はじめに: 特殊2重染色により静脈とリンパ管を識別し, 2重染色法により判定されたリンパ管侵襲 (以下, lyと略記), 静脈侵襲 (以下, vと略記) の臨床的意義を検討した.
方法: curA手術が行われたss大腸癌初回手術125例を対象とし, 代表的1切片に対し, CD34免疫染色に弾性染色を加えた2重染色を施行. 1か所でもリンパ管侵襲, 静脈侵襲を認めた場合をly (+), v (+), まったく認めない場合をly (-), v (-) と定義し, 2重染色による分類および特殊染色の意義について検討した.
結果: vはリンパ節転移との間に強い相関を認めた (p=0.01). 予後解析からは, ly (+) 群はly (-) 群に比べ予後不良の傾向を認め (5生率88.9% vs 75.6%, p=0.06), v (+) 群はv (-) 群に比べ予後不良の傾向を認めた (5生率90.0% vs 78.9%, p=0.09). リンパ節転移有無, ly, vを共変量とした多変量解析ではリンパ節転移のみが独立した予後因子として選択された (p=0.008). また, 4個以上の静脈侵襲所見の有無で検討したところ, 静脈侵襲にはリンパ節転移有無とは独立性を有する臨床的意義が存在した.
考察: 予後因子としての意義は, 侵襲所見の有無を基準とした場合, ly, vともにリンパ節転移を凌駕しえないが, 4個以上の静脈侵襲所見はリンパ節転移の有無と同様に重要な臨床的意義を有すると考えられた.
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