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田中 寿明, 末吉 晋, 笹原 弘子, 田中 優一, 森 直樹, 永野 剛志, 白水 和雄, 藤田 博正
2006 年 39 巻 9 号 p.
1465-1471
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
はじめに: 切除不能食道癌症例における食道・気道狭窄あるいは瘻孔形成はその予後およびquality of life(以下, QOL)を著しく低下させる要因となる. 現在, これらの症例に対してQOL向上を目的にステント留置術が広く行われている. そこで, 当科で施行した胸部食道癌に対する食道・気管ステント留置術の成績を検討した.
対象と方法: 1995年から2003年までにステント治療を施行した食道癌61症例を対象とした. 内訳は食道ステント: 36例, 気管・気管支ステント: 17例, 食道と気管・気管支のダブルステント留置8例である. 食道ステント留置は化学放射線療法(以下, CRTxと略記)後の最終治療として施行したが, 気管・気管支ステント症例のうち7例ではステント留置後にCRTxを施行した. これらの症例における予後, 経口摂取状況を含むQOLについて検討した.
結果: ステント留置後の平均生存期間は, 食道ステント例で2.5か月, 気管・気管支ステント例で9.6か月, ダブルステント例で3.4か月であった. 食道ステント症例の80%で経口摂取が改善し, 半数の症例が在宅療養が可能となった. また, ステント留置前にPS3であった17例のうち3例ではステント留置によりPSがさらに悪化した. 気管・気管支ステント症例では17例中15例で呼吸状態改善によりPSならびにQOLも向上し, ステント留置後のCRTx奏効例では長期生存も認めた.
考察: 進行食道癌に対する食道ステント留置はPS1~2の症例では経口摂取が増加しQOL改善が期待できるが, PS3症例では必ずしもQOL改善にはつながらない. 気管・気管支ステント症例では概ねQOLは向上し, CRTxが奏功した症例では長期予後も期待できる.
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中西 一彰, 神山 俊哉, 中川 隆公, 植村 一仁, 横尾 英樹, 蒲池 浩文, 松下 通明, 藤堂 省
2006 年 39 巻 9 号 p.
1472-1479
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
目的: 径2cm 以下の肝細胞癌 (以下, HCC)を臨床病理学的に検討し切除成績について検討した.
対象・方法: 1990~2003年に当科で肝切除した径2cm以下のHCC症例のうち肝不全死・他病死を除き病理検索可能であった63例. 1. 肉眼型, 最大腫瘍径による病理組織学的因子の検討. 2. 系統的切除の有無による累積生存率・無再発生存率の比較. さらに肉眼型, 最大腫瘍径による層別比較を行った. 3. 再発に有意な因子の単変量および多変量解析.
結果: 1. 肉眼型は境界不明瞭型11.1%, 単純結節型63. 5%, 単純結節周囲増殖型19.0%, 多結節癒合型6.3%.肉眼型が単純結節周囲増殖型あるいは多結節癒合型の症例や最大腫瘍径が1.5cm以上の症例では, 門脈侵襲陽性率および肝内転移陽性率は増加したが, 一方で, 高分化型の占める割合は低下した. 2. 系統的切除24例の無再発生存率は非系統的切除39例に比べ有意に良好であった. さらに, 単純結節周囲増殖型+多結節型や最大腫瘍径が1.5cm以上の症例で系統的切除を行った群は無再発生存率が有意に良好であった. 3. 再発に関し有利な因子は単変量解析では血小板数が多い, 系統的切除, 門脈侵襲陰性, 多変量解析で系統切除, 門脈侵襲陰性であった.
考察: HCC は2cm以下であっても組織学的に多様であり, 単純結節周囲増殖型あるいは多結節癒合型や最大腫瘍径が1.5cm以上の症例では支配門脈領域に沿った系統的切除が有用であると思われた.
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上里 昌也, 篠原 靖志, 圷 尚武, 鈴木 理之, 加野 将之, 千葉 聡, 佐藤 治夫, 坂本 昭雄, 落合 武徳
2006 年 39 巻 9 号 p.
1480-1486
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は51歳の男性で, 食欲不振と体重減少を主訴に当科を受診した. 上部消化管内視鏡検査で, 胃体上部大彎に径3cm大の1型腫瘍を認めた. また, 腹部血管造影検査とCTで, 門脈本幹内に陰影欠損とNo.8, 12リンパ節の腫大を認めた. 門脈腫瘍塞栓, リンパ節転移を伴う進行胃癌の診断にて術前化学療法を施行した. TS-1 100mg/body/dayを2週間投与し2週間休薬, CDDPは100mg/bodyを8日目に点滴静注し, これを1コースとした. 副作用は軽度の骨髄抑制のみであった. 4コース終了時に門脈腫瘍塞栓は消失し, 腫大したリンパ節もみられず. 幽門側胃切除術を施行した. 病理組織学的検査所見では癌細胞を原発巣のみに認め, リンパ節転移を認めず. 治癒切除を施行できたと判断した. 術後1年経過し, CT上再発なく外来でTS-1による化学療法を継続している. 門脈腫瘍塞栓を伴う進行胃癌に対して根治手術は難しいが, TS-1・CDDP併用術前化学療法の有効性を示した1例と考え報告する.
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野口 忠昭, 上野 正紀, 宇田川 晴司, 江原 一尚, 峯 真司, 木ノ下 義宏, 堤 謙二, 橋本 雅司, 澤田 寿仁, 渡辺 五朗
2006 年 39 巻 9 号 p.
1487-1492
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は77歳の男性で, 胸部放射線療法や間質性肺炎の既往はない. 2004年8月胃癌腹膜播種転移のためPaclitaxel(以下, PXLと略記)による化学療法を施行した. 治療中, 呼吸苦を生じ, 胸部CTで両側に網状陰影を認めPXLによる間質性肺炎と診断した. ステロイドパルス療法, 人工呼吸管理を行って, 一時改善傾向を認めたが全身状態が悪化し永眠された. 癌化学療法としてのPXLによる間質性肺炎は14例の報告があり, うち本症例を含めて5 例の死亡例があった. 明らかな予後因子はなかったが本症例においてはKL-6が予後の指標として有効であった.PXLの投与を行う際には定期的な観察が必要である. さらに, つねに間質性肺炎の可能性を疑い, 発症した際は, ただちに投与を中止し治療を開始しなければならない.
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飯田 洋也, 丹後 泰久, 蔦本 慶裕, 張村 貴紀, 田中 研次, 高尾 貴史, 湯澤 浩之, 島袋 誠守, 草野 敏臣, 入江 康司
2006 年 39 巻 9 号 p.
1493-1497
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は77歳の女性で, 心窩部不快感を主訴に近医受診し, 上部消化管内視鏡検査にて胃体中部前壁に壁外からの圧迫所見を認め当院紹介受診となった. 腹部超音波検査にて, 肝左葉外側区域(S2)に39×30mmの等から高エコー腫瘤を認めた. 腹部造影CTでは, 同部の辺縁部から内部に向けて, 不均一な造影効果を認めた. 腹部MRIではT1強調像で低信号, T2強調像で高信号, dynamic studyにて内部が不均一に造影された. その他, 消化管精査で異常はなかった.第1に海綿状血管腫を疑ったが, 画像所見上, 肝内胆管癌, 転移性肝癌などとの鑑別は困難であった. 平成16年7月, 腹腔鏡補助下肝部分切除術を施行した. 病理組織学的検査では線維性結合組織と海綿状血管腫が混在し, 肝硬化性血管腫と診断した. 肝硬化性血管腫の報告はまれであり, 検索しえたかぎり9例を認めるのみであった.
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京兼 隆典, 弥政 晋輔, 黒柳 裕, 小林 聡, 鈴木 和志, 宮田 一志, 松田 眞佐男
2006 年 39 巻 9 号 p.
1498-1504
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は75歳の女性で, 2004年10月胆石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. 術後4日目より発熱を認め, 腹部CTで右肝下面に液体の貯留を認めた. ドレナージを施行したところ胆汁が流出し, 術後胆汁瘻と診断した. ドレーンからの造影では, 止血クリップにより閉塞した前区域胆管が造影され, 下流側胆管は造影されなかった. 胆管損傷による胆汁瘻と判断し, biliary ablation法の適応と考え, 術後第23日目より開始した. 胆管造影によりエタノール注入量を決定した. 1日3~4回, 2.5mlの無水エタノールを注入, 延べ4日間にわたり施行した. biliaryablaiton開始12日目には胆汁排泄はほとんど認められなくなり, 19日目にドレーンを抜去した. 肝膿瘍などの重篤な合併症発生はなかった. Biliary ablation法は, 難治性胆汁瘻のなかで, 胆管閉塞や胆管完全離断などにより下流側胆管との交通が断たれている場合には, 有効な治療法であると考えられる.
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岡村 行泰, 石榑 清, 石川 忠雄, 猪川 祥邦, 菅江 崇, 高瀬 恒信, 中山 茂樹, 矢口 豊久, 原田 明生, 中村 隆昭
2006 年 39 巻 9 号 p.
1505-1510
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は60歳の女性で, 右上腹部痛と嘔吐を主訴に入院となった. 腹部超音波検査, CTで胆嚢内に不整形の腫瘍を認め, 深達度ssの胆嚢癌の診断で胆管, 肝床切除, D2リンパ節郭清を伴う胆嚢摘出術を行った. 病理組織学的には, 腺癌と紡錘形細胞肉腫からなり, 一部で軟骨肉腫への分化を認める胆嚢癌肉腫と診断した. 免疫組織学的検索では, 肉腫領域では上皮性マーカー陰性かつ間葉性マーカー陽性で, 真の癌肉腫と診断した. 胆嚢の癌肉腫は比較的まれな疾患で長期生存報告例は少ない. 今回, 我々は術後4年6か月経過し, 再発の兆候を認めていない症例を経験したので報告する.
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吉田 素平, 渡部 祐司, 堀内 淳, 土居 崇, 中川 博道, 湯汲 俊悟, 佐藤 公一, 山本 祐司, 河内 寛治
2006 年 39 巻 9 号 p.
1511-1516
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は51歳の男性で, 人間ドックにおける上部消化管造影検査で異常を指摘されたため近医を受診し, 上部消化管内視鏡検査にて粘膜下腫瘍を認めたため当院を紹介され受診した. 胃十二指腸造影検査, 胃内視鏡検査では胃前庭部から発生し, 十二指腸球部に嵌入した球形の腫瘍を認め, また, 同時に行った生検では正常粘膜のみであった. X 線造影CTでは内部に嚢胞を形成し, 周囲が軽度造影される3cm大の球形の腫瘍を認めた. 変性したGISTなどを疑ったが確定診断は得られず, また内視鏡下の切除は困難であると考えられたため, 腹腔鏡補助下胃内手術にて腫瘍を摘出し, 術後病理診断にて最終的に迷入膵と診断した. 迷入膵は胃粘膜下腫瘍の鑑別の際に疑うべき疾患であり, まれであるが本症例のような形態を呈することも念頭におくべきであると考えられた.
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恵美 学, 地主 和人, 住元 了
2006 年 39 巻 9 号 p.
1517-1522
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は54歳の女性で, CEA高値を指摘され精査目的の胃内視鏡検査にて胃体下部小彎にType0 IIc, T2を認めた. 腹部CTでは下腹部に累々と連なる低濃度の小腫瘤を認め, 胃癌腹膜播種を疑うも確定診断が得られなかったため手術を施行した. 術中に胃癌腹膜播種と腹膜偽粘液腫の鑑別がつかず, 幽門側胃切除B-II再建を施行した. 病理報告では胃癌腹膜播種との報告であるも, 臨床的には腹膜偽粘液腫が強く疑われたため再検したところ腹膜偽粘液腫の可能性が高いと判断されたため, 再手術にて腫瘍切除・大網切除・虫垂切除・横行結腸部分切除・腹腔用リザーバー留置を施行した. 切除標本では虫垂原発の腹膜偽粘液腫の可能性が示唆された. 術後, CDDP100mg, MMC10mgを計3回腹腔内投与した. 術後11か月でCEAが軽度上昇したため, 5.DFUR1,200mg/day内服を開始している. 現在術後2年6か月になるが再燃は認められていない.
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南 一仁, 山口 佳之, 津谷 康大, 鈴木 崇久, 宮原 栄治, 亀田 彰, 野宗 義博
2006 年 39 巻 9 号 p.
1523-1528
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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5-FU系抗癌剤をベースとした化学療法が奏功した非切除小腸腺癌の1例を経験した. 症例は74歳の女性で, 小腸悪性腫瘍の診断にて開腹手術を施行した. 病変占居部位は空腸, 長軸8cmに及ぶ全周性腫瘍であった. 横行結腸, 横行結腸間膜および胃に直接浸潤しており, 多数の腹膜播種を認めた. 播種結節の病理診断はtubular adenocarcinomaであった. 以上より, 根治性はないと判断しバイパス術のみ施行した. 術後化学療法としてlow dose FP療法, 続いてTS-1療法を施行した. 原発巣を標的病変とした治療効果は, 部分奏功(PR)が得られ, 無増悪生存期間は25か月であった. 有害事象は, low dose FP療法中にはgrade3の口内炎, 皮膚炎, 悪心・嘔吐, 食欲不振, grade2の白血球減少が見られた. 一方, TS-1療法中はgrade 1の白血球減少および皮膚色素沈着以外認めず, 22か月に及ぶ外来治療が継続され, 良好なquality of life (QOL) が維持できた.
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岡山 順司, 中辻 直之, 堀川 雅人, 辰巳 満俊, 高山 智燮, 中村 信治, 北東 大督, 丸山 博司, 杉原 誠一
2006 年 39 巻 9 号 p.
1529-1533
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は56歳の女性で, 既往歴に47歳時, 子宮頸癌で子宮摘出術, 両付属器切除術, リンパ節郭清術を施行された. 病理組織学的検査では腺癌であった. リンパ節転移も認めたことから, 術後放射線照射も施行された. 今回, 術後9年目に腹痛, 腹部膨満感を主訴に当院受診. 腹部単純X線検査でNiveauを認め, イレウスと診断された. イレウス管造影検査で回腸末端から約30cm口側の部位に狭窄像を認めた. 子宮頸癌術後イレウスと診断し, 小腸部分切除術を施行.摘出標本は全周性にわたる隆起性病変を認めた. 病理組織学的には, 筋層にとどまる小腸腺癌であり, 子宮頸癌小腸転移と診断された. 術後経過は良好で, 外来通院中である. 子宮頸癌の小腸転移は極めてまれであり, 自験例を含めて2例の報告があるに過ぎず, 貴重な経験をしたので若干の文献的考察を加えて報告する.
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大平 学, 松井 芳文, 浦島 哲郎, 碓井 彰大, 谷口 徹志, 落合 武徳
2006 年 39 巻 9 号 p.
1534-1539
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は38歳男性で, エイの肝臓を生食後, 右下腹部痛が出現し, 改善しないため当院を受診した. 初診時, 右下腹部に圧痛, Blumberg徴候を認めた. 血液検査所見で白血球数15,200/μl, CRPが9.48mg/dlと高度な炎症所見を認め, base excessが-7.4mmol/Lと代謝性アシドーシスを呈した. CTで上行結腸に, 壁の限局的な肥厚と周囲の脂肪織濃度の上昇を, また回腸にも部分的に壁の肥厚を認めた. 以上より, 腹膜炎の診断で緊急手術を施行した. 開腹すると, 混濁した腹水が少量貯留し, 上行結腸と回腸にそれぞれ5cm大の硬結を触知し, 硬結を中心にそれぞれ腸管部分切除を施行した. 病理所見で上行結腸, 回腸ともに全層性に著明な好酸球主体の炎症細胞の浸潤を認めた. 術後測定した好酸球分画は9.0%と高値を呈し, 好酸球性腸炎と診断した.
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海老澤 良昭, 河野 透, 千里 直之, 間宮 規章, 徳差 良彦, 三代川 斉之, 葛西 眞一
2006 年 39 巻 9 号 p.
1540-1546
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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上行結腸潰瘍部の動脈破綻により大量出血を来し, 緊急手術を要した小児潰瘍性大腸炎の症例を経験したので報告する. 症例は12歳の男性で, 2003年9月に下血, 腹痛にて発症. 近医にてプレドニゾロン, 5-アセチルサリチル酸など投与され一時緩解するもその後増悪し, 同年10月に当院小児科を紹介され入院. 加療にて一時寛解したが2004年5月下旬に下血の増悪あり.加療にても改善せず, 6月初旬に大量下血あり, 大腸内視鏡検査を施行. 上行結腸の深掘れ潰瘍から動脈性出血を認め, 内視鏡的止血が困難であり当科紹介となった. 同日緊急手術を施行した. 深掘れ潰瘍からの動脈性出血はまれであり, 内科的治療の限界を意味するものであり, 早期診断および手術が必要となる. 特に近年, 増加傾向のある小児症例においては全結腸炎の割合が高く重症, 劇症型が多いため小児科・内科・外科の連携を密にして診断・加療を行い, タイミングを逸することなく手術を行うことが重要である.
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奥村 憲二, 李 哲柱, 遠藤 善裕, 栗岡 英明, 榎 泰之, 細川 洋平, 谷 徹
2006 年 39 巻 9 号 p.
1547-1552
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は25歳の女性で, 下腹部痛, 嘔吐, 発熱を主訴に近医を受診し急性虫垂炎の診断で当院に紹介された. 約1か月間インドに旅行しており帰国直後であった. 来院時下腹部全体に激しい自発痛および圧痛を認めた. 腹部CTと超音波検査で臍方向に向かう腫大した虫垂を認め, 急性虫垂炎と診断し虫垂切除術を施行, 8.5×2.5cmのフランクフルトソーセージ様に発赤腫大した虫垂を認めた. 術後再度腹痛と下痢, 白い膿状の便汁を認め, 39℃台の発熱も続いたため精査を行い腹部CTで上行結腸の著明な壁肥厚, 大腸内視鏡で白苔付着を伴い多発し散在する類円形のびらんと深掘れの潰瘍を認めた. その後, 大腸生検組織および虫垂切除組織から栄養型アメーバが検出されたため, アメーバ性大腸炎と診断しメトロニダゾールの内服を開始した.開始後より解熱し症状も消失した. 海外渡航歴があり急性虫垂炎の症状のある患者では赤痢アメーバなども念頭において原因の検索を行わなくてはいけないと考えられた.
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成田 和広, 熊谷 一秀, 清水 浩二, 田中 孝幸, 横山 登
2006 年 39 巻 9 号 p.
1553-1558
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は74歳の男性で, 平成8年10月にS状結腸癌の診断で, S状結腸切除術を施行した(stage IIIa). 術後の外来経過観察において, 術後11か月目に肝転移(S4)を認め肝部分切除術・胆. 摘出術を施行, 術後25か月目に再度肝転移(S6)を認め, 肝部分切除術を再施行した. その後, 補助化学療法を行っていたところ, 術後49か月目に黄疸が出現したため, 精査を加えたところ下部胆管に胆管軸上1.5cmに渡り狭窄を認め, 胆汁細胞診ではClass Vであった. 下部胆管癌と診断し減黄後, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 腫瘍は直径25mm大で中心は膵内にあり, 胆管粘膜下層まで浸潤し, 幽門下リンパ節と大動脈周囲に示指頭大の転移を認めた. 組織型は高・中分化型管状腺癌で, 柵状構造を呈し, 大腸原発巣と同様な組織像であった. 大腸癌術後5年間に, 肝転移 (2か所) と膵転移を来し, おのおのその都度切除しえた1例を経験したので報告する.
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境 雄大, 佐藤 浩一, 長谷川 善枝, 木村 由佳, 須藤 泰裕, 小柳 雅是, 田中 正則
2006 年 39 巻 9 号 p.
1559-1564
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は心房細動とうっ血性心不全の既往がある79歳の男性で, 腹痛を主訴に近医を受診した. 超音波検査で骨盤内に腹水を認めたが, 腹膜刺激症状と炎症所見がなく, 保存的治療を行った. 翌日, 腹膜刺激症状と炎症反応を認め, 当科に入院した. 急性虫垂炎による汎発性腹膜炎を疑い, 手術を行った. 虫垂腫大と骨盤腔内の膿性腹水を認め, 虫垂切除術を行った. 腹水から
Bacteroides thetaiotaomicronが検出された. 摘出虫垂粘膜に炎症を認めなかった. 高CEA血症と貧血を認めたため, 消化管精査を行い, 上行結腸癌が発見された. 23日目に結腸右半切除術を行った. 腫瘍の穿孔, 膿瘍形成を認めなかった. 腫瘍は高分化腺癌で, ss, n (-), P0, H0, M (-), stage IIであった. 術後経過は良好で, 17日目に退院した. 自験例は心不全による腹水に大腸癌の壊死部または口側の浮腫状の腸管壁からバクテリアルトランスロケーションが起こり, 特発性細菌性腹膜炎を来したと推測された.
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宮澤 智徳, 牧野 春彦, 冨田 広, 畠山 勝義
2006 年 39 巻 9 号 p.
1565-1570
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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FDG-PETが診断に有用であった直腸癌甲状腺転移を経験したので報告する. 症例は60歳の女性で, 平成13年9月に直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術を施行した. 平成14年1月に肺転移に対し左肺楔状切除を施行した. 術後l-LV・5-FU療法を7コース施行したが, 次第にCEAの上昇を認めたためCTおよびシンチグラムなどで全身検索を行ったが明らかな転移巣および局所再発を指摘できなかった. 12月にFDG-PETを施行したところ左頸部にFDGの集積が指摘された. 直腸癌甲状腺転移の診断で平成16年1月甲状腺左葉切除を施行した. 病理組織学的検査所見は腺癌の甲状腺転移であった. 直腸癌の甲状腺転移は非常にまれであり, 本邦報告例は自験例を含め5例であった. FDG-PETは, 従来の画像検査で異常を指摘できないが腫瘍マーカーの上昇を来している直腸癌術後患者の転移の検索に有用であると考えられた.
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