考えられた.
  • 鴇田 博美, 濟陽 高穂, 岡村 孝, 袴田 安彦, 久保内 健生, 森 健一郎, 吉村 哲規, 村山 忠雄, 土田 明彦, 青木 達哉
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1586-1591
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, 2004年2月頃から腹部膨満を自覚するようになり, 4月下旬に食思不振のため前医に入院したところ, 大量の腹水を伴う腹部腫瘤を指摘され, 当院に転院となった. 腹部CTで胃壁に接する約12cmの腫瘤と大量の腹水貯留を認め, 腹腔穿刺による性状は暗血性であった. 腹水除去により全身状態が改善したところで腫瘍摘出を含めた幽門側胃切除術を行った. 肉眼検査的に腫瘍は暗赤色調で, 胃大彎より発生し壁外性に発育していた. 病理組織ではKIT弱陽性, CD34陰性のGIST (類上皮型) であり, 遺伝子検索においてPDGFRα遺伝子のexon18に点突然変異が認められた. 術後経過は良好であり腹水の再貯留なく, 現在まで再発の徴候を認めていない. GISTでは臨床的に腹水貯留を来すことはほとんどなく, 本症例はまれな1例と考えられたため, 文献的考察とともに報告する.
  • 中島 真也, 千々岩 一男, 近藤 千博, 前原 直樹, 高屋 剛, 盛口 清香, 浅田 祐士郎
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1592-1597
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で, 1990年検診の胃透視で異常を指摘され, 平滑筋肉腫の診断で胃全摘術, 膵体尾部脾合併切除術を施行した. 原発巣の大きさは7cm, 核分裂像数は, 強拡大で5/50未満であった. その後, 肝転移に対し, 1995年, 1997年, 2001年に肝部分切除術とマイクロ波凝固療法 (MCT) を行った. 2003年, 肝S8に再発を認め, ラジオ波焼灼術 (RFA) を施行した. 2004年, 肝S8のRFA焼灼瘢痕部から1cm離れた部分に再発を認め再びRFAを行った.2005年4月, 肝S2, S4に再発を認め, 肝部分切除術とRFA焼灼瘢痕部の切除を行った. 切除した肝S8のRFA焼灼瘢痕部位にも組織学的に転移再発を認めた. 当初原発巣は平滑筋肉腫と診断されたが, 2001年, 免疫染色でKIT, CD34が陽性でgastrointestinal stromal tumor (以下, GIST) の肝転移と診断した. 4回の肝切除により10年以上生存中のGIST肝転移例を報告した.肝切除可能なGIST肝転移症例では積極的な外科切除の有用性が示唆された.
  • 岡田 憲幸, 小倉 靖弘, 小林 裕之, 寺嶋 宏明, 和田 道彦, 正井 良和, 宮原 勅治, 橋本 隆, 細谷 亮, 梶原 建熈
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1598-1603
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    血小板減少を呈した巨大脾過誤腫の1例を経験したので報告する. 症例は24歳の男性で, 2005年3月全身倦怠感があり, 血小板減少を指摘され紹介された. 骨髄生検で造血系腫瘍は否定され, 腹部CTで巨大脾腫瘍による血小板減少と診断された. エコーで腫瘍は脾臓のほぼ全体を占め, 内部不均一であり, 腫瘍内に血流シグナルを認めた. 単純CTではまだらな低吸収域, 造影CTでは腫瘍実質と考えられる高吸収域内に低吸収域がモザイク状に多発していた. MRIではT1強調でムラのある低信号, T2強調で高信号の中に高~低信号の結節を多数認めた. 以上より, 脾腫瘍内に血栓が多発しているものと考え脾臓摘出術を施行した. 摘出標本では大部分が腫瘍と器質化した血栓で占められており, 重量2,650g, 大きさ22×17×12cmで, 病理診断は赤脾髄型過誤腫であった. 本腫瘍は脾過誤腫としては, 文献で調べうるかぎり最大の大きさであった.
  • 広松 孝, 秋田 昌利, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 河合 清貴, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 都築 豊徳
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1604-1610
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性で, 腹部膨満にて精査入院となった. 腹部CT, MRIでは巨大腫瘤が肝門から骨盤まで達していた. 腹部血管造影検査では左腎動脈から分岐する栄養動脈を認めた. 後腹膜腫瘍の術前診断にて手術を施行した. 腹腔内全体を占める巨大腫瘍が結腸間膜前葉と後葉の間に存在していた. 摘出標本は395×250×170mm大の弾性硬な充実性腫瘍で厚い線維性被膜に覆われており, 重量7.5kgであった. 患者は術後経過順調で術後14日で退院した. 病理組織学的検査所見は線維芽細胞様の紡錘形細胞がpatternless patternを示していた. 免疫組織学的検査ではCD34, Bcl-2, MIC-2陽性であり, solitary fibrous tumorと診断された. Solitary fibrous tumorで, 本症例のように7.5kgまで巨大化したものは報告例中最大である. 術後21か月経過の現在無再発生存中である.
  • 矢野 佳子, 平位 洋文
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1611-1616
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は39歳の男性で, 下血と腹痛を主訴に来院し急性腸炎の診断で入院した. 入院時白血球数13,100/mm3と上昇していたが, その他血液検査ならびに腹部CTでは特に異常を認めなかった. 数日間の絶食補液にて症状はいったん軽快するも, 再度下血, 腹痛ならびに腹膜刺激症状が出現した. 第11病日の造影CTで腹水と小腸壁の著明な肥厚, 上腸間膜静脈血栓を認め, 開腹手術を施行した. 開腹時血性腹水大量, 空腸約35cm, 回腸約25cmが壊死に陥り, 回腸で穿孔を認めた. 回腸, 空腸部分切除術を施行した. 病理組織検査にて腸間膜静脈内に新鮮および陳旧性血栓が多発し, 腸管壁の全層性出血性壊死を認めた. 血液凝固検査でプロテインS抗原が24.2%, 活性値11%と低値を示し, プロテインS欠乏症が本症例の原因と考えられた. プロテインS欠乏症に起因する腸間膜静脈血栓症は非常にまれであり, 文献的考察を加えて報告した.
  • 森本 大樹, 川崎 健太郎, 高瀬 至郎, 神垣 隆, 生田 肇, 黒田 大介, 黒田 嘉和
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1617-1622
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の女性で, 右下腹部痛を主訴に当科を受診した. 右下腹部に圧痛を認めたが, 腹膜刺激症状は認めなかった. 血液検査では軽度の炎症所見を認めるのみであったが, 腹部超音波検査で右下腹部に腫大した虫垂と思われる所見を認めたため, 急性虫垂炎と診断し緊急手術目的にて同日入院となった. 開腹すると, バウヒン弁よりやや肛門側の上行結腸の腸間膜対側にピンホール様の孔と膿瘍を認め, その腸間膜側は穿通して間膜内に膿瘍形成をしていた. 腸管内腔に細い棒状の異物を触知したため異物誤飲による消化管穿孔と診断し, 回盲部切除術, 腹腔洗浄ドレナージを行った. 異物は爪楊枝であった. 急性腹症の診察においては, 異物誤飲の可能性を念頭におく必要があると思われた.
  • 金子 和弘, 冨田 広, 牧野 春彦, 畠山 勝義
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1623-1626
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    原因となりうる腫瘍性病変を伴わずに腸重積を来し, 肛門外まで脱出した巨大結腸症の1例を経験したので報告する. 症例は38歳の女性で, 排便時に肛門からの腸管脱出を来し当院を受診した. 直腸診で直腸壁は保たれていることから, 直腸よりも口側の腸重積および肛門外脱出と診断し, 緊急手術を施行した. 腸重積を整復後, S状結腸を切除した. 切除腸管に腸重積の原因となる腫瘍性病変は認められなかった. 腸重積を来し肛門外まで脱出した症例は本邦では30例ほどが報告されており, すべて腸重積の原因となる腫瘍性病変を伴っていた. 自験例は巨大結腸症で, 腸重積の原因となる腫瘍性病変も伴っておらず, 非常にまれな例であった. 本症においては原因病変の有無を含めた的確な診断と, 手術の際に無理な整復を行わないことが重要である.
  • 矢野 孝明, 若林 久男, 赤本 伸太郎, 谷内田 真一, 岡野 圭一, 臼杵 尚志, 前田 肇
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1627-1631
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群を合併した消化器悪性腫瘍は比較的まれである. 外科的治療によりネフローゼ症候群が治療前後でどのように推移するかを検討した. 当院で過去6年間に経験した5症例を対象とした(大腸癌4例, 胃小腸悪性リンパ腫1例). 術前に腎生検が4例に施行され, すべて膜性腎症であった. 術前, 術後(1M, 6M, 1Y)における1日尿中蛋白排泄量, 血清albumin値, 血清creatinine値について検討した. 1日尿中蛋白排泄量は術前と比較して術後1Yでは減少し, 血清Alb値は術前に比べて上昇した. 血清Cr値は手術の前後でほとんど変化はなかった. 今回, 文献的考察を加えて報告する.
  • 太田 博俊, 関 誠, 柳沢 昭夫, 二宮 康郎, 加藤 洋
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1632-1637
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大動脈分岐部のendocrine cell tumorを契機に発見された直腸カルチノイドを治癒切除した5年後, 下腹神経領域に再発し根治摘出できた1例を経験した. 症例は43歳の男性で, 大動脈分岐部に40mm大の神経鞘腫と臨床診断し切除され, 組織診断で内分泌細胞腫瘍と診断された. 特殊染色法でもそれ以上の鑑別診断はできなかった. カルチノイドも視野に入れ精査の結果, 2年後に径11mmの直腸カルチノイドが発見され, リンパ節郭清を伴った神経温存低位前方切除を施行した. 初回腫瘍は特殊染色再検でカルチノイドの転移と訂正された. 5年後, 仙骨前面に腫瘍出現しカルチノイドの再発を疑い, 腫瘍摘出術をした. 組織診は下腹神経に浸潤したカルチノイドの再発であった. 45歳の年齢を考えず下腹神経合併切除すれば再発はなかったと考えられた. 2006年1月現在再発の兆候なく健在であるが, 十分な経過観察が必要である.
  • 佐々木 健, 北薗 正樹, 永田 耕治, 夏越 祥次, 石澤 隆, 愛甲 孝
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1638-1642
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    同時性多発肝・骨転移を認めた直腸腺扁平上皮癌を経験したので報告する. 症例は73歳の女性で, 便柱狭小化と腰痛を主訴に来院した. 直腸Rs領域に半周性の3型病変を認め, 生検で低分化腺癌と診断された. 同時に遠隔リンパ節転移, 肝両葉にわたる多発肝転移, 第1仙椎への転移も認められた. 局所に関しては出血, 狭窄症状のコントロール目的でHartmann手術を施行した. 病理組織学的検査で, 直腸腺扁平上皮癌, Rs, Type3, ss, ly3, v3, n2, H3, P0, M1でStage IVと診断された. 術後化学療法は大腸癌に準じて5-FUによる肝動注, CPT-11とl-LVによる全身化学療法および骨転移に放射線治療を行った. 本疾患はまれで, いまだ確立された治療法はないが, 多発転移を伴う直腸腺扁平上皮癌に対して今後, 薬剤感受性試験や分子生物・遺伝子学的方法による補助療法の工夫が必要と考えられた.
  • 北村 大介, 那須 元美, 山口 浩彦, 岡村 慎也, 山崎 忠光, 坂本 一博, 鎌野 俊紀, 藤井 博昭
    2006 年 39 巻 10 号 p. 1643-1648
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で, 既往歴として2001年11月, 胃癌にて幽門側胃切除術を施行した. D2, 根治度A, 病理組織学的検査所見はtub2, 2type, mp, ly1, v1, n0であった. 術後2年の2003年10月, 下血を認めたため, 大腸内視鏡検査を施行したところ, 肛門縁から6cmの部位に1/2周性の2'typeの腫瘍を認めた. 生検の結果, 中分化腺癌であったが, 発育があまりにも急激なため, 原発性直腸癌は考えにくく, 転移性直腸癌を疑った. 胃癌の摘出検体と直腸癌の生検検体をloss of heterozygosity(以下, LOHと略記)解析した結果LOHパターンが一致したため胃癌術後転移性直腸癌と診断した. 2003年11月, 手術施行したが切除できず人工肛門を造設した. 術後, 化学療法としてTS-1/CDDP施行し外来にて経過観察していたが, 2004年9月, 肝不全にて死亡した. LOH解析は癌の原発性, 転移性の診断に非常に有用であると思われた.
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