日本消化器外科学会雑誌
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39 巻, 4 号
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  • 横田 良一, 石津 寛之, 近藤 征文, 岡田 邦明, 益子 博幸, 秦 庸壮, 川村 秀樹, 小原 啓, 戸井 博史, 西野 茂
    2006 年 39 巻 4 号 p. 429-434
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 99mTc-GSAシンチグラフィーによる分肝機能測定の試みが報告されている. これを応用し, 肝右葉切除の術後経過を術前の99mTc-GSAシンチグラフィーから予測できるかを検討した. 方法: 肝右葉切除症例16例を対象として術前術後に99mTc-GSAシンチグラフィーを行った. 血中消失率HH15に対する肝集積率LHL15の比である血中消失補正肝摂取率LHL15/HH15 (GSA index) を算出し, 術後肝不全との関係をみた. さらに, 術前のSPECTから全肝に対する左葉のカウント比を乗じたものを左葉GSA indexと定義して, 実際に術後の99mTc-GSAシンチグラフィーから得られた各パラメーターとの比較検討を行った. 結果: 術後2週間以上続く腹水貯留, 高アンモニア血症などの肝不全傾向をきたした症例の術後2週GSA indexは1.15以下であった. また, 術前左葉GSA indexと術後GSA indexとは相関し, 肝不全傾向を示した症例の術前左葉GSA indexは0.38以下であった. 考察: 術前左葉GSA indexが0.38以下の低値を示す症例では肝右葉切除術後肝不全のリスクの可能性が高いと考えられる. これまで, 99mTc-GSAシンチグラフィーは多くの施設において肝機能の指標として予備的に用いられてきたに過ぎない. 今回は肝右葉切除例のみの検討であるが, 最近報告されているGSA indexによる簡素化と, SPECTからの分肝機能評価法という二つを組み合わせることにより, 術後肝不全予測のための新しい残肝機能測定法となる可能性がある.
  • 清水 潤三, 宮本 敦史, 梅下 浩司, 小林 哲郎, 門田 守人
    2006 年 39 巻 4 号 p. 435-439
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 多施設共同手術部位感染 (SSI) サーベイランスを実施し, 術式の細分化の正当性を検討したので報告する. 方法: 関西地区の20施設で実施された消化器外科手術を対象とした.サーベイランス方法はJNISに準拠した. 胃手術と肝胆膵手術については術式を細分化し集計した. 成績: 2003年7月から2004年5月までに1,891症例を登録した. SSI率は全体で15.2%, 手術手技別では食道手術21.1%, 胃手術8.7%, 肝胆膵手術23.4%, 胆嚢手術4.3%, 小腸手術28.9%, 結腸手術22.7%, 直腸手術28.8% であった. 胃手術のうち術式で細分化すると, 幽門側胃切除術4.6%(6/131), 噴門側胃切除術33.3%(1/3), 胃全摘術11.8%(6/51), 胃局所切除術0%(0/13), その他0%(0/12) で, 肝胆膵手術では肝切除術19.5%(17/87), 胆管切開術・胆管切除術25.7%(9/35), 膵部分切除術・膵体尾部切除術18.9%(2/11), 胆道再建を伴う肝切除術60.0%(6/10), 膵頭十二指腸切除術30.8%(12/39), 肝切除を伴う膵頭十二指腸切除術50%(1/2) であった. 結論: 関西地区の結果から胃手術と肝胆膵手術の細分化の必要性が示唆された.
  • 福島 正之, 坂本 吉隆, 佐藤 永洋, 長尾 祐一
    2006 年 39 巻 4 号 p. 440-445
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    まれな食道原発gastrointestinal stromal tumor(以下, GIST)を経験したので報告する. 症例は61歳の女性で, つかえ感が出現し, 上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜下腫瘍を指摘された. 精査加療目的に当院紹介, CT・MRIにて下部食道に6cm大の分葉状の充実性腫瘍を認めた. 超音波内視鏡検査で固有筋層由来によるものが疑われた. 食道平滑筋腫疑いの診断で経過観察していたが, 6か月後つかえ感が強くなったため, 開腹腫瘍摘出術を施行した. 70×70mmの被膜を伴う分葉状の腫瘍であった. 免疫染色にてc-kit, CD34陽性, Desmin, S-100, α-SMA, Vimentin陰性であり, GISTと診断された. 局所再発の可能性あり, 食道切除追加を含めたin-formed consentを行い, 現在, 厳重に経過観察中である.
  • 安田 健司, 藤原 英利, 野村 秀明, 十川 佳史, 酒井 健一, 寺村 一裕
    2006 年 39 巻 4 号 p. 446-451
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は74歳の女性で, 貧血の精査にて上部消化管内視鏡を施行したところ胃体~胃体上部に出血性の全周性腫瘍が存在し, 生検で低分化型腺癌と診断された. 手術は胃全摘および脾臓, 胆.合併切除術を行った. 摘出標本では, 腫瘍は胃前壁と後壁の2か所に存在, 後壁の腫瘍は穿通していた. 病理診断において胃前壁の腫瘍は低分化型腺癌, 後壁の腫瘍はneuroendocrinecell carcinoma (以下, NEC) と診断された. NECは非常に予後不良で, 有効な治療法が確立されておらず, 本症例も術後1年10か月で原病死した. NECと低分化型腺癌の同時性多発胃癌の報告は我々の検索するかぎり本邦ではみられなかったことより若干の文献的考察を加え報告する.
  • 菅江 貞亨, 永野 靖彦, 高橋 正純, 小金井 一隆, 望月 康久, 窪田 徹, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    2006 年 39 巻 4 号 p. 452-456
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で, 50歳の時に十二指腸潰瘍のため幽門側胃切除, Billroth-II法, 結腸後再建を施行された. 平成14年11月, 血液検査にて貧血を認めたため, 上部内視鏡検査を施行し, 残胃体部後壁にBormannIII型の腫瘍を認め, 生検で低分化型管状腺癌の診断であった. CTでは壁外性発育を示す8cm大の腫瘤を認め, 膵臓との境界が不明瞭であり, 膵浸潤が疑われた.膵臓への直接浸潤を伴う残胃癌と診断し, 残胃全摘, 膵体尾部, 脾臓合併切除術を施行した.病理組織学的には充実性に大小の胞巣を形成し, 免疫組織化学的にsynaptophisin, chromo-granin A陽性で, 内分泌細胞癌と診断した. 胃内分泌細胞癌は比較的まれな腫瘍で, 悪性度が高く予後不良な疾患である. 残胃発生例は極めてまれで, 自検例を含め6例であった.
  • 江藤 高陽, 黒田 慎太郎, 高橋 信, 先本 秀人, 小出 圭, 角舎 学行, 秋本 成宏, 土肥 雪彦, 西田 俊博
    2006 年 39 巻 4 号 p. 457-463
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の男性で, 体重減少と白血球数上昇 (18,050/μl) を認め近医より紹介受診した. 上部消化管造影X線検査, 上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁に1型高分化型胃癌, 胃体下部から幽門輪に及ぶ巨大な3型低分化型胃癌を認めた. 入院時の白血球数は16,620/μl, 血清G-CSF値35pg/mlと高値を呈し, 2005年1月G-CSF産生胃癌の診断にて胃全摘術を行った.進行度はT4, N1, H0, P0, CY0, M0, Stage IIIBであった. 術後の白血球数と血清G-CSF値はそれぞれ6,950/μl, 10pg/mlへと低下した. 抗G-CSF抗体を用いた免疫組織染色では2か所の胃癌ともに陽性であった. 胃癌組織抽出液中のG-CSF 値は高分化型48pg/ml, 低分化型190pg/mlであり, 2か所の胃癌ともにG-CSFを産生していた. 2か所の胃癌に連続性はなく組織型も異なるため, 本例をG-CSF産生多発胃癌と診断した. 本邦では26例のG-CSF産生胃癌の報告を認めるが, G-CSF産生多発胃癌の報告はない. まれなG-CSF産生多発胃癌を経験したので本邦報告例の検討を含め報告する.
  • 藤井 努, 井上 総一郎, 杉本 博行, 竹田 伸, 中尾 昭公
    2006 年 39 巻 4 号 p. 464-469
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は62歳の男性で, Child-Pugh分類CのC型肝硬変に合併した肝細胞癌に対しラジオ波焼灼, TAEを繰り返し行っていた. 右胸水による呼吸困難で入院, 胸腔穿刺で6,000mlの排液を認めたが, 細胞診は癌陰性であった. その後も多量の排液が続き, 塩分制限, 利尿剤・Alb製剤の投与, 胸膜癒着を行ったが改善しなかった. 入院後第39日目経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術 (以下, TIPSと略記) を施行, 右肝静脈から門脈への短絡路を形成したところ, 胸水量は著明に減少し退院可能となった. 症例2は61歳の男性で, Child-Pugh分類BのC型肝硬変に合併した肝細胞癌に対しラジオ波焼灼, TAEを繰り返してきた. 制御不能の右胸水で入院, 保存的治療で改善せずTIPSを施行した. 直後に肝性脳症で再入院し, 分枝鎖アミノ酸製剤による治療を要した. その後, 意識状態は改善し, 現在は胸水の貯留を認めず外来通院している.
  • 佐々木 秀, 立本 直邦, 小林 健, 内藤 浩之, 甲斐 良樹, 村上 義昭, 末田 泰二郎
    2006 年 39 巻 4 号 p. 470-475
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    まれな胆道拡張症であるcholedochoceleは一般に膵管胆道合流異常を伴わないとされ癌合併の報告は少ない. 症例は62歳女性で, 心窩部痛を主訴に当院紹介となった. 腹部CTで下部胆管の. 胞状拡張を認め, 十二指腸鏡で乳頭口側に10mm大の弓状隆起を認めた. ERCP, PTCで下部胆管が.胞状に拡張し膵管は嚢胞外に開口して短い共通管を形成するcholedochoceleと診断し, 嚢胞内に不整な隆起性病変を認めたため癌の合併を疑い幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 組織学的には.胞部の乳頭部胆管より発生した中分化型管状腺癌と診断され, さらに総胆管粘膜には中等度異形成を認めた. 現在choledochoceleの治療においては.胞内の胆汁うっ滞の解除を目的に内視鏡的乳頭切開などの非手術的治療がまず考慮される場合が多いが, 胆道癌合併の可能性を念頭においた精査と経過観察が必要と考えられた.
  • 湯川 寛夫, 町田 大輔, 金成 正浩, 永野 篤, 藤澤 順, 松川 博史, 清水 哲, 河野 尚美, 利野 靖
    2006 年 39 巻 4 号 p. 476-480
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆嚢原発腺内分泌細胞癌はまれな疾患であり予後不良といわれている. 本邦では自験例を含め54例の報告をかぞえるのみである. 今回, 我々は原発巣に対し切除術を施行し予防的放射線化学療法を行った胆. 腺内分泌細胞癌を経験したので報告する. 症例は59歳の男性で, US, CT, MRIにて胆. 底部に腫瘤影を認め, 腹腔鏡下に胆. 摘出術を施行した. 術中迅速診にて未分化癌疑いとの報告を受け, 開腹に移行しD2+α郭清, 肝床部切除を付加した. 病理組織学所見ではHE染色で粘膜面では高分化型腺癌の像を呈するが, 腫瘍の大部分ではN/C比の高い腫瘍細胞が充実性増殖し明らかな管腔形成は示さずrossetteを認めた. 免疫染色ではNCAMが弱陽性を示し, 腺内分泌細胞癌と診断した. 術後, 肺小細胞癌に準じて肝門部に放射線治療とcisplatin+etoposideの化学療法を2クール施行し, 術後24か月無再発生存中である.
  • 坂東 正, 北條 荘三, 渡辺 智子, 遠藤 暢人, 横山 義信, 野澤 聡志, 山岸 文範, 塚田 一博, 石澤 伸
    2006 年 39 巻 4 号 p. 481-485
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    動注化学療法後に肝切除を施行したファーター乳頭部癌の1例を経験したので報告する. 症例は77歳の男性で, 1997年3月にファーター乳頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 切除標本の病理組織診断は高分化型腺癌, ly0, v0, pn1, pPanc1a, pDu2, pN (-), pEM0のstage IIIであった. 術後約3年経過した2000年2月の腹部CTにて肝右葉に転移を認め5-FUとCDDPによる動注化学療法を施行した. その後, 2000年9月に肝部分切除術を施行した. 肝転移再発切除後5年間無再発生存中である.
  • 横山 直行, 白井 良夫, 宗岡 克樹, 若井 俊文, 畠山 勝義
    2006 年 39 巻 4 号 p. 486-491
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性. 十二指腸乳頭部癌切除後, 最大径8cmまでの多発肝転移巣が出現. TS-1を150mg/日 (15時に50mg, 22時に100mg内服) 隔日で投与した. TS-1投与日の血清5-FU濃度は夜間高く, 午前3時に最高値 (539ng/ml) を示し, 本療法が時間治療であることを確認した. 治療開始後転移巣は徐々に縮小・減少し, 4か月後には肝前区域に径2.5cm大の単個を残すのみとなった. 骨髄抑制や消化器系の副作用はなく, 外来での加療が可能であった. 治療開始151日目に多量の吐血を来たし, 出血性ショックで同日死亡した. 病理解剖の結果, 死因は肝前区域の残存腫瘍の退縮により, 同腫瘍内を貫通する肝動脈が破綻したための胆道出血と診断された. 本症例の経験から, TS-1を用いた時間療法が十二指腸乳頭部癌に対し有効である可能性が示唆された. 一方, 化学療法著効例では腫瘍壊死に伴う動脈性出血にも留意すべきである.
  • 牧野 成人, 河内 保之, 清水 孝王, 西村 淳, 新国 恵也, 清水 武昭, 畠山 勝義
    2006 年 39 巻 4 号 p. 492-497
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性で, 約10日間の軽度な腹痛後に急激な腹痛増強で発症した. 腹部CTで上腸間膜静脈 (以下, SMVと略記) から門脈 (以下, PVと略記) 内に至る血栓を認め緊急手術を施行した. 約200cmの壊死空腸を切除した後, 用手的に血栓を除去するもSMVおよびPVの血流は再開せず, また周囲の腸間膜にも広範囲に静脈血栓が存在した. 新たな壊死腸管出現の可能性から閉腹せずに手術を終了, 著明な血小板数減少のため線溶療法は施行せずにヘパリンによる抗凝固療法のみを施行, 約12時間後second-look operationで新たな壊死腸管のないことを確認し閉腹した. 6週後の造影CTでSMVおよびPV内の血栓は消失しており, 現在ワーファリン内服にて再発兆候なく外来通院中である. Second-look operationを施行することにより腸切除範囲を最小限にとどめることができた症例であった.
  • 佐野 渉, 知久 毅, 岡本 佳昭, 野島 広之, 田代 亜彦
    2006 年 39 巻 4 号 p. 498-502
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    残存小腸が短い短腸症候群に対しては高カロリー輸液が適応となるが, 症例により残存小腸の長さが異なり, 経口摂取における吸収率も異なるため栄養管理が複雑となり不適切な栄養管理となっている症例もある. 症例は45歳の男性で, 上腸間膜動脈の血栓症に対して手術施行され短腸症候群となった. 残存小腸はトライツ靭帯から20cmの空腸と回腸末端から7cmの回腸となった. 経口摂取可能となったものの, 高カロリー輸液を減らすと栄養指標が悪化するため, 栄養評価をして高カロリー輸液の至適輸液量を決定し, 同時に社会復帰のためcyclic TPNを導入し在宅中心静脈栄養 (home parenteral nutrition; HPN) に移行した症例を経験したので報告する.
  • 安 炳九, 平井 孝, 金光 幸秀, 小森 康司, 加藤 知行, 谷田部 恭
    2006 年 39 巻 4 号 p. 503-508
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膀胱浸潤による症状を契機に検査が進められ, 術前に膀胱浸潤を伴う原発性虫垂癌と診断可能であった1切除例を経験した. 症例は52歳の女性で, 主訴は頻尿および血尿. 膀胱鏡検査で膀胱腫瘍が発見され, 生検および免疫染色検査にて下部消化管由来の腺癌の膀胱浸潤と診断された. 原発巣の検索には骨盤CTが有用で, 原発性虫垂癌と診断した. 手術所見では, 右側膀胱子宮窩に虫垂先端と大網および膀胱右壁が一塊となった, 径約60mm大の腫瘤を認め, 回盲部切除+D3郭清+膀胱部分切除+大網部分切除を施行した. 病理組織所見では, 虫垂原発の中分化腺癌が, 一部嚢胞形成を伴い壁外性に膀胱壁へ浸潤しており, またリンパ節転移は認めず, stage IIIaであった. 術直後の残存膀胱容量は100mlであったが, 膀胱機能は漸次改善した. 術後48か月の時点で無再発生存中である.
  • 大西 直, 加納 寿之, 村上 昌裕, 星野 宏光, 木村 豊, 岩澤 卓, 東野 健, 中野 芳明, 矢野 浩司, 門田 卓士
    2006 年 39 巻 4 号 p. 509-515
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸内分泌細胞癌の2例を経験した. 症例1は62歳の男性で, 上行結腸癌の診断にて結腸右半切除術を施行, 術後病理組織所見で内分泌細胞癌と診断された. 術後2か月で多発肝転移を認め, 5-FU+CDDPの肝動注化学療法を行ったが奏効せず, 術後11か月で原癌死した. 症例2は71歳の男性で, 多発肝転移を伴う下行結腸癌の診断にて下行結腸切除術を行った. 術後, 5-FUの肝動注化学療法および5-FU+isovorinの全身投与を行った結果, 肝転移は縮小したものの腹膜転移, リンパ節転移を来し, 術後6か月にて原癌死した. 症例2では病理所見で光顕像やCEAの発現性の異なる2種の内分泌細胞癌が併存するまれな形態を示し, 組織発生を考えるうえで興味深かった. 大腸内分泌細胞癌は生物学的悪性度が極めて高く, 手術に加えて化学療法を含む集学的治療法を要することが多いが, その方法は確立されていない. 本邦化学療法施行例の考察を加えて報告する.
  • 川口 康夫, 杉野 圭三, 小島 康知, 西原 雅浩, 矢野 将嗣, 新原 亮, 岡島 正純, 浅原 利正
    2006 年 39 巻 4 号 p. 516-521
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸壁から骨盤腔へ有茎性発育し, KIT陰性を示したgastrointestinal stromal tumor(以下, GISTと略記)の1手術例を経験したので報告する. 症例は76歳の男性で, 主訴は特になし.平成15年5月CTで骨盤内腫瘍を指摘された. 画像検査で会陰部から骨盤腔にかけて約10×6×5cmの多結節状腫瘍影が直腸外壁に接して存在し, CT densityおよびMRI信号強度より消化管粘膜下腫瘍が疑われた. 明らかな浸潤傾向やリンパ節腫大は認めなかった. 以上より, 直腸壁由来のGISTと診断した. 手術は経仙骨的に腫瘍を切除した. 腫瘍は乳白色多房性弾性軟であり, 直腸壁から有茎性に発育していた. 病理組織検査では紡錘形から多形性で核の大小不同の目立つ腫瘍細胞像を認めた. 免疫組織化学でKIT, S-100陰性, CD34, desmin, SMA, vimentin陽性を示し, 直腸原発のKIT陰性GISTと診断した.
  • 小金井 一隆, 木村 英明, 杉田 昭, 荒井 勝彦, 福島 恒男, 嶋田 紘
    2006 年 39 巻 4 号 p. 522-527
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内科的治療と局所外科治療で改善しないCrohn病の直腸肛門部病変に対する直腸切断術の適応, 効果と問題点を, 自験12例を対象に検討した. 結果: 直腸肛門狭窄と複雑痔瘻が83%(12例中10例)にあり, 8例に直腸から周囲に伸展する瘻孔, 直腸周囲膿瘍か直腸膣瘻を合併した. 残り17%(12例中2例)は線維化した下部直腸から生じた痔瘻の1例と狭窄した直腸から周囲に瘻孔が伸展し膿瘍を形成した1例であった. 術後, 全例で疼痛, 発熱, 膣からの分泌, 排尿困難が改善し, 86%(7例中6例)で瘻孔の分泌物が減少した. 合併症は会陰創治癒遅延が42%(12例中5例), 骨盤内膿瘍が8.3%(12例中1例)あった. 創治癒遅延の1例は分泌物を排出する瘻管を形成した. 結語: 難治性直腸肛門部病変に対する直腸切断術は術後合併症があるが, 症状を改善しQOLを向上した. 直腸肛門狭窄に瘻孔を伴う病変を合併し, 保存的に改善しない症例には直腸切断術を考慮すべきと考えられた.
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