日本消化器外科学会雑誌
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40 巻, 1 号
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  • 田中 恒夫, 眞次 康弘, 石本 達郎, 香川 直樹, 中原 英樹, 福田 康彦, 田中 純子
    2007 年 40 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 手術のリスク評価の一つであるPhysiological and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity(以下, POSSUM)の術後合併症発生率や死亡率は高く予測されるため, 多くの改良型が報告されてきた. 今回, 消化器外科全般で用いることのできるPOSSUMスコアを開発し, その精度を検証した. 対象・方法: 2002年1月から2005年12月までの4年間に施行した消化器手術1,573例を対象とした. 前半2年間(n=709)の成績より, 予測合併症発生率と予測死亡率の計算式の係数を変更しHiroshima POSSUM(以下, H-POSSUM)とした. 後半2年間の症例(n=864)において, 3種類のPOSSUMの精度を比較した. 精度は実際に観察された発生数を予測された発生数で除した比率 (以下, O/E ratio)で検討した. さらに, 6種類の症例構成を設定し, その有用性をO/E ratioで検討した.成績: 術後合併症発生率のO/E ratio はoriginal POSSUMでは0.78であり, H-POSSUMでは1.04であった. また, 死亡率のO/E ratio はoriginal POSSUMでは0.12, Portsmouth-POSSUMでは0.56, H-POSSUMでは0.94であり, H-POSSUMのO/E ratioが最も1.00に近似していた. 六つのシミュレーションにおいても, H-POSSUMの精度は他のPOSSUMより優れていた.考察: 新しく開発したH-POSSUMは消化器手術のリスク評価として有用である.
  • 根東 順子, 北川 喜己, 佐竹 立成, 真弓 俊彦, 河野 弘
    2007 年 40 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 急性虫垂炎の診断にCTを用いることで診断はより確定的になり, 経静脈的造影CT(intravenous contrast-enhanced CT; 以下, IV-CTと略記)は汎用されるようになってきた.本研究の目的は, IV-CTの適応を明らかにし, 不要なIV-CTを削減することである. 適応について, 発症から初診までの時間を加味して検討した. 方法: IV-CTは, 右下腹部痛を有する症例あるいは自発痛がなくても理学検査所見を右下腹部に認める症例に対して行った. 理学検査所見が詳細に記録され, 初診時に血液検査およびIV-CTを施行し, 検により(1)半日未満(半日群), (2)半日以上1日未満(単日群), (3)1日以上(複日群)の3群に分け, Blumberg徴候, 筋性防御の有無, 体温, 白血球数, 査後24時間以内に虫垂切除術を行った連続した171例を対象とした. 発症からの時間CRP値を解析した. IV-CT所見においては虫垂腫大の有無と, 虫垂腫大を含む5項目(虫垂腫大・糞石・腹腔内の液体貯留・盲腸または上行結腸の全周性肥厚・小腸麻痺像)の陽性所見数を解析した. 結果: III筋性防御の陽性率は単日群と複日群の虫垂炎症例で有意に高かった. IV-CT上の虫垂腫大は各群内の虫垂炎症例で有意に認めた. IV-CTの陽性所見は複日群で有意に多く認めた. その他の項目は, 各群内において有意差を認めなかった.考察: 発症から初診まで半日以上経過し筋性防御を認めた場合, 虫垂炎である確率が高くIVCTを省略できる可能性が示唆された.
  • 境 雄大, 八木橋 信夫, 大澤 忠治, 原田 治, 伊藤 博之
    2007 年 40 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 急性腹症の診療におけるCTの有用性を検討した. 対象・方法: 急性腹痛で入院した91例を対象として, 緊急CT群70例, 緊急CT非施行21例に分類した. さらに緊急CT群を腸閉塞29例, 急性虫垂炎および急性虫垂炎と鑑別すべき疾患群36例, 消化管穿孔4例, その他1例に分類し, 緊急CT群の入院時診断の正診率を検討した. 結果: 緊急CT群の最終診断は腸閉塞では癒着性イレウス16例, 大腸癌5例, 外ヘルニア3例, その他5例, 急性虫垂炎・鑑別を要する疾患では急性虫垂炎25例, 大腸憩室炎3例, 骨盤腹膜炎3例, 卵巣出血2例, その他3例, 消化管穿孔では上部2例, 下部2例であった. 緊急CT群の入院時診断の感度, 特異度, 正診率はそれぞれ91.1%, 100%, 91.4%であった. 緊急CT群の腸閉塞, 急性虫垂炎および急性虫垂炎と鑑別すべき疾患群, 消化管穿孔の入院時診断の正診率はそれぞれ96.5, 88.9, 75.0%であった. 緊急CT群で正確な入院時診断ができなかった症例は6例で, 盲腸周囲膿瘍3例, 急性虫垂炎1例, 宿便性S状結腸穿孔1例, 胃石小腸嵌頓1例であった. 後方視的にCTを評価すると4例は入院時診断が可能であった. 考察: 急性腹症の診断において緊急CTは腸閉塞・虫垂炎の鑑別, 微量の遊離ガスの検出, 消化管穿孔の穿孔部位の推定に有用であった. また, 緊急CTは急性腹症の治療方針の決定に有用であった.
  • 八木 斎和, 石川 忠雄, 岡本 喜一郎, 佐藤 健, 市原 透, 池田 靖, 北村 淳子, 伊藤 雅文
    2007 年 40 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 2003年6月胃集検にて要精検となり当院受診し, 上部消化管内視鏡検査で体下部から幽門にかけての4型胃癌と診断した. 8月中旬に幽門側胃切除術を施行した. 肝転移や腹膜播種は認めなかったが, 領域外のリンパ節No.14a, 15に転移を認めた. 根治度Cであったので, 術後21日目よりTS-1 100mg/日の内服を開始した. TS-1開始後24日目の10月初旬ふらつきを自覚し受診した. 血液検査にて汎血球減少を呈しており, TS-1による骨髄抑制と診断し, TS-1は中止した. 対症療法のみでいったん改善がみられたが, 11月初旬に39℃台の発熱と再度の汎血球減少の進行を認めた. 骨髄生検でFAB分類: M4の急性骨髄性白血病であった. cytarabine 40mg/日の化学療法を開始したが, 11月中旬に脳出血・脳室穿破にて死亡した. 手術後わずか3か月弱の急速で劇的な経過であった.
  • 長谷部 行健, 永澤 康滋, 塩川 洋之, 馬越 俊輔, 柴田 祐充子, 皆川 輝彦, 西田 祥二, 竹山 照明, 大谷 忠久, 長谷川 千 ...
    2007 年 40 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の小腸転移は播種性によることが多いが, まれに血行性, リンパ行性によることもある. 今回, 血行性またはリンパ行性小腸転移の可能性が示唆された胃癌の小腸転移例を経験したので報告する. 症例は61歳の女性で, 腹痛, 嘔吐を主訴に来院した. 腹部CT, 腹部X線検査にてイレウス像を呈した. 上部消化管内視鏡検査にて胃体中部後壁に浅い陥凹を伴う潰瘍性病変を認めた. 生検にて胃癌と診断した. 胃癌治療, イレウス改善目的にて手術を施行した. 術中所見にて胃体中部に病変を認めた. 回腸末端部付近中心に数か所の黄白色の硬結を触知し, うち2か所は全周性の狭窄を呈しておりイレウスの原因と考えられた. 肉眼的腹膜播種なし, 術中洗浄細胞診class IIであった. 幽門側胃切除術, 狭窄部の小腸部分切除術を施行した.術中小腸の病変は炎症性腸疾患を考えたが術後の病理組織学検査にて胃癌の転移と診断された. 術後約20か月後腹膜再発のため永眠された.
  • 若月 幸平, 山田 行重, 成清 道博, 上野 正闘, 玉置 英俊, 三木 克彦, 松本 壮平, 榎本 浩士, 中島 祥介
    2007 年 40 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代の男性で, 平成4年4月にstage II(T2, N1, P0, H0, M0)胃癌に対し胃全摘術を施行した. 病理診断はsignet ring cell carcinomaであった. 術後3年間の5FU系内服抗癌剤およびPSK投与の後, 再発兆候はなかった. 平成16年8月中旬より腰痛を認め, 精査にて胸椎・腰椎の病的骨折が疑われたために骨生検を施行. Signet ring cell carcinomaと診断され, 胃癌の骨転移と診断した. TS-1+CDDP療法および放射線照射を行った. いったん, 腫瘍マーカーの減少と疼痛の緩和が得られたが, 約2か月後にdisseminated intravascular coagulationを発症し死亡した. 術後10年以上経過した後に再発を来す症例はまれであるが, 若年者で胃体中~上部, 組織型が未分化型, リンパ節転移陽性であれば, 術後後期の骨転移も考慮に入れ, 長期にわたる経過観察の必要性が示唆された.
  • 中村 淳, 大塚 隆生, 北島 吉彦, 中房 祐司, 宮崎 耕治
    2007 年 40 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の男性で, 胃潰瘍による幽門狭窄に対して, 近医で幽門側胃切除術(Billroth-II法再建)を施行された. 術翌日から血清総ビリルビン値とアミラーゼ値の上昇を認め, 腹部CTで肝内胆管の拡張および膵腫大, 膵周囲の液体貯留を認めた. 閉塞性黄疸および重症急性膵炎の診断で, 経皮経肝胆管ドレナージ施行後, 当科紹介入院となった. 膵周囲貯留液のアミラーゼ値は262,000IU/Lと異常高値を示しており, これを経皮的にドレナージした. その後の精査で, 術中の自動縫合器による十二指腸乳頭損傷が判明した. 経過中, 途絶した膵管と十二指腸断端の間に瘻孔が形成されたため, 同部にT-チューブを挿入し, 内外瘻の状態とした. T-チューブ挿入から約3か月後には炎症が沈静化し, 膵瘻管空腸吻合術(Lahey-Lium法)および胆管空腸吻合術を施行した. T-チューブは術後7か月後に抜去し, 患者は社会復帰を果たしている.
  • 高台 真太郎, 上西 崇弘, 市川 剛, 山崎 修, 松山 光春, 堀井 勝彦, 清水 貞利, 玉森 豊, 東野 正幸, 久保 正二
    2007 年 40 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝癌切除後の孤立性リンパ節転移を摘除することで, 術後2年6か月の現在, 無再発生存中の症例を経験したので報告する. 症例は58歳の男性で, C型慢性肝炎に伴う肝癌に対して肝切除術を2回施行されていた. 経過観察中のCT像上, 肝尾状葉に約4cm大の腫瘤性病変を認め, AFP, PIVKA-II値の著明な上昇がみられた. 腹部血管造影像では腫瘤は中肝動脈および左胃動脈より栄養される腫瘍濃染像として描出され, 肝癌の尾状葉再発と診断し開腹した. 腫瘍は肝尾状葉に接するように総肝動脈の腹側に存在していたが, 肝臓からは独立しており肝癌の総肝動脈幹リンパ節転移と考え摘除した. 病理組織学的検査では中分化型肝癌のリンパ節転移と診断された. AFP, PIVKA-IIは術後2か月目に標準値範囲内へ低下し, 以来, 再発徴候を認めていない. 原発巣がコントロールされた肝癌の孤立性リンパ節転移は摘除により良好な予後が得られる可能性が示唆された.
  • 町田 大輔, 湯川 寛夫, 郷田 素彦, 金成 正浩, 永野 篤, 藤澤 順, 松川 博史, 清水 哲, 河野 尚美, 利野 靖
    2007 年 40 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    乳癌は手術に加え化学療法やホルモン剤の使用によって, たとえ再発例であっても長期生存が期待できることが少なくないが, さまざまな臓器に転移を来すことでも知られている. しかし, 胆嚢転移の報告は極めて少なく自験例を含め10例のみである. 今回, 我々は乳癌胆嚢転移のまれな1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 症例は53歳の女性で, 左乳癌に対し非定型的乳房切除術が施行され, 病理組織学的検査では乳頭腺管癌+浸潤性小葉癌であった. 術後補助療法として化学療法, ホルモン療法が施行された. 平成15年7月発熱, 右上腹部痛が出現し, 腹部USで胆嚢壁の著明な肥厚を認め胆嚢炎と診断された. 保存的治療にもかかわらず腹部症状の消失はなく, 8月胆嚢摘出術が施行された. 壊死性胆嚢炎の状態で結石は認めなかった. 肝両葉に肝転移を認めた. 病理組織学的検査で胆嚢壁は著明に肥厚し粘膜から筋層まで強い変性を認めた. 頸部粘膜下に白色結節があり乳癌胆嚢転移と診断された.
  • 成本 壮一, 山本 宏, 浅野 武秀, 永田 松夫, 滝口 伸浩, 貝沼 修, 早田 浩明, 趙 明浩, 森 幹人, 竜 崇正
    2007 年 40 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性で, 2001年9月, 他院において肝右葉の肝内胆管癌の診断で肝右葉切除術を受けた. 初回手術時進行度はt2, n0, m0, stage IIであったが, sm (+)となった. 術中に癌露出部は癌細胞の遺残を疑い, マイクロウェイブにて焼灼された. 術後6か月経過した2002年3月, 残肝切除断端の再発を疑われ当院紹介受診. 術後の変化とも考えられ経過観察していたところ, 1年後には病変部の増大を認めた. 他病変を認めないことから残肝再発に対して2003年4月, 肝S4+S1の亜区域切除+肝外胆管切除術を施行. 肉眼的には前回手術時右グリソン断端部に一致して長径2.5cmの境界明瞭な白色結節を認めた. 病理組織学的検索では中分化型腺癌s0, n0, vp0, va0, b0, sm (+)であった. 肝内胆管癌再発と診断した. 術後2年11か月経過したが再々発を認めない.
  • 飯田 洋也, 丹後 泰久, 蔦本 慶裕, 張村 貴紀, 田中 研次, 高尾 貴史, 湯澤 浩之, 島袋 誠守, 草野 敏臣, 入江 康司
    2007 年 40 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性で, 近医に高血圧, 糖尿病で通院中であった. 血糖コントロールの悪化と, 腹部超音波検査で膵腫瘍を指摘され紹介入院となる. 血液検査所見ではエラスターゼ1が900ng/dlと高値であった. 腹部超音波検査所見では主膵管の閉塞と末梢膵管の拡張を認めた. MRCP所見では膵体部にて膵管は途絶し, 末梢膵管は拡張していた. ERCP所見でも, 膵体部にて膵管は途絶していた. 腹部CT所見では明らかな腫瘤は同定できなかった. その他, 上部消化管内視鏡検査, 下部消化管造影検査にて, 異常所見はなかった. 以上より, 通常の膵管癌を疑い, 平成17年2月, 膵体尾部切除術を施行した. 術後の病理組織学的検査にて, 同腫瘍細胞は卵円形細胞が充実性結節状, 胞巣状に増殖し, chromogranin染色陽性であった. また, 各種ホルモンの染色ではserotoninのみ陽性であり, 膵内分泌腫瘍と診断した.
  • 小松 義直, 野々山 益雄, 関口 宏之, 鈴木 夏生, 田上 鑛一郎, 柴田 偉雄
    2007 年 40 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    31歳の女性が第2子出産後も腹部膨満が続くため受診した. 左上腹部に直径15cmの腫瘤を認め, 膵粘液性嚢胞腫瘍と診断し, 膵体尾部切除術を施行した. 切除組織に卵巣様間質を認め, 膵粘液性嚢胞腺腫と診断した. 免疫染色にて卵巣様間質細胞の核はエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体がともに陽性であり, 腺腫細胞の核も一部でプロゲステロン受容体陽性であった. 本症例では既往に高プロラクチン血症があり, 授乳中の発症であった. 周産期にプロラクチンや性ホルモンの刺激を受けて腫瘍が増大した可能性が考えられた.
  • 杉山 眞一, 別府 透, 石河 隆敏, 高橋 将史, 古賀 宣勝, 増田 稔郎, 岡部 和利, 池田 公英, 広田 昌彦, 馬場 秀夫
    2007 年 40 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    非機能性膵内分泌腫瘍の多発性肝転移症例に対して経肝動脈的動注化学療法を施行し, 著効を得た症例を経験したので文献的考察を加え報告する. 症例は33歳の女性で, 肝腫瘍に対して腫瘍生検が行われ, その後膵腫瘍の存在が認められたことより, 膵内分泌腫瘍多発性肝転移の確診に至った. 先ず, リピオドールにシスプラチンを混じた懸濁液を用いての肝動脈化学塞栓療法を施行した. その後, UFT-Eの内服を開始した. その結果, 肝転移は著明に縮小した. しかし, その後卵巣転移を認め, 卵巣摘出術を施行した. その際, 抗癌剤感受性検査を行った. その後, 腹腔内リンパ節, 脳, 骨転移, 腹膜播種を認めたため, 感受性の高かったパクリタキセルを投与したが, 病状は進行し, 初回治療から約15か月後に永眠された.
  • 松葉 秀基, 加藤 健司, 平松 聖史, 伊藤 貴明, 赤川 高志, 朽名 靖, 待木 雄一, 藤岡 進, 吉田 カツ江
    2007 年 40 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Somatostatinomaは膵臓あるいは十二指腸に好発するまれな内分泌腫瘍である, 今回, 我々は膵癒合不全のため膵液の主排出路となっていた副膵管がsomatostatinomaにより閉塞し急性膵炎を発症した症例を経験した. 症例は65歳の男性で, 上腹部痛を主訴に来院し, 急性膵炎と診断された. 膵炎軽快後の内視鏡的逆行性膵管造影検査で背側膵管と腹側膵管が分枝のみで交通する膵管非癒合の所見を認め, また, 副膵管の途絶とその上流側膵管の拡張を認めた. 内視鏡所見では十二指腸下行脚副乳頭に一致する部位に潰瘍性腫瘍病変を認めた. 腫瘍により副膵管が閉塞し, その結果急性膵炎が発症したと考えられた. 急性膵炎の軽快した後に膵頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織学的に膵内分泌腫瘍と診断され, 免疫組織学的にsomatostatinで濃染された. 膵somatostatinomaと診断された.
  • 近本 亮, 高森 啓史, 辻 龍也, 広田 昌彦, 金光 敬一郎, 池田 理, 山下 康行, 猪山 賢一, 木下 順弘, 馬場 秀夫
    2007 年 40 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    多発肝転移を伴う切除非適応膵癌に対して5-fluorouracil(以下, 5FUと略記)肝膵局所動注およびgemcitabine(以下, GEMと略記)全身化学療法施行中に右肝動脈仮性動脈瘤を伴う多発肝膿瘍を発症した1例を報告する. 症例は65歳の男性で, 肝転移を伴う膵頭部癌の診断で本治療を施行中, 39度以上の発熱を認め入院となった. 入院時の腹部CTでは感染巣は同定できなかったが, 播種性血管内凝固, 成人呼吸窮迫症候群を併発し, 集中治療にて改善した. その後の腹部CTで肝右葉グリソン周囲に多発肝膿瘍と右肝動脈仮性動脈瘤を認めた. 仮性動脈瘤をコイル塞栓後, 経皮的膿瘍ドレナージを行い軽快転院した. 5FUによる胆管上皮障害と血管内皮障害が肝膿瘍および仮性動脈瘤の原因と推察される. これらは動注化学療法に伴う重篤な合併症であり注意を要する.
  • 山村 進, 小林 匡, 小林 正昭, 藤田 逸郎, 横室 茂樹, 中村 慶春, 相本 隆幸, 内田 英二, 田尻 孝
    2007 年 40 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性で, 腹痛, 嘔吐を主訴に当院入院となった. 既往歴には胃潰瘍による胃切除術, 胆嚢結石症による胆嚢摘出術があった. 入院時腹部CTにて臍部近傍の小腸内に約3cm大の円形の層構造を有するhigh densityを示すmassを認め, イレウスを呈していた. イレウス管にて症状が軽快するも, 1か月後に再び同様の症状が出現し, CTにて前回同様のmassを認めたが, 小腸内で移動していた. 繰り返す小腸内異物によるイレウスの診断にて手術を施行したところ, 腸石により輸入脚が閉塞していた. 腸石を除去後, ブラウン吻合を造設した. 腸石は外殻, 中核に分かれ, 層構造を成していた. 本症例は小さな胆. 結石が総胆管より排石され, それが中核となり輸入脚内で停滞するうちに外殻が形成された腸石と推測された. 胃切除後の腸石による輸入脚閉塞症は極めてまれであり, 文献的考察を加えて報告した.
  • 安田 祥浩, 高木 眞人, 尾形 高士, 山田 裕史, 鈴木 芳明, 加藤 文昭, 寿美 哲生, 青木 利明, 土田 明彦, 青木 達哉
    2007 年 40 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の男性で, 平成17年10月下旬に下腹部痛, 嘔吐が出現した. 翌日, 症状が増悪したため, 当院受診し緊急入院となった. 腹部単純X線検査で骨盤腔内に石灰化像を認めた. 腹部CTでは骨盤腔内に小腸の腸間膜対側に接する嚢胞様の腫瘤があり, 内部に石灰化を伴っていた. 石灰化を伴ったメッケル憩室炎を疑い, 99mTcシンチグラフィーを行うも99mTcの集積は認めなかった. 入院翌日に反跳痛を認めたため, 緊急手術を行った. 腸石を伴ったメッケル憩室炎であったため, 憩室切除術を行った. 結石分析ではシュウ酸カルシウム結石であった. 腸石は真性腸石と仮性腸石に分類されるが, 臨床で経験されるのはほとんどが仮性腸石である. 今回, 極めてまれな真性腸石を伴ったメッケル憩室炎の症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 森 周介, 岸本 浩史, 田内 克典, 樋口 佳代子
    2007 年 40 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸回転異常と空腸腸管重複嚢腫の複合発生異常に続発した上腸間膜軸捻転症の1成人例を報告する. 症例は20歳の男性で, 腹痛を主訴に外来受診した. 腹部CTで肝下面に嚢胞状腫瘤と上腸間膜動静脈を軸としたWhirl signを認め, 腸間膜軸捻転症による絞扼性腸閉塞の診断で緊急開腹手術を施行した. 術中所見では, 盲腸および上行結腸が後腹膜に固定されておらず上腸間膜動静脈を軸として腸管が時計方向に2回転軸捻転を来し, 空腸から横行結腸まで虚血に陥っていた. 捻転解除により腸管の色調は改善した. さらに, トライツ靱帯より約20cmの空腸腸間膜に約7cm大の嚢胞性病変を認め, この部位の小腸部分切除を行った. 上行結腸は固定せずそのままとし虫垂を切除した. 切除標本の肉眼検査所見では小腸間膜に腸管との交通のない単房性嚢胞を認めた. 組織学的には嚢胞壁に平滑筋層が存在し, 内腔は呼吸上皮に類似した組織に覆われていた. 腸管重複嚢腫と診断した.
  • 小林 大介, 本田 一郎, 守 正浩
    2007 年 40 巻 1 号 p. 113-118
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の男性で, 2005年5月下旬より便秘, 腹痛が出現し, その数日後より嘔吐も伴ったため近医を受診し, イレウスの診断にて当院へ紹介受診となった. 既往歴は特記すべきことはなし. 来院時上腹部から臍部にかけて強い疼痛と圧痛を認め, 臍上部に腫瘤を触知した. 血液生化学検査は正常範囲内であった. 腹部CTにて腸管膜の血管を中心として小腸が渦巻き状に巻き込まれるwhirl signを認めた. 小腸軸捻転と診断し同日緊急手術を行った. 手術所見は全小腸が上腸間膜動脈を中心に時計方向に540度捻転していた. 他に軸捻転の誘因となる索状物, 腫瘍, 癒着はなく, 腸管膜根部に過剰な可動性や腸回転異常などの解剖学的異常も認められなかったため, 原発性小腸軸捻転症と診断した. 腸管の壊死はなく捻転の解除のみ行った. 術後経過は良好で第14病日退院となった. 開腹歴がなく絞扼性イレウスを疑う症例では本症の可能性も考慮する必要があり, 診断に際してはCTが有用である.
  • 佐藤 宏彦, 宮谷 知彦, 森本 慎也, 木下 貴史, 安藤 勤, 長堀 順二
    2007 年 40 巻 1 号 p. 119-123
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性で, 主訴は腹部腫瘤を触知した. 右卵巣腫瘍の疑いで開腹術を施行した.術中, 虫垂根部より2cm末梢の部位から周囲との癒着のない8×6×6cm大の腫瘤を認めた. 術中迅速病理検査の結果, gastrointestinal stromal tumor, 平滑筋腫あるいは神経鞘腫と診断されたので, 虫垂切除術のみとした. 病理組織学的検査所見では大小不同のある紡錘形核を持つ腫瘍細胞が不規則に存在していたが, 細胞異型や核分裂像は認めず, 免疫染色所見ではc-kit陰性, CD-34陰性, S-100蛋白陽性, α-SMA陰性であったことから虫垂良性神経鞘腫と診断された. 虫垂神経鞘腫は極めてまれな疾患であり, 本邦報告は本症例を含めて6例であった. そのため, 治療法, 予後に関する一定の見解は定まっていないが, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 小高 雅人, 杉藤 正典, 小林 昭広, 小畠 誉也, 矢野 匡亮, 斉藤 典男
    2007 年 40 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性で, 点状出血および発熱を契機に急性骨髄性白血病 (M0) と診断され, 化学療法を施行された. その17日後に右下腹部痛が出現し, 腹部CTで上行結腸から盲腸にかけて壁肥厚を認めたため, 好中球減少性腸炎と診断したが, 骨髄抑制期であることと腹部所見を考慮し保存的治療を選択した. その後症状は軽快したが, 下部消化管内視鏡所見で虫垂より膿の排出を認めたため, 虫垂炎と診断し, 虫垂切除術を施行した. 組織学的検査所見は白血病細胞を認めず, 急性および慢性の炎症所見のみであった. 今後, 我々消化器外科医は, 白血病治療中の急性腹症患者に対する診断, 治療に遭遇する機会が増加する可能性があり, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 内海 方嗣, 村岡 篤, 小林 正彦, 木村 圭吾, 國土 泰孝, 立本 昭彦, 津村 眞, 鶴野 正基
    2007 年 40 巻 1 号 p. 129-133
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹部血管造影にて中結腸動脈破裂と診断し, 緊急手術を行った症例を経験したので報告する.症例は52歳の男性で, 腹痛を主訴に当院の救急外来を受診した. 急性腸炎と診断されいったん帰宅するが, 腹痛が治まらず翌日に再来した. CTにて後腹膜出血と診断され, 血管造影検査を施行すると中結腸動脈に血管外漏出像を伴う動脈瘤を認めた. 経カテーテル的動脈塞栓術での止血は困難であったため緊急手術を行った. 開腹すると後腹膜に著明な血腫を形成しており, 中結腸動脈に発生した動脈瘤破裂による血腫と診断し動脈瘤を摘除した. 病理組織学的には内膜, 中膜の壊死を認め, segmental arterial mediolysis (SMA) の関与が考えられた. 本疾患はまれな病態であり, 診断, 治療を同時に行えるinterventrial radiologyが第1選択であるが, 状況に応じて開腹術に移行すべきであると考えられた.
  • 塩飽 洋生, 田辺 嘉高, 阿部 祐治, 井原 隆昭, 岩下 俊光, 光山 昌珠, 中守 真理, 豊島 里志, 濱田 哲夫, 平野 豊
    2007 年 40 巻 1 号 p. 134-140
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    一般に予後不良とされているAFP産生のS状結腸癌の1例を経験したので報告する. 症例は61歳の女性で, 前医にてS状結腸癌に対しS状結腸切除術を施行された. 術後8か月目に肝S5を主体に右葉を占居する長径9cmの肝転移を認めたため, 当院へ入院し拡大肝右葉切除術を施行した. 術前の腫瘍マーカーは, CEAが6.6ng/ml, CA19-9が239.4U/mlと上昇し, さらに血清AFP値は1,463.7ng/mlと異常高値を示していた. 病理組織学的検査においては, 原発巣および肝転移巣ともに, 中分化型腺癌でAFP の免疫染色が陽性であった. Hepatoid differentiationは肝転移巣で認められた. これらより, AFP産生大腸癌の肝転移と診断した. AFP産生大腸癌の報告は極めてまれである. また, 免疫組織学的検査所見において, chromogranin A染色陽性部分は原発巣およびリンパ節転移巣に比べ, 肝転移巣でより広範囲に認められた. このことは腫瘍が分化・増殖に伴い, 神経内分泌性分化を呈していった可能性を示唆するものであった. AFP産生腫瘍で, かつ神経内分泌性分化を伴った大腸癌の症例はさらにまれである.
  • 辻村 敏明, 豊川 晃弘, 若原 智之, 椋棒 英世, 浜辺 豊
    2007 年 40 巻 1 号 p. 141-145
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌の小腸への孤立性遠隔転移はまれであり, 予後不良である. 今回, 我々はS状結腸癌術後の吻合部再々発に対する手術中に発見し, 根治手術しえた孤立性小腸転移の1例を経験したので報告する. 症例は68歳の男性で, S状結腸癌および吻合部再発に対する2度の手術の後, 無症状で経過していた. しかし, 定期検査にて吻合部再々発を認め, 開腹手術を施行した. 開腹所見にて再々発病変の他に回腸に粘膜下腫瘍様の病変を触知し, 前方切除術および回腸部分切除術を施行した. 病理組織学的検査では回腸病変の組織像は初発S状結腸癌および吻合部再々発病変と酷似しており, 孤立性小腸転移と診断した. 患者は再々手術より1年半経過した現在, 再発徴候なく生存中である. 大腸癌からの孤立性小腸転移のうち多臓器転移のない症例では, 積極的な外科的切除により良好な生命予後も期待できると考える.
  • 奥川 喜永, 井上 靖浩, 渡部 秀樹, 尾嶋 英紀, 小林 美奈子, 三木 誓雄, 楠 正人
    2007 年 40 巻 1 号 p. 146-151
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 深達度T2の下部直腸癌に対し, 術前放射線化学療法を施行し, T1への腫瘍縮小を認めたことから, 十分なインフォームドコンセントのうえ, 局所切除術を施行した. 病理診断でpathological complete responseであった. 術後化学療法も併用し, 術後3年5か月無再発生存中である. 下部進行直腸癌に対する手術は, 補助療法の進歩に伴い, 機能温存ならびに縮小へと向かう傾向にあるが, 放射線化学療法を併用し, 局所切除術で対応することに十分なコンセンサスは得られておらず, 今回良好な経過を認めた1例を経験したので報告する.
  • 鄭 充善, 池田 公正, 北田 昌之, 花田 正人, 島野 高志
    2007 年 40 巻 1 号 p. 152-156
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    悪性所見を伴ったTailgut cystは極めてまれであり, 自験例を含めてこれまで世界で8例の報告をみるのみである. 今回, 我々は悪性所見を伴ったTailgut cystの1例を経験したので報告する. 症例は33歳の女性で, 不正性器出血を契機に骨盤内腫瘤を指摘され, 腫瘤摘出術を施行した. 腫瘤は, 前仙骨部 (presacral space) に存在し, 特に尾骨と強固に癒着していたが腫瘍のみ完全摘出可能であった. 病理診断にてTailgut cystと診断され, 嚢胞壁の一部に, mucinouscarcinomaを認めた.
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