日本消化器外科学会雑誌
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40 巻, 4 号
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  • 青柳 信嘉, 渡邊 稔, 飯塚 一郎
    2007 年 40 巻 4 号 p. 357-361
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 本邦の精神障害者の受療総数は近年増加している. 精神障害者が外科手術を受ける際に精神疾患がsurgical riskとなるのか否か, 当院での胃癌および大腸癌手術症例を対象として検討した. 方法: 1998年1月から2005年3月までに当院で行われた精神障害患者の胃癌および大腸癌手術61例 (以下, 障害者群) と同時期の非精神障害患者の胃癌, 大腸癌手術320例 (以下, 非障害者群) を対象とし, retrospectiveにその周術期成績を検討した. 結果: 検診が癌の発見契機となった症例は大腸癌で障害者群が有意に少なかった. 術後の身体的合併症は胃癌で障害者群38%, 非障害者群28%で, 大腸癌で障害者群30%, 非障害者群33%であった.手術直接死亡は胃癌, 大腸癌ともに両群で0例であった. 合併症率, 直接死亡率ともに両群で差は認められなかった. 術後在院日数は中央値でみると胃癌で障害者群30.5日, 非障害者群25日. 大腸癌で障害者群22日, 非障害者群24日でともに有意差はなかった. 術後の精神的合併症に関連して, 向精神薬の静注投与を要した患者の比率, 身体抑制を要した患者の比率, 問題行動を起こした患者の比率を検討したが, これら3項目とも障害者群で有意に高い結果となった. 考察: 精神障害者の胃大腸癌手術は, 術後の精神症状に対する対応を必要とするが, 全体としてのリスクは非障害者と同程度と考えられた.
  • 坂本 和彦, 岡田 敏正, 為佐 卓夫, 岡 正朗
    2007 年 40 巻 4 号 p. 362-369
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: CDCガイドラインで示された危険因子と周術期培養の結果より肝切除時の術後感染症を検討した. 対象と方法: 2003年1月から2005年6月までの間の肝切除症例80例を対象とした. 術前の鼻汁, 胃液培養, 術後第1 病日の喀痰, 胆汁, 腹水培養を施行した. 術後感染症の発症の有無とその危険因子について検討した. 結果: 鼻汁, 胃液, 喀痰, 胆汁, 腹水培養から, それぞれ感染性細菌が27%, 59%, 52%, 19%, 5% 検出された. 術後感染症は19%(15/80例) に発症した. 術後感染症起因菌の73%(11/15例) は周術期培養検出菌と同一であった. 鼻汁, 胃液, 喀痰, 胆汁もしくは腹水の保菌と術後感染症との関係を単変量解析したところ喀痰, 胆汁, 腹水の保菌が有意な危険因子であった (p<0.05). 年齢, 性別, 耐糖能異常, 肥満, 肝機能, 肝線維化, 術中出血量, 手術時間, 術式, 保菌 (喀痰, 胆汁, もしくは腹水) を用い術後感染症の危険因子を多変量解析したところ性別, 耐糖能異常, 肝線維化, 手術時間, 保菌が有意な危険因子であった (p<0.05). 考察: 肝硬変を有する肝切除症例は感染性細菌を高率に保菌し, 術後感染症のハイリスクグループである. また, 周術期の喀痰, 胆汁, 腹水の保菌は術後感染症の危険因子であり, その情報は適切な術後感染治療薬の選択に有用である.
  • 境 雄大, 佐藤 浩一, 須藤 泰裕, 小柳 雅是, 長谷川 善枝
    2007 年 40 巻 4 号 p. 370-376
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    無菌化し治癒した特発性食道破裂術後のMRSA膿胸の1例を報告する. 症例は60歳の男性で, 嘔吐後の腹痛を主訴に近医を受診, 胸部X線検査で左胸水と気胸を指摘された. 翌日, 敗血症性ショックを呈し, 当科に入院した. 胸腔から褐色の排液があり, 食道穿孔と診断し, 緊急手術を行った. 下部食道に穿孔があり, 縫合閉鎖した. 循環不全のため縫合部被覆を断念した. 術後は多臓器不全を呈した. 翌日から1日2回, 生理食塩水で胸腔内洗浄を開始した. 術後13日目に創部と胸水からMRSAを確認し, 洗浄液を増量, 抗MRSA薬を使用した. 術後30日目に胸水, 44日目に創部のMRSAが陰性化, 58日目に胸水が無菌化し, 胸腔ドレーンを抜去した. 術後108日目に退院した. 術後食道造影, 内視鏡で縫合部は治癒, CTでは肺容量は保たれていた. 特発性食道破裂術後のMRSA膿胸には大量の生理食塩水による定時的洗浄が有効で, 本邦報告例の文献的考察を加えて報告する.
  • 山井 礼道, 浜口 伸正, 山本 洋太, 大西 一久, 谷田 信行, 藤島 則明, 開發 展之, 梅本 淳, 丹黒 章
    2007 年 40 巻 4 号 p. 377-381
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で, 胃集団検診での異常陰影を指摘され当院受診した. 胃内視鏡検査で胃体下部前壁に弾性軟の直径3cmの亜有茎性粘膜下腫瘍を認めた. 超音波内視鏡検査では第3層に限局する境界明瞭な高エコー像を認め, 胃脂肪腫と診断した. その後患者の受診はなかったが, 2年後, 労作時呼吸困難を自覚し当院受診した. 血液検査でヘモグロビン8.2g/dlと貧血を認めた. 胃内視鏡検査を行ったところ, 胃体下部前壁の脂肪腫が直径5cmに増大し, 先端部には凝血塊の付着を伴った潰瘍形成を認めた. 腹部CTでは5cm大の低吸収性腫瘍として認められた. 小開腹下に胃部分切除術を施行した. 病理組織診断は成熟脂肪腫であった. 胃脂肪腫として経過観察中に出血を来した本邦報告例は, 2006年4月までのJMEDPlus, 医学中央雑誌による検索で, 今回が7例目とまれであり, 文献的な考察を加えて報告する.
  • 森脇 義弘, 稲荷 均, 小菅 宇之, 杉山 貢
    2007 年 40 巻 4 号 p. 382-387
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    24歳の男性で, 交通外傷, 脾・胃破裂例. 2回の手術後もショックから離脱できずabdominal compartment syndrome (以下, ACS) から心停止, 心肺蘇生による胃縫合部破綻を生じたが, 緊急開腹減圧術で救命しえた. 蘇生後のショックを伴う重症腹膜炎のため, 胃破裂部再縫合や切除再建は困難と判断した. Damage control (以下, DC) を採用し, 腹腔ドレナージ, sealed continuous high pressure aspiration法による一時閉腹を行い, ICUで代謝失調補正後, 第3病日に予定再手術で閉腹を行った. 重症腹膜炎ショック例では, ACSは致死因子として念頭におくべきで, 膀胱内圧, 呼吸循環動態, 尿量変化に注目し, ACSと判断したら, DCの概念に基づく躊躇ない緊急開腹減圧が必要となる. DCは, ICUでの代謝失調補正のみを唯一の目的とした不十分な初回手術で始まる非常識的治療戦略ともいえるが, septic shockやsevere sepsisの代謝失調例には必須かつ有用な手段で, その理解と実践は緊急事態への対応能力として重要と思われた.
  • 三松 謙司, 加納 久雄, 小倉 道一, 久保井 洋一, 桂 義久, 大井田 尚継
    2007 年 40 巻 4 号 p. 388-392
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の男性で, 脳梗塞後遺症で通院中に吐血で入院となった. 内視鏡検査にて, 胃体中部前壁に粘液が付着した結節状の腫瘍を認め, 後壁に粗大顆粒状の腫瘍を認め, さらに食道胃接合部直下に細顆粒状のポリープを認めた. また, 胃体上部から中部に過形成ポリープが多発していた. 生検により, 胃体中部の腫瘍は二つともGroup V, 腺癌で, ポリープはGroup III, 腺腫の診断であった. 手術は, 胃全摘術, D1+βリンパ節郭清, Roux-en Y型空腸嚢再建術を施行した. 術後病理診断では, 胃体中部の腫瘍は二つとも中分化型腺癌, sm2で, ポリープは高分化型腺癌, mであった. いずれも過形成を来した腺窩上皮より発生していた. 癌化を来したポリープを有する多発過形成性ポリープは, 癌化のpotentialを有する可能性が考えられ, ポリープ全切除することが望まれると考えられた.
  • 佐藤 暢人, 鈴木 康弘, 高橋 亮, 橋本 裕之, 三栖 賢次郎, 高橋 基夫, 近藤 哲
    2007 年 40 巻 4 号 p. 393-398
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で, 血便を主訴に近医を受診し, 下部消化管内視鏡検査の結果, S状結腸癌の診断となり, 当院に紹介された. 精査目的の上部消化管内視鏡検査で胃体上部から前庭部にかけて粘膜の顆粒状変化を認め, 生検の結果, 胃原発髄外性形質細胞腫と診断した. FDG-PETでは胃, 結腸の病変に一致して強い集積を認めた. 手術は胃全摘, 脾摘, 胆摘とS状結腸切除を行った. 切除標本では粘膜の肥厚を伴う粗顆粒状変化を認めた. 病理組織学的には, 形質細胞のびまん性増殖を認め, 深達度は粘膜固有層までで, リンパ節転移は認めなかった. 免疫染色では腫瘍細胞はIgA, κの産生を示した. 結腸の病変は, 固有筋層までの高分化型腺癌であった. 術後補助療法は行わず, 6か月経過しているが, 再発・転移は認めていない. FDG-PETで集積を認め, 完全切除可能であった胃原発髄外性形質細胞腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 森田 晃彦, 薮下 和久, 木村 準, 尾山 勝信, 寺田 逸郎, 山本 精一, 加治 正英, 前田 基一, 小西 孝司
    2007 年 40 巻 4 号 p. 399-404
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Endoscopic submucosal dissection (以下, ESDと略記) の合併症として穿孔は数多く報告されているが, 穿孔に起因する腹膜播種が生じたという報告はない. 今回, ESD穿孔の1年後に腹膜播種を生じた1例を経験したので報告する. 症例は80歳の男性で, 検診で見つかった胃体下部小彎に2cm大の隆起性病変に対し, 超音波内視鏡検査でSM massiveと診断されたがESDを施行した. 途中穿孔を認めたため中断し, クリップで縫縮した. 1か月後に幽門側胃切除を施行し, stageIB根治度Aであった. 1年後に腹壁の腫瘤が出現し, 同部位からの生検で胃癌の腹壁転移と診断され手術となった. 腹壁の腫瘍は腹腔内まで連続し, 腹腔内には大小の結節が認められ, 胃癌の腹膜播種と診断した. その6か月後に癌性腹膜炎で死亡した.
  • 藤崎 滋, 高階 幹, 富田 凉一, 高山 忠利, 生沼 利倫
    2007 年 40 巻 4 号 p. 405-409
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の男性で, めまいを主訴に来院した. 血液検査にて貧血が認められ, 精査となった. 腹部CTで膵頭部腹側に接して3cm大の腫瘤があった. 加えて, 上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部後壁に2型の腫瘍を認め, 生検で十二指腸癌であった. リンパ節転移を伴った十二指腸癌の診断で, 十二指腸部分切除かつ転移リンパ節切除を施行した. 組織学的には内分泌細胞癌であった. 術後補助化学療法としてテガフール300mgの内服投与を約1年間施行した.術後36か月経過しているが, 無再発生存中である.
  • 坂部 龍太郎, 佐伯 修二, 多幾山 渉, 平林 直樹, 佐藤 幸雄, 向田 秀則, 山下 芳典
    2007 年 40 巻 4 号 p. 410-414
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部癌はさまざまな臨床症状を呈するが, 急性膵炎を発症することは比較的まれである. 我々は重症急性膵炎を契機に発見された十二指腸乳頭部癌の1例を経験したので, 過去の本邦報告9例の文献的考察を加えて報告する. 症例は58歳の男性で, 心窩部痛を主訴に近医を受診し, 当院へ紹介され緊急入院した. 血液検査にて血清アミラーゼの上昇を認め, 腹部CTにて膵全体の腫大と膵周囲のfluid collectionを認めた. 重症急性膵炎 (Stage 2) と診断し, 動注療法を含めた集中治療を行い症状は軽快した. 原因精査のためのERCP施行時に十二指腸乳頭部の発赤と襞の集中を認め, 生検にて腺癌と診断された. 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術, D2リンパ節郭清を施行し, 病理組織学的にStage IIIの十二指腸乳頭部癌と診断した. 術後15か月目の現在, 再発なく外来通院中である.
  • 藤原 拓造, 五味 慎也, 村嶋 信尚, 松本 剛昌, 飽浦 良和, 浜崎 啓介
    2007 年 40 巻 4 号 p. 415-420
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で, 出血性胃潰瘍にて入院加療中に肝腫瘍を指摘された. 経過中に発熱などの症状はない. ALP, γ-GTPの軽度上昇以外肝機能検査に異常はなく, 肝炎ウイルスは陰性, 腫瘍マーカーは正常範囲であった. 腹部CT, MRIで肝右葉中枢側に約5cmの辺縁のみに造影効果のある腫瘍を認め, 門脈右枝を閉塞, 肝内胆管右前区域枝は拡張していた. 門脈造影検査では右1次分枝より末梢は造影されなかった. 経皮的腫瘍針生検では炎症細胞のみで腫瘍性の細胞は認められず, 肝炎症性偽腫瘍と診断した. 肝右葉切除術を行い, 切除標本の病理組織学的検査所見は肝炎症性偽腫瘍に一致した. 術後5年経過した現在, 再発を認めていない. 肝炎症性偽腫瘍は比較的まれな疾患で, その原因など不明な点が多い. 本例のごとく肝門部近くに腫瘍が存在し, 腫瘍の進展が新たな病態を発生させる危ぐがある場合には外科的切除を選択すべきと考えられた.
  • 今井 克憲, 別府 透, 林 洋光, 増田 稔郎, 水元 孝郎, 石河 隆敏, 広田 昌彦, 田中 秀紀, 吉村 芳弘, 馬場 秀夫
    2007 年 40 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は52歳の男性で, 発熱, 腹痛を主訴に近医受診し, 汎発性腹膜炎の疑いにて当科紹介. 腹膜炎症状を呈し, 腹部CTでガスを含む肝膿瘍と腹水, 腹腔内遊離ガスを認めた. BS 544mg/dl, HbA1c 11.3%と高値で, 重度の糖尿病と診断した. 肝膿瘍破裂の診断にて緊急手術を施行し, 洗浄ドレナージを行った. 膿汁培養ではKlebsiella pneumoniaeが検出された. 症例2は65歳の男性で, 切除不能膵癌にて胆管ステントが留置されていた. 発熱, 腹痛を主訴に当院内科入院, 肝膿瘍の診断にて保存的に加療されるも腹痛の増強を認め, 当科紹介となった. 腹膜炎症状を呈し, 腹部CTにてガスを含む肝膿瘍と腹水, 腹腔内free airを認めた. 肝膿瘍破裂と診断, 緊急手術にて洗浄ドレナージを行った. 膿汁培養でLactococcus speciesが検出された. 術後は両症例とも経過良好で膿瘍腔は漸次縮小し, 軽快退院となった. ガス産生化膿性肝膿瘍の腹腔内への破裂は非常にまれであり, 文献的考察を含めて報告した.
  • 佐藤 龍一郎, 及川 昌也, 片寄 友, 力山 敏樹, 山本 久仁治, 林 洋毅, 佐々木 巖, 海野 倫明
    2007 年 40 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃原発gastrointestinal stromal tumor (以下, GISTと略記) の同時性広範囲肝転移に対し, イマチニブにより腫瘍縮小を得た後, 手術を施行しえた症例を経験した. 症例は47歳の男性で, 全身倦怠感, 嘔気を主訴に受診し, CTにて胃噴門部と肝内に多発する腫瘍が認められた. 生検にてKIT, vimentin陽性の胃原発GIST多発肝転移の診断を得たが, 腫瘍局在のため1期的切除は不可能であった. イマチニブによって全病変の縮小が得られたが, 経過観察中に肝転移病変の一部に再増殖が認められた. 腫瘍が縮小したため肝転移病変の切除が可能と判断し, 胃全摘, 肝部分切除術, 肝腫瘍ラジオ波焼灼術を施行した. 切除した腫瘍の大部分は硝子様に変性していたが, 一部viableな組織を認め, 薬剤耐性の獲得と判断した. 再増殖腫瘍の遺伝子解析にてKIT遺伝子exon9, 11, platelet-derived growth factor receptor-α (PDGFRA) 遺伝子exon12に変異を認めた.
  • 三井 一浩, 並木 健二, 松本 宏, 今野 文博, 吉田 龍一, 高橋 雄大, 小ヶ口 恭介
    2007 年 40 巻 4 号 p. 433-437
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は87歳の男性で, 高血圧症の既往あり. 突然の右上腹部痛, コーヒー残渣様嘔吐にて当院へ搬送された. 右上腹部に圧痛, 筋性防御を認め, 白血球23,700/μl, CRP 22.28mg/dlと高度上昇を認めた. 腹部単純X線検査では, 胃拡張および小腸の拡張を認めた. 腹部CTでは, 広範囲の肝内門脈に著明なガス像を認め, 胃壁内, 胃辺縁静脈内, 脾静脈, 上腸間膜静脈にもガス像を認めた. また, 胆嚢は緊満し, 周囲に炎症によると思われる浮腫像, 液体貯留像を認めた. 消化管壊死, 急性胆嚢炎の疑いにて緊急腹腔鏡検査を施行した. 急性穿孔性壊死性胆嚢炎の術中診断にて腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. 術後の上部内視鏡検査では, 潰瘍を伴う胃粘膜病変が存在した. 術後経過は良好で第16病日退院となった. 本症例は, 急性胃粘膜病変とこれに伴う胃拡張により広範な門脈ガス血症を合併した急性穿孔性壊死性胆嚢炎と思われた.
  • 明石 諭, 山本 雅敏, 細井 孝純, 堤 雅弘, 今川 敦史
    2007 年 40 巻 4 号 p. 438-443
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性で, 心窩部痛・発熱にて受診し, 腹部USにて胆石・胆嚢炎を認め入院となった. 入院時検査で血清CA19-9値が26,780U/mlと著明な高値を呈した. 抗生剤投与により炎症は軽快し, CA19-9値も10,060U/mlまで低下したが, 依然高値であった. 諸検査の結果, 高CA19-9値は胆嚢炎によるものと考えられ, 腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. 摘出標本の病理組織学的検索にて胆. 壁に強い炎症を認めた. また, 免疫組織染色ではRokitansky-Aschoffsinus上皮にCA19-9の強発現を認めた. 術後にCA19-9値は49U/mlまで低下し, 外来通院中も再上昇は認めていない. 血清CA19-9値は良性疾患, ことに胆石症においても高値を示すことはあるが, 10,000U/ml以上を呈することはまれである. CA19-9高値症例の検討から, 炎症がCA19-9値上昇に強く関与していると思われた.
  • 田村 孝史, 水野 豊, 澤 直哉, 岡本 道孝, 寺澤 孝幸, 岩見 大二, 長谷川 達郎, 上野 達之, 三浦 一章, 方山 揚誠
    2007 年 40 巻 4 号 p. 444-449
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性で, 腹痛を主訴に当院救急外来を受診し超音波検査, 腹部CTで総胆管結石を認め入院となった. 上部消化管内視鏡検査で胃体上部小彎より胆汁が流出するのを認め, ERCPでは総胆管結石と陰影欠損を伴った異所性の胆管像を認めた. 総胆管結石症および異所性胆管結石症として開腹術を施行した. 手術所見では左肝管から分岐し小網内を胃小彎に向かって横走して胃体上部に開口している重複胆管を認めた. 結石は総胆管内と重複胆管内に存在した. 手術は胆. 摘除および総胆管切石, 胃壁部分切除を含む重複胆管切除を施行した. 病理組織学的には後天性の瘻孔ではなく先天性の重複胆管であることが示唆された. 重複胆管はまれな症例であり, さらに重複胆管内に結石を認めた症例は非常にまれである.
  • 若原 智之, 豊川 晃弘, 小松 昇平, 田中 賢一, 塚本 忠司, 濱辺 豊, 石田 武, 寺村 一裕
    2007 年 40 巻 4 号 p. 450-455
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    気腫性胆嚢炎は胆嚢内および胆嚢壁内のガス像を特徴とする急性胆嚢炎の一型である. 胆管内ガスを伴う気腫性胆嚢炎はまれではあるものの報告は比較的散見される. 門脈ガスは腸管壊死などさまざまな腹部疾患に伴って出現する現象であるが, 気腫性胆嚢炎に起因することは非常にまれである. 今回, 我々は気腫性胆嚢炎に胆管ガスおよび門脈ガスを伴った症例を経験したので報告する. 症例は79歳の男性で, 全身倦怠感および食欲不振を主訴に受診. 身体所見上右上腹部を中心に腹部全体の圧痛を認め, CT上胆嚢腫大と胆嚢内, 胆嚢壁内のガス像を認めた. また, 胆管内および門脈内にガスを認めたが, その他明らかな異常はなかった. 気腫性胆嚢炎による汎発性腹膜炎の診断にて緊急胆嚢摘出術を施行, 術後集中治療室での管理を行い, おおむね経過良好で退院となった.
  • 松村 祥幸, 岩井 和浩, 川崎 亮輔, 松井 あや, 妻鹿 成治, 市之川 正臣, 高橋 透, 宮本 正樹, 平野 聡, 近藤 哲
    2007 年 40 巻 4 号 p. 456-461
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    自然破裂による腹腔内出血を呈した退形成性膵管癌の1例を経験した. 症例は59歳の男性で, 腹痛を主訴に当院を受診した. 腹部US, CTにて膵体部腫瘍と多発肝転移を認めた.腹痛の増強を認めたため緊急入院し, CTにて腫瘍の著明な増大と大量の腹水が認められた. 試験的腹腔穿刺では血性腹水が吸引され腹腔内出血の診断で緊急開腹術を施行した. 腫瘍の破裂による出血と判明し, 膵体尾部切除術を施行した. 病理組織診断にて退形成性膵管癌と診断した. 術後, 化学療法を施行するも効果なく癌性悪液質が進行し, 術後18日目に死亡した. このように退形成性膵管癌は急速に増大する間に自然破裂を生じる可能性がある.
  • 田中 麻紀子, 小出 一真, 山下 哲郎, 小野 滋, 谷口 史洋, 塩飽 保博, 栗岡 英明
    2007 年 40 巻 4 号 p. 462-466
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の女性で, 腹痛を主訴に来院した. 鎮痙剤投与にて症状の改善がみられたためいったん帰宅したが, その後に再度症状が出現し, 増悪傾向がみられたため翌朝に再度受診となった. 観察入院としたが, 同日夕方から腹痛が増強し, 腹膜刺激症状の出現がみられ, 腹部CTにて小腸の著明な拡張, また血液生化学検査では著明な骨髄抑制を認めた. イレウスの進行とそれに伴う全身状態の悪化と考え, 緊急開腹手術を施行した. 開腹所見としては, 臍部腹膜側から回盲部より約50cm口側の回腸につながる索状物が認められ, 臍腸管遺残症と考えた. この索状物を軸として小腸が回転し, 小腸ループによる内ヘルニアが発症し, イレウスを生じたものと思われた. 本邦での報告例は少ないが, 腹部手術既往がないイレウス症例では, 成人においても, 臍腸管遺残症を鑑別診断として考慮する必要があると思われた.
  • 村上 茂樹, 竹林 隆介, 竹田 正範, 只友 秀樹, 磯崎 博司, 庄 達夫, 石原 清宏, 酒井 邦彦
    2007 年 40 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸重積にて発症した虫垂粘液嚢胞腺腫の1 例を経験した. 症例は46歳の女性で, 腹痛, 水様便を主訴に来院した. 腹部超音波検査, multidetector CT (以下, MDCTと略記) にて, 横行結腸に嚢胞性腫瘤を先進部とする腸重積の所見を認めた. 注腸にて整復を行ったが, 上行結腸下部に円筒状の腫瘤像が残り, 造影剤の回腸への流入は不能で, 整復は不完全であった. 当日開腹手術を行ったが, 虫垂は7.5×3.0cmと腫大し, 根部が盲腸内へ陥入していたため, 回盲部切除術を行った. 病理組織学的には単胞性の粘液嚢胞腺腫であり, 粘膜上皮および内容物質内には悪性細胞は認めなかった. 冠状断MDCTは, 腸重積の診断において有用であった.
  • 田島 陽介, 酒井 靖夫, 矢島 和人, 武者 信行, 坪野 俊広, 小川 洋, 鈴木 晋, 石原 法子
    2007 年 40 巻 4 号 p. 473-477
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は肺扁平上皮癌の虫垂転移によって発症した急性虫垂炎の1手術例を経験したので報告する. 症例は71歳の男性で, 右側腹部痛を訴えて受診した. 12か月前に肺扁平上皮癌の手術既往があり, 最終病期はT4N2M0=stage IIIaであった. 身体所見でMcBurney点に圧痛とBlumberg徴候を認め, 検査所見では白血球数が22,000/mm3, CRPが9.9mg/dlと著明に上昇していた. 腹部骨盤部CTでは右側腹部に腫瘤を形成した虫垂を認め, 急性虫垂炎の診断で手術方針となった. 開腹所見では腹腔内には膿性腹水がみられ, 虫垂の穿孔を認めた. また, 虫垂先端は回腸と強固に癒着しており, 虫垂切除術および回腸部分切除術を施行した. 術後の病理組織学的所見で低分化型扁平上皮癌の診断となり, 原発性肺癌の虫垂転移によって引き起こされた急性虫垂炎であることが判明した.
  • 羽入 隆晃, 植木 匡, 若桑 隆二, 石塚 大, 多々 孝
    2007 年 40 巻 4 号 p. 478-484
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, 大腸癌の右副腎転移の診断にて平成14年11月に副腎腫瘍摘出術を施行した. 副腎転移は, 平成14年8月の腹部CTにて診断された. 原発巣は, 平成10年8月に切除されており, 深達度mpのstageIであった. その2年後にS7領域の肝転移があり平成12年10月に肝右葉切除術をした. 副腎切除後の経過は良好であったが, 平成16年3月に総胆管背側に再発が出現した. 副腎転移切除後2年11か月目の平成17年10月に消化管への出血により死亡した. 病理組織学的検査では, 大腸癌は分化癌と粘液癌が同量で, 他の3か所の転移巣は粘液癌であった. CEAは, 大腸癌切除前と総胆管背側の再発時に上昇し, 肝臓と副腎転移切除前には正常値内であった. 大腸癌の副腎転移切除例の報告は, 著者らが調べた範囲内では自験例を含め29例であり, 肝切除も施行されていた症例は7例であったので報告する.
  • 小島 豊, 鎌野 俊紀, 坂本 一博, 松田 光弘, 仙石 博信, 瀧田 尚仁, 柳沼 行宏, 野中 英臣, 北村 大介, 小野 誠吾
    2007 年 40 巻 4 号 p. 485-490
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Fournier's gangreneは痔瘻, 肛門周囲膿瘍や泌尿器科疾患が原因となる場合が多いが, 直腸癌を原因に発症した報告は少ない. 今回, 直腸癌の穿通によるFournier's gangreneの1例を経験したので報告する. 症例は56歳の男性で, 陰. の腫脹・疼痛と尿閉を主訴に当院泌尿器科を受診した. 骨盤CTで尿道と陰. に拡がるdirty fat signとair densityおよび直腸に腫瘍像を認め, 当科紹介となった. 同日, 緊急で膿瘍切開・ドレナージ, 人工肛門造設術を施行した. また, 術中に直腸腫瘍より施行した生検結果はwell differentiated adenocarcinomaであり, 直腸癌の穿通によるFournier's gangreneと診断した. Fournier's gangreneの原因疾患として, 直腸癌も鑑別診断の一つとして考慮すべきと考えられた.
  • 山田 栄治, 森 章, 長山 聡, 岡本 珠紀, 小山 貴, 伊藤 僚子, 小野寺 久
    2007 年 40 巻 4 号 p. 491-496
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸カルチノイドは内視鏡検査の普及に伴い微小な病変として発見されることが多くなってきているが, 腫瘍径20mm以下, 壁深達度smの症例でもリンパ節転移や肝転移の頻度は低くはない. 今回わずか8mm大の直腸原発カルチノイドに巨大な骨盤内リンパ節転移を伴った1例を経験した. 症例は79歳の女性で, 発熱と左下肢浮腫を主訴とし, 腹部CTでは約13cm大の内部壊死を伴った巨大腫瘤が骨盤腔を占居し左外腸骨静脈を圧排していた. 経皮的針生検にてカルチノイドと診断, 下部消化管内視鏡検査で下部直腸に径約8mm大の粘膜下腫瘍を認め, 骨盤内腫瘍は直腸カルチノイドからのリンパ節転移と判断した. 原発巣は経肛門的に局所切除を行い, 骨盤内腫瘍は開腹にて切除した. 病理組織学的に骨盤内腫瘍は直腸カルチノイドの閉鎖リンパ節転移と診断された. 骨盤腔内腫瘍の鑑別には消化管カルチノイドの関与も考慮し, 消化管の精査も必要であると考えられた.
  • 須納瀬 豊, 竹吉 泉, 富澤 直樹, 川手 進, 浜田 邦弘, 東郷 望, 戸谷 裕之, 大和田 進, 桜井 信司, 森下 靖雄
    2007 年 40 巻 4 号 p. 497-503
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は61歳の男性で, 平成14年4月, 下血と肛門部痛のため近医を受診し, 直腸診で腫瘤を指摘され当院に紹介された. 大腸内視鏡検査で, 直腸に中心臍窩を伴う巨大な粘膜下腫瘍を認めた. CTとMRIで, 直腸前壁に径12cm大の内部不均一な腫瘤影があり, 前立腺との境界も不明瞭であった. FDG-PETでは, 腫瘤に一致して異常集積を認めた. 画像および生検の所見より, 直腸GISTの前立腺浸潤と診断し, 同年5月に骨盤内臓全摘術を施行した. 切除標本では, 中心壊死を伴う浸潤性の病変で, 組織学的にも前立腺に浸潤していた. 核分裂像を50視野中13個認め, 免疫染色ではc-kit, CD34が陽性で, 高リスクのGISTと診断された. 巨大な直腸GISTに骨盤内臓全摘術を行い, 治癒切除後4年, 無再発の症例を経験した. 再発のリスクは治癒切除の可否で左右されるため, 適切な切除による根治性の高い手術を行うことが重要である.
  • 木下 浩一, 金井 陸行, 高林 有道
    2007 年 40 巻 4 号 p. 504-509
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で, 検診での便潜血陽性と全身倦怠を主訴に来院した. 精査の結果, 直腸未分化癌と全身リンパ節転移 (左頸部から鎖骨下, 縦隔, 大動脈周囲) を認めた. 初診時の血清CEAは, 20.7ng/mLと高値であった. 全身のリンパ節転移を伴う手術不能進行直腸癌 (N4: stage IV) の診断下に, CPT-11: 80mg/m2, 5-FU: 500mg/m2, l-LV: 250mg/m2を4週投与2週休薬: 1クールとして開始した. 5クール投与後完全奏効を認め薬剤投与を中止したが, 約9か月の無再発期間後に直腸の局所再発を認めたため再度の化学療法後局所切除を行うも, その5か月後に再々発を来した. 精査にて遠隔転移を認めなかったため, 根治を目的として腹会陰式直腸切断術を施行した. 初回化学療法開始後3年6か月を経た現在も明らかな再発の所見なく生存中である. 化学療法と手術療法により良好な経過を示した1例を経験したので報告する.
  • 北原 弘恵, 小松 大介, 北沢 将人, 小山 佳紀, 久米田 茂喜, 大谷 方子
    2007 年 40 巻 4 号 p. 510-516
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ループス腹膜炎の2例を経験した. 症例1は20歳時に全身性エリテマトーデス (systemic lupus erytematosus; 以下, SLEと略記) を発症した37歳の女性で, 腹痛, 発熱を主訴に来院した. 急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行したが, 病理組織学的検査で虫垂の粘膜下から固有筋層に血管炎を認め, 免疫血清学的検査とあわせループス腹膜炎と診断した. 症例2は23歳時にSLEを発症した36歳の女性で, 嘔吐を主訴に来院し, 腸閉塞の診断にて入院した. 入院2日後より反跳痛を認め, 腹部CTにて腹水増加と空腸の拡張と浮腫を認めたため, 絞扼性イレウスの診断で開腹した. 開腹時多量な腹水と小腸の発赤と拡張を認めたが, 腸閉塞は認めなかった. 手術所見および補体値低下から, ループス腹膜炎と診断した. 2症例ともステロイド治療で症状は軽快した. 急性腹症として外科医が初診となる可能性もあり, 特にSLEの既往を有する患者ではループス腹膜炎も念頭におく必要がある.
  • 鶴田 雅士, 長谷川 博俊, 西堀 英樹, 石井 良幸, 遠藤 高志, 似鳥 修弘, 岡林 剛史, 浅原 史卓, 向井 万起男, 北島 政樹
    2007 年 40 巻 4 号 p. 517-521
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で, 下腹部痛および臍部腫瘤を主訴に当院皮膚科を受診. 臍上部に発赤, 圧痛を伴う1.0cm大の硬結を触知し組織生検にて腺癌の臍転移が疑われた. 内科での全身精査にてS状結腸に2型の進行癌を認めた. その他の遠隔転移は認めず原発巣と同時に臍部転移巣を完全切除した. 病理組織学的にS状結腸癌臍転移と診断された. テガフール・ウラシル内服による補助化学療法施行するも, 術後6か月目に腹壁転移を認め, 9か月目に癌死した. 内臓悪性疾患の臍転移はSister Mary Joseph's noduleと言われ, 予後不良で発見から死亡まで1年以内との報告も多いが, 原発巣および臍転移部の外科的切除で予後が改善されたという報告もある. 臍部腫瘤に関しては内臓悪性疾患の臍転移も念頭におきながら精査する必要があると思われた.
  • 戸倉 夏木, 金子 弘真, 伊藤 正朗, 名波 竜規, 本田 亮一, 渡邊 正志, 寺本 龍生
    2007 年 40 巻 4 号 p. 522-527
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    癌終末期の消化管閉塞による悪心, 嘔吐, 腹部膨満感は患者のquality of lifeを損なう. オクトレオチドは, これらの症状を緩和すると報告されている. 2004年10月にオクトレオチドが保険適応となり一般病棟でも消化管閉塞患者に使用可能となった. 我々は2005年5月から2006年3月までに, 癌終末期消化管閉塞患者7例にオクトレオチドを使用し良好な結果を得た. 平均年齢は67.3±11.2歳, 男性4例, 女性3例で, 胃癌3例, S状結腸癌, 上行結腸癌, 膵臓癌, 原発不明癌が各1例であった. 悪心, 嘔吐, 腹部膨満感はJCOG toxicity scaleでgradeが全例低下し, 5例は経口摂取が可能となった. オクトレオチド投与後, 全例経鼻胃管を挿入することはなく, 輸液も減量することができた. 我々消化器外科医もオクトレオチドを手術適応のない癌終末期消化管閉塞患者の第1選択薬として考えるべきである.
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