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米山 重人, 宇根 良衛, 伊藤 美夫, 小池 能宣, 今 裕史, 佐々木 彩実
2006 年 39 巻 2 号 p.
133-138
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
はじめに: 大腸癌肝肺転移に対しては積極的切除が行われてきているが, 転移巣切除後再発もみられ, 再切除の適応, 術式につき当科における大腸癌肝肺転移切除症例を検討した.
方法: 最近5年間に当科で切除した大腸癌肝肺転移症例36例, 肝転移のみ16例, 肺転移のみ5例, 肝肺転移15例 (うち肝肺転移同時切除6例) につき解析した.
結果: 原発巣切除後再発までの期間は, 肝転移2~35か月で平均8.5か月, 肺転移7~43か月で平均15.4か月であった. 肝転移はH1 (27例), H2 (4例) で, 切除術式はHr0 (17例), Hr1 (4例), Hr2 (10例) であった.肺転移はLM1 (12例), LM2 (7例) で, 切除術式は部分切除 (16例), 葉切除 (3例) であった. 肝転移切除後の再発率は46.6%(14/30例) で, 14例中9例に再切除を施行した. 肺転移切除後の再発率は47.3%(9/19例) で, 9例中6例に再切除を施行した. 肝肺転移切除後3生率は69.7%, 5生率は44.6%で, 肝肺転移の程度, 切除術式による有意差は認めなかった. 肝肺転移切除後, 残肝残肺転移に対し再切除を施行した症例も21~59か月と長期生存している.
考察: 大腸癌肝肺転移切除後の再発率は約47%と高いが, 再発を繰り返す症例でも再切除を行うことにより3生率69.7%, 5生率44.6%が得られ積極的切除の意義は大きいと考えられる.
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最相 晋輔, 須藤 一郎, 江田 泉, 末光 浩也, 大塚 昭雄
2006 年 39 巻 2 号 p.
139-146
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
はじめに: 80歳以上の高齢者の汎発性腹膜炎緊急手術について, その臨床的特徴と問題点について明らかにする.
対象: 1993年1月から2004年12月までの, 当施設において緊急手術を施行した消化器臓器に起因する汎発性腹膜炎129例のうち, 31例 (24.0%) が80歳以上の高齢者であった. これを70歳代 (25例) および60歳代 (24例) の症例と比較検討した.
結果: 原因臓器は60歳代では上部消化管穿孔が多く, 70歳以上では下部消化管穿孔が多かった. 術前併存疾患は, 高齢者ほど合併頻度が高く, 特に循環器疾患の合併が70歳以上で有意に多かった. 手術術式や手術時間, 術中出血量に差はなかった. 高齢者ほど術後に人工呼吸器やカテコラミンを使用する頻度が高く, 術後在院日数も長い傾向にあり, また呼吸器合併症などの重症の術後合併症の頻度が高い傾向があった. 手術関連死亡や術後在院死亡には各年代間で差はなかったが, 80歳以上の高齢者では生存退院した症例の約1/4でactivities of daily living (以下, ADLと略記) の低下を認めた.
考察: 汎発性腹膜炎手術では, 原因臓器や術後経過・合併症などより, 70歳以上を高齢者と認識して周術期管理にあたるべきである. 高齢者ほど厳重な周術期管理が必要であるが, 年代間で救命率に差はなく, 非高齢者と同等の予後が得られた. また, 80歳以上の症例では術後にADL低下を来しやすく, 早期退院・社会生活復帰に向けたリハビリと支援システムの構築が必要と考えられた.
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中島 真也, 江藤 忠明, 佛坂 正幸, 甲斐 真弘, 秋山 裕, 千々岩 一男
2006 年 39 巻 2 号 p.
147-152
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
鉄剤によるまれな上部食道潰瘍, 穿孔例を経験したので報告する. 症例は21歳の女性で, 鉄欠乏性貧血で処方されたフェロ・グラデュメットの内服後に頸部痛を訴え前医を受診した. ガストログラフィンによる透視で頸部食道から造影剤の漏出を認め食道穿孔が疑われ, 当科に紹介された. CTでは頸部から後腹膜に及ぶ気腫を認めた. 食道内視鏡検査では頸部食道に埋没した赤色の錠剤と膜状の変性した組織を認めた. 内視鏡下食道異物除去術および上縦隔ドレナージ術を施行した. 錠剤摘出部には深い潰瘍を認め穿孔部位と診断した. 術後に食道狭窄を生じたためバルーン拡張術を要した. 病理組織学的には傷害された上皮に食道webを示唆する膠原線維の増生があり, 以前より嚥下困難と鉄欠乏性貧血があったことからPlummer-Vinson症候群が発症に関わっていたと推測された. 鉄欠乏性貧血患者に鉄剤を投与する場合は, 嚥下困難の有無について注意深く問診することが重要である.
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山村 憲幸, 仲原 正明, 今分 茂, 畑中 信良, 城戸 哲夫, 中尾 量保
2006 年 39 巻 2 号 p.
153-157
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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胸骨後で再建した有茎空腸が胸腔内にヘルニアを来したまれな1例を経験した. 症例は62歳の男性で, 30歳時に十二指腸潰瘍穿孔に対し幽門側胃切除術 (Billroth II法) を施行した. 平成12年, 胸部食道癌に対し術前放射線化学療法後に食道亜全摘, 有茎空腸胸骨後再建, microsurgery下に血行再建術を施行した. 術後経過は良好であったが, 2か月後より嘔吐と嚥下困難を来した. 胸部X線写真とCTにて縦隔右側に鏡面像を伴う. 胞様構造を認めた. 食道透視にて. 胞状に拡張した挙上空腸を認め, 右胸腔内ヘルニアと診断. 保存的治療で一時的に改善するも, 増悪を繰り返し手術を施行. 胸骨下半T型切開を加え, 屈曲蛇行した余剰空腸を切除し端側吻合した後, 前縦隔に縫着固定した. 術後経過は良好で嚥下困難は消失した. しかし, 初回手術から1年2か月後, 多発性骨, 肺, 脳転移にて死亡した.
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菊地 健司, 奥芝 俊一, 北城 秀司, 川原田 陽, 七戸 俊明, 山本 有平, 小松 嘉人, 森川 利昭, 加藤 紘之, 近藤 哲
2006 年 39 巻 2 号 p.
158-163
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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フリー
食道癌患者のうち約4~6%に肝硬変の合併が認められるが, それらの患者における術後合併症の発生率は高く, 手術成績が不良であることが知られている. 今回, 我々は門脈圧亢進症合併食道癌症例に対し, 胃管のうっ血を改善するために微小血管吻合を付加し, 縫合不全なく, 経過良好であった症例を経験したので報告する. 症例1は肝硬変による門脈圧亢進症を合併した3型食道癌であり, 食道亜全摘後に左胃静脈と前頸静脈の吻合を付加した. 症例2は肝炎により門脈圧亢進症を合併した2型食道癌であり, 左胃静脈と内胸静脈の吻合を付加した. 両症例とも血管吻合後, 肉眼的に胃管のうっ血が解消され, 術後, 縫合不全, 出血などの合併症を認めなかった.
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高木 眞人, 岡田 了祐, 青木 利明, 松田 大助, 安田 祥浩, 李 正植, 鈴木 芳明, 加藤 文昭, 寿美 哲生, 青木 達哉
2006 年 39 巻 2 号 p.
164-169
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は42歳の男性で, 胸部中部進行食道癌に対し術前化学放射線療法を施行後, 右開胸開腹食道亜全摘, 3領域リンパ節郭清 (胸管温存) を行った. 第3病日より胸腔ドレーンの排液が急増し, 翌日経腸栄養を開始したところ排液が白濁したため乳糜胸と診断した. 同日総排液量は1,800mlに達し循環動態に影響が出たため手術を施行した. 下縦隔で胸管をクリッピングしたが上縦隔からの乳糜漏出は停止せず, 上縦隔左側を展開し胸管の乳糜漏出部を確認し, その足側をクリッピングして漏出を停止できた. しかし, 翌日にはドレーンから再度多量の乳糜流出が認められたため, オクトレオチド50μg×3回/日の間歇皮下投与を試みた. 2日目から排液は著明に減少し, 計8日間漸減投与し中止としたが乳糜漏の停止が確認され退院できた. 食道癌術後の乳糜胸には難渋することがあるが, オクトレオチド間歇皮下投与は, 副作用も認められず試みる価値があるものと思われた.
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境 雄大, 八木橋 信夫, 大澤 忠治, 原田 治
2006 年 39 巻 2 号 p.
170-175
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は73歳の男性で, 2004年8月上旬, 突然の心窩部痛を主訴に受診した. 腹部CTにて遊離ガス像, 腹水を認め, 消化管穿孔の診断を得た. 上部消化管内視鏡検査にて穿孔を伴う巨大な胃潰瘍を認め, 緊急開腹術を施行した. 胃下部前壁に穿孔, 後壁に膵穿通を有する広範な胃潰瘍を認めた. 幽門側胃切除術, Roux-en-Y再建を施行した. 穿通部は遺残し, 焼灼した. 摘出標本では胃下部小彎を中心に70×43mmの潰瘍を認めた. 病理検査では穿孔潰瘍の遠位側を中心に約2/3周の深達度mのIII型早期胃癌 (充実型低分化腺癌) を認めた. 総合所見はT1, N0, H0, P0, CY0, M0, stage IA, 根治度Bであった. 胃粘膜に
Helicobacter pyloriを認めた. 術後53日目に軽快退院した. 術後7か月を経過したが再発を認めていない. 早期胃癌の穿孔は比較的まれであるが, 自験例は穿孔・膵穿通を呈する広範な消化性潰瘍形成を認めたまれな症例と思われた.
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鹿野 敏雄, 越川 克己, 澤崎 優, 桐山 幸三, 和田 応樹, 谷口 健次, 末永 裕之
2006 年 39 巻 2 号 p.
176-182
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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右胃大網動脈 (right gastroepiploic artery; 以下, RGEA) を使用した冠状動脈バイパス手術 (coronary artery bypass graft; 以下, CABG) 後の胃癌に対し胃切除術を施行した症例を3例経験した. 症例1は75歳の男性で, 平成9年2月, RGEAなどをグラフトに用いCABG2枝を施行した. 21か月後, 胃前庭部に2型病変を指摘され, 経皮経管的冠状動脈形成術を施行後, 幽門側胃切除D2郭清を行った. 症例2は70歳の男性で, 平成15年4月, RGEAなどを用いたCABG2枝を施行した. 13か月後, 胃角部にIIc病変を指摘され, 再CABG施行後幽門側胃切除D2郭清を行った. 症例3は59歳の男性で, 平成11年1月, RGEAなどを用いたCABG3枝を施行した. 5年4か月後, 胃前庭部に2型の病変を指摘され, 再CABG施行後幽門側胃切除D2郭清を行った. RGEAを使用したCABG後の胃癌手術では, RGEAによらない右冠動脈領域への血行再建を先行させ, 2期的に胃癌手術を行う方法が安全確実であると考える.
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杉本 琢哉, 近藤 哲矢, 仁田 豊生, 山本 淳史, 尾関 豊, 関戸 康友
2006 年 39 巻 2 号 p.
183-188
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は76歳の男性で, 2001年10月に検診で胃の異常陰影を指摘され, 精査加療目的で当科を紹介された. 血液検査では腫瘍マーカーは正常であったが可溶性IL-2レセプターは926U/mlと高値であった. 上部消化管造影, 内視鏡検査では前庭部に2型の腫瘍を認めた. 生検では悪性リンパ腫が疑われた. 以上から, 胃悪性リンパ腫を疑い2001年12月胃全摘, 脾摘術を施行した. 病理組織学的, 免疫組織学的検査で胃小細胞癌と診断した. 術後CPT-11による化学療法を施行した. 2003年8月の腹部CTで肝S7に22mm大の腫瘍を認め肝転移が疑われた. その他全身に異常を認めなかったため2003年11月, 肝S7S8部分切除術を施行した. 病理組織学的に肝腫瘍は胃切除組織と同様であり胃小細胞癌の肝転移と診断した. 肺転移の疑いがありVP-16による化学療法を施行中であるが胃切除から3年, 肝切除から1年1か月の現在生存中である.
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藤井 雅和, 沖野 基規, 藤岡 顕太郎, 山下 勝之, 濱野 公一
2006 年 39 巻 2 号 p.
189-195
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は66歳の男性で, 約10kgの体重減少, 腹痛で当院を受診した. 腹部CTで腹水貯留と腹部大動脈周囲リンパ節の腫脹を認め, 直腸診でダグラス窩に腫瘤を認めた. 胃内視鏡検査では, 丈の低い隆起性病変を認め, 病理組織ではGroup Vであった. 癌性腹膜炎を伴う進行性胃癌と診断され, 腹水コントロールを目的として, 腹腔内リザーバー留置術が施行された. 術後, CDDP100mgが週1回, 計3回腹腔内投与された. TS-1 (120mg/day) の投与法は, 2週間内服, 1週間休薬を1クールとした. 投与開始後, 最高3,316ng/mlあったCEAの値はすみやかに下降し, 腹水も消失した. 直腸診でのSchnitzler転移は陰性化し, 腹部CT上の腹部大動脈周囲リンパ節転移も消失した. 胃内視鏡検査でも癌病変の著しい縮小を認めた. 治療開始1年10か月後の現在でも, CRは継続しており, 患者は外来化学療法で良好なQOLを保っている.
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石井 正紀, 今泉 俊秀, 柏木 宏之, 堂脇 昌一, 杉尾 芳紀, 飛田 浩輔, 大谷 泰雄, 生越 喬二, 幕内 博康, 町村 貴郎
2006 年 39 巻 2 号 p.
196-202
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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近年, 十二指腸乳頭部早期癌や良性疾患に対して, 根治的かつ縮小手術として, 膵温存の十二指腸下行脚分節切除, 部分切除の報告が散見される. 紹介した本術式は膵温存が可能で膵管, 胆管共通管を十二指腸壁外, 膵外で切離して十二指腸乳頭部を完全摘出でき, 十二指腸腔内の水平方向へ進展した腫瘍に対応できる. 今回, 我々は十二指腸乳頭部早期癌の2症例に膵温存十二指腸下行脚分節切除を行ったので文献的考察を含め報告する. 症例1は61歳の女性で, 非露出腫瘤型の早期癌の診断で上記手術を行い, H
0, P
0, M (-), pN
0, pEM
0, m, stage Iであった. 症例2は77歳の女性で, 露出腫瘤型の乳頭部早期癌の診断で手術を行い, 病理診断はH
0, P
0, M (-), pN
0, pEM
0, od, stage1であった. 2症例ともに術後若干の胃排泄遅延を認めたが, その後の食事摂取は良好であった. 本症例は今後, 長期の経過観察を要するが, 十二指腸乳頭部早期癌に対する根治術式として有用であると考えた.
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浅岡 忠史, 東野 健, 金子 晃, 金 義浩, 岩澤 卓, 大西 直, 中野 芳明, 矢野 浩司, 岡本 茂, 門田 卓士
2006 年 39 巻 2 号 p.
203-208
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は37歳の男性で, 主訴は発熱と上腹部鈍痛であった. 他院にて肝炎症性偽腫瘍との診断で経過観察中, 肝腫瘤の増大・多発傾向が認められ当科紹介となった. 腹部超音波検査で肝左葉全体に広がる径10cm大の辺縁不整な低エコー腫瘤を認めた. 造影CTにて腫瘍内部は不均一に濃染され, S8にも径2.5cmの新たな腫瘤を認めた. 臨床経過および画像所見から悪性を疑い, 肝左葉および肝S8部分切除を施行した. 術後病理にて悪性リンパ腫diffuse large B-cell Typeと診断された. 術後に施行した全身CT, Gaシンチ, 骨髄生検では肝外病変を認めず, 肝原発であると考えられた. 術後CHOP療法を6コース施行し18か月が経過した現在, 無再発生存中である. 肝外病変を伴わない肝原発悪性リンパ腫に対しては, 肝切除と術後化学療法を併用することで予後の向上が期待できると思われた.
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樋口 亮太, 片桐 聡, 山本 雅一, 桂川 秀雄, 吉利 賢治, 濱野 美枝, 有泉 俊一, 小寺 由人, 大坪 毅人, 高崎 健
2006 年 39 巻 2 号 p.
209-214
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は72歳の男性で, 1996年6月, 細胞癌に対し肝右葉切除術を施行した. 病理所見は3cm, 中分化型肝細胞癌, vv0, vp0, im0であった. 術後3か月後からインターフェロン療法を行い著効し, その後もHepatitis C virus-ribonucleic acid (HCV-RNA) の再出現や肝機能異常はなかった. 2001年1月, 肝S4に再発を認め, 肝S4切除術を施行した. 病理所見は2cm, 中分化型肝細胞癌, vv0, vp0, im0であった. 2003年10月, 経過観察のための腹部エコー, CTにて肝S3に約1.8cm大の腫瘤を認め造影パターンより肝細胞癌と診断した. Aspartate aminotransferase, Alanine aminotransferase, 腫瘍マーカーは正常であった. 2003年10月下旬, 肝S3部分切除術を行った. 病理所見は中分化型肝細胞癌, vv0, vp0, im0であった. 術後12日目に退院し, 現在無再発生存中である. HCV陽性肝細胞癌術後のinterferon療法完全著効例の2回の多中心性発癌と思われる症例を経験した. このことから, interferon著効例でも長期の経過観察が必要であると考えられた.
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鳥 正幸, 仲原 正明, 赤松 大樹, 水谷 伸, 吉留 克英, 上島 成幸, 中尾 量保, 辻本 正彦
2006 年 39 巻 2 号 p.
215-220
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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フリー
原発性硬化性胆管炎 (primary sclerosing cholangitis; 以下, PSC) は病変の存在部位からびまん型, 限局型に分類されしばしば診断と治療に難渋する. 限局型の中には悪性合併症例もあり手術適応の判断は難しい. 症例1は限局型, 37歳の男性で, 胆嚢ポリープ検査中左葉胆管の拡張認め悪性を否定できず左葉尾状葉切除術を施行. 組織学的にもPSCと診断された. 症例2は限局型, 63歳の男性で, 主訴は体重減少, 黄疸. CTなどで肝門部に腫瘍を認め, percutaneous transhepatic biliary drainage (PTBD) 時の胆汁細胞診でclass V. 胆管癌の診断のもと拡大右葉切除術を施行. 組織学的に主病巣はPSCで粘膜内癌が併存していた. 2症例とも術後経過良好で再発の兆候を示さなかった. 限局型には積極的な手術が考慮されるべきであると考えられた.
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石川 忠則, 溝渕 俊二, 岡崎 泰長, 松本 康久, 竹内 保, 笹栗 志朗
2006 年 39 巻 2 号 p.
221-226
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は64歳の女性で, 高血圧症で近医通院加療中, スクリーニング目的で腹部エコー施行され, 胆嚢結石とポリープを指摘された. 腹部超音波で胆嚢頸部に径約1.0cmのiso-echoicな腫瘤影を, T1強調MRIでは, 表面凹凸不整を示すiso-intensityな腫瘤影を認めた. 腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し, 術中迅速病理診断で, 胆嚢癌と診断されたが, 固有筋層への浸潤は明らかでなく, 手術を終了した. 病理組織学的に, 病変は粘膜直下に存在し, 比較的核の大きさがそろった類円形ないし長円形細胞が索状, リボン状構造を呈しながら増生し, 腫瘍細胞は, Grimelius, chromogranin A染色陽性で, 胆嚢カルチノイドと診断した. 術後12か月の現在, 明らかな再発を認めていない.
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坂東 正, 松岡 二郎, 橋本 伊佐也, 大西 康晴, 野澤 聡志, 山岸 文範, 塚田 一博, 高橋 博之
2006 年 39 巻 2 号 p.
227-231
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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フリー
今回, 我々は胆道出血を伴った胆管癌のまれな症例を経験したので報告する. 症例は70歳の男性で, 2003年10月上腹部痛が出現し肝胆道系酵素の上昇と画像診断で胆管拡張を認めたため内科にて経過観察中であった. 2004年9月にUSで中部胆管内に中心を置く腫瘤像が認められ, 入院のうえERCPを施行した. 血性胆汁を伴う胆管腫瘍の診断で2005年1月肝外胆管切除術を施行した. 切除標本病理組織学的所見では中部胆管の低分化型腺癌と診断されstage II, fCurAであった.
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津谷 康大, 久保 義郎, 棚田 稔, 柿下 大一, 沖田 充司, 野崎 功雄, 南 一仁, 青儀 健二郎, 栗田 啓, 高嶋 成光
2006 年 39 巻 2 号 p.
232-236
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は27歳の男性で, 突然の吐血でショック状態となり搬送された. 初診時Hgb3.8g/dlと高度の貧血を認めた. 腹部CTでは膵頭部に約5cmの嚢胞性病変を認め, また膵体部から尾部にかけ石灰化が存在し, 慢性膵炎の像であった. 入院中突然の下血を認め, 緊急上部消化管内視鏡検査を施行した. 十二指腸下行脚は壁外性の圧排を受け, その中心部は壊死に陥り, 同部位より持続性の出血を認めた. 出血のコントロールは困難であり, 緊急で開腹手術を施行した. 術中所見では膵頭部に嚢胞性腫瘤を認め, 周囲は浮腫状であった. 膵仮性嚢胞の十二指腸穿破による出血と診断し, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織学的検査では膵仮性嚢胞であり主膵管との交通も認めた. 術後経過は良好で, 第18病日に退院した. 膵仮性嚢胞の消化管への穿破はまれであり, 特に十二指腸への穿破の報告は少ないが, 嚢胞が原因となる出血により急激な経過をたどることもあり, 注意が必要と思われた.
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久保 尚士, 山田 靖哉, 西原 承浩, 仲田 文造, 澤田 鉄二, 大平 雅一, 西野 裕二, 平川 弘聖
2006 年 39 巻 2 号 p.
237-242
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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膵癌の骨格筋転移は非常にまれで過去に本邦で3例の報告がみられるのみである. 今回, 我々は膵癌治癒切除後8年目に大腿四頭筋に転移再発した非常にまれな症例を経験したので報告する. 患者は66歳の男性で, 膵頭部癌の診断で, 平成5年12月, 門脈切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した. 平成14年5月右大腿部に疼痛を伴う鶏卵大の腫瘤に気付いた. CA19-9, Span1などの腫瘍マーカーも増加していたことから, 膵癌の筋肉内転移と診断し, 腫瘤切除を行った. 腫瘍は線維性結合組織内に不規則な腺管を形成する高分化型管状腺癌であった. 術後6か月後には肺転移も認め, 平成16年2月に死亡した. 原発巣切除後11年2か月経過していた. 癌の既往のある患者に骨格筋腫瘍がみられた場合は, 転移性腫瘍も念頭におく必要があると思われた.
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麓 祥一, 野口 剛, 明石 雄一, 菊池 隆一, 川原 克信, 内田 雄三
2006 年 39 巻 2 号 p.
243-246
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は70歳の男性で, 主訴は腹痛, 嘔吐であった. 平成12年6月, 突然気分不良, 嘔気嘔吐が出現し, 当院に緊急搬送された. 来院時, 意識レベルはやや傾眠傾向, 血圧68/38mmHg, 脈拍60回/分. 腹部に圧痛, 筋性防御は認めなかった. 腹部CTにて肝内門脈ガス像と小腸壁の肥厚を認め, 腸管壊死に伴う門脈ガス血症の診断にて緊急手術を行った. 術中所見はバウヒン弁より15cm口側より75cmにわたり回腸に黒色の色調変化が認められ同部を切除吻合した. 摘出標本において回腸粘膜が黒色に変化する虚血性変化を認め, さらにその粘膜下に気泡が散 在性に存在した. 病理所見では粘膜から粘膜下層にかけて壊死に陥っており, その壊死した粘 膜内にガス産生菌である
Clostridium perfringensを多数認めた. 術直後, 翌日に高圧酸素療法を施行し, 術後17病日で軽快退院した.
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足立 淳, 筒井 慶二郎, 高野 尚史, 内山 哲史
2006 年 39 巻 2 号 p.
247-252
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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腸間膜原発の平滑筋腫は非常にまれである. 小腸間膜原発の1切除例を経験したので, 本邦報告例14例とともに報告する. 症例は66歳の男性で, 腹部膨満感, 便秘を主訴に腹腔内腫瘤の診断で紹介された. 触診では, 左下腹部に児頭大の弾性硬, 表面平滑の可動性のある有痛性の腫瘤を触知した. 腹部超音波検査, CT, MRIでは, 境界明瞭な分葉状の実質性腫瘍として描出された. 小腸透視では腫瘍による小腸の圧排像のみで浸潤の所見は認めなかった. 血管撮影では, 回結腸動脈の拡張蛇行を認めた. 手術所見では腫瘍は児頭大で, 小腸間膜内にあり小腸を圧排していたが浸潤はなかった. 腫瘍とともに小腸部分切除した. 摘出標本では腫瘍は, 14×12×14cm分葉状, 弾性硬であった. 病理組織検査と免疫組織学的検査にて
c-kit, CD34, S100が陰性, desminが陽性で平滑筋腫と診断した. 術後再発兆候は認めないが, MIB-1 level indexが10%であり注意深い観察が必要である.
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関 英一郎, 権田 厚文, 佐藤 徹也, 小島 豊, 前多 力, 櫻井 秀樹
2006 年 39 巻 2 号 p.
253-259
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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再発を繰り返していた小腸gastrointestinal stromal tumor (以下, GIST) に対し, 4回の手術とイマチニブの内服治療にてCT上CRが得られた症例を経験したので報告する. 症例は70歳の男性で, 下腹部痛にて受診した. CTで下腹部に15cm大の境界明瞭で内部は充実部と. 胞部が混在する腫瘍を認めた. 小腸造影およびガストログラフィン内服併用CTで腫瘍と小腸内腔の交通を認め腫瘍を含む小腸部分切除を行った. 病理学的にGISTと診断された. その後, 約3年間に3回の腹腔内再発を認め, 2・3回目は開腹し腫瘍切除を行った. しかし, 4回目の手術時には多発肝転移も認めた. このため, 主病巣のみ切除しその他はイマチニブの治療効果に期待した. 遺伝子解析にてexon11に変異を認め300mgより開始. 投与1か月後で縮小効果を認め, 400mgに増量し投与10か月後にて多発肝転移部・腹腔内再発部ともにCT上CRと判断された. 現在まで副作用なく投与継続中である.
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山下 秀樹, 劉 中誠, 松本 佳博, 太田 勇司, 足立 晃
2006 年 39 巻 2 号 p.
260-264
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は65歳の女性で, 2年前より時々粘液便, 下血を認めていたが, 増悪したため当科を受診した. 大腸内視鏡所見では, 歯状線より1cm口側の下部直腸から約13cmにわたる全周性の絨毛腫瘍を認め, 生検で高分化腺癌を伴う絨毛腺腫であった. 経過中にNa117mEq/
l, K2.1mEq/
l, Cl60mEq/
lと電解質の著明な低下を認め, electrolyte depletion syndrome (以下, EDSと略記) を呈した. 補液にて電解質異常を改善後に腹会陰式直腸切断術, 右卵巣腫瘍摘出術を施行した. 切除標本で15×12cmの全周性の絨毛腫瘍を認め, 病理組織学的検査では絨毛腺腫でm癌を伴っていた. 術後1年10か月の現在, 再発を認めず, また電解質異常もない. EDSを伴った大腸絨毛腫瘍の本邦報告例は検索しえた範囲で自験例を含め55例であり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
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田島 隆行, 向井 正哉, 檜 友也, 大谷 泰雄, 佐藤 慎吉, 中崎 久雄, 幕内 博康
2006 年 39 巻 2 号 p.
265-270
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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大腸低分化腺癌はまれな疾患であり, 臨床病理学的な特徴は不明な点が多い. 我々は原発巣切除後に急速な経過をたどり死亡した, 播種性骨髄癌症を強く疑われた上行結腸低分化腺癌の1例を経験した. 症例は48歳の男性で, 右側腹部痛の症状を呈し上行結腸癌と診断され, 当院に入院となった. 術前検査にて上行結腸の印環細胞癌と診断され, 結腸右半切除術を施行した. 腫瘍は肉眼的に4型を呈し, 腹水細胞診はclass V, 4群リンパ節転移が認められた. 病理学的診断は上行結腸の低分化腺癌であった. 術後8日目より強い腰痛が出現し血小板減少が進行したため骨シンチ検査を行ったところ, 全身の骨に異常集積像が認められた. 急速に播種性血管内凝固症候群に陥り, 術後約2か月で死亡し大腸癌骨髄癌症と考えられた症例を経験したので文献的考察と反省を加えて報告する.
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山本 直人, 五代 天偉, 塩澤 学, 赤池 信, 杉政 征夫, 武宮 省治, 利野 靖, 今田 敏夫
2006 年 39 巻 2 号 p.
271-276
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は75歳の女性で, 1997年1月にS状結腸癌に対して切除術を受けた (well, se, ly1, v0, n0; Stage II). 術後, 追加治療せず外来経過観察としたが, 2002年11月より血清CEA値の上昇を認め, 2003年3月の腹部CTで脾臓に4×2cm大の腫瘤像が確認された. 全身F-18 fluorodeoxyglucose positron emission tomographyでは同部に強い集積が認められたため, 脾臓転移を疑い2003年5月脾摘術を施行した. 病理組織学的に前回切除されたS状結腸癌の脾臓転移と診断した. その後も補助化学療法を行わず, 術後19か月経過した現在, 再発なく生存中である. 大腸癌の脾臓への孤立性転移はまれであり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
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