日本消化器外科学会雑誌
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40 巻, 8 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 広松 孝, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 河合 清貴, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 土屋 智敬, 松本 直基
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1449-1455
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 腹腔鏡下胆嚢摘出術は急速に普及し, 現在では胆嚢良性疾患に対する標準術式となっている. しかし, ひとたび胆管損傷などの合併症を起こせば, そのmeritが失われるばかりか治療にも難渋する危険性をはらんでいる. このため, 合併症防止策の構築は大変重要な問題である. 方法: 過去16年間で当科で行った腹腔鏡下胆嚢摘出術1,926例を対象として, 手術時間を難易度の指標とし, 重回帰分析にてretrospectiveに検討した. 結果: 手術時間に影響する14因子のうち胆嚢壁肥厚, 頸部結石嵌頓, CRP上昇持続期間の3因子が手術時間の延長に寄与した. 標準回帰係数から, 線型判別関数 (手術時間Y=8.928×リスクスコアX+77.974) が得られ, さらに予想手術時間の3分位解析を行い, リスクスコアを3群 (低リスク群・中リスク群・高リスク群) に術前分別することが可能であり, 易症例の手術時間は76分, やや難症例は96分, 難渋症例は132分と予想されることがわかった. 考察: 我々の考案した術前難易度予想スコアを用いることにより, 難易度に応じた適切な術者が選択でき, 合併症低下に寄与できるものと思われた.
  • 辻本 広紀, 小野 聡, 望月 英隆
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1456-1465
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    外科侵襲に続発する免疫抑制状態は, 時に重篤な感染症を併発するため, それらの病態形成メカニズムの解明やそれに基づいた対策が重要である. そこで, 我々は外科侵襲後の免疫抑制状態と免疫担当細胞の機能・細胞数の変化, およびapoptosisに関する最近の文献, および著者らの検討結果を概説したい. 外科侵襲後の免疫抑制状態では, 免疫担当細胞の機能的低下や数的減少がみられ, これには外科侵襲時に産生されたapoptosis誘導因子により, 免疫担当細胞のapoptosisが亢進していることが関与しているものと考えられた. また, sepsisモデルにおいては, 抗apoptosis療法や, 減少した免疫担当細胞の移入が予後を改善することが示されている. したがって, 外科侵襲後の免疫抑制対策として, 免疫担当細胞のapoptosisの制御や, 減少した免疫担当細胞の移入などのimmunomodulationが有効であると考えられた.
  • 解剖学的変異と手術中の注意点
    山崎 誠, 土岐 祐一郎, 宮田 博志, 安田 卓司, 瀧口 修司, 藤原 義之, 門田 守人
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1466-1472
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Non-recurrent inferior laryngeal nerve (以下, NRILNと略記) を伴う胸部食道癌手術を4例経験したので報告する. いずれの症例も近医で食道癌を指摘され当科に紹介となった. 術前CTにてNRILNを合併した胸部食道癌と診断し, 右開胸食道亜全摘・3領域リンパ節郭清術を施行した. 手術時, 右反回神経は右鎖骨下動脈を反回することなく, 右迷走神経より直接分岐し, 喉頭に横走するNRILN を確認・温存した. また, 胸管は全例合併切除としたが, 右鎖骨下動脈前面を上行し右静脈角に流入する走行異常を伴っていた. 右鎖骨下動脈起始異常は, 反回神経や胸管の走行異常などの変異を伴っており, 厳重に注意して手術を施行する必要がある. さらに, NRILN合併例では上縦隔リンパ節転移の有無に関係なく頸部リンパ節に転移する可能性があり, 3領域リンパ節郭清を標準術式とすべきであると思われた.
  • 緑川 靖彦, 鈴木 久美子, 中地 健, 春日 照彦
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1473-1478
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は72歳の男性で, 幽門側胃切除後肝門部リンパ節腫脹による黄疸, 傍大動脈リンパ節腫脹を認め, 低用量FP療法, TS-1 80mg内服を行うも奏効せず, Paclitaxel (60mg, 3週投与, 1週休薬) の投与を行ったところ, 5か月でcomplete response (以下, CR) を得た. CR後約半年間Paclitaxelを投与し, 長期にわたりCRを維持したが, Paclitaxel 投与中止後約4か月で多発性肝転移を来して不幸な転帰をたどった. 症例2は67歳の男性で, 胃全摘・膵尾側脾合併切除後, TS-1 80mg, CDDP 10mg/weekの投与をしていたが, 多発性肝転移, 傍大動脈リンパ節腫脹出現しPaclitaxel (60mg, 3週投与, 1週休薬) の投与を行った. 9か月後にはCRが得られた. 以後, biweekly投与で約2年7か月間投与を行った. 3年以上経過したが現在もCRを維持している. 今回, 症例1を通してPaclitaxel中止後の何らかの免疫監視機構の破綻などが示唆された. CRが得られた場合でも予後決定臓器への転移では, CR後も1年間は化学療法をすべきと思われた.
  • 徳永 正則, 大山 繁和, 布部 創也, 比企 直樹, 福永 哲, 瀬戸 泰之, 山口 俊晴
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1479-1484
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性で, 前医で進行胃癌と診断され, 当院紹介受診となった. 腹部CT上, 膵臓への直接浸潤があり, リンパ節転移も著明であった. cT4, cN2, cM0, cStage IVと診断し, TS-1/CDDPを用いた術前化学療法 (前化療) を1コース施行した後, 開腹術を行った. 腹膜播種はみられず, 洗浄細胞診の結果も陰性であったため, D2郭清を伴う胃全摘, 膵脾合併切除を施行した. 切除標本の組織学的検索では, 主病巣, リンパ節ともに癌細胞がみられず, grade 3, 組織学的CRと診断された. 現在, 術後3年が経過したが無再発生存中である. 近年, 進行胃癌に対する外科的切除後の治療成績向上を目指し, さまざまな前化療が試みられている. TS-1/CDDPを用いた前化療の報告も多くみられ, 組織学的CRの報告も散見されるが, 多くは複数コースの投与によるものである. 1コースの前化療で, 組織学的CRが得られた症例は非常にまれと考えられたため報告する.
  • 高橋 秀和, 水谷 伸, 西田 俊朗, 大山 司, 打越 史洋, 吉留 克英, 鳥 正幸, 上島 成幸, 仲原 正明, 辻本 正彦
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1485-1489
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性で, 主訴は全身倦怠感. 内視鏡検査で, 噴門より胃体下部に及ぶ2型病変を認めた. 生検の結果, 腺癌と診断したが, 一部の検体では扁平上皮癌を認めた. 腹部CTで膵臓への直接浸潤ならびにリンパ節#12Pに転移を認めた. Downstagingを目的にTS-1/CDDPによる術前化学療法を3コース施行した. CT画像による効果判定はNCであった. 胃全摘, 脾摘, 膵体尾部切除術を施行. 膵への直接浸潤を認めたが, 腹膜播種を認めず, Stage IV, 根治度はBであった. 病理組織学的検査では, 扁平上皮癌成分のみ認め, 腺癌成分を認めず, 腺扁平上皮癌の腺癌成分が術前化学療法により消失したものと考えられた. 腺癌成分と扁平上皮癌成分では, 化学療法に対する感受性が異なる可能性が示唆された.
  • 正木 裕児, 上野 隆, 濱田 博隆, 秋山 隆
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1490-1495
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は慢性C型肝炎の既往を有する68歳の男性で, 2006年1月頃より弛張熱と右側胸部痛が出現し近医を受診した. 腹部超音波検査で肝右葉に6センチ大の腫瘤を指摘され当院へ紹介となった. 腹部CTでは肝後区域に直径6センチのring enhancementを有する単発性腫瘤を認めた. 肝膿瘍と診断し経皮経肝膿瘍ドレナージを施行, 灰白色の膿汁を排出した. ドレナージ後も炎症反応高値が遷延したため, 経皮的治療の限界と判断し肝部分切除術を施行した. 術後の病理組織学的検査では異型性を伴う類円形~短紡錘形の腫瘍細胞が充実性に増殖しており, 免疫組織染色ではVimentinとMIB-1に強陽性を示し, かつ鍍銀染色では索状配列が保持されていた. なかでも, MIB-1標識率は80%を越え, 強い増殖能を有することをうかがわせた. 以上より, C型肝炎を背景に発生した肉腫様肝癌と診断した. 未治療の肝腫瘍, とりわけ肉腫様肝癌が肝膿瘍として発症することは極めてまれであり, 考察を加えて報告する.
  • 折茂 達也, 神山 俊哉, 中川 隆公, 中西 一彰, 横尾 英樹, 田原 宗徳, 蒲池 浩文, 松下 通明, 久保田 佳奈子, 藤堂 省
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1496-1501
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性で, 右側胸部痛を主訴に近医を受診した. 腹部CTで, 肝S8-7に嚢胞性腫瘍と肝表面に液体貯留を認め, 腫瘍からの出血と診断しTAEを施行した. また, 下部消化管内視鏡検査でS状結腸に2型腫瘍を認めた. 当科紹介となり, 2005年10月, S状結腸切除D3, 肝S8-7切除を施行した. 肝臓の摘出標本では, 内部に粘液と, 血腫もしくは壊死物質を考える褐色内容物を有する被膜で覆われた病変を認めた. 病理組織学的検査所見では, S状結腸は高~中分化腺癌, 肝臓は肝原発の胆管嚢胞腺癌であった. 胆管嚢胞腺癌はまれな疾患であり, 治療は外科的切除が第1選択である. 中でも腹腔内に破裂した胆管嚢胞腺癌は極めてまれであり, 再発の可能性が高いと考えられ, 今後の厳重な経過観察を要する.
  • 鈴村 和大, 黒田 暢一, 藤元 治朗
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1502-1507
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性で, 全身掻痒感と黄疸を主訴に入院した. 腹部CT, USにて膵頭部の腫瘍性病変を指摘され当科紹介となった. CA19-9が82U/mlと上昇のほか, 腫瘍マーカーの上昇は認めず. CT, USでは膵頭部に6cm大の隔壁を有する嚢胞性病変を伴う腫瘍を認め, 腫瘍辺縁と腫瘍内部の隔壁に造影される部分を有していた. MRIのT2強調像ではiso~high intensityな腫瘍陰影として描出された. MRCPでは, 主膵管は腫瘍により圧排偏位をうけるも閉塞はなかった. 膵嚢胞性腫瘍の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行. 病理組織学的検査で膵類破骨細胞型巨細胞癌と診断された. 約1年後に膵断端から挙上空腸内に発育する形で局所再発し, 腫瘍とともに残膵亜全摘・幽門側胃切除を施行したが, 術後急速に出現・増大した肝転移により4か月後 (初回手術後1年4か月後) に死亡した. 極めてまれな膵類破骨細胞型巨細胞癌の切除例を経験したので報告した.
  • 木山 茂, 今井 直基, 笠原 千嗣, 高見 剛, 斎尾 征直
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1508-1513
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の女性で, 左季肋部痛を主訴に近医を受診し, 貧血, 血小板減少を指摘され, 9月下旬当院を紹介された. 左上腹部に弾性硬の腫瘤を触知した. 血液検査では貧血, 血小板減少を認めた. 腹部CTでは脾臓に一致して一部が造影される内部不均一な腫瘍を認めた. FDG-PETでは左上腹部から側腹部に集積像を認めた. 輸血, 血小板輸血を施行するも血小板減少が増悪するため, 脾機能亢進による汎血球減少と診断し, 脾摘除術を施行した. 摘出標本は大きさ15×12×12cm, 重量990g,表面平滑, 弾性軟であった. 割面は充実性であった. 病理組織学的検査で血管肉腫と診断した. 術後, 末梢血幹細胞移植を併用した超大量化学療法を施行し, 術後36か月無再発生存中である.
  • 菅 隼人, 古川 清憲, 鈴木 英之, 鶴田 宏之, 松本 智司, 秋谷 行宏, 進士 誠一, 松田 明久, 田尻 孝
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1514-1519
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    術前にダブルバルーン式小腸内視鏡 (double balloon enteroscopy; 以下, DBEと略記) を行い狭窄型虚血性小腸炎が疑われ, 腹腔鏡補助下に手術を行った症例を1例経験した. 症例は61歳の女性で, 高血圧, 心房細動, 下肢静脈血栓症の既往あり. 約1か月前に腹痛・下痢症状があり, 急性腸炎の診断にて当院に入院した. 3週間後に軽快して退院したが, その数日後にイレウスと診断され再入院した. CTで小腸の一部に腸管壁の肥厚とその口側腸管の内腔拡張像を認めた. イレウス管にて腸管を減圧後, 小腸造影検査を行い狭窄部位を確認したのち, DBEを行い病変部の観察と生検を行った. 病理組織学的検査所見より粘膜下に炎症細胞の浸潤を認め虚血性病変が疑われた. 後日腹腔鏡補助下手術を行い病変部を切除した. 病理組織学的検査にて虚血性小腸炎と診断された. DBEにて術前に病変部を観察しえた虚血性小腸炎の本邦報告例はみられず貴重な症例と思われ報告する.
  • 大塚 隆生, 中川内 章, 下西 智徳, 古賀 清和, 岡崎 幸生, 中房 祐司, 宮崎 耕治
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1520-1524
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で, 間歇性腹痛と新鮮血下血を来し, 近医で行った腹部CTで上腸間膜動脈閉塞症と診断され, 当科を紹介された. 心電図上心房細動を認めた. 血液検査で白血球とLDHの上昇, 血液ガス分析でアシドーシスを認め, 腸管壊死が疑われたため開腹手術を行った. 小腸は広範囲にわたり色調が変化し, 辺縁動脈の拍動も減弱していたが, 壊死所見はなかった. そこで, 術中血管造影検査を行ったところ, 上腸間膜動脈に空腸第1枝より末梢レベルでの閉塞を認めたため, 動脈壁を切開し, 血栓除去術を行った. その後, 小腸の色調は速やかに回復し, 辺縁動脈の拍動も良好となった. 造影CTでも上腸間膜動脈の血流は良好であった. 上腸間膜動脈閉塞症による腸管壊死の診断で開腹したが, 可逆的腸管虚血を疑い, 術中血管造影検査が部位診断と治療方針の決定に有用であった1例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する.
  • 平原 典幸, 西 健, 川畑 康成, 稲尾 瞳子, 矢野 誠司, 立花 光夫, 田中 恒夫, 上田 邦彦, 松下 一行, 小串 伊知郎
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1525-1530
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性で, 発熱, 右側腹部の発赤, 疼痛を訴え来院した. 来院時, WBC 13,900/μl, CRP 27.7mg/dlと炎症反応が上昇し, CTにて右側腹部に10×6×5cmの内部が不均一な嚢胞性病変を認め, 周囲脂肪織への炎症の波及が疑われ入院となった. 入院翌日には自潰し多量に排膿があったが, 抗生剤にて炎症反応は改善し, 8日後に排膿は消失し退院となった. しかし, 13日後再度自潰し, 瘻孔造影にて小腸が造影されたため手術を施行した. 腹腔内にφ2-3mmの白色小結節とムチン状腹水, 右側腹部に癒着を認めた. 診断不能のためムチン状粘液と小結節を採取したのみで閉腹した. 病理組織学的検査にて結核菌は認めないが, 一部壊死を伴った類上皮細胞からなる結節性病変を認め, 腸結核を疑い大腸内視鏡を施行した. 回盲部から類上皮細胞肉芽腫, ラングハンス型巨細胞を認めたため腸結核の診断にて治療開始し, 約2週間後に瘻孔は閉鎖した. 腸結核は多彩な病像を呈することがあり注意を要する.
  • 小野里 航, 中村 隆俊, 旗手 和彦, 小澤 平太, 佐藤 武郎, 國場 幸均, 井原 厚, 渡邊 昌彦
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1531-1535
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性で, 昼食後より腹痛, 嘔吐が出現し近医を受診した. 近医では腸閉塞と診断され, 入院後イレウス管を挿入され保存的治療をうけた. その後も症状改善せず, 発症5日後より腹痛増強のため当院転院となった. 入院時腹部全体に強い圧痛と反跳痛を認め, 右下腹部には手拳大の腫瘤を触知した. 腹部造影CTでは回盲部にtarget signを認めた. 腸重積による腹膜炎と診断し, 緊急手術を施行した. 術中所見では回腸-回腸-結腸型の腸重積を認め, 回盲部は巨大ソーセージ様の暗赤色腫瘤を形成していた. 用手整復が困難であったので回盲部切除術を施行した. 切除標本で回腸末端から54cmの部位に2.7cm大の粘膜下腫瘍を認め, この粘膜下腫瘍が先進部位となっていた. また, 回腸末端から20cmの部位にはメッケル憩室を認めた. 病理組織学的検査では回腸リンパ管腫と診断された. 小腸リンパ管腫はまれであり, 本邦では36例の報告があるが, しかし腸重積で発症した報告例は6例と少なく, 本症は極めてまれな症例と考えられた. 成人腸重積の原因の一つとして, 小腸リンパ管腫を念頭におく必要があると考えられた.
  • 谷 直樹, 野口 明則, 竹下 宏樹, 山本 有祐, 伊藤 忠雄, 中西 正芳, 菅沼 泰, 山口 正秀, 岡野 晋治, 山根 哲郎
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1536-1541
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は直腸癌術後の膵および肝転移に対する1切除例を経験したので報告する. 症例は78歳の男性で, 1993年に直腸癌に対して直腸切断術, 肝S7の同時性転移に対する肝部分切除を施行した. 術後は無再発に経過していたが, 11年目の2004年10月腫瘍マーカーの高値を指摘され, 腹部造影CTを施行したところ膵体部および肝S4に腫瘍を認めた. ERCPで膵管の途絶を認め膵体部癌および肝転移を疑い膵体尾部脾合併切除および肝部分切除を施行したが, 病理組織学的検査の結果はともに11年前の直腸癌からの転移であった. 大腸癌の膵転移はまれな病態であるが, 初回手術から長期間を経てから生じること, 経過中に肺, 脳, 肝臓など多臓器に血行性転移を生じる例が多いこと, 予後不良であるなどの特徴を有するので治療上の注意が必要である. 本邦報告例の検討から, 初回手術後長期経過して発見された膵転移は切除後の予後が比較的期待できる可能性があると考えられた.
  • 齋藤 徹, 宇田川 郁夫, セレスタ RD, 渡邉 茂樹, 新村 兼康, 菊地 紀夫, 宮崎 勝
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1542-1547
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部原発の悪性黒色腫は早期から転移を来し, 極めて予後不良な疾患であるが, 局所切除と化学療法により10年を経て生存中の症例を経験したので報告する. 症例は70歳の男性で, 直腸ポリープの診断で経肛門的に局所切除を施行した. 直径20mmで有茎性であった. 割面は血栓様で黒色, 病理組織学的診断は悪性黒色腫であった. 直腸切断術と局所切除では生存率に有意差はないとの報告もあり, 化学療法のみで経過観察となった. CDV療法を年2~3回施行し10年が経過した. 直腸悪性黒色腫は予後不良だが, 術式に関する統一した見解はない. 多くは腹会陰式直腸切断術が施行されるが, 今回の症例は局所切除のみで10年の経過をたどった. 9年目に肺転移を認めるも現在は増大傾向はない. 10年目に局所再発で経肛門的切除を施行したが, 同治療を継続し現在良好なquality of lifeが得られている. 本症例は直腸悪性黒色腫の治療確立の課題に貴重な1例と考えられる.
  • 宮澤 光男, 合川 公康, 鳥井 孝宏, 岡田 克也, 大谷 吉秀, 小山 勇, 筏 義人
    2007 年 40 巻 8 号 p. 1548
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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