日本消化器外科学会雑誌
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39 巻, 11 号
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  • 榊原 巧, 日比 健志, 小池 聖彦, 藤原 道隆, 小寺 泰弘, 中尾 昭公
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1649-1657
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1) は癌の成長や転移に関与していると報告されている. 方法: 1994年から2002年までに, 名古屋大学病態制御外科で切除された49例の食道扁平上皮癌, 55例の大腸癌, 76例の胃癌の検体を用いた. それらの正常粘膜と腫瘍組織におけるPAI-1mRNAの定量RT-PCRを行った. そして, 臨床病理学的特徴にて比較検討し, さらに予後因子としての有用性を検討した. 結果: すべての消化管癌の腫瘍組織において, 1. リンパ節転移陽性例, 遠隔転移陽性例では陰性例に比較してPAI-1発現量が有意に上昇しており, 病期の進行に従ってPAI-1発現量が有意に上昇していた. 2. PAI-1過剰発現の症例では有意差をもって予後不良で, 多変量解析を行うとPAI-1発現量は独立した予後決定因子となった. 考察: 消化管癌において, PAI-1発現が癌の成長, 転移に関与していると考えられ, PAI-1発現量は悪性度と相関し, 予後を予想するうえで一つの指標となりうることが示唆された.
  • 樋口 太郎, 大塚 幸喜, 藤澤 健太郎, 板橋 哲也, 川崎 雄一郎, 秋山 有史, 旭 博史, 岡本 和美, 斎藤 和好, 若林 剛
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1658-1665
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 大腸癌の手術治療における予後を含めた治療成績について, 腹腔鏡補助下大腸切除術 (以下, LAC) と開腹大腸切除術 (以下, OC) を比較検討した. 対象と方法: 1996年から2005年にかけて岩手医科大学外科学第1講座で施行した大腸癌切除790例中, 手術手技の類似したS状結腸癌およびRs直腸癌266例のうちの, 組織学的根治度AかつD3郭清施行例88例を対象とし, LAC群: 43例とOC群: 45例の2群に分けて, 臨床病理学的諸因子および術後成績について比較検討した. 結果: 1) 手術侵襲では, 術中出血量はLAC群が18mlとOC群の271mlに比べて有意に低値であった (P<0.0001) が, 手術時間はLAC群が211min. に対しOC群228min., 郭清リンパ節個数もLAC群22個に対しOC群24個と有意差は認められなかった. 2) 術後在院期間はLAC群が13日とOC群の25日に比べて有意に低値であった (P<0.0001). 3) 合併症発生率は, LAC群が9.3%とOC群の22.2%に比べて低率ではあったが, 有意差は認められなかった. 4) 再発率は, LAC群が4.7%とOC群の11.1% に比べて低率ではあったが, 有意差は認められなかった. 5) Overallの5年生存率では, LAC群が100%に対しOC群が93.2%, 5年無再発生存率でもLAC群が95.2%に対しOC群が86.6%と, LAC群が高率であったが有意差は認められなかった. 考察: S・Rs大腸癌において, LACはOCに対して短期予後にbenefitを有しているだけでなく, 中長期の予後においてもほぼ同等かそれ以上の結果が得られたことから, oncologic resectionの見地からも, 開腹手術に比肩しえる手術手技であることが示唆された.
  • 米山 公康, 菊山 成博, 大山 廉平
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1666-1671
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃結腸瘻は悪性腫瘍や胃空腸吻合術後の合併症として報告されることは多いが, 良性胃潰瘍を原因とする報告は少ない. 今回, 我々はその1例を経験したので報告する. 症例は48歳の男性で, 腹痛および嘔吐を主訴に入院した. 既往歴では胃潰瘍を指摘されていたが無治療であった. 上部消化管造影X線検査では胃後壁から造影剤が漏出し, 結腸が造影された. 上部消化管内視鏡検査では胃体下部後壁に瘻孔を認め, 結腸への内視鏡の挿入が可能であった. 注腸造影X線検査では横行結腸から造影剤が漏出し, 胃が造影された. 以上より, 胃潰瘍が横行結腸に穿通し瘻孔を形成したものと診断し, 開腹手術を施行した. 横行結腸は胃後壁に入り込み癒着し, 瘻孔を形成していた. 広範囲胃切除, 横行結腸部分切除術を施行した. 切除標本では後壁に潰瘍を認めた. 病理組織診断により胃潰瘍による胃結腸瘻と診断され, 悪性所見は認めなかった.
  • 三重野 浩朗, 木下 平, 小西 大, 中郡 聡夫, 高橋 進一郎, 後藤田 直人
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1672-1677
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は術後5年を経た後に骨・骨髄転移を来した胃癌の3症例を経験した. 症例1は49歳の女性で, 噴門直下のtype3病変に対し胃全摘+膵体尾部切除術を施行. 病理組織学的にはss, n2, Stage IIIAであった. 術後5年7か月後に高度の貧血を指摘され紹介. 血液・画像検査より, 骨髄転移と診断された. 症例2は44歳の男性で, 胃体中部のtype3病変に対して胃全摘+脾摘術を施行した. 病理学的にはss, n2, Stage IIIAであった. 術後6年10か月後に腰背部痛を主訴に精査を行い多発骨転移と診断された. 症例3は58歳の男性で, 胃前庭部のtype3病変に対し幽門側胃切除術を施行. 病理組織学的にはmp, n1, Stage IIであった. 術後7年4か月に腰背部痛出現し, 精査にて多発骨転移と診断された. 胃癌術後5年以降での骨, 骨髄転移再発の報告は極めて少ないが, 頻度は低いものの認識すべき晩期再発の1形態と考え, 報告した.
  • 市之川 正臣, 岩井 和浩, 松村 祥幸, 妻鹿 成治, 川崎 亮輔, 高橋 透, 近藤 哲
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1678-1682
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は上腸間膜動脈根部閉塞を伴う前上膵十二指腸動脈瘤の切除例を経験したので報告する. 症例は76歳の女性で, 腹部エコー検査にて腹部内臓動脈瘤を指摘され, 血管造影検査を施行したところ, 動脈瘤は前上膵十二指腸動脈に存在し, 上腸間膜動脈根部は閉塞していた. 動脈瘤径は30mmと比較的大きく, 開腹下に動脈瘤摘出術を施行した. 瘤部の病理組織学的検査所見は中膜の平滑筋融解・変性像が主体であり, 本症例における動脈瘤発生には上腸間膜根部閉塞に起因する血行動態の変化が関係していると考えられた. 術後経過良好にて退院し, 術後5か月現在も症状なく経過観察中である.
  • 八木 斎和, 西村 康明, 中津川 重一, 福岡 伴樹, 廣田 政志, 岡本 喜一郎, 佐藤 健, 市原 透
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1683-1688
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性で, 糖尿病にて近医通院中に, 2003年12月頃より左季肋部痛出現し, 2004年1月初旬に当院を受診した. 腹部USで膵体部に長径4cm大の腫瘍を認めた. CEA7.4ng/ml, CA19-9 517U/mlと高値で, ERPにて膵体部で途絶像あり. 腹部CTおよび腹部血管造影検査の結果, 動脈系浸潤・門脈系浸潤があり, 切除不能膵体部癌と診断した. 2月初旬よりGemcitabine1.2g/body (週1回, 3週連続投与・1週休薬) による化学療法を開始した. 腫瘍マーカーは4月には正常値になり, 腹部CTでも局所制御は良好であったが, 4月初旬の夜間より発熱, 嘔吐, 頭痛が出現した. 頭部MRIで脳内へ浸潤様に変化した髄膜癌腫症と診断した. 他臓器への転移はなかったため, 髄膜癌腫症に対して放射線治療を行った. その間のGemcitabineは減量し使用した. 2005年12月現在, 生存中で化学療法を継続している.
  • 香川 勇, 西脇 洸一, 松本 由朗, 信川 文誠, 須田 耕一, 吉田 浩司
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1689-1694
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性で, 上腹部痛, 黄疸を主訴に紹介入院した. 膵頭部に径7×6cmの塊と右副腎転移の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術, 右副腎摘出術を施行した. 腫瘍は膵臓の腺扁平上皮癌と後腹膜海綿状血管腫であった. 膵癌は扁平上皮癌60%, 腺癌20%, 両者の混在が20%で, 腫瘍は膵体部の切離端近傍の主膵管内および分枝膵管内に広範な上皮内癌を認めた.上皮内癌→腺癌および上皮内癌→扁平上皮癌への進展が認められた. 患者は術後約4か月で肝転移のため死亡した.
  • 山中 秀高, 小野 要, 佐藤 達郎, 飯田 有二, 神谷 諭
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1695-1700
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    炎症性筋線維芽細胞腫瘍 (inflammatory myofibroblastic tumor; 以下, IMTと略記) は, 筋線維芽細胞の増生と炎症細胞浸潤からなる腫瘤性病変で, 肺の炎症性偽腫瘍の検討から発見され, 身体のあらゆる部位に発生することが明らかになったが, その本質が炎症性か腫瘍性かで論議されている. 今回, 我々は脾IMTの1例を経験したので報告する. 症例は32歳の女性で, 腹痛で受診した. 血液検査で白血球増加と貧血を認め, 腹部単純X-P, US, CT, MRI, 血管造影検査で脾腫瘍と診断され脾摘出術を施行した. 摘出標本でアミロイド沈着を伴う脾IMTと診断された. 術後, 白血球数, 貧血は改善し, 1年10か月の現在, 再発の徴はない. 自験例は本邦報告2例目の脾原発例で, さらにアミロイド沈着を伴う症例は今までに報告がなく, 極めてまれと思われた. また, ALK-1陰性で, AA-typeのアミロイド沈着であり, 炎症性病変を示唆するものであった.
  • 大井 正貴, 藤川 裕之, 大澤 亨, 東 崇明, 小池 宏, 三宅 哲也, 楠 正人
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1701-1706
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の女性で, 左上腹部膨隆と食欲不振を主訴に2001年7月に当院を受診した. 既往歴として9年前に卵巣癌の手術, 化学療法をうけている. 腹部CT, MRI所見より脾腫瘍と診断した. また, 血清CA125値も高値であり, 卵巣癌の転移が疑われたが, 原発性脾腫瘍も否定しきれず同年8月に手術を施行した. 腫瘍は脾門部にあり, 他に転移や再発を疑う病変はみられず, 横隔膜浸潤部を含めた脾摘術を施行した. 病理組織学的検査の結果, 卵巣癌原発巣と同様の低分化腺癌であったため卵巣癌術後孤立性脾転移と診断した. 術後補助化学療法も行い, 術後3年10か月を経過し, 現在無再発生存中である. 卵巣癌術後孤立性脾転移の報告例は比較的まれであるが, 脾摘後化学療法が施行され比較的良好な成績が得られている症例もあり, 積極的に脾摘術を施行すべきと考える.
  • 池野 龍雄, 町田 水穂, 尾崎 一典, 佐藤 敏行, 花崎 和弘, 市川 英幸
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1707-1711
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性で, 平成15年4月中旬に大量の下血で入院した. 上部・下部消化管内視鏡検査を施行するも出血点が明らかでなかったが, 回腸末端より新鮮血流出が見られた. 腹部造影CTで, 回腸末端部に動脈相で出血が見られた. 腹部血管造影検査で回結腸動脈終末枝より腸管内への出血が認められ, 同血管にスポンゼルで塞栓術を施行した. その後, 下血はなく, 貧血の進行もなかったため食事を開始し, 平成15年4月下旬退院した. しかし, 平成15年5月上旬に再び下血が見られ, 再入院となった. 再度の回腸出血と判断, 手術を施行した. 平成15年5月上旬腹腔鏡で観察したところ, 終末回腸内に血液の貯留を認め, 腸間膜側に憩室を認めた. 諸検査の出血点と一致, 同部よりの出血と判断し, 憩室切除を行った. 術後経過良好で, 平成15年5月中旬退院した. 現在まで再出血は認めない. 出血性の小腸憩室に対し, 腹腔鏡補助下憩室切除を施行した1例を経験したので報告する.
  • 杉江 知治, 松島 由美, 永井 利博, 大垣 和久
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1712-1717
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で, 吐下血を来し緊急入院となる. 胃, 大腸内視鏡検査では出血点を認めず, 腹部CTにて腹腔内に多発腫瘍ならびに肝S7にSOLを認め, GIST腹膜播種, 肝転移, 小腸出血疑いの診断で, 開腹手術を施行した. 腹腔内に大小多数の充実性腫瘍が腹膜, 腸管壁, 腸間膜に播種状に広く分布し, Treitz靱帯より約70cm肛門側には腸管壁外発育を来す腫瘍部位を認めたため, 小腸部分切除ならびに腹膜播種巣の可及的切除を行った. 病理組織診断ではgastrointestinal stromal tumor (以下, GIST); CD34+, c-kit-, SMA-, S100-のKIT陰性GISTであったが, 術後24日目よりimatinib400mgを開始した. 投与1週間後のFDG-PETでは, 治療前と比較して肝転移巣を含め高濃度集積像は著明に改善しており, 投与継続15か月現在, 有害事象軽微でSDを維持している.
  • 赤木 純児, 高橋 教朗, 岡崎 伸治, 高井 英二, 竹本 隆博, 柳下 芳寛, 蔵野 良一, 田上 洋一
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1718-1724
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    虫垂に発生した炎症性偽腫瘍 (inflammatory pseudotumor; 以下, IPT) を経験したので報告する. 症例は76歳の男性で, 2005年1月中旬より右下腹部痛が出現した. 大腸内視鏡検査を受け盲腸部に径30mmの隆起性病変を認め, 炎症所見 (WBC 13,320/μl, CRP 12.6mg/dl) も認めた. 大腸内視鏡検査の生検の結果はGroup Iであったが悪性腫瘍も否定できないため, 2005年2月上旬回盲部切除術を施行した. 虫垂には蜂窩織炎を認め, 盲腸部の隆起性病変は虫垂開口部から虫垂内部まで連続して存在していた. 強度の線維性結合織の増生を認め腺上皮に腫瘍性増殖は認めないことから, 虫垂炎を契機に発症したIPTと診断した. 大腸のIPTは極めてまれであり, これまでの報告例は自験例を含めて23例 (虫垂発症例6例) であった. 今回, IPTが虫垂開口部を閉塞するように増殖したため虫垂炎が増悪したことが考えられ, IPTは早期の治療が望ましいことが示唆された.
  • 青木 成史, 佐藤 道夫, 小川 信二, 原田 裕久, 宮田 量平, 宮内 潤, 小野 滋司, 安藤 暢敏
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1725-1729
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸閉塞を契機に発見した, 虫垂原発内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は62歳の女性で, 主訴は腹痛・嘔吐. 画像診断にて, 上行結腸まで進展する盲腸癌に起因する腸閉塞, 上腸間膜リンパ節および大動脈周囲リンパ節転移陽性と診断し, イレウスチューブ留置による腸閉塞症状の改善後, 右結腸切除術を施行した. 病理組織学的検査では, 腫瘍は虫垂を主座とし, 盲腸から回盲弁部にかけて粘膜下を浸潤していた. このため, 腸閉塞を来したと考えられた. 深達度ss, n (+), stage IV. 腫瘍は一部に腺腔形成や粘液癌の像も認められたが, 全体的には分化傾向の極めて乏しい, シート状の増殖からなり, 特殊染色の結果も合わせ, 内分泌細胞癌と診断した. 術後8か月に多発肝転移, 腹膜播種により死亡した. 虫垂原発内分泌細胞癌はこれまでに2例の報告例をみるのみであり, また腸閉塞症状を来す虫垂癌もまれである.
  • 尾崎 和秀, 濱田 円, 斎坂 雄一, 渋谷 祐一, 志摩 泰生, 西岡 豊, 岡林 孝弘, 堀見 忠司
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1730-1734
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は32歳の女性で, 平成16年4月に直腸癌に対しHartmann手術を施行し, 病理組織学的に直腸原発印環細胞癌, Rs, 3型, se, n4 (+) と診断された. 術後, 5FU, CDDP, CPT-11による補助化学療法を施行した. 同年8月腹部CTで腹腔内腫瘤を指摘され, 同時期に右乳腺腫瘤を自覚した. さらに, 9月下旬のCTにて腹腔内腫瘤は20×15×15cmと増大しており, 腹部症状を改善する目的で同年10月上旬腹腔内腫瘤を摘出した. 病理組織学的検査所見上, 直腸病変と同じ印環細胞癌と診断された. また, 右乳房腫瘤も針生検で印環細胞癌と診断され, 大腸印環細胞癌の乳腺および両側卵巣転移と診断した. 大腸癌の乳腺転移の報告は少なく, 本症例は極めてまれな症例と考えられるので報告する.
  • 川崎 健太郎, 大野 伯和, 津川 大介, 高瀬 至郎, 神垣 隆, 黒田 大介, 生田 肇, 黒田 嘉和
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1735-1740
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の女性で7年前から肛門周囲の発赤, 掻痒感があった. 生検でPaget細胞が認められたため外陰Pagetとの診断で当院に紹介となった. 外陰部を中心として16×15cmの皮膚発赤とびらんを認めた. CTで両鼠径部リンパ節腫脹が認められたが, 99m-Tcを用いたsentinellymph node biopsyではリンパ節転移を認めなかった. 以上より, 外陰Pagetとの診断で手術を施行した. 術前のmappingに従い広範囲腫瘍切除を行った. 肛門方向は歯状線より1cm口側まで切除し術中迅速診断で腫瘍細胞がないことを確認した. 皮膚欠損に対して大腿後面V-Y有茎皮弁を用いた陰部再建とS状結腸人工肛門造設術を施行した. 病理結果は表皮内に限局したPaget細胞であった. 半年後人工肛門を閉鎖, 現在排便状況は正常である. 大腿後面V-Y有茎皮弁を用いた陰部再建は肛門温存の観点からも有効であると考えられた.
  • 水崎 馨, 斉藤 英一
    2006 年 39 巻 11 号 p. 1741-1746
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で, 右大腿部腫脹を主訴に来院した. 右大腿部に硬い腫瘤を触知したが, 疼痛, 圧痛は認めなかった. 腹部単純X線検査ではイレウス像は認めず, 腹部CTでは右大腿部に腫瘤を認めた. 血液検査では白血球数は8,880/mm3と正常範囲であったが, CRPは6.5mg/dlと上昇を認めた. 大網による大腿ヘルニア嵌頓を疑ったが, 手術の同意を得られなかった. また, 腹部・右大腿部の所見および検査成績から経過観察可能と考え, 抗菌剤を投与, 翌日手術を施行した. 手術所見は右大腿部に6×3cm大のヘルニア, を認めた. ヘルニア, 切開時, ヘルニア内容を肥厚した大網と考え, ヘルニア内容を摘出したが, ヘルニア内容は蜂窩識炎性虫垂であった. 同一創より腹腔内を観察し, 盲腸の発赤, 肥厚と虫垂の一部遺残を認めた. 遺残虫垂の追加切除を施行し, ヘルニア修復はMcVay法で施行した. 今回, 自験例を含めた本邦報告例17例に若干の文献的考察を加えて報告した.
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